FNMNL (フェノメナル)

【対談】KM × 粗悪ビーツ | アルバム・ビートメイク・子育て

昨年アルバム『FORTUNE GRAND』をリリースしたKMと、同じく『Crude』をリリースした粗悪ビーツ。この2人は、2016年に開催されたイベント『86BABIES』の企画でも対談したことがある同世代のビートメイカー。

多くのラッパーをフィーチャーした作品を昨年2人ともリリースしたということで、アルバムの制作過程を中心に、2人にとっての2018年のトピックなどをゆるりと振り返ってもらう対談企画が昨年末に実現。2人が気になるビートメイカーやハマっていることなどを自由に話してもらった。

取材・構成 : 和田哲郎

- 2年前の対談は色々な話が出たんですが、最終的には結婚が素晴らしいという話になりました。そしたら今年ついに粗悪さんが。

粗悪ビーツ - 結婚させていただきました!7月にプロポーズしまして、8月に入籍して、和田さんに証人になってもらって。

KM - アルバム出たのはいつでしたっけ?

粗悪ビーツ - 10月24日ですね。

KM - すげえ制作で忙しいときじゃないですか(笑)

粗悪ビーツ - そのときはもうツボイさん待ちやったから、何もやることなかったんですよ。

KM - 僕は9月に出しましたね。8月は入荷枚数を抑えるからみんな9月になって、9月凄かったですよね(笑)僕は8月に出来てて出せる状態ではあったんですけど、まあ遅らせようって。

粗悪ビーツ - KMさんは自分でセルフミックスマスタリングだから本当に凄い。自分は何もしてない(笑)ちょこっとやって、ツボイさんにお願いするっていう。

- でも希望はありますよね?

粗悪ビーツ - いや、僕は人に任せる場合は希望はないんですよ。

KM - 職人になんか言うとクオリティ下がるみたいな(笑)

粗悪ビーツ - 確率は50/50なんですよ。頼んで良くなるときと、頼まなくても良くなるとき。結局50%だから、もう言わないで任せようって。

KM - それすげえ分かるっすね。

粗悪ビーツ - 前に僕もマスタリングとか勉強せなあかんなって思って、dodoちゃんに「1回5000円払うから授業してくれ」って頼んだんですよ。彼は音楽の学校に通ってたから、学校の何年かで学んだことを複数回に渡って教えてくれっていう話をして、そしたらまさかの授業が1回で終わってしまったんですよね(笑)ノートにまとめて書いたんですけど、3、4ページでdodoちゃんの学んできたこと教え終わって(笑)実際はそれだけでは終わりではないんでしょうけど、とにかく1回で終わってしまって(笑)それからしばらく教わったこと試したんですけど、集中切れちゃって、人任せが1、2年続いてます。だからセルフミックスっていうのは本当に凄い。

- KMくんはずっと自分でミックスしてますか?

KM - 金無かったから...。

粗悪ビーツ - 金なくても出来るとこが凄いんですよ。言うたら崖があってリポビタンD飲んでて、ファイト一発出来るのは筋肉があるからで、筋肉無かったら崖から落ちてますから。僕は崖落ちる側なんで。だから本当にすごいなって僕は思いますけどね。

- 粗悪さんはトラックとかは結構昔に作ってたやつもあるんですか?

粗悪ビーツ - 2013年の曲があります、1曲。和田さんに聴かせたら「低音足りない」ってダメ出し来たやつ。

- 僕そんなこといいましたっけ?(笑)

粗悪ビーツ - 「新機軸出来ました」って送ったら「もうちょっと低音あった方が良いですね」って(笑)それからしばらく寝かしてたのが数年続いてて、和田さんの声が降りて来たから低音足してみたら「出来た!」って。

- ちなみにどの曲ですか?

粗悪ビーツ - “鬼火”です。和田さんのお陰でできた(笑)

KM - 俺は“鬼火”がミックス一番好きでしたね。ボーカルのミックスって誰がやってるんですか?

粗悪ビーツ - あれはkamuiくんがある程度やったのをツボイさんがやってるはず。ツボイさんからも「この曲気に入ってる」って連絡いただいたんですよね。

KM - 多分、ミックスの仕方がフロリダのベース上げすぎてベース割れてるのが綺麗に再現されてるっていうか。XXXTentacionのは本当に何も分かってないで潰してる感じなんですけど(笑)それが綺麗に表現されてる。俺これ出来ないなって思って。Jojiの『BALLADS 1』の一曲目とかもそうで、すごいクリーンな割れ方で。

- 今回の粗悪さんのアルバムは音数少なくてメロウなものも増えたような気がします。

粗悪ビーツ - 「こうやってやればいいんや」っていうのがある程度分かってきて変わったのもあるんですけど、この時期はMetro Boominと久石譲にえらいハマってしまってて。北野武の映画のサントラやってた頃の久石譲がすごい好きなんですよね。『キッズリターン』とか。あんな感じを出したくて、激しくない感じで、だけどグッとくるようなのを真似したかった。

KM - でも結構激しめなものもありますよね。Jin Doggとの曲とか。チルっていうのは徳利さんとの曲とかに力入れてたってことですかね。

- あれはビデオにもなってますしね。 粗悪さんは最近徳利くんのYouTuber活動もサポートしてますよね。

KM - チャンネル登録してます(笑)ウケたのが、アップロード本数ゼロなのに700人近くがチャンネル登録してて。

粗悪ビーツ - 期待されてるけど最近あんまりやってない(笑)。

KM - 「無職で過労死」って言ってたのに(笑)

粗悪ビーツ - 「徳利さんがこれで流行らなかったら死んでもいい」って言ってるから、「じゃあちょっとYouTuberやろう」と。

- アルバムに徳利くんを入れようと思ったのはどうしてですか?

