昨日開催された2020年グラミー賞授賞式にて、アルバム『IGOR』で最優秀ラップアルバム賞を受賞したTyler, The Creator。エキシビションでの圧倒的なパフォーマンスも話題となっている彼が、グラミー賞の選考や音楽ジャンルの分け方に対する持論を語っている。
受賞後の会見に登場したTyler, The Creatorは、「グラミーの選考方法が持つ問題について、受賞した今どう考えていますか?」という質問に対し、「半々の気分だよ。世界中に俺を知ってもらえる機会を与えてくれた事には本当に感謝しているけど、一方で、俺たちのような奴らにとってクソでもある。ジャンルを超えたことをやっているのに、あいつらはいつも“ラップ”や“アーバン”ってカテゴリーに俺たちを押し込むだろ。“アーバン”って言葉は好きじゃないんだ。Nワードをポリティカリーコレクトネスに配慮して言っているだけのように思える。だから、そう言われると“なんで俺たちはポップじゃいけないんだ?”って思うんだよ。だから、ラップでノミネートされたときも心のどこかで皮肉なお世辞のように感じてしまった。ゲームをしたがってる子供に接続されてないコントローラーを与えて、“黙ってこれで満足しろ”って感じのな。少しだけそう思った自分もいるけど、一方でとても感謝していることも事実なんだ」として、あくまで「ラップ」というカテゴリーの中でしか評価されないグラミーのシステムに対する複雑な心境を明かした。
先日はグラミー賞のプレパーティに登場したDiddyが「グラミーはヒップホップを一度もリスペクトしてこなかった。ブラックミュージックは、ある時点までグラミーにリスペクトされていなかったんだ」と語るなど、長く批判され続けているグラミー賞の選考。単なる「ラップアルバム」というよりもジャンルを横断した複合的な音楽性を特徴とした『IGOR』が「最優秀ラップアルバム」にノミネートされるだけに留まった今回の事例にも、グラミーが抱える問題の一端が表れていることは確かだろう。
ヒップホップシーン、ひいては現在のポップミュージックの流れとの距離が決定的なものとなりつつあるグラミー賞。今後こういった傾向に変化は訪れるのだろうか?