【インタビュー】LANA 『20』 | LANAがみんなの隣にいる

18 hours ago

"TURN IT UP (feat. Candee & ZOT on the WAVE)"や"BASH BASH (feat. JP THE WAVY & Awich)"などのヒットを連発しているLANAが、自身初のアルバム『20』をリリースした。先行シングル"it’s okay"や"Still Young More Rich (feat. Watson)"なども収録している本作は、20歳までのLANAの総決算的な内容となっている。

シーンに登場してから2年にも関わらず、凄まじい勢いでのステップアップを続けているLANA。アルバムを軸に、過去、現在、そして未来への想いについて語った。

取材・構成 : 渡辺志保

撮影 : 三浦大輝

- 1stアルバム『20』のリリース、おめでとうございます。やっとアルバムが出た！と思ったけど、最初のブレイクのきっかけになったシングル"FLAME (feat. LEX, Saru jr.Fool & taisyov)"からまだ二年しか経ってないんですね。その頃と比べると、やはりアーティストとして滲み出る自信やオーラを感じます。

LANA - アーティストとしてのLANAと素の自分を使い分けられるようになっているかもしれない。これまでは自信がないというか、自分がやっていることが本当に格好いいのかどうか考える暇もなかったし、とにかく”いろんな人に届けなきゃ”っていう気持ちばかりだったんです。今回のアルバムで自分が言っている内容は、他の誰かから聴いたら”違う”って思われるかもしれないけど、でも”それがLANAだから”っていう感じで作りました。

- 自分の中でも“LANAらしさ”が確立してきた？

LANA - うん。それはやっぱり、二年かけてSNSのフォロワーの数とかライブで見るお客さんの反応とかで自信がついたから、言えるようになったのかな。これまでアーティスト活動を二年間やってきて、前は「今、どんな気持ちですか？」って聞かれても「いや、分からない」って返答することが多かったけど、今は「あ、私ってちょっとヤバいんじゃないか？」って思い始めています。

- リリックでも歌っている”ストリート・プリンセス”というコンセプトはどこから来たものですか？こういうコンセプトが決まったからこそ、自分の立ち位置がよりはっきりして自信ににもつながっているのかな？と感じました。

LANA - そう。”ストリート・プリンセス”っていうフレーズはチームの人と話していて決めたことなんです。”自分はプリンセスってことにしたい、でもただのプリンセスじゃないよね？”って話になって。

- おしとやかで…みたいな。

LANA - はい。ドレスを着て、育ちが良くて…みたいなプリンセスじゃなくて。その時に”ストリート・プリンセス”って言葉が出てきて、”じゃあそれを推していこう！”みたいな。そこから、いくつかアルバム用の曲を作ったんです。だから、アルバムの中の前半の曲は、”プリンセス”ってよく言ってる。もう自分でそうやって言い切っていて、そういう前提で曲を作っていったんです

- クイーンではなく、プリンセス。LANAさんの中で、プリンセスの定義って決まってますか？

LANA - 私たちみみたいなギャルはピュアだから、おとぎ話とかが大好きだと思う。夢を見てる、常に。勘違いされがちなんだけど、意外とピュアっていう。

- 擦れていないというか。

LANA - そうそう。みんな欲しいのは多分、愛だけだと思うし。そういったところから、”プリンセスみたいになりたい”って気持ちを込めて"Bad Bitch 美学"でも自分のことをプリンセスって言葉にして表した。今は、自分の中で新しいプリンセスを作ろうとしてるんです。ストリートで育って、綺麗になっていく。その姿を想像してこの言葉を使ってます。

- こんな言い方をするのは変かもしれないけど、アルバムを聞いていると、LANAさん自身が自己分析ができるようになったのかなって思ったんです。楽曲を通して、＜LANAがどんな人間なのか＞っていうことが前にも増してすごく立体的に伝わってきた。言葉の選び方などに変化はありましたか？

LANA -『20』は”やべえ”って言いながら2ヶ月くらいで作ったんです。アルバムの先の動きも決まっている状況だったし、結構プレッシャーだったんですよ。アルバムで言っている内容は、嘘なく、直近の出来事や言葉を歌詞にしています。いったん、今のまとめって感じかな。あと変化に関しては、多分、彼氏の影響も少しはあると思います。このアルバムを聴いたら”LANA、新しくない？”とか”ちゃんとやってんじゃん”みたいなことをみんな思うんじゃないかな。そこには、彼氏と出会ったり、そういう環境の変化があったりするのかなと思います。

