先日Dr. Dre、Snoop Doggとレコーディングを行っていたことが報じられ、新作『God’s Country』のリリースを予告していたKanye West。そんな彼が、Travis Scottをフィーチャーした新曲“Wash Us in the Blood”をリリースした。
リリックにはここ最近のBlack Lives Matter運動とリンクした警察による黒人に対する暴力や、新型コロナウイルスなどによる社会の混乱といったトピックが含まれている。Ronny Jがプロデューサーとして参加しDr. Dreがマスタリングを手掛けたトラックはハードなトラップビートとアフリカの民族音楽を彷彿とさせるドラムが折衷されたもので、またTravis Scottが参加しているだけありアートワークはサウスへのオマージュを感じさせるものだ。
同時に公開されたMVはビジュアルアーティストのArthur Jafaが手がけ、リリックの内容と連動しBlack Lives Matterデモの模様や新型コロナウイルスによって苦しむ人々の実際の映像が用いられている。Geniusの動画によると、MVには今年2月にジョギング中警察官によって射殺されたAhmaud Arberyさんの死の直前の映像や、自宅のベッドで警察に射殺されたBreonna Taylorさんの生前の映像も含まれている。Kanyeは以前Ahmaud Arberyさん、Breonna Taylorさんの事件の裁判にかかる費用を寄付したことが明らかになっているため、BLMに対する現在のKanyeの姿勢が窺えるものでもある。
かねてよりトランプ大統領の支持を公言し物議を醸してきたKanyeだが、ここ最近のBLM運動に伴いデモへの参加や大規模な寄付を行ってきたことで、これまで彼を批判してきたSnoop Doggとのコラボが実現するまでに至っている。今回の“Wash Us in the Blood”は彼の近作と変わらず聖書からの引用やキリスト教の思想をリリックに落とし込んでいるものの、同曲を含む『God’s Country』はここ数年の彼のアルバムとはまた別種の作品となることも予想出来る。
いずれにせよ、ここに来て精力的な動きを見せ強力な新曲をドロップしたKanyeの今後の動向に注目すべきであることは確かだろう。