プロデューサー・ラッパーのNeetzが10月にソロとしては6年ぶりのアルバム『Story of 991』をリリースした。KANDYTOWNの終演後に、一度音楽制作から離れてしまったNeetzだが、仲間の励ましもあり制作を再開させ、作り上げたのが本作だ。前作『FIGURE CHORD』は多くのゲストアーティストを招いていたが、今作はゲストはYo-SeaとMALIYAのみ。全てのバースをNeetz自身がラップしている。
制作から距離を置いていた時期を経て再び音楽へ戻っていく過程が、そのまま作品の背骨になっている。自分のビートに自分の声を乗せるというシンプルな積み重ねを何も考えずにできたという、作品について話を聞いた。
取材・構成 : 和田哲郎
- 今作について全体的なところから伺いたいです。『Story of 991』はソロアルバムとしては6年ぶりの作品ですね。これまでの作品も、もちろんNeetzさんのラップは入っていましたが、今作はゲストも少ないし、バースは全部Neetzさん自身が担当して、ラッパーとしての自身にフォーカスした内容ですが、最初からそのようにするつもりでしたか。それとも、成り行きでこのようになったのでしょうか。
Neetz - どちらもあります。武道館公演が終わった後に、一時期、燃え尽き症候群的なものかも知れませんが、しばらく音楽から離れた時期もあったので、今作まではかなり時間が空きました。どうしようかと思っていたときに、いろいろな周りの人に声掛けてもらい頑張っていこうという感じになって。それから引っ越しして、自分の事務所兼スタジオのような所を借りて活動できるようになったので、徐々に制作を再開してきました。少し話が長くなります。
- もちろん大丈夫です。
Neetz - 最初は、自分が表に出てラップすることは全く考えていませんでした。徐々にビートテープ的なものや、誰かをプロデュースしようという感じでビートを作っていました。何曲か他のアーティストにも提供しましたが、誰かにビートを作って提供するだけだと物足りなくなってきて、そこから自分も声を入れようと思いました。自分のビートにラップを当てはめていくと、割とうまくできたという事が続いたので、客演も何人か入れようかと考えたんですが、どうせなら自分一人の世界観で作るほうがいいと思いながらやっていると、こういうアルバムになった感じですね。
- ありがとうございます。後で聞こうと思っていたのですが、KANDYTOWN最後の武道館公演が2023年でした。2023年はいろいろなプロデュースワークも出ていましたが、Neetzさんのディスコグラフィー的に、2024年はプロデュースしている曲もほとんどありませんでした。
Neetz - 2023年の10月にここを借りてから、徐々にビートを作っていたのでこもっていた状態だったと思います。アーティストとして、KANDYTOWNは自分の全てだと思うぐらい本気でビートを作っていたので、その時期くらいまではKANDYTOWNが終演を迎えたことで、一回糸が切れて制作から離れていました。
- 先ほど、周りの人から頑張っていこうという話があったと言っていましたが、それ以外に、復活していく要因としてどのようなものがありましたか。
Neetz - メンバーをはじめ、何人かに声を掛けてもらいました。Ryohu、KIKUMARU、KEIJU、IO君たちは、家にも遊びに行くようになりました。KEIJUは、「Neetzには本当に音楽しかないんだよ」みたいに言ってくれて、2024年のツアーに客演で呼んでくれて。そのライブに呼んでもらったことが、かなり大きかったかもしれないですね。大阪のKEIJUのライブではJくん(JJJ)もいました。『Wind Rise』のJくんの歌詞がすごく好きで。大阪ツアーに連れて行ってもらったことがとても大きかった気がします。
- 久々に人前に立ったからですか。
Neetz - そうですね。
- 今の話を聞いて、今回の作品の輪郭がすごくはっきりしました。今回の作品は、Neetzというソロアーティストがゼロから立ち上がっていく様を、リリックからも感じられます。そのようなモチベーションで作っていった感じですか。
Neetz - アーティストとして曲を作ってラップをしているうちに、自分がプレーヤーとしてやるという気持ちになりました。自分の力を限界まで試して作っていった作品になったと思っています。