- 彼氏とのエピソードをもうちょっと聞いてもいいですか。実際にお付き合いして、何か変化はあった？

LANA - 生活は変わりましたね。今の彼氏は”自分はおかしくないんだ”って思わせてくれる存在です。これまでは、恋愛関係に発展しても彼氏に対して絶対に自分の弱みを見せないっていうか、ダサいところを見せたくないっていう気持ちが強かったんですよ。そう思いながら付き合っていると、”これ恋愛じゃないな”って感じになってくる。その時の相手は、癒しもくれるし落ち着くんだけど、同時に”別に今この人がいなくなっても大丈夫だな”って思ってしまう。だから、その人と別れる時も、”そうなんだ、じゃあね”ってあっさり、泣くこともなく終わっちゃう。前回も、そう思っていた時に、”あ、実ってない恋あるわ”って。それで今の彼氏にアタックしました。

- すっごいパンチライン！

LANA - それでアタックして。彼氏は変わり者すぎて、めちゃくちゃ面白い。

- 今日も時計のキラキラが半端ないですね。自分でカスタムしたところもある？

LANA - 初めての時計です。もともとダイヤは付いていて、文字盤は変えました。最初はロレックスのフルダイヤのピンクを探してたんだけど。LEXもカルティエだし、彼氏もカルティエの時計だったから、うちもカルティエにしようと思って。時計は一本、欲しかったんですよ。付き合って最初の頃に、彼氏から時計を一本もらったんです。時計を買おうとしているという話になって「これ、あげるよ」ってロレックスの時計をもらいました。

- Watsonさんとの交際にはたくさんの人が驚いたのではと思います。お二人は2023年の"Makuhari"での共演経験もあるわけですが。

LANA - 私は彼のことをかっこいいなって思ってたけど"Makuhari"の時は、まだ何もなかったです。私からプッシュして付き合い始めました。

- さっきもLANAさん自身が言っていた自分の弱さの部分って、特に若い女性だったら等しく持っている部分だと思うんです。そういうところをみんなとシェアしたいという思いでこれまでも歌ってきたと思うのですが、『20』ではもっと上手に伝えられるようになったと感じます？

LANA - うん。今回のアルバムに入っている曲たちは、今までよりも、もっと生々しくLANAがみんなの隣にいる感じが表れていると思う。別にこれまでいい子ちゃんぶってたわけじゃないけど、アルバムの中では今までよりももっと強いことを言っているし。この二年で、いろんな人と関わってきて、その中には手を取り合ってヒップホップを盛り上げようとしてる先輩方もたくさんいて。そうやって生きていく中で感じたところを、歌詞にしてるかな。

- おこがましいけど、"Street Princess"を聴くと、私みたいにLANAさんの倍くらいの年齢でも二十歳のギャルになって夜9時に集合して、一緒に夜の街で遊べるような感覚になりました。

LANA - あの曲は"PULL UP"の続編という感じで作ったんです。二十歳になって、また改めて”ギャルとはどういうものなのか？”って考えることがあって。最近、世の中で”ギャル”の濫用が半端なさすぎて、私からしてみたら”何だこれ？”って思う気持ちもあったんです。最初、そういう人たちに対するディス曲として書いていたんですよ。”違うだろ”って。だけど結局、明るい曲になった。でも、正直に思うところを書いたというか。

- LANAさんが思う、ギャルの定義や条件はありますか？

LANA - ある！見た目とか爪の長さとかまつ毛とかはいったん置いておいて、自分が越えられないかもってところに向かっていく強さを持っていること。あとはやっぱり礼儀とか、意地悪をしない、いびらないところ。男関係でも、人のものを奪（と）らない。そういうの、ちゃんとできていない人が死ぬほどいるから。だし、そういうところが全部内面にあると、表情とかファッションにも出てくるんです。だから、私が思うギャル性は、そういう風に内（うち）に宿るものだと思います。

