FNMNL (フェノメナル)

【イベントレポート】REAL Street Festival 2019

もはや夏の風物詩ともいえる音楽フェス。ここ日本では、毎年7月にFUJI ROCK FESTIVAL、8月にサマーソニックが開催されており、両イベントとも今年も多くの来場者で賑わった。世界に目を向けても、音楽フェスが好調だと言われて久しい。毎年4月に行われている世界最大規模の音楽フェス=Coachellaでは、2017年に史上初となる9桁の興収(114百万ドル)を記録したことがニュースとなった。他にも、ヒップホップのフェスとして、近年頭角を現してきているRolling Loud Festivalがあり、同イベントの日本上陸を心待ちにしている国内のヒップホップ・ファンも多いことだろう。

この度、その顔ぶれに新たなフェスが加わることとなった。LAのヒップホップ専門ラジオ局=REAL 92.3主催のREAL Street Festival (以下"RSF")である。ラジオ局主催の音楽フェスティバルといえば、2016・2017年と日本に上陸したHOT 97のSummer Jamや、例年12月に行われるPower 106のCali Christmasなどがよく知られているが、RSFも今年からそこに加わったかたちだ。記念すべき1回目のRSFは、2019年8月10・11日、米国カリフォルニア州アナハイムのホンダセンターにて開催された。本記事では、同イベントの様子を、実際に足を運んだ筆者撮影の写真と、いくつかのソーシャル・メディアへの投稿と共に振り返る。

取材・写真 : 奧田翔

Big Boyの近所

REAL 92.3随一の人気番組といえば、ラジオ・パーソナリティーのBig Boyがホストを務める『Big Boy's Neighborhood』だ。RSFにおいてもホンダセンターのアリーナ内に同名のコーナーが設けられ、そこでは様々な角度からカルチャーとしてのヒップホップを体感できるようになっていた。

Cantu Beauty協賛のバーバー・ショップ
Cryptic Tattooの出張タトゥー・パーラー

ウェストコーストのヒップホップといえば、その欠かせない一要素が"車"である。アリーナの中央ではカー・ショウが開催され、"Classic American Lowrider"、"Fully Customized / Redesigned Car"、"Fully Modded Imports"の3カテゴリーの車が並んでいた。

West Coast Customsによるカー・ショウ

そして、両日とも特設ステージでは生の公開インタビューが行われるという、ファン垂涎の試みも。筆者は2日目にSaweetie、Bluefaceのインタビューを生で観る機会に恵まれた。

Saweetieと『Big Boy's Neighborhood』の面々

ライブを終えてそのまま全身ブルーの衣装で登場したSaweetie。ヒット曲"My Type"のリミックスを考えており、そこにCardi Bに参加してもらいたい旨を明かした。

Bluefaceと『Big Boy's Neighborhood』の面々

数日前にこの半年間で1000人もの女性とセックスした!?とのことで話題になっていたBlueface。この日は同じ質問を受けると「1010人かな」と答え、順調に経験人数を重ねていることを報告した(その後、バックステージでラジオ・パーソナリティーのCruzから質問を受け、10000人に上方修正したことは周知の事実である)。

アリーナの外にも様々なスポンサーや地元のジェントルメンズ・クラブのブースが出店。そんな中で写真撮影スポットとして最も人気だったのが、昨年9月と本年3月にそれぞれ命を落としたMac Miller、Nipsey Hussleの壁画であった。

@loveyourdreamsによるMac Millerの壁画
@dannymateoによるNipsey Hussleの壁画

"Hot Girl Summer"と"The Marathon Continues"

さて、本イベントの目玉はやはりライブである。NORTH STAGEとSOUTH STAGEの2ヶ所で行われたライブはいずれも時間が重なることなく、2日間に渡って計36組のライブが最初から最後まで余すところなく楽しめるよう設計されていた。

ステージに向かって右端中ほどから眺めたSOUTH STAGE
同じ位置から見たNORTH STAGE。お気づきのとおり西を向いているため、夕方になると西日が眩しい

ライブの間にはREAL 92.3のDJ陣によるMCがあり、ここで頻出したフレーズの一つが"Hot Girl Summer"である。これは、ヒューストン出身のフィーメイル・ラッパーMegan Thee Stallionが提唱したムーブメントの名称であるが、すっかり市民権を得て、多くの女性ファンをエンパワーするものとなっていることがうかがえた。なお、そのMeganは1日目に登場。大胆な衣装と迫力あるパフォーマンスでクラウドをロックした。

また、3月に凶弾に倒れたNipsey Hussleへの言及もしばしば。2日目にステージに立ったRoddy Ricchが"Racks In The Middle"をパフォームしたほか、DJが"Last Time That I Checc'd"をかけながら、Nipseyへの追悼の意味を込めて携帯電話のライトを空にかざすよう呼びかける場面も。彼がウェストコーストに残した影響力の大きさが感じられる一幕であった。

おかえり、A$AP Rocky

今回最大の見所となったのは、なんといっても2日目のヘッドライナーであったA$AP Rockyのステージである。スウェーデンでの暴行事件をきっかけに約1ヶ月もの間拘留されていた彼は、8月に入りようやく釈放され、RSFでのライブが復帰後初のパフォーマンスとなった。それだけに人々の期待も高まり、2日目の入場者数は(筆者体感で)1日目のそれの2倍を上回るほどであった。

客席から投げ込まれたブラジャーを手に笑みを浮かべるA$AP Rocky

交通事故のテスト用ダミー人形のマスクを被って姿を現したRockyは、"Praise The Lord (Da Shine)"を披露し終えるとマスクを脱ぎ、歓迎の拍手喝采を浴びる。盟友のTyler, The CreatorとYG、そしてA$AP Fergが駆けつけるなか、約1時間におよぶパフォーマンスを敢行した。曲間のMCでは「みんなが祈り続けてくれたのを知っている。俺が有罪にならないように、これからも祈り続けてくれ」「スウェーデンの人たちに恨みは無いんだ。彼らは俺が刑務所にいる間、抗議活動をしてくれた」などと、ファンへの感謝を口にした。結局Rockyには有罪判決と2年間の保護観察処分が下ることとなったが、釈放後早々に元気な姿を見せ、上々のスタートを切ったといえるだろう。この経験を糧に今後ますますの活躍を期待したいところだ。

ヒップホップの誕生日=8月11日を含む2日間にわたって開催された初のRSFは、話題性も手伝い、ライブを中心として様々な切り口からヒップホップを楽しめるものとなった。初開催でこれだけ質の高い体験を提供できるのも、長年LAのシーンを支えてきたBig Boyをはじめとする、REAL 92.3の面々の力によるところが大きいだろう。RSFの公式Twitterアカウントは次回開催に向けて意欲的な様子であり、早くも来年が楽しみである。来年の夏、一味違ったフェスを体験したい方は、アナハイムへの旅行を考えてみてはいかがだろうか?

奧田翔(おくだ・しょう)

1989年3月2日生まれ。宮城県仙台市出身。会社員・ライター。HUFのブースで撮った写真が証明写真のような目つきなので、来年リベンジする所存。
https://twitter.com/vegashokuda
http://ameblo.jp/vegashokuda/

Exit mobile version