- 復活して最初に作ったのはどれですか。
Neetz - 最初は"Tokyo Rain"です。ビートを作りながらラップを入れることは全くなかったので、作りながらサンプルをすぐに選びました。ドラムをはめ込んで1ループできた時点で、ワンヴァース入れてみようということになりました。ワンヴァース入れてみると、結構いい感じでリリックもすぐにできて、ヴァースもはまりました。そこからフックもできると思いながら作っていると、ワンヴァース、ワンフックと、一気にできたので、いい曲になりそうだという手応えがあったことは覚えてますね。
- 感覚的な部分として例えば半年ぐらいラップとビートメイクを休んでいても、またやろうと思えばすぐにできるものですか。リハビリ的な部分が必要ですか。
Neetz - ビートもラップも、どちらもリハビリが必要ですね。しばらくやってなかったのですが、スタジオを引っ越してからビートはいくつか作っていたので、それほど苦労はしなかったですね。ラップの部分は、多分KEIJUのツアーに連れて行ってもらい、人前でラップしたことで火が付いて、できあがったと思います。
- 休んでいる前と休んだ後では、プロデューサーとして、またはラッパーとしてまた新しい自分になれた感覚はありますか。
Neetz - ビートの面では、求めている音像にずっと納得いっていなくて。KANDYTOWN『LAST ALBUM』のときは、できたかなぐらいでしたが、それでも全然納得できていませんでした。ミックスもツボイさん(Illicit Tsuboi)に依頼したのですが、ツボイさんがいたからこそ成り立つ感じでした。その後は、ずっとここでビートを作っていて、周りの人に聴いてもらっても好評だったので、ビートの面では、自分が求めている音像ができるようになってきました。ラップの面では、武道館公演後は精神的にも一皮むけた感じがしていて、自分がやっていないようなラップの乗せ方も試してみると案外できたので、そういう変化はありましたね。
- 説明するのは難しいと思いますが、ビートの面で、理想の音像はどのようなものですか。
Neetz - 音像が立つみたいな瞬間があるんですよね。それが一つで、前からできるようになってきましたが、そこからもう一歩先を考えると、普通にこの曲を世に放っても大丈夫なものか、これではまだ足りていない、人々の体や頭が自然に揺れるような、首が触れるようなビートでなければ駄目かなと思って。それができているのが理想のビートなのかな。
- そういう意味では、このアルバムの中で最も理想に近い、ビート的によくできたのはどの曲ですか。
Neetz - ビート的によくできたのは"Ray"や"Live Forever"かな。
- 音が立っているという話を聞いて、このアルバムの中では自分もその2曲のドラムの感じが、まさに立っているなと思いましたね。
Neetz - "Twelfth"もドラムがいい感じに音が立っていて、ヒップホップ感が出ていると思っています。"Ray"に関しては明るくて、割と幅広い感じで聴けるものになったと思います。
- アルバムから少し話はそれますが、Neetzさんがビートメーカーとしてデビューして以来、プロデューサーの環境もすごく変わってきています。例えば、Spliceなども出てきています。その辺りで、Neetzさんご自身で何かアップデートした部分はありますか。
Neetz - 機材はそれほど変わっていないんですが、環境を変えたことで自分が集中できる場所を得られたことは大きいです。サンプル系に関する変化としては、Spliceではないんですが、サンプルパックは使うようになりましたね。以前は全然使いたくない感じでしたが、かっこいいサンプルがあればどんどん使っていこうという意識になって。自分でラップするので、かっこいいサンプルも、潔くかっこいいものは使ってしまおうという気持ちの変化です。もちろん、サンプルを使わずに1から作っていく曲もありますが、そういう意識の変化は大きいかもしれません。
- 以前のほうが一本気でしたか。
Neetz - そうでしたね。ただそれだと時間がかかるので、サンプリングアートとしてサンプリングしてくださいという曲があれば、使ってしまおうというノリです。