- 自分がアーティスト・LANAになって気がついたことや発見したことはありますか？

LANA - サンクラとかに音源を上げていた時代からついてきてくれているファンの子たちの存在ですね。（ファンたちは）みんな平等に大好きなんですけど。私はもともとすごく弱い性格から始まっていて。あるとき、サンクラ時代からのファンの子達のSNSを久しぶりに見た時に、LANAの最初の頃の鬼メンヘラっていうか内気な感じに救われている子達がいたんだなってことを実感したんです。なんかこう、今のLANAと昔のLANAとの間にはやっぱりギャップがあるなと思っていて。今みたいにフレックスしたりキラキラした世界を見せて、その姿が刺さるっていう子もいると思うんですけど、ずっと前に私のことを見つけてくれて、今も好きでいてくれる子たちに”ちゃんと向き合わないと”って思いました。そうしたことも、アルバムの次からはもっと表現していきます。

- もともとSoundCloud上で発表していた"HATE ME"を、『20』のタイミングで正規リリースしていますよね。"HATE ME"を作ったのはいつ頃でしたか？そして、あの頃の自分自身に、どんな言葉を掛けてあげたいと思いますか？

HATE ME by LANA

LANA - 15歳くらいですね。今、"HATE ME"を聞くと今の自分とギャップがありすぎて結構くらっちゃうというか…。思い出してしんみりすることもあるんですけど、だからと言って、今はもうあの時の情緒ではないんですよね。掛けてあげる言葉――でも、そのままでいいかも。あの時があっての今だから。あの頃は年齢も年齢で、中学生とか高校生の時だったし、病みやすい時期で病んでる自分が好きな時期でもあった。だから、そのまま変わらず進んでいって欲しいかもて思います。

- アルバムの話に戻るんですけど、今回、初めてのアルバム制作において何が一番大変でしたか？

LANA - 何も書いてない紙に、いきなり始めるっていうことが辛かった。”どうしよう”って。”作るとは言ったものの、何をやろう、どんなコンセプトで行こう？”とか”何を伝えたいんだろう”とか色々悩みましたね。とにかく、最初がキツかったです。私、ギリギリにならないと作れないんですよ。

- "TURN IT UP (feat. Candee & ZOT on the WAVE)"や"L7 Blues"など、これまでにリリースした曲も収録されていますよね。こうした既発楽曲はどういう基準で入れていったのでしょうか？

LANA - みんなと話し合いながら決めました。例えば"TURN IT UP"は自分が変わった一曲だし、"99"や"L7 Blues"は女の子たちがすごく聴いてくれている、なくてはならない曲。だから、そうやって選んでいきました。

- ちなみに"TURN IT UP"で、何がどう変わったと感じますか？

LANA - 全部変わりました。あの頃は歌詞の書き方も分からなくて、超苦しかった。歌詞を書いても、こっちの人には”ダメ”って言われたり、他の人に聴かせたら”このままでいいよ”って言われたり。私は17歳くらいだったし、どうしていいか分からなくなっちゃって。“歌詞が書けない”って家でめちゃくちゃ泣いていたら、ママがアイデアをくれて。Candeeくんも助けてくれた。あの時はいろんな人の助けをもらってできた一曲なんです。今思えば、この曲をきっかけに（街で）声を掛けられる数も変わった。その時は”上に行きたい”っていう気持ちがすっごく強すぎて、そんなことに気づいてもいなかったんですけど。ふと、自分のYouTubeを見ていると、”すんごい回ってんな、この曲”って思うし、今も、クラブに行くとDJの方が掛けてくれるのはこの曲なんです。だから、LANAが知れ渡った一曲って感じ。

- "TURN IT UP"も、今回新しく録った"Still Young More Rich (feat. Watson)"もどちらもZOT on the WAVEのプロデュースで、男性ラッパーがフィーチャーされています。同じ構成の曲ですけど、制作には二年くらいの期間が空いています。楽曲の作り方やスピードは大きく変わりましたか？

LANA - "Still Young More Rich"はセクシードリルみたいな曲をやりたいなと思って、ZOTさんに相談してビートを作ってもらいました。歌詞は何回か書き直しましたね。最初からWatsonと一緒に作ろうと思って、”どんな曲がいいのかな？って話していました。でも、その時は彼とは全然恋愛関係じゃなくて、歌詞を書き直すのと同時に恋愛にも発展していった感じです。だし、その時はめちゃくちゃ恋してたから、すごく楽しかったです。苦しさもなく歌詞が書けました。MVを撮影したのもめちゃくちゃ直近で、凄いスパンで出来上がりましたみたいな。

