暴力や殺人をテーマとするギャングスタヒップホップのジャンル、UKドリルシーンのミュージックビデオ30本がYouTubeから削除されたというニュースが先日報道された。様々な動画投稿サイトで規制されたUKドリルは、代わりに規制のゆるいアダルト動画サイト『Pornhub』に次々と投稿され始めたとのこと。
ドリル・ミュージックとはシカゴ発祥のヒップホップジャンル。シカゴの治安の悪さに影響を受けた暴力的な歌詞が特徴であり、暴力や殺人、実際の事件などをテーマとしている。2010年頃から10代のラッパーを中心に広まり、アトランタのトラップミュージックや世界各国のシーンに影響を与えたと言われている。その人気はロンドンにまで渡り、独自に進化したUKドリルシーンが盛り上がりを見せていた。
しかし先日、暴力的な表現があるという理由でロンドン警視庁の申し立てによって30本のUKドリルの映像が削除されてしまった。Youtubeだけではなく、他の動画配信サイトからもバンされている。
この措置を受けて、ファンやアーティストはUKドリルの映像をアダルトサイト『Pornhub』に投稿し始めるという動きを見せた。規制のゆるいPornhubであれば暴力的な表現を含むUKドリルの映像であっても、なかなか削除されないと考えたようだ。
Pornhubを始めとするアダルト動画サイトは、版権に厳しいYoutubeなどの動画監視システムとは異なる方法で動画を監視していることが削除されない理由だという。
アダルト動画以外の動画がPornhubに投稿されるのは大変めずらしいのだが、音楽を投稿されたのは今回が初めてではない。2016年にKanye Westが『The Life of Pablo』をTIDAL限定で配信した際も、定額制のストリーミングサービス以外でアルバムを聞きたいと考えた何者かがPornhubにフルアルバムを投稿した。
さらに以前、PornHubはオリジナルのレコードレーベルを立ち上げ、サイトのテーマソングを募集するコンテストを開催したこともある。審査員はT-Painなどを始めとする豪華アーティストやプロデューサーであった。
当時、PornhubのPR担当であるMatt Blakeは「Pornhubの開始当初から強い音楽の存在を目にしてきた。自分の音楽をPornhubに投稿するアーティストたちがいるんだ。無修正版のトラックやR-指定バージョンの歌詞のものをね。エクスクルーシヴなミュージックビデオを限定配信することでバズっていた人もいる」と語っている通りPornhubと音楽は以前から密接な関係を持っていた。今後、規制される可能性のある音楽はPornhubに投稿されるのが主流になるのかもしれない。
UKドリルの人気クルー、1101のミュージックビデオはさっそくPornhubに投稿されている。
https://jp.pornhub.com/view_video.php?viewkey=ph5af753cc1d31d
しかし1101は音楽活動が警察によって禁止に追い込まれているため、Pornhubからも削除される可能性がある。ロンドン警視庁が削除を申し立てた場合Pornhubがどのように対処するのか注目である。