- Neetzさんはビートメーカーもラッパーもやっています。ビートメーカーNeetzから見て、ラッパーとしてのNeetzさんの特徴はどのような部分だと思っていますか。
Neetz - 難しいです。ビートメーカーの自分から見てのNeetzか。
- ビートメーカーとしての自分と、ラッパーとしての自分を切り分けているのですか。
Neetz - 他の人に提供するときは、本当に仕事だと思ってしなければいけないので、自分がラップするかどうかは全然考えません。他のアーティストがこの曲に乗せたいと思うことが一番なので。100パーセントではありませんが、自分の色を出しつつ、完璧にそのアーティストが乗せてくれるような曲を作らなければ多分乗せてくれないと思っているので、切り分けている気がします。KANDYTOWNの場合は、自分がラップしたいと思うようなビートは、他の人がラップしてくれます。多くはありませんが、メジャーのアーティストに提供するときは、完璧にアーティストが乗せてくれるように考えつつ、自分の色も考えつつやっています。ラッパーとしての自分とは切り分けている気がします。
- プロデューサーNeetzから見た自分はどうですか。
Neetz - ビートメーカーから見た自分は分からないな。何も考えてないですね。このアルバムに関しては、プロデューサーとしてもあまり考えずに、ビートとラップを一体で考えていました。好きなビートがあればラップを乗せてしまおうという感じで、本当に自由にできたので、プロデュースもラップも一体になった感じです。
- いい意味で無心でできたんですね。
Neetz - そうです。環境的には最高ですし、時間にも追われず自由に作りました。
- "Tokyo Rain"が最初にできた曲ということでしたが、その次にできた曲はどれですか。
Neetz - "Tokyo Rain"の後はどれかな。シングル曲で発表した『SUMMER PACK』がその前にできていた気がします。"Ray"のビートもできてましたね。これはビートだけでしたが、いい感じにビートができたと思っていました。少し寝かせていると、このビートはYo-Seaくんの声にとても合うなと思って、Yo-Seaに電話したら、普通にセッションしようよという話になって、スタジオに来てくれました。聴かせると、すごくいいねと喜んでくれて、そのままブリッジの仮のメロを入れてリリックもその場で書いてくれました。できた瞬間に、これでアルバムを作ることができる、絶対にアルバムの核になる曲になると思いました。そこからアルバムづくりが軌道に乗った感じです。"Ray"ができたのは、今年の4月かな。
- 今回ミックスでいうと"Ray"だけ、ミックスが小森雅仁さんです。
Neetz - そうです。小森さんにミックスをお願いしたのは、AAAMYYYの楽曲を作ったときにとてもいいミックスだったので、その経緯でオファーしました。納期的に1曲単位であればできそうという感じでした。核となる曲『Ray』が合うのではないかと思ったのでミックスしてもらうと、とてもよかったです。そのおかげで曲の完成度がさらに上がりました。こちら側が出した要望どおりにやってくれて、再現度が高かったです。ミックス前は音がもう少し丸かったというか派手な音像ではなかったので、もっと派手にしたいとオファーすると、ブラッシュアップされてかなりゴージャスな感じの曲調になりました。小森さんにオファーしてとてもよかったです。
- トラック自体はシンプルといえばシンプルです。
Neetz - ミックス前は音のハイの部分が聞こえない感じだったので、派手にしてもらおうと依頼して、よかったです。
- ありがとうございます。その流れでミックスについて聞きます。他の曲は全部Neetzさん自身がミックスしています。エンジニアとして自分の曲をミックスするにあたり、最も気にしている部分はどのような部分ですか。
Neetz - ミックスはミックスで全く別作業です。今回に関しては、ミックスも進めながら曲も作っていました。マスタリングは依頼しましたが、納品するまで全部自分でできたので、その分はとてもやりやすかったです。ミックスしているときにアレンジも気になれば、その部分の音を抜くこともできるし、全部自分で作業できるようになったのでとてもやりやすかったです。ミックス作業は時間がかかるので、今回は短縮した作業にしました。声のミックスもすごく時間がかかるので、声のミックスはAIを使いました。読み込ませると、ミックスがR&Bなどジャンルごとに分けられて、ラップの項目を選んで微調整するだけでプロっぽい音像になります。そのようなものも取り入れています。声のミックスに関しては、ほぼそのやり方だったのでビートに集中できました。声も自分で時間をかけてビートをミックスしていると、多分でき上がる頃には飽きていると思います。時間を短縮し、効率的にできるようにしたことが大きかったです。ビートの部分に関しては、"Live Forever"、"Twelfth"のドラムの感じの箇所は結構こだわったので、自分の音像が出せるようになってきたと思っています。キックのアタックがよくて、しっかり聞こえつつも全体のバランスもいいです。エンジニア部分としては成長できたと思っています。
- また少し逸れますが、『SUMMER PACK』は2曲入りのシングルで出しています。この曲がアルバムに入らなかったのは、何か理由があるのですか。
Neetz -『SUMMER PACK』は、夏シリーズとして終わらせようと思っていました。アルバム前の軽いジャブみたいな感じ、アルバムはもっとすごいぞという意気込みで作っていたのでアルバムには入りませんでした。『SUMMER PACK』を出したときには、アルバムに入れないのでという感じで対外的に出した気がします。"dear summer(Outro)"は『SUMMER PACK』の延長線上でアルバムに繋ぐ流れなので、『SUMMER PACK』も含めて聴いてもらいたいですね。
- ありがとうございます。先ほど、"Ray"がこのアルバムを象徴する曲だと言いました。リリック的にもこのアルバムは、"Tokyo Rain"や"Back on Track"のようなアーティストとしてハングリーな姿勢と、"Ebony"のような、恋人とのスイートでメロウな感じの二つの軸があると思いました。"Ray"は、その二つのことが同時に出てきている曲のような気がしました。
Neetz - 確かに、その二つの軸なのかもしれません。一辺倒の曲ではなく、いろいろな曲調があってもいいと思って作ったアルバムです。出会いもありつつ、もう一つの軸もありつつという感じもあったかもしれません。
- Neetzさんの場合、リリックはトラックを聴いて、その場で感情的に出てくるものですか。または、結構緻密に組み立てていくのか、どちらのパターンが多いですか。
Neetz - どちらもあります。"Tokyo Rain"は感情的に出てきました。ビートを作ったときから、これでリリックが書けると思いました。ビート的にも、そのときの自分の心境にとても合っていたので、すぐに書けました。"Live Forever"は、ビートができて結構寝かせていたので、コンセプトをしっかり決めて組み立てた感じですね。
-その次にできた曲はどれですか。
Neetz - "Weather the Storm"ですね。5月ぐらいかな。その頃には"Vincent"もできていたと思います。ワンヴァース作って歌い、寝かせているものもありました。"Weather the Storm"かもしれません。
- "Weather the Storm"は今の遅いセクシードリルのような感じがします。このタイプの曲は、日本ではあまり聴いたことがなかったので、Neetzさんがするのは新鮮な感じがしました。
Neetz - この曲だけ、打ち方的に少し変えてみようと思いました。割とトラップやブーンバップっぽい曲もあるし、四つ打ちっぽいものもあるので、いろいろな打ち方があるほうがいいと思いました。サンプルを聴いたときには落ち着いた感じでしたが、逆に、ジャージークラブの打ち方を入れると面白いかもしれないと思ったので入れました。
- 結構前ですが、FNMNLでインタビューをしたときは、ヒップホップ以外でKaytranadaもよく聴いていると言っていました。今、よく聴いているジャンルはどのような音楽ですか。実際、Jerseyもよく聴いていますか。
Neetz - 聴きますが、どちらかというとトレンドを意識して聴く感じです。普段から聴く感じではありませんが、トレンドを意識するとジャージークラブやセクシードリルを聴きます。かっこいいなと思いますが、結局は、昔から聴いているジャンルが好きです。The AlchemistやHit-Boyがずっと好きですね。あとは、90年代のDJ PremierやPete Rockが熱いと思っています。普段はBGMとして、70年代のソウルを聴くほうが多いです。
- Hit-BoyとThe Alchemistでまた作品を出してましたね。
Neetz - ビートメーカーとプロデューサー同士がタッグを組んでラップすることは、とても面白いですよね。いつか日本でもやってみたいです。お互いがお互いのビートでラップしてみたいです。日本だとビッグネームばかりで、やってくれるかは分かりませんが、Hit-BoyとThe Alchemistの動きを見ていて、いつかはやってみたいと思いました。
- "Weather the Storm"はまさにそのような曲ですが、リリックで天気のことが時々出てきています。
Neetz - 雨っぽい感じですね。電車に乗ったときに乗客全員がつらそうな顔をしていました。なり上がった社長がよく、「電車に乗ったとき、みんなつらそうな顔していて、こうなりたくないよな」と言います。コロナ禍だったせいもあるかもしれませんが、本当にそのように見えました。自分も制作から離れていた時期だったので、そのつらそうな表情が鏡みたいに見えていたのかもしれません。リリック的には、そう思ったことがきっかけでこの曲ができました。
- この曲を作ったときは、復活はしていたけれども制作モードに戻り切ってないようなときも、まだまだあった感じでしたか。
Neetz - 流れ的にはそうでした。"Weather the Storm"を作ったときは、少し暗い感じの心境、時期でした。この次にできたのは"Vincent"だったかな。ビート自体は、"Tokyo Rain"と同じぐらいにできていた気がします。
- "Neon Step"などでNeetzさんがつくる四つ打ちの感じは、すごくヒップホップを感じる気がするので、とても好きです。
Neetz - ありがとうございます。
- ハウスっぽいものをつくると、自然とこうなる感じですか。
Neetz - ハウスはテンポも速くて、細いキックのイメージです。でも、ヒップホップの影響を受けた重いキックなんだけど、ハウスっぽい打ち方がとても好きなので、そうしようと思いました。かなり遅めのハウスと捉えられるし、107ぐらいのBPMです。ラップを乗せたかったので乗れるように遅くして、重たい感じに四つ打ち感を出して作ったビートです。
- KAYTRANADAは、まさにその感じが得意ですよね。
Neetz - 影響を受けました。この間来日したときに、ライブを見に行きました。ものすごく良かったので、次はこのような曲にしようと思うぐらい影響を受けました。照明とのマッチングが素晴らしかったです。どうやって照明とマッチングさせているのかはわからないんですが、とにかくエンターテインメントでした。音もものすごく良かったです。
- 照明の話で言えば、1曲ずつ完全にマッチングするような機材が海外では導入されているようですね。トラックに対して自動でプログラミングできるみたいで。
Neetz - やはりそういう感じなんですね。
- "Vincent"はトラックの雰囲気も相まって、前を向いている感じがします。
Neetz - "Vincent"は、その当時の心境もありましたが、テーマも割としっかり決めて作ったような曲でした。画家のゴッホの正式な名前はVincent Willem van Goghで、最初は軽視されてきましたが、後から称賛されてきました。自分もラップを始めたときやビートを作ったときは、誰からも注目されていませんでした。注目されていないところから、自分が望むものになれたけれども今はどうなのか、望むものになるまでの過程を描いた曲です。
- ありがとうございます。続いての曲は何ですか。
Neetz - 次は"Ebony"だったかもしれません。
- "Ebony"は、すごくピュアな曲ですね。
Neetz - 夏は海によく行っていたので、そのときに作った曲です。ビートを作るときはギターが入ってラテンっぽい曲を作りたいと思っていたので、リズムができた時点で、ビートをワンループ組めばラップを乗せられると思って作っていました。テーマ的には出会いがあって、実際に女の子との出会いがありました。この曲は、その出会いの心境で、女性を必死に口説く赤裸々な曲です。
- かなり赤裸々です。
Neetz - その子は黒い肌の女性だったので"Ebony"と付けました。その女性が使っている香水もEbonyでした。かなり赤裸々な曲です。
- "Vincent"にも女性が出てくるラインがありますが、これも同じ女性ですか。
Neetz - 同じ女性です。よく気付きましたね。テーマと全然合っていないし曲のコンセプトと関係ないけれども、取りあえずラインがかっこよく決まったので入れようという感じで、ふとしたときに入れました。
- ゴシップ的な興味ではありませんが、この方は恋人ですか。
Neetz - 恋人です。今も付き合っています。
- KANDYTOWNのNeetzという感じであれば、赤裸々ではなくもう少しクールに描く気がしました。その辺りも全然違う心境だからこそ、書けた曲だと思いました。
Neetz - 全部さらけ出してしまおうという感じでした。そのほうが聴いている人も分かりやすいと思った部分もあるので、そのような心境の変化があったかと思います。具体的なワードも結構入れてしまいました。そこを含めて楽しんでもらえればと思って作りました。
- ありがとうございます。この曲は、ビートがワンループです。The Alchemistのことも言っていましたが、ワンループで決まるトラックは本当にすごいと思います。
Neetz - ワンループではめられるビートを作ることは、自分の中でこだわっているところかもしれません。まずワンループで決めます。
- この曲は、感覚的に打った瞬間にバチッときた感じでしたか。
Neetz - この曲に関しては、そのような感じでした。キックもとても弱いので、ドラムもものすごく弱いドラムでもいいのではないかと思いました。箸休めではありませんが、自分のビートは重いのであえて軽い感じにしました。ビート的には、アルバムの中にそのような曲があってもいいかもしれないと思って作った曲です。
- ありがとうございます。"Back on Track"もこの辺りですか。もう少し前ですか。
Neetz - "Back on Track"も夏が終わった後ぐらいに作った気がします。この曲は、軌道に乗って自信を取り戻して、戦闘態勢に入った感じの状態でビートも作りました。普段も、ハードな感じの曲も好きで聴いていて、絶対にそういう曲も必要なので、ビートに乗せて作ろうと思って作った曲です。
- ギラッとした感じが出ています。
Neetz - そうです。ストレスをためていたでは、ありませんが、うっぷんを爆発させて戦闘状態に入ったような感じでした。
- この曲は、今のシーンに対する気持ちも入っている気がしています。
Neetz - 今の日本のシーンのことは全く入っていないですが、そう捉えられることは結構面白いです。とにかく、シーンに対して思うことは全くありません。自分の思いを爆発させました。『いまだ若手のようにテープをまとめ、グリルズとシャウトは要らねえ』と書いていますが、誰に対しても言っていません。基本的には、軌道に乗って自分を取り戻した状況を爆発させた感じの曲です。
- 最後の「ってか、何も刺さってないよ東京」というリリックが、刺激がないのかなという気がしていたんですが、今の話を聴いていると自分に向けたリリックということですか。
Neetz - そうです。"Weather the Storm"もそうですが、東京で生きることは簡単ではない、ハードでシビアで、生きづらいところもあります。東京に住んでいると病んでいく人がいます。そういった状況の中で生きていく上で、東京は刺激もあるけれども刺さる部分もあります。その東京に対して、まだいけるぞという意味です。
- ありがとうございます。あとは"Twelfth"と"Live Forever"ですね。
Neetz - "Twelfth"はアルバム制作の終盤にもう1曲作ろうということになって、作った曲です。ブームバップのようなものはないので作りたくなり、そこに入れ込もうと思ってこのような曲調になりました。ドラムも結構決まりました。"Twelfth"は12番目という意味です。サッカーをしているのですが、サッカーでベンチを温めていて日の目を見ないけれども、実力はあるぞというノリでRyohuからアイディアをもらいました。アウトサイドからシーンを見ている自分のような心境で作りました。割とサッカーの用語を入れていて、ここからは自分の時間だぞ、的な曲です。多分、そこから"Back on Track"に行く流れです。
- ありがとうございます。「ゲームも変化するぜ ここじゃクラッキ」からの流れが、サッカーネタ交じりで、すごくいいラインです。ジュードというのは、ジュード・べリンガムのことですか。
Neetz - ありがとうございます。そこが一番気に入っています。ジュードはビートルズの"ヘイ・ジュード"にも掛けていて、次にビートルズに行くという一番気に入っているラインでした。
- 良かったです。自分もこのラインはおしゃれだと思いました。
Neetz マネージャー - 珍しく説明してきたね。
Neetz - 皆にこのラインについては説明しました。世には出ていませんが、気に入っているので移動して他の曲でも使っていました。移籍させました。
- サッカーではどのチームが好きですか。レアル・マドリードですか。
Neetz - ACミランがずっと好きでした。トヨタカップでACミランが来日したときは見に行きました。ルカ・モドリッチが移籍して、ラファエル・レオンもいますが、今はあんまりなんですよね。よく見ているのはレアル・マドリードの試合かもしれません。
- 自分でもまだサッカーはしていますか。
Neetz - サッカーやっています。それこそ、週に1回KIKUMARUと一緒にフットサルをやっています。たまにKEIJUとGottzも来ます。2回ぐらい肋骨にひびが入ったことがあって、ライブ前だけはいけないと思うので、けがには気を付けたいです。
- 最後の"Live Forever"です。この曲はリリックもしっかり考えて作ったということでした。
Neetz - テーマ的には、「Good Die Young」というテーマで作りました。自分はそこまで距離が近いわけではないので、JJJ君のことを言うのは違うかもしれませんが、「24時 流れているJ」というのはJJJ君でもあるし、名だたるアーティストがJの頭文字ですよね。Jimi HendrixもJです。
- J Dillaも。
Neetz - James BrownもJです。リリックは、JJJ君が亡くなったことがきっかけです。若くして亡くなった偉大なる人物の功績をたたえています。
Neetz マネージャー - KEIJUが、ツアーのときにJJJ君と一緒に曲をやろうという話をしていました。
Neetz - KEIJUのツアーのときに一緒だったので、ツアー後にJJJ君からビートが欲しいですと言われていました。ビートも作っていましたが、JJJ君はジャッジが厳しそうだと思って送っていませんでした。自分は1曲も一緒にできていなかったので、本当に後悔しています。そういったことも影響してできた曲です。
- この曲が、本当に最後にできた感じですか。
Neetz - 最後にできた曲です。直前まで"Good Die Young"というタイトルでしたがKANDYTOWNにもあるので、反対の言葉になりますが"Live Forever"にしました。亡くなったとしても、自分の心の中にあるしずっと生き続ける、自分も生き続けます。曲になれば、誰かの心の中にはずっと残ります。形として残っていればいいです。自分も心境としては一度落ちていたところもありますが、もう一度舞い戻って復活して、ずっと生き続けると自分にも言い聞かせながらストーリーを語っているような曲です。
- 今おっしゃっていただいたような、誰か亡くなった人を思う曲でありながら、すごくポジティブなパワー、力強さもある曲になっていると思いました。
Neetz - 本当によかったです。まさに、そのような思いで作った曲なので誰かの心に残り続ける曲になればいいです。
- ありがとうございます。以上で、アルバムについては全曲伺いました。今作が完成してリリースできたことで、Neetzさんにとってどのようなものが備わったと感じていますか。
Neetz - 何でしょうか。リリースしたばかりなので、あまり実感はありません。これからソロライブで回っていくので、ライブ終了後にどうなっていくのかと思います。作品に関しては、もっと作りたいし、もっと素晴らしいものを作ることができるようになってきています。プロデューサー業ももちろんやっていきたいですが、アーティストとして作品を世に出していきたいです。自分がプレーヤーとして曲を作る覚悟が本当にできたアルバムだと思っています。この先に続くストーリーも描いていきたいし、プロデューサー業も辞めるわけではないので、他の若手のラッパーに提供していきたいです。音楽を真剣に、健康に、長くやっていきたい気持ちにまた戻れたので、そういった心境の変化は大きかったです。
- この先も、気持ちの浮き沈みはもちろんあると思いますが、現時点では、今作が完成して前向きな気分になっていますか。
Neetz - 前向きな気分になっています。作品として自分の今を表せたと思うし、ビートもいい感じでできました。そのような心境で作ったので、ライブ終了後にどうなのか、取りあえず今年はそのようなところです。
- ありがとうございます。来年やりたいことは、ライブ終了後になりますか。もう考えていることはありますか。
Neetz - リリースライブにまず目を向けてやってみて、そこから考えようと思っています。作品がまとまれば、ソロとして絶対に出したい気持ちになっています。目の前のリリースライブに集中してから考えたいと思っています。
- ありがとうございます。こちら側の聞きたいことは全部聞けました。何か話し足りていないことはありませんか。
Neetz - 今後のプロジェクト自体はありますが、今回のアルバムに収録している曲のリミックス版をたくさん作って、デラックス版として出したいと思っています。若手とかも入れたり、自分が希望するアーティストに客演で入ってもらうなど、いろいろ考えています。
Neetz - あとはラップスタア2025にビートを提供します。今のところは、使ってくれる人にオファーをかけようという感じになっています。
- ありがとうございます。最後に、ツアーについて少し伺います。今回はKEIJUさんのツアーのアフターで、Neetzさんのライブがある感じですか。
Neetz - そうです。アルバムを作る段階で、KEIJUに相談している部分が大きいです。ライブするのであれば、アフターでできると言ってくれたので、KEIJUに頼んでそのような形になりました。
- 例えば、ソロのパフォーマンスをもっと継続して、ワンマンライブも考えていますか。
Neetz - いずれはやりたいと思っていますが、取りあえずはこのリリースライブに集中します。うまくいけば、ワンマンライブをやる気持ちではあります。
Neetz マネージャー - そもそも、ソロは初めてだと思います。
Neetz - はい。ソロライブ自体がほぼ初めてです。ラップを始めた20歳ぐらいのときに、BSC君のイベントで、自分とDJ Minnesotah(以下、ミネさん)のワンMC、ワンDJでしたが、一度きりのライブでやめました。ソロはそれ以来かもしれません。14年前ぐらいにミネさんにDJをしてもらったので、今回もミネさんにDJしてもらえることは感慨深いです。いい感じにできればと思っています。
- ありがとうございます。そのような感じですか。
Neetz - はい。
- お忙しい中、ありがとうございました。
Info
【Neetz AL『Story of 991』】
発売日:10月15日(水)
配信URL: https://linkco.re/PGhdCdrp
Tracklist:
1.dear summer (Outro)
2.Tokyo Rain
3.Vincent
4.Ray (feat. Yo-Sea)
5.Ebony
6.Twelfth
7.Back on Track
8.Weather the Storm
9.Live Forever (feat. MALIYA)
Lyrics by Neetz , Yo-Sea(M-4) , MALIYA(M-9)
All Music by Neetz
Mixed by Neetz @ studio 991(M-1,2,3,5-9) , Masahito Komori(M-4)
All Mastered by Rick Essig @ REM Studio
Artwork by IO, cherry chill will.
A&R by Masashi Hara
Label: studio 991