- 今年、2024年で20歳を迎えたわけですが、20歳というステージから見える景色はどうですか？劇的に何かが変化したのか、それともそうではないのか。

LANA - 私は根がポジティブじゃないから、ネガティブなことしか出てこないんですけどーー18歳と20歳って似てる感じがする。大人になりきってもないし、未成年でもない。だから今、毎日仕事して疲れて家に帰った時も、成人しているから飲みに行くこともできるけど、逆に成人してるからちゃんとしなきゃいけないのか、自分の判断が分からなくなる時がある。20歳も20歳で、結構みんなが葛藤するんじゃないかな？子供でも大人でもないっていうか。”成人しているのにこんなことすら出来ないのはどうなんだ？”って自信を無くしそうになる時もあれば、”だって、一年前はまだ19歳だよ？できなくて当然じゃん”って思う時もあるから。もしかしたら、みんなも困惑してるかもなって思います。

―"No.5"で歌っている”星より輝くものください”ってすごく絶妙な表現だと感じました。全てのキラキラを手に入れているように見えるLANAさんでも、足りないものがあるんだって。しかも星を例に出していて、絶対に手に届かないものがあるのかなって感じたんです。LANAさんご自身や周りの友達と接していて、足りないものって何ですか？物質的なモノだけじゃなくて、例えば、社会に対して足りないと感じている部分や、感情的な部分とか。

LANA - 親の愛情と、自分で作っていかなきゃいけない愛。みんな、この二つが必要だと思うし、足りていないと思う。多分、子供が（親に）本当にしてほしいことってハグだったり、愛してるよの一言だったりだと思うんです。でも、そういう愛情をもらえていない人が日本にはめちゃくちゃ多い気がする。そういうところに、欠落しているものがあると思うんです。"No.5"で歌っているのは、そういう歌詞かな。

- LANAさんの歌詞にはお母様はじめ、家族のトピックが出てくることも少なくないですよね。

LANA - 昔は（関係が）よくなかったし、親に対して私が一方的に距離を置いていたんですけど、今は成人したから親に対する目線も変わってるし、一人の人間として喋るようになった。みんなも、10代のうちにそういうところを親に補ってもらうべきだと思う。成人するまでに、親に正直に伝える勇気も持って欲しい。”今は怒らないで、ぎゅーして欲しい”って。照れくさいけど、そうしてもらうべきだし、逆に親は子供に対してしないといけないことだと思います。

- 2025年4月には、いよいよ武道館での単独公演を控えています。

LANA - 武道館の前にはZeppツアーと『LANA’s PARTY』もあるから、武道館のことは現時点でまじで何も考えていないんですけど、武道館だからって気を張って何かしようとも思ってない。クールに決めたいなって思っています。”LANAちゃん、武道館立ちました、すごい！”じゃなくて、武道館に立ってる時には、もう違う何かが確約されてる状態でやりたい。頑張るっていうよりかは、順番を追ってる感じ。

- 武道館以降のプロジェクトもすでに決まっている？

LANA - 叶うかわからないのではっきりは言えないけど、来年に向けてはすでに計画があります。それが叶うように、自分をもっと磨いていかないといけないし、もっとみんなについてきてもらわないといけない。

- 2022年、私がLANAさんに初めて行ったインタビューでは”自分の将来が楽しみで仕方ない”と語ってくれた姿がとても印象に残っているんです。今は、自分の将来に対してどう感じていますか？

LANA - 変わらず、ずっと将来が楽しみです。ていうか、将来が何なのか分からないですよね。今の時点では、まだ夢を掴み切ったとも思ってないし、掴み切る日は来ないと思うんですけど。常にどんどん、もっともっと変わっていくから。1stアルバムが出る段階で、もうこんなにたくさんの人に聴かれているし、Zeppツアーも控えているし、今はみんなに感謝しています。まだ言えないんだけど、これからのお楽しみもあるので楽しみに待っていてほしいです。