粗悪ビーツ - そう言われるとなんでだろう...。前から知ってはいたけど接点があるようで無かったので。これ覚えておいてもらいたいんですけど、俺が「元祖インターネット」で。厳密には「元祖ネオインターネット」なんですけど。iPhone出来てTwitterが始まったばっかりのときに、音楽始めたりとかネットにアップするのを知り合い居ない中でやってて、徳利さんもちょうどそのタイミングで。徳利さんはすぐに人気が出たから、僕の歴史が消されたとずっと言ってるんですけど。そういうのでずっとレベルの低い戦いをしてて(笑)徳利さんどういうわけかSoundCloudに5曲くらいのEPを出してて。ポエトリーリーディングから急にラッパーになってたから、せっかくだから「頼んだら可能性20%くらいやけど良い曲になるかな(笑)」と思ってたらすごくちゃんとしたのやってくれたから。

KM - しかもあの曲「めちゃくちゃ長い」と思って(笑)

粗悪ビーツ - ツボイさんも驚いてたんですよ。「なんでこんないきなり出来るようになるの」って。

- 徳利さんにはどうなってほしいんですか?

粗悪ビーツ - 「売れなかったら死んでもいい」って言ってたくらいなんで、とにかく売れてほしいんです。あんだけみんなからワーワーやってもらえるんやから、なんとか人生変えてもらいたいですね。

- 必要なことはなんだと思いますか?

粗悪ビーツ - 動画の更新!

KM - (笑)でもYouTubeってラッパーが有名になる手段ですよね。

粗悪ビーツ - それこそね、レペゼン地球のことをラッパーて言う人もいるくらいで。何がラップなのか分からないけど。徳利さんは手段を選ばなくても良い人だと思うんで、とにかく「テキーラ一気飲みします」みたいなことから始めて欲しいですね!

KM - この間も徳利さんがステージ立ったらみんな大爆笑してましたからね(笑)

粗悪ビーツ - 徳利さん喜びますよ・・・。アルバム作るって言ってて全然出来てないんですけど。本当は2018年に出すって言ってたんですけどね。僕みたいな芸名の人と仲良くしてくれる人にはみんな幸せになって欲しいんですよ。僕で助けられるもんがあればなんでも言ってくれと。若いラッパーの子でも、僕でよければなんでもしますっていうのが粗悪興業スタイルです。

KM - このアルバムで粗悪さんが一番気に入ってる曲はなんですか?

粗悪ビーツ - 一番周りのこととか気にせず好きに作れたのが徳利さんの“ELIZA”。Jin Doggさんの“Fall”は元旦の日に「亀田大毅に勝ったら1000万」観ながら作ったんです。前日に「朝青龍に勝ったら1000万」も観てたんですよ。朝青龍の思いに感動して、ちょうどその前くらいからたけしの『ソナチネ』のサントラばっかり聴いてたんですよ。これを融合させるしかないと思って。元旦から作ってて、煮詰まったら大毅観て、また作ってっていうのを30分くらいやってたら出来たんです。だから思い入れがあるんですよね。

KM - トラックってどれくらいで出来るんですか?

粗悪ビーツ - そんなすぐに出来ないんですよね。出来るときはパッと出来るんですけど。平均的に1週間、2週間かかるかもしれないです。

- KMくんは早いですよね。

粗悪ビーツ - あっ、話題になってますよ。KMさんの早すぎ問題。この間もね、アチャカさんとか汁太郎さんとシャケさんと忘年会したときに「みんなストックどないなってる?」って聞いたら、みんな「あんまり・・・」って言うんで、もっとね、「解明したらあるはずや、KMさんあんだけ出来てるんやから!」っていう話をみんなでしてたんですよ。

KM - (笑)集中したらめっちゃ早いです。3、4時間でEDMだろうとダブステップだろうとやっちゃって、次の日に微調整。絶対2日で出来るっす。 集中するまでが、「やんなきゃなあ」ってなるまでが凄いあったりするんだけど。最近はもうミニ四駆ばかりやってる(笑)

粗悪ビーツ - 大人の趣味としてのミニ四駆が今流行ってるらしいですね。

KM - 結構気持ちいいっすね、大人がみんな純粋な気持ちでやってて。6時過ぎたら仕事帰りの人が入ってきて、みんな背広のまま「シャーッ、シャーッ」って(笑)みんな本当にガチで。あれはDTMに通ずるオタク感ですね。自分のセッティングがあって。たまにスピーカーの真ん中に三角錐を置くみたいな。

- 粗悪さんはそういうジンクス的なものはあるんですか?

粗悪ビーツ - いや、ジンクスが無いから人にインタビューして聞いてたんですよ。dodoちゃんが「新規プロジェクト立ち上げろ、一から全部初期化して新規作成しろ」って、それやるとさっぱりするからっていうので。僕も効率化を図りたいんで、ライフワークとして色んな人のジンクスを収集していきたい。

- でも、粗悪さんは前の徳利さんのラジオに出てた時に「基本的に機材とかにはこだわりたくない」って言ってましたよね。

粗悪ビーツ - こだわりたくないっていうか、元々詳しく無いのに勉強しても勝ち目も無いし。それだったら出来る範囲で楽しくやりたいんですよね。これは課題でもあるんですけど、芸術として心を豊かにする時間としての作曲はすごい好きなんですけど、それ以外のものになると自分は興味がパタッと切れちゃって。ミキシングのこととかも眠くなってきたりするんで、それをちょっと2019年は変えていきたいんですよ。

KM - 凄いなと思ったのが、粗悪さんは全くレファレンスが見えないんですよね。僕結構言われるんですよ、「Mura Masaみたい」とか。実際好きだからいいんですけど。ただ、粗悪さんのは全くそれが無い。

粗悪ビーツ - それがコンプレックスでもあるんですけどね。

KM - でも今の話聞いてて、「楽しんでる」っていうのは凄いなと。

粗悪ビーツ - 楽しんでやってるだけなんで、他の方とはちょっと角度やレベルが違うなっていうのは思いながらやってますね。それこそ、みんなちゃんとレベル上げること意識してるじゃないですか。僕もそういうのにちゃんと参入しなきゃいけないなっていうのは常に考えてますね。ガラパゴスになってしまってないかいつも自問自答しています。というのもシーンの足を引っ張ってしまってるんじゃないかと心配なんですよね・・・

KM - いや、ガラパゴスにはなってないですよ。このまま行った方がいいと思いますよ。

粗悪ビーツ - じゃあ考え変えます!KMさんからOK出たから!

KM - レファレンスが見えないから、全くタイプビートっぽくない。僕は色んなの聴いて複雑に考えちゃうタイプだから、出せないシンプルさがある。

粗悪ビーツ - 魂が救われました・・・言わないけどコンプレックスなとこだったんですよ。ヒップホップシーン的なものに距離があるというか、みんなとスタンスが自分だけ違うっていうのはわりかし意識はしてたんですけど、今日でこれでええんやって分かりました。昔ツボイさんとOMSBさんに「このままいけ」って言われたけど若干半信半疑やったんですよね。「ほんまにこれ信じてええんやろか(笑)」って思ってたけど、今日第三の証言が出たので救われました。

- 逆に粗悪さんはKMくんのトラックの凄さってどこらへんだと思いますか?

粗悪ビーツ - コードにぴったりのメロディ付けてる時点で凄いと思ってるんですけど、技術とかそういうのを含めて全然違うレベルにいるなっていうのを痛感させられるのが一番ですね。

KM - 結構コンプレックスで。自分の中から出てくるメロディが無いんですよ。Bandcampとかをまず聴いて、「俺だったらこうするな」みたいな。リミックスじゃないけど、一個インスパイア元がないと始まらなくて。どうしてもレファレンスがあるので、0から1が出来ないんです。僕みたいなタイプは、それを隠すように技術面を上げていかないと評価されないんですよ。粗悪さんは聴いてて天才肌だと思う(笑)

粗悪ビーツ - ほんともう今日は来て良かったと思うんですけど、でもKMさんの方が凄いです。技術でカバー出来る方が。だってベートーベンって技術ありましたからね。そういうことですよ。ベートーベンが僕みたいなやつだったら歴史の教科書には載ってなかったってことを覚えておいてもらいたい。0から1に出来るのはA-Thugさんだけですからね!

- ビートメイカーがラッパーを集めてアルバム作るのって中々日本だと少ないですよね。一番大切なところはどこだと思いますか?

粗悪ビーツ - ラッパーの人って自由な人が多いから絶対変なトラブルは発生するんですよ、音信不通から始まり。そこに根気よく耐える、そこでバタバタしちゃうとこっちも精神が乱れるんで。

- メンタル面が大事なんですね。

粗悪ビーツ - ラップのアルバム作ると結構色んなことあるんやなっていうのは思いますね。

KM - 僕はそれを出来ないから今回はKLOOZに任せた。僕が直で連絡とってたのはそんなにいなくて。半分くらいはコンタクトして、それ以外の若手はKLOOZにやる気がある子を連れて来てもらって。特に僕のなんて若手が中心だったんで、あんまり話聞いてくれないっていう。こう言っちゃなんですけど、やっぱり大事なのは人脈(笑)

粗悪ビーツ - コンプレックスがあって、まず芸名間違えたなって思ってます。

- そこ?(笑)

粗悪ビーツ - 共演する人が恥ずかしいじゃないですか。BAD HOPのVingoさんと前にT.R.E.A.Mのコンピで曲作らせてもらった時に、BAD HOPさんのアカウントがちゃんと僕の名前書いてくれたから嬉しかったんです。けど、ちょっと自分の芸名やりすぎたなと思って(笑)。自分でも言うの恥ずかしいですもん。もっとちゃんとカッコいいのにしておけばよかったっていうのは結果論ですけど(笑)。最初はあれじゃなかったらダメだったとは思うんですけど、20代とかのガンガン行くぞ!って感じの人が、粗悪ビーツって名前出すの恥ずかしいと思う(笑)結構「申し訳ないな」って感じで接するようにしてます。「僕で手伝えることがあったらなんでも言ってね」っていう謙虚な気持ちを心がけてますね。

- アルバムのアーティストは自分で声をかけたんですよね。

粗悪ビーツ - はい、汁太郎さんに間持ってもらったことがあるんですけど、基本的には直接で。JIn Doggさんは最初は絶対断られると思ったからやめようと思ったんですけど、参加してくれてるYoung Celebくんが1人でシカゴ行ってDJ Kennさんにアポとって曲録ってきたって言うんですよ。それ聞いて「負けてられへんな」って鼓舞されて、思い切ってクリスマスの日くらいにお願いして、OK頂いたっていうのがあって。だからYoung Celebくんのおかげですね。アルバム作る上で、皆さん色々と苦労があるんだなっていうのが分かってよかったです。

KM - 結構あるんですよね、誰と誰が仲悪くて一緒にやりたくないとか。それでやめようかと思ったもん(笑)絶対間に合わないみたいになって。泣く泣く諦めた人も多いし、次の機会にって流した人も結構いる。「次オファーします」って。でもキツかったなあ、思い返すと。

- コミュニケーション以外でキツかったところはありますか?

KM - 僕の場合売らないといけないアルバムだったし、会社が絡んでたっていうのがあって、ぶっちゃけリミッターかけたところがありますね。クラブでかけられないといけないし。本当はA$AP RockyとかLil Peepがやってるようなもっとバンドサウンドにしたかった曲とかもあって。トラップがロックに寄った時点でトラップボーカルのオケだけロックにしたら面白いだろうっていうのは誰もが気づいてたんで、それを日本で最初にやろうと思ったんですけど、勇気がまだ無かったっすね。早すぎるのもちょっとなと思って。そこら辺のバランスは苦労しましたね。あとはラッパーがついてこれないっていうのが凄い多かったので、今作り直してるっすね。

粗悪ビーツ - でも最初に送って、後から変更出来るっていうのはKMさんならではですね。僕は多分リミックスだったらもっと時間かかったと思うんで。

KM - 僕はリミックスから入ったから。

粗悪ビーツ - 2019年の課題はリミックス。僕は今回のアルバムはほとんど自分で構成も編集もしなかったんですよ。構成とか考えるのが苦手で肩の力入っちゃって逆に悪くなるから、初日に出来たラフのままアルバムにしてる。本当はちゃんとした方が良いんかなと思いつつ、消えてしまうものがある気がして出来ない。

KM - あんまり構成つけるとラッパーの人がついてこないんですよね。僕は最初は展開作らないで渡して、その後で好き放題入れる感じです。粗悪さんのアルバムは変な意味で捉えて欲しくないんですけど、聴いてたらマジで死にそうになって。トラックじゃなくて、ラップの内容が結構重いじゃないですか。徳利さんのは女性に対してのコンプレックスがゲットーな雰囲気を醸し出してるし、Jin Doggはストリート寄り。Onnenさんは結構働いてる方なんだろうなって予想出来るリリックというか。俺もそういう辛い時期あったからそれがめちゃくちゃキツくて。

粗悪ビーツ - Onnenさん色んな人悲しませてるんやなぁっていうのが(笑)Onnenさん好きやって言ってくれる人も何人かいて。

KM - めちゃくちゃリアルだなっていうのが。“Money”とかすげえシンプルに“稼ぎ方知らない 使い方知ってる”っていうのが「めっちゃ分かるこれ」って思って。

粗悪ビーツ - Onnenさんって嘘をリリックでつかないんで全部現実なんですよ。こういうの発表できるのウチしかないんで、Onnenさんは大事にしてるって感じですね。

- リリックは特にテーマとか与えてないんですか?

粗悪ビーツ - 1stはめちゃめちゃこだわってたんですけど、今回は全くこだわらなかった。50%の理論じゃないけど「結果どっちかや」っていうんで、Onnenさんも「曲聴いて感じたもん出して」って言ったらあれになった。Onnenさんもラッパーぽくなりましたよ。僕がそれこそちょっとトラック修正して送ったんですよ。ハイハットとか直して送ったらOnnenさんから「ちょっと力入り過ぎてて嫌」っていうラッパーぽい注文が初めて来て(笑)“Money”のトラックは自分でもちょっと恥ずかしいなと思うぐらい適当なまま出してるんですよ。

KM - Dekishiさんは元々グライムシーンなんですか?

粗悪ビーツ - そうですね、元々グライムシーンで。

KM - 粗悪さんはグライムは意識してないんですか?

粗悪ビーツ - 全く意識してないですね。僕はグライムのトラックは出来なかったんですよ。ベースラインを作ったりとか。メロディだけは出来るんですけど、ベース主体で盛り上げたりするのは完全に才能死んでて、そこは諦めてますね。Dekishiさんはやってる手法はグライムなんですけど、最近はほとんど聴いてないみたいで。だからDekishiさんにもラップのトラック作ってますね。

KM - シンセサイザーとか結構トランシーなものが多いから不思議な感じがしますね。テクノ寄りっていうか、ダンスミュージックの音がトラップに混ざってたり。全然意識してないと思うんですけど。

粗悪ビーツ - 恥ずかしながら全くですね(笑)Logicのプリセットで入ってるのだけ使ってるんで。KMさんと同じDAWを使ってるのにこうも違うんやなっていうのは...全く同じの使ってるのにすごい違うのが出来上がるもんやなって。

KM - それ言ったらCalvin HarrisもLogic 10だから(笑)初めて作るトラックってプリセットで作って、トレンドを意識して色んな小細工して、なんとなくアトランタのトラップに近づけて面白くなってくっていう人が結構いると思うんですよ。粗悪さんのはマジの初期衝動っていうか。

粗悪ビーツ - 6年やってるんですけどね(笑)ヒップホップの人は殆どみんなFLを使ってるのに、KMさんがLogicを使い続ける理由をずっと聞きたかったんですよね。ちなみに僕は安かったからです。

KM - いや、それもあるっすね。僕はたまたまLogicだったっていうか。トラップがウワッて来たときにDTMやろうと思ってたら俺もFL使ってましたね。その前からやってたから、やっぱDTMにもトレンドがあるっすね。

- 今日本で注目してるビートメイカーはいますか?

KM - YamieZimmer。あいつ本当やべえ、マジで。多分一曲あげるの僕より早い。「30分とか~」とか言ってて(笑)超イルですよね。

- YamieZimmerはビートメイカーとしてはKMくんから対極といえば対極ですよね。

KM - 僕にはああいうの出来ないもん。僕は憧れにChaki Zuluさんがいるから、色んな音楽が出来てステージも広げて、ポップミュージックも作っていきたいし、ビジョンがあるから技術を磨いているっていうのはありますね。YamieZimmerみたいなのがボーンと出てくるのはすごい良いと思う。この間のFNMNL The Partyのときも凄かったっすね。存在感が。隣に立ってるだけで全く首振らないっていう(笑)

粗悪ビーツ - 僕は日本やったらCherryさん(=Lil'Yukichi)が手がけたGoblin Landの“KANSAI SEKAI”のトラックが凄い好きで。あとはトラックメイカーとしてのdodoちゃんですね。ちょっと話逸れますけど彼もLogic使ってて、「粗悪さんが1人でLogic使ってるの見て僕も出来ると思いました」と言って頂きました(笑)最初は本人もヒップホップ作るのはFLしか無理だと思ってたんですよ。というのがあって、勇気付けられたっていう話をしたいだけなんですけど(笑)dodoちゃんも今Logicで作ってて。でも独特でしょ?

KM - 変だし、展開あるっすよね。

粗悪ビーツ - あれ全部鍵盤で弾いてないんですよ。マウスをクリックして作ってて。あんな器用なことようやるなと。だからトラックメイカーとしてのdodoちゃんを好きで聴いてましたね。dodoちゃんを見てるとラップも自分でできるのは本当羨ましいなと思いますね。tofuさんもそうですけど、トラックメイカーの人が自分でラップしてライブしてるのがめっちゃ羨ましい。

- 実際歌ってみようと思ったことは無いんですか?

粗悪ビーツ - 僕は全く無いです。

KM - 自分で仮歌録りますよ。自分のアルバムの第一声が俺じゃないと気が済まなくて。あのスクリューボイスは僕なんですよ。

粗悪ビーツ - あ、でも僕もよう考えたらやってたわ、ラップ。1stアルバムで、名前と声変えてやってました。でもあれで自分才能ないなって分かったんで。

KM - トラックにエッセンスとして入れたりしないんですか?結構裏声で足りないとこ入れたりとか。

粗悪ビーツ - 全然そんな発想なかったですね。人に頼むと、もちろん良いのは上がってくるんですけど「自分ならもうちょっとこうした」とかはゼロではないと思うんですね。それを自分でやれるっていう羨ましさはあります。

KM - 締め切りギリギリまで出来ますもんね。

粗悪ビーツ - だからdodoちゃんのスタイルは理想だと思いますね。ビデオも自撮りで撮って、なかなか出来るスタイルじゃない。オフラインミュージックっていうのを標榜してて。誰とも繋がらないっていう。

KM - dodo募金みたいなのありましたよね。いちいち愛されてるから。

粗悪ビーツ - 羨ましいですね、ああいう好かれるキャラみたいなのは。

KM - dodoくんとかMinchanbabyさんとか、めちゃくちゃスキルフルで表現したいこともあるのにちょっとアンダーグラウンドじゃないですか。やっぱりTaeyoungBoyとかとは違うし、そこら辺のイライラが伝わってくるのは結構好きですね。Jin Doggとかもリリックで「なんで俺じゃないんだ」「俺はテレビには映らない」ってあったり、アーティストとしてのイライラが見えるのは生々しくて俺はすごい好きです。

粗悪ビーツ - ミンちゃんはタフやなって思いますけどね。メンタルが不安定そうに見えて一番安定してるんじゃないかって思いますけど。やっぱりヒップホップのトラック作ってると年齢っていうのは考えるんですね。僕は始めたとき24だけど、もう31なんで。ECDさんもあの歳までずっとやってたけど、この先ラッパーはラッパーで歌うことを模索するじゃないですか。ミンちゃんはあんだけあったのが凄いなって思うんですけど。ヒップホップは基本的に若い世代が中心だし、その中で自分の立ち位置を考えるようになりましたね。考えて答え出るもんじゃないですけど。

KM - 考えてたけど、考えると病むから別名義にすればいいんじゃないかなって。誰にも、和田にすら言わないで「来年始めるっす」って。

- 既に別名義始めてるみたいなこと言ってましたよね。

KM - それはもう知られてて。業界だけ知ってればいいかなって。

- KMくんは、週末はEDMのDJをしてるからEDMに振り切ることも出来そうですよね。それはやりたくなかった?

KM - EDM好きなんですけど、あれは技術的に難しい。構成の話でいうと、このアルバムは全部EDMですね。ドロップがあって、ヴァースがあって、ドラムが抜ける部分があって。あれは全部EDMの構成です。

粗悪ビーツ - そういうことやったのか!確かにいつも聴いてる音楽と違って構成ガンガン変わってくなって。

KM - それを嫌うラッパーもいるっすね。「ドロップは自分で作る」とか。

粗悪ビーツ - それこそ「1ループにしてくれ」とかね。

KM - 多分なんですけど、そもそもヒップホップ以外に届けたかったので分かりやすく「ここがサビだよ」っていうのを曲として作りたかった。ドラムがドカンって鳴ったらそこがサビだよっていう。一回聴けば二回目のフックではどこがサビか分かるように作ったり。だからEDMの影響は少なからずある。DJ Mustardとかもそうですよね。最近はEDM枠だし。最近USだと誰を聴いてましたか?俺はBROCKHAMPTONでした。

粗悪ビーツ - 最近やとSki Mask The Slump Godです。僕一番好きでした、このアルバム。昨日の夜も聴いてて。Ronny Jがすごい好きなんですよ。

KM - 分かるっす。めちゃくちゃいいですよね。あとPost MaloneとLil Peepですね。Lil Peepはぶっちゃけ一作目の方が好きだったっすけど。そもそも冷静に聴けなくて、ありがたく聴けちゃうというか。っていうか2018年は死にすぎですよね、Mac Miller本当に残念だったな。ヒップホップだとずば抜けて楽しかったのがBROCKHAMPTON。ドラムンとか入ってて。

粗悪ビーツ - KMさんはお子様いるし、どういう時間の使い方してるんですか?

KM - 一応ギリアーティストだけで生活が回ってるんで、毎日やらなきゃなって気分でいるんですけど。奥さんが全部タイムスケジュールとか組んでて。家計とかも全部つけてくれてるから、自分のギャラが月いくら入ってきてとか知らないんですよ。だからある意味経済的な感覚が無いし、心配することもない。日本でヒップホップだけやると結構暗くなりがちだと思ってて。それだけだと食いにくいし、若い子は時間あるからどんどん出てくるし、戦いにくいっちゃ戦いにくい。だから精神衛生を保たないと。特に僕とかストレスに弱いタイプで、顔に出るし体調に出るっすね(笑)

- それにしてはよく毎週末DJするなって思いますよ。

KM - あれ本当真っ白な顔してやってるから(笑)

粗悪ビーツ - 健康が心配になってくる。tofuさんとか、よくみんな養命酒飲んでるっていうけど(笑)

KM - STUTSさんも養命酒飲んでますよね。 俺もやろうかな(笑)

粗悪ビーツ - いや、やったほうがいい。座ってるのは、体に相当負荷が多いらしいんですよ。だから養命酒飲まんとやってられんようになると思うんですよね。

- 筋トレはどうですか?

粗悪ビーツ - 筋トレは週2でやってますね。やらないと気持ち悪いとこまで来ちゃった。

KM - 気分転換にもなりますか?

粗悪ビーツ - オススメです。仲間増やしたいんで。体力つけるんやったら是非KMさんにもやってもらいたい。

KM - ミニ四駆もやってくださいよ(笑)そもそもジムに通うんですか?

粗悪ビーツ - 体育館に通ってます。月額のジムも良いっちゃ良いんですけど、行かなかったらもったいないから、一番近くの区営とか市営でやってる300円とかのジムに通ってます。ただ絶対に壁になるのが、モンスターみたいなムキムキの人が絶対一人くらいいるんですよ。そことの精神的な戦いがあります。僕が一時期行ってたとこはモンスター系ばっかりだったんですよ。ちょっと流石に嫌になって。「これちょっと精神的にしんどすぎるな」と思って。

KM - そこは負けたくないんですか?

粗悪ビーツ - 「今までトラック作るのが自分の人生の楽しみなのに何やってんねやろ?」って思って。ある日目覚めてやめました。なんの話やったっけ?

- 健康ですね。2人とも30代だし。

粗悪ビーツ - そうですね、ほんまに。あっという間の20代でした。

KM - 20代なんもやってなかったわ(笑)だからNormcore Boyzとか羨ましいっす。

粗悪ビーツ - そうそう。この間ライブを観て、「ラップでこんな青春あんねや」って(笑)全然住む世界違うなって。

KM - だって居場所なかったもんね、この間(笑)

粗悪ビーツ - こんだけラップも流行って来てるから、昔やったら20歳とかでみんなにキャーキャー言われるようなヒットの方法とか無かったから良い時代になったなと思いましたね。アングラでやってって、とかなら分かるけど、20歳ぐらいであんなにみんなにキャーキャー言われる存在に到達できるって。

KM - そもそも自分たちの時はラップシーンに女の子があんまりいなかった気がする(笑)スター級になればいただろうけど。若くてあんなに一緒に騒ぐような雰囲気は無かったっすね。あんな青春あんのかって感じです(笑)

粗悪ビーツ - 自分の出て来たとこを再確認させられましたよね。

KM - 元が違うんだなって(笑)

- でもNormcoreとかを今見て「あいつらなんだ」みたいに思ってる同じ世代の子たちに希望を与えられるじゃないですか。その当時はそうでも、今になったらCD出せてるわけだから。

粗悪ビーツ - じゃあそういう人たちに向けて、僕のメールアドレスに悩み持ってたら連絡くれと。そうやって若い子との繋がりを増やしていきますわ。

- 粗悪さんは若い子から連絡来たりしないんですか?「トラックください」とか。

粗悪ビーツ - 僕は全然そんなの無いですね。仲良くなって「一緒に曲作ろう」みたいなのはありますけど、見ず知らずの人は全然無いと思いますね。

KM - 僕はありますね。kiLLaやったのがデカかったっすね。Kvi Babaも19なので。Normcoreもリミックスとかやったりしたから、「教えてください」みたいなのも来るっす。

粗悪ビーツ - じゃあ連絡来た子には基本的に曲作ってるんですか?

KM - 基本的にはやってないっす。多分その子たちって俺に作ってもらえれば有名になれるって思ってるんですけど、「そうじゃないよ」ってちゃんと言ってます。今ギャラでいうと結構もらってるんですけど、誰かに払うより自分でやった方がすごい伸びるから。「やめたほうがいいよ、誰かの下には絶対につかない方がいいよ」って。(笑)

粗悪ビーツ - いい言葉ですね、万人に共通する。

KM - あと、ぶっちゃけもうあんまり他人の名義で出したくない。それもみんなに飽きられたら別名義でやればいいし。

粗悪ビーツ - 僕もDMが来たらKMさんみたいにカッコいいこと言えるか自信ないです(笑)「ええの?」って言っちゃいそう(笑)どんどん仲間を増やしていきたいんです。トラックメイカーの人の話色々聞けるのは勉強になりますね。

KM - 作ってるとき結構孤独ですよね。

粗悪ビーツ - どういうところに孤独を感じるんですか?

KM - 「評価されなかったらどうしよう」「バズらなかったらどうしよう」って。子供もいるからだとおもうんですけど、音楽業界って一個ミスったら結構尾をひくじゃないですか。一回ダサいの烙印を押されたら取り返すのが結構キツい。病みやすいっす、僕は。

粗悪ビーツ - でもこれだけKMさんは凄いところにいるってことでね。それこそECDさんの“Cutting Edge”を思い出しましたよ。凄いところにいるからそう思うって事だと思うんですよね。

KM - そんなことないですよ。いつも必死で作ってないと不安になるんですよ。

粗悪ビーツ - 僕は根底には「楽しいからやってる」っていうのがあるんで。あんまりそこら辺の悩みはまだ無いですね。でも上手く出来なかったときはストレス溜まって、「いっそのことやらなかったらええんちゃうか」と思うんですけど、Rhymesterの宇多丸さんが「こんなショボい映画なら観なければ良かったと思うけど、観てしまう」って言ってて。

KM - ランナーズハイですね。

粗悪ビーツ - 「売れなかったら」っていうのは考えますけど、コントロール出来ないところは考えないようにしてます。KMさん的には、「これがこのアルバムの中では一番人気出るだろう」と思ったのが意外に違う曲の方がヒットしたようなことはありますか?

KM - 本当はYDIZZYとの“Sureta Angel”がシングルカットされる予定だったんですよ。でも最後に出来たのが田我流さんの“夜のパパ”で、差し替えて。田我流さんは最後まで間に合うか分からなくて、スケジュール的に凄い忙しかったみたいで。ギリギリのところでやりとりしてたんですけど。

- イメージ的にKMくんが田我流さんとやるっていうのは、意外でしたね。

KM - 逆のことをやんなきゃなと思ってたんですよ。トラップシーンの人みたいな紹介のされ方を一時期されてたから、全然違う曲を提示した方が面白いんじゃないかって。常に逆のことをやろうっていうのがあります。僕の感覚だと、USはもちろん知ってなきゃいけないんだけど、世界標準を目指すなら日本語ラップを突き詰めた方がスタイルとして際立つかなって。そこは常に考えているんですけど、難しいですね。

粗悪ビーツ - KMさんは今回の作品で、歌詞の指示はしたんですか?

KM - したっす。「あんまり攻撃的にならないでくれ」って言って、あと「あからさまなドラッグ讃歌にはしないでくれ」っていう。あとビッチネタも生活の範囲内で。家族がいるんで責任が持てなくなるから、僕のアルバムではやめてくれっていう(笑)そこはちょっとコントロール下に置きました。

粗悪ビーツ - 最近思うのが、歌詞のテンプレみたいなの多いじゃないですか。自分が老害になったかなと迷うんですけど、ちょっと手癖で作りすぎじゃないかと思うことがあります。

- 「仲間」とか。

粗悪ビーツ - すごい迷うんですけど、似たような表現が氾濫してるのは課題の一つかなと感じます。

KM - そうすね。思うのが曲の出しすぎで言うこと無いんじゃないかなって。あと思うんですけど、Spotifyとかをサンクラっぽく使ってるんじゃないですか。もうリリースの感覚が違うと思う。

- 確かに、MVとかの感覚も違うだろうし。

KM - そもそもストリーミングの使い方が俺らと違っていて。僕はダウンロードしてオフラインで聴いてるんですけど、若い子はパッと思いついたのをクラウドで引っ張ってくるっていうイメージだから、作品の感じ方がもう違うっぽいっすね。まだ結果が出てないからなんとも言えないですけど。

- それで結果が出たらごめんなさいっていうか、「こっちが古かったです」って言う他ないですけどね(笑)でもまだちゃんと作った人の方が良い作品になってる傾向を自分は感じるから。

KM - USとか見ててもそう感じますよね。だから粗悪さんみたいな、独特な立ち位置でアルバム出すのがそのまま行った方が良いっていうのはそういうことですね。

粗悪ビーツ - そういった意味では孤独ですけど、このまま頑張ります。

KM - でも、そこに賛同した人は本当の仲間ですよ。 さっきの話に戻りますけど、YamieZimmerくんとかこれから来る気はしますね。あと今年だとフリースタイルの方がトレンドを知り出したっていうか、バトルじゃなくて作品に向かった年なんじゃないかって。ああやってラップの基礎体力のある奴らがキャリアを考えて言葉を選べるっていうか、あんまり詰め込むと持たないじゃないですか。USのキャリアの積み方っていうか、抑えるところを抑えるのを計算できるようになるとすげえ強いんじゃないかなって。

- TRASH ODEとか元々バトル出身だけど全然バトルっぽくなくて、面白いですね。

KM - バトルっぽくないですよね。やっぱりフリースタイルダンジョンが流行った合間にライブ入れたりっていうのが少なからず影響があったんでしょうね。もちろんただ単にUS聴いてる子が増えてるっていう気もするんですけど。今年は日本語ラップ一番面白かったかな。去年も面白かったですけど。

- 裾野が広がったっていうのはありますよね。

KM - さっきのGoblin Landみたいな究極もあるし(笑)Shurkn Papのトラック選びも面白かったですね。

粗悪ビーツ - しかも東京だけじゃなくて地方であれだけ。

KM - でも今年一年でやってる人は気づいたと思うんですけど、もうType Beatじゃダメだっていう。

粗悪ビーツ - なかなか気づくの難しい気もしますけどね。

KM - いや、気づいた人が来年伸びるっすよ。

粗悪ビーツ - 来年は2ndですか?僕は基本的に今まで行き当たりばったりで来たんですよ。毎回やった後何かしら出会いがあってまたそれで繋がるみたいなのが続いてたんでもう縁任せみたいなとこあるんですけど、年明けは最近仲良くなったItaqくんのEPとYoung CelebくんのEP出して、Dekishiさんの2nd出してという感じです。それ出した後は何も考えてないです。

KM - しばらくミニ四駆かな(笑)夏までに2nd出したいんですけど。トラックはもうあるんで、後は人を集めて、どうせ集め出したらトラックも古くなるから作り直して。もうちょっと曲数減らそうかな。通してみんな聴く時間無いっすよね。でも粗悪さんのアルバムは通して聴いてみて次の曲に繋がる細工がしてあるのすごいですね。

粗悪ビーツ - ああ、それはツボイさんが昔からやってるやつです。1stは勝手に入ってて、今回は「どうする?」って言われたから「やります」って言って、僕が適当に作ったのを渡してやってもらった感じです。全部Apple Loopsからパクりました。

KM - Type Beatだと出来ないですよね。次はそういうのもやってみたいっすね。

- それぞれ来年の目標はありますか?

KM - お子さんですか?

粗悪ビーツ - それはまだちょっと...(笑)今年の中旬に引っ越し予定なのでそれまではバタバタしてしまうので、でも正直だんだん子供欲しいなって思うようになってきましたね。KMさんお二人もお子さんいらっしゃいますよね、だからちょこちょこ今後は助けてください(笑)子育ての一歳二歳のときみんなどうしてるかっていう情報を今集めてるんです。

- 子育ての肝はなんですか?

KM - 好きな仕事をやることですね。何かあっても文句言えないじゃないですか、好きなことだと。会社員やってて食えなくなったら会社のせいですけど、食えなくなったら俺のせいなんで。俺の場合もう自分の会社みたいになってるんで、文句言えないから子供にも愚痴が行かないというか。家庭に愚痴が行かないんですよ。

- 怒ったりはしないんですか?

KM - 怒ったりはしますけど、変なストレスをぶつけない。本当に仕事が無理だったんで。興味があることしか覚えられなくて、言われたこととか全部抜けてっちゃって。粗悪さん仕事も好きっておっしゃってましたよね。

粗悪ビーツ - だんだん好きになってきましたね。昔は「この社会は腐ってる」と思ってたんですけど、考えも変わってきましたね。

KM - 僕の場合そのレースから外れた人間なんで。

粗悪ビーツ - 休みの日は何してるんですか?

KM - 休みの日ミニ四駆やってます。

粗悪ビーツ - 週末DJでしょ?お子さんが休みなの週末じゃないですか。

KM - クラブ終わって遊んだりしないですからね。5時ぴったりに店出て、なんなら客より早く帰る(笑)だから始発で7時には家にいるんで、寝て10時くらいに起こされてもそこまで。昼寝はみんなでするし、疲れないですね。会社員やってると、月曜に疲れが溜まってると悪循環なんですよ。だから月曜休日のパパDJ多いですよ。

粗悪ビーツ - ほんと子供は考えてしまいますね

KM - 話が深くなりすぎる(笑)

粗悪ビーツ - 昔は自分みたいなの増やしたら社会に迷惑やと思ってたんですけど、ちょっと色々変化はあったかなっていうここ数年でしたね。

KM - ご結婚された方ってみんな明るくなるんですかね?

粗悪ビーツ - 性格はだいぶ奥さんの方に寄って来ましたね。

KM - 多分なんですけど、漠然と「これで一人で死ぬことがない」っていうのが芽生えるからですかね。それで鬱治った友達とかいるんで。暗いなー、話が(笑)

粗悪ビーツ - 来年はDekishiさんの2nd出すまでは音楽は続けて、その後は本当にノープラン。もしかしたら格闘技始めましたってインスタのライブやってるかもしれない、興味が凄いあるんで。メルマガは、来年から「ECDIARY」パクろうと思って「SOAKUDIARY」始めようと思って。登録者はあんま変わってない、500人くらいですね。地味にちょっとずつ増えて。soakubeats@gmail.comまで「粗悪興業通信送ってね」と書いてメールお待ちしてます!

KM - 俺も登録しよう。書籍化あり得るっすね。

粗悪ビーツ - あんなECDさんの文才には程遠いですけど。本当につまらないです。しょうもないことしかやってない。

KM - 来年何しようかな。アルバム出したいし、結構アイドル曲のプロデュースも増えて来てるんで。そういう外部仕事を名前出して増やして、来年ぐらいには別名義で曲を作って、それをバズらせるのが夢です。で、FNMNLが知らずに取り上げたら教える(笑)「これ、俺だから」って。

- ありがとうございました。

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