「dodo × tofubeats × VaVa」。ありそうでなかった3アーティストによるライブが6月2日に恵比寿 The Garden Hallで開催される。これは2023年9月にSpotify O-Eastで行われたスリーマンライブ企画「Daichi Yamamoto x JJJ x STUTS」の第二弾。各アーティストのライブをしっかりと楽しめ、かつパーティーのような開放感も味わえるこの企画は開催後にも大きな話題を呼んだ。今回はdodo、tofubeats、VaVaに集まってもらい、あえてテーマも設けずざっくばらんに鼎談してもらった。
取材・構成 : 宮崎敬太
写真 : 寺沢美遊
企画 : 高根大樹
こうやって3人がちゃんと会うのは意外と初めて
- みなさんはどのように繋がったんですか?
dodo - お二人は「HARDOFF BEATS」がきっかけで出会ってるんですよね? さっきVaVaさんのWikipediaで読みました(笑)。
tofubeats - そう、インターネットにも載ってるいい話。
VaVa - (笑)。
dodo - 僕からすると2人は大先生というか……。
VaVa - いやいやいや。dodoくんも昔からやってたじゃないですか。俺は自分がラップする前からずっとdodoくんをラッパーとして認識しましたよ。
tofubeats - dodoちゃんは活動歴長いけど、キャリアは意外と謎だよね。
dodo - 僕はですね、ラップを始めたのが高校2年生ぐらいで、次の年(2013年)に『第3回 BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』に出させていただいたんですよ。そこが皆さんにちょっと知っていただく機会になりましたね。
VaVa - そうでしたね! まじで懐かしい(笑)。
tofubeats - 今と見た目が全然違ってた(笑)。
dodo - ……なんか恥ずかしいです。僕は(3マンのオーガナイザーの)ダイキくんが代官山のUNITにいた時、THEOTOGIBANASHI'Sが出てるイベントに呼んでいただいて、BIMさんと一緒にいるVaVaさんをお見かけしたのはすごく記憶に残ってます。
tofubeats - それって"kill more it"が出てから?
dodo - そうですね。
tofubeats - 僕らが知り合ったのも"kill more it"以降だったもんね。
dodo - トーフさんがTwitterで褒めてくれてるってshakke-n-wardaaが教えてくれたんですよ。スタジオにも行かせてもらって。
tofubeats - その前に一回会ってなかったっけ? 妻がdodoちゃんのファンで、普通にライブとか行ってましたね。そういうのもあるから、自分とdodoちゃんの初めましてがいつだがわからなくなっちゃってるんですよ。
dodo - (2022年に閉店した渋谷のクラブ)VISIONでも何回かお会いしてましたし。
tofubeats - でもこうやって3人がちゃんと会うのは意外と初めてだよね。それこそ『POP YOURS』の楽屋で3人が揃うみたいなことはこれまでも全然あったけど。
ここ3〜4年ずっとフォンク聴いてる
- 『POP YOURS 2024』ではtofubeatsさんの出番にVaVaさんとdodoさんがそれぞれ客演されてましたね。
VaVa - "RUN REMIX"のKREVAさんのヴァースで走りました(笑)。
tofubeats - 僕の出番はCreativeDrugStoreの直後だったから、ただでさえ自分のライブでむちゃくちゃ汗かいた後に……。
VaVa - トーフさんからの客演のお誘いだったので(笑)。
tofubeats - 一応言っとくと、別に走れとは言ってないんですよ(笑)。
VaVa - そうそう。ステージのデカさを活かす方法ないかなあみたいなことを話してたんですよね。それで俺が「『RUN』だし走るかあ」って思ったんです。
dodo - "RUN"で言うと、普段お2人は走ったりしてますか?
tofubeats - 今朝ジムでめっちゃ走ってました。コロナ禍でずっとジムを中断してて、先々月から3〜4年ぶりくらいに再開しました。普通に肩こりが大変で。
VaVa - 気分転換になりそうですしね。あと音楽聴けそう。
tofubeats - いやー、運動に必死で全然音楽に集中できない。VaVaちゃんはどんな時に新しい音楽聴く?
VaVa - 電車ですね。自分はめちゃくちゃ乗るんで。dodoくんは車でしょ?
dodo - そうですね。それこそ今日車でトーフさんの『NOBODY』を聴かせていただいてたんですけど、目黒で作られた音楽を目黒で聴くのは最高だなって思いました。ウェイウェイ。
tofubeats - ちゃんと「ウェイウェイ」まで書いといてくださいね。
dodo - でも最近聴く音楽の傾向がだいぶ変わってきてるんですよ。いろんな音楽が心に沁みるようになってきました。耳がドMです。車の中でよくNHK FMをかけてるんですけど、この前氷川きよしさんの“ズンドコ節”を普通に好きだなって思いました。トーフさんの“Remained Wall”(『NOBODY』収録曲)にも鳥肌立ちましたし。
tofubeats - “Remained Wall”を好きって言ってくれたのは嬉しいけど、今のdodoちゃんの話に全員ピンときてないよ。
dodo - ええっ! いろんな深さを探すようになった自分がいるというか。
tofubeats - 最初からそう言いなよ(笑)。
VaVa - トーフさんはどんなの聴いてますか?
tofubeats - 僕はBandcamp Radioばっかり。今日Tシャツ着てるDeath Is Not The Endってレーベルの音源も好きですね。
- どんなレーベルなんですか?
tofubeats - 名前は思想強めですけど、いろんなオブスキュアな音源を出してるイギリスのレーベルなんです。すごい好きですね。自分がDJする時以外はあんまりクラブミュージックは聴かなくて、普段は普通の音楽ばかりです。昔のブラジルのアーティストの再発とか。VaVaちゃんは?
VaVa - フォンクばっかりですね。
tofubeats - 最高。
VaVa - Spotifyで年末にまとめがでるじゃないですか。どのアーティストのどの曲聴いてたみたいな。ここ3〜4年、ずっとフォンクです(笑)。
tofubeats - フォンクって最近いろんなのあるじゃないですか。ロシアのとか。
VaVa - それで言うと、僕はカウベル系はそんな好きじゃなくて、
ダーティなサンプルをがっつり使ったのが好き。あのサムネが速そうな車じゃない系の(笑)。
tofubeats - はいはいはい(笑)。
VaVa - 自分は朝とかダンスミュージック聴けないんですよ。自分のバイブスと違いすぎて。でもフォンクならいつでも行ける。最近だとMemphis Cultとか。
dodo - あー!こういうのをフォンクっていうんだ。$uicideboy$みたいな感じですか?
VaVa - ちょっと違うけどバイブスは近いです。
dodo - 僕、全然ジャンルわからなくて、ヒップホップかそれ以外かくらいしか区別つかないんです。最近Gファンクを覚えました。
tofubeats - 令和にGファンクの名前知ったんだ(笑)。
劣等感の塊なんですよ
dodo - みなさんは自分の曲聴きますか?
tofubeats&VaVa - めっちゃ聴きます。
dodo - マジすか。いや、制作の時じゃないですよ?
tofubeats - そういう意味では日常的には聴かないけど、今作ってる曲がうまくいかない時に、昔の曲を聴くことは多いな。
VaVa - そうそう。昔の曲ってその時の自分にしか書けないこと書いてるから、改めて聴くと「こんなこと思ってたんだ」ってなる。
tofubeats - 時間が経つと客観的に見られるから聴き味が変わって面白い。
dodo - やっぱ(自分の音楽を聴き直すと)良くなっていきますか?
tofubeats - (今作ってる曲が)良くなるというか、僕はこれまでいっぱい曲を作ってきたやん。そんな人が今日急に曲が作れなくなることはないって思えるのよ。あと昔の曲を聴くとダサすぎて死にそうになるので、(今の自分が)そこを伸びしろと感じられる。あとは手法の復習。あの頃こんなことやってたなとか、こんなこと言ってたなみたいなのの確認。新しいアルバムを作る時は必ずそれをやってる。
dodo - おー、その話を聞けたのはありがたすぎます! 僕は癖が強すぎて、直近の自分のライブ映像すら観られないんですよ……。黒歴史を煎じて飲まされてるような気持ちになるというか。先週の『POP YOURS』の映像もまだ観られない。自分を振り返るのが怖くてできないんですよ。
tofubeats - 反省会とかしないんや。
dodo - 一応、自分の中ではしてますけど、客観的に見つめることはできてなかったです。でも2人の考え方は、自分にも活かせるなって。
tofubeats - てか、もう10年以上やってるのになんでいまだに新人スタンスなん? 実際そういうことを15周くらい考えつくして今に至ってるわけやん。
dodo - いやいやいやいやいや。逆にというか、今自分自身がわけわかんなくなっちゃってて。VaVaさんやトーフさんのように(自分のスタンスを)貫かれてる先輩方を見習いたいんです。ようやくそうできる段階に立てたというか。
VaVa - 最近思うのは(キャリアを重ねると)テクニックがやっぱ増えていくじゃないですか。けど昔の曲はその時にしかできなかったシステムというか枠の中で「どうにかしてやろう」ってやってたんですよね。それはそれで良い。制作は改めてテクニックだけではないなって思うんです。
tofubeats - わかる。上手い/下手と良い/悪いは違う。
VaVa - 昔の曲ってシンプルなんですよ。自分の中に手法がなかったからなんだけど、結果的にシンプルなものほうが伝わる気がして。
dodo - パッションが?
VaVa - いや音楽が、って感じかな。
dodo - 自分は技法がテンプレしちゃってきてるんですよ。小節の構成とか。
tofubeats - やめたくなったりせえへんの?
dodo - そこも難しくて、自分なりに煮詰めた結果の黄金比だなって思ってるとこもあって。いろいろ考えすぎて今本当にわかんない期に突入してるんです。
VaVa - 葛藤してるdodoくんいいですね。
dodo - 劣等感の塊なんですよ。
VaVa - dodoくんって歌の中でも葛藤してるじゃないですか。だからこうやってプライベートでも葛藤してるエピソードを聞けると改めて「dodoくんだ」って思える。
- tofubeatsさんとVaVaさんもキャリアの中で煮詰まったり、葛藤したりしたことはありましたか?
tofubeats - 基本的に煮詰まってることしかないっていうか。曲って完成して、提出した瞬間以外は全部の日ができてない日なんですよ。
VaVa - ほんとそう。
tofubeats - 常にできてないっていうのがデフォルト。常に悩まされてる仕事。よく「スランプはどうしてますか?」って聞かれるけど、基本的には常にスランプなんです。
VaVa - ちょっと前は歌詞を書きまくってたから、「これ前も言ったな」みたいなことが多かったんですよ。
dodo - すごくわかります。
VaVa - だから最近は「う〜ん……」となったら、人生で一回もやったことないことをしようってなってます。そのマインドになってからかなり楽になった。
tofubeats - それはラッパー問題らしいよね。30代ぐらいになって、だんだん稼げるようになってくると言うことがなくなってきたりするみたい。
VaVa - 前にジェイ(JJJ)くんとゲームしてた時に「(ラップ書く時)テーマを決めたりするんですか?」って聞いたら、「テーマとかないっしょ」って即答されて(笑)。
tofubeats - かっけえな。テーマないんや……。
VaVa - ですよね。でもそれ聞いて「これだな」って思えたんですよ。そっからすごい楽になった。
人間のテンション感みたいなものもレコーディングされてる
- 個人的にお伺いしたいんですが、みなさんはどこで制作の終わりを決めてるんですか?
VaVa - めちゃくちゃ難しい。これ難しいですね。
tofubeats - 締め切り。締め切りを決めることをするっす。キリがないんで。あと自分の場合はいっぱい作らなきゃいけないことが多いので、「この日にもう終わらせる」って決めて絶対に終わらせる。そうしないと永遠に直せちゃうのと、僕自身がいっぱい出すことが大事だと思ってるところがあるので、自分で無理やり区切ってることが多いですね。
dodo - 僕も同じです。僕の場合は、(すべての工程で)本当に僕しかいないので、予定を組んで「この日までにあげないといけない」ってやってます。
tofubeats - それ、本当にすごいと思うよ。
dodo - トーフさんのさっきのお話しにもありましたけど、僕もやっぱ出すことが大事だと思ってるんです。そうなると自分の曲を自分の中で評価してもあんま意味ないっていうか。だから常に出していくってことに重きを置いてます。
VaVa:それで言うと、なんか最初にパッとレコーディングしていきなりめっちゃ良かったとするじゃないですか。増田さんにも確認して、お互い「めっちゃ良いね」ってなったら録り直さないようにしてます。
tofubeats - ファーストインプレッションの大事さってあるよね。
VaVa - そうそう。歌い直したらたぶんもっと綺麗になるけど、感情は薄くなっていくというか、最初ほど保てないことが多くて。ちゃんとやろうとすると、「“ちゃんと”ってなんだ?」みたく思っちゃうんですよ。だから音悪かったとしても素材をそのまま残すパターンがあります。「もうこれでオッケー」みたいな。
tofubeats - プリプロが本チャンに使われるのはあるあるやんな。でもさ、自分がエンジニアとして入ってる場合だと、「もう1回録っとくか」みたく絶対になっちゃうのよ(笑)。1回目でオーケーを出すにはそれなりの胆力がいる。とはいえ、何テイクか録ってても最終的には最初のテイクを採用するパターンが多い。たぶん歌ってる人からしても、歌うたびに新鮮さがなくなっていくだろうし。
VaVa - うん。人間のテンション感みたいなものもレコーディングされてるんだなって改めて思います。だからもう、もうビートを聴いて、すぐ歌詞書いて、すぐラップしたものがめっちゃいい。最近はハモとかもあまり固めすぎないように意識してます。もう強調したいところだけ。汚くてもそれが人間の本質だし、結果的に伝わる。あとトーフさんが言った通り、重ねていく作業はキリがない。
tofubeats - めっちゃ良い話だねぇ。選択と集中っていうさ。長く続けたことによって自分に必要なものがわかってきたっていう。
VaVa - Pharrellのビートを聴いてても、やっぱシンプルなのが一番良かったりするし。ほんと頭おかしいよ、あの人(笑)。
なんかいまだに思春期みたいな感じ
- 同じようなことを昔誰かが言ってた記憶あります。シンプルだけど、普通はあんなの出てこないって。それこそひらめきや偶然とか関係してると思いますか?
VaVa - うん。俺は偶然を求めてるし、助けてもらってるパターンが多いです。
tofubeats - 偶然は再現性がないもんね。
VaVa - そうそうそう、そうなんですよね。偶然は自分ではどうすることもできないから悩むんだと思う。多分俺は一生悩み続ける(笑)。
tofubeats - 偶然を見つけに行ったりせえへんの?
VaVa - します!最近だったら絶対にやるって決めたビートをエンドレスで流した状態で図書館に行くんですよ。で、いろんな棚の端から端までのタイトルを読んで、このビートだったらどういう歌詞になるかなって想像するっていうのをやってますね。
tofubeats - めっちゃ良い話! 俺もやってみようかな(笑)。
VaVa - おすすめっす。お金かかんないし(笑)。面白いっすよ。
tofubeats - 図書館最高。dodoちゃんは煮詰まった時、どっか行ったりする?
dodo - 僕は椅子に座って悩んで悲しい気持ちになって時間が過ぎて1日が終わります……。
tofubeats - アイデアを思いつくために何かせえへの?
dodo - 今のお話を聞いて、自分もやったほうがいいなと思いました。最近ChatGPTに聞いたんですけど、「曲のテーマをちゃんと炙り出して、関連する言葉を殴り書きして、歌詞にまとめていけ」と言われました(笑)。
tofubeats - ドライブとかは?
dodo - しないですねえ。パソコンの前でただ時間だけが過ぎていく。
tofubeats - 制作だけってことか。料理もしない?
dodo - しないです。煮詰まってエッチな動画を観たりゲームしたりで1日が終わっちゃった、みたいな。いつも自己嫌悪に陥ってます。
tofubeats - ゲームも何かを見つけるというより、ただただ現実逃避のためにやってる、みたいな? そうなると一体どこから着想を得てるん? 普通は音楽以外の経験がなかったら書かれへんやん。
dodo - そうなんですよ。そこが今の悩みなんですよね。ラッパーを追求していくと、リアルがどうこうみたいな話があるじゃないですか。じゃあ「作ってる時はリアルなのか」って自問自答もあって。
tofubeats - もう本当にフラットな状態から出てきたものしかリアルじゃないと。
dodo - そうです。生活はリアルです。でも同時に「生活ってなんなの?」「ラッパーであることって何?」「ヒップホップとは何?」みたいになってくる。ラッパーである自分と向き合うのが辛い。マインドは結構崖っぷちです。
tofubeats - もっとヒップホップに向かっていくのか、逆にヒップホップから離れたいのか、みたいなこと?
dodo - まさにそれを自問自答してます。
tofubeats - dodoちゃんってラッパーっぽいやん。うちのマネージャーのCE$さんもこの前「dodoちゃんが普段からブリンブリンつけてるのを見てテンション上がった」って言ってたよ。
dodo - え、すごい嬉しいです。僕は日本社会に二面性があると思ってて、同じように自分も常にラッパーでありたいけど、現実にはそうじゃない自分がいるっていう。なんかいまだに思春期みたいな感じなんですよ。
VaVa - めちゃくちゃいいじゃないですか。
dodo - いや、ほんとですか!?
みんな口に出して言えないことだから、歌にする意味がある
tofubeats - とはいえ、dodoちゃん的にはどうなると満足なの? マッチョになるとか?
dodo - それで言うと、最近の日本語ラップには昔の僕が求めていたものを体現されてる方がたくさんいらっしゃるんですよ。それは売り上げどうこうではなく、自分の中で筋を通されているリアルな方々ですよね。USのリアルを日本で体現されている方々が多数いらっしゃる。そういう意味ではもう正解がある。じゃあ自分ができることはなんなのか。それを踏まえて、自分のバズった曲とも照らし合わせると、もう自分がわかんなくなってきて。
tofubeats - このインタビューを聞いた後に観るdodoちゃんのライブはたまらんだろうな。dodoちゃんはほんまに自問自答してんねんな。ただVaVaちゃんも言ってたけど、うちらからするとすごく良い話やね。今後dodoちゃんがどっちに転んでいくのか楽しみ。ジーパンに拳銃さしたりするんかな。
dodo - あ、でもグロックのエアガン買って、自撮りした写真があるんですよ(笑)。気持ち悪いおじさんだなって思う自分もいるけど、インスタにあげたい自分もいるんです。てか、僕はいろんな人に迷惑かけて生きてるなって思ってて。
tofubeats - 急にどうした(笑)。
dodo - 自己嫌悪の日々なんですよ……。
- さっきdodoさんがおっしゃってた「日本社会の二面性」とは具体的にどういうことなんですか?
dodo - 僕が思ってるのは、表裏があるなって。表面的には仲良しなのに、裏の顔があるというか。
- 日常ではフランクで良い人なのに、裏垢ではめっちゃ悪口言ってるみたいな?
dodo - そんな感じです。
tofubeats - え、その二面性はdodoちゃんのヒップホップとどういう関係があんの?
dodo - 僕はかっこいいラッパーみたいにオラオラな人間性ではなくて。認められないブルースってあるじゃないですか。……なんていうのかな、EminemとSlim Shadyみたいな。僕の中には近藤大貴とdodoがいて、dodoが死にかけてる。
tofubeats - それはいいことなんじゃないの? 二面性がなくなるってことでしょ?
dodo - ……自分ではわからないんですよね。(dodoが)なくなったらラッパーとしてのカッコよさはどこで表現すべきかとか。VaVaさんは昔からラッパーとしてのスタンスが一貫してると思うので、どうしてるのか伺いたいですよ。
VaVa - 自分って変わんないですか?
dodo - ラッパー感を通されてるように見えます。
tofubeats - VaVaちゃんは結構変わったと思うな。最初の頃はソロアーティストのイメージがあまりなかった。でも途中から明らかにVaVaになった。独り立ちっていうか。そう感じさせるタイミングがあったような気がする。僕がこんなこというのは偉そうで僭越なんですが……
VaVa - トーフさんがおっしゃってることはすごくわかります。最近はどっちの良さもあるなって思えてきました。自分でやっていくんだ系を書いてた時はそれが正しいと思ってやってましたけど、なんかそうじゃないのも正しいかなって。
tofubeats - 普通に年を重ねたってこともあるのかもね。僕はVaVaちゃんの初期作も最近の作品も大好きだから。
VaVa - 二面性の話で言うと、そういうのってラッパーじゃなくても人間なら誰でもあると思うんですよ。自分だったら、例えばお葬式のシーンとした場面で