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大井一彌(yahyel)が最近見つけた5曲 | あの人の「今」を聴く #2

カルチャーシーンを彩る様々なゲストを招き、最近の実生活の中で出会った音楽を訊いていく本企画。単に新しい音楽に触れるだけでなく、音楽というものを通して、新たな考えや、今に流れるシーンを幅広く捉えることができるはずだ。

初回のSkaaiに続き、2回目となる今回は、ドラマー・大井一彌(yahyel)が最近見つけた5曲を紹介。

1. Julian Sartorius -『Hidden Tracks: Domodossola – Weissmies』

大好きなパーカッショニストJulian Sartoriusの新譜。おそらく、イタリア北西部のドモドッソラから、スイスのヴァイスミース山までの道程をテーマに作られた音楽。標高272mから4017mまでの3745mの高低差が8トラックに分割されていて、それぞれの標高に違った情景がある。アルバム全曲で35分間、通しで聴き切ったときになんとも言えない登頂カタルシスがある。通勤通学という巨山に挑む際にもぴったりなはず。

2. C418 -『Minecraft - Volume Beta』

マイクラ好き音楽家のランキングがあるとすれば、僕はけっこう上位なはず。2年間マイクラして寝るだけの期間が欲しい。一番好きな曲はAria Math。この曲がプレイ中に流れる時間に勝る音楽体験はそう多くない。あ、2B2TのX20450,Z10600 に僕のアジトがあります。

3. Hans Zimmer - 『Dune (Original Motion Picture Soundtrack)』

僕が好きな映画の音楽は全部ハンスジマーが作ってるんじゃないか。ハードSF好きとしては近年の動きは本当に面白い。三体をはじめとした中国SFの波にがっつり飲まれたかと思ったら、大ファンだった砂の惑星が映画化されて、今年は笑い男事件がどっかで起こっているはずだ。

4.『OBSIDIAN SOUNDFIELDS』

最近よく浴びているコンテンツがある。コンセプトアートに沿ったアンビエント音楽だ。一枚絵の仄暗い建造物が写っていて、その施設の概要ひいてはその世界に関する短い説明文が載っているだけ。映像でもない、音楽でもない、効果音でもない。ただそのムードを浴びることができるアートだ。何が音楽で何が非音楽かなんて、こういうのが好きな僕にはどうでもいいことだ。

5. The Nightworker - 『Songs From a Haunted Elevator』

「過去のことの記憶は、必ずしも当時のことの記憶ではない」という説明書きが添えられた音楽。色褪せた懐かしさ、えも言われぬ極上の不安感を味わうことが出来る。音楽の出自は1930~40年代とかのアメリカの音楽だと思うけど、重要なのはそこではない。この音を聞いていると、特定の記憶が無いのにも関わらず、存在しないはずのノスタルジーを感じてしまう。精神状態を誘導する目的にのみにフォーカスした音楽コンテンツは面白い。そういう意味ではこのサイケ作品もTikTokの手遊び音楽も同じようなもんだ。

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Info

大井一彌

HP
SNS: @oioiiioiooi

大井一彌 (おおい・かずや)
1992年生まれ。神奈川県出身のドラマー/トラックメイカー。昭和音楽大学在学時に江口信夫氏に師事。yahyel、DATS、Ortance、LADBREAKSに所属し、AAAMYYY、DAOKO、Dos Monos、GLIM SPANKY、milet、odol、THE SPELLBOUND、UA、アイナ・ジ・エンド、木村カエラ他、サポートプレイヤーとしても活動する傍ら、ソロ名義のHUMANIZE IN DUBではCMやアート展示、ゲーム等のサウンドデザイン、プロデュースも行う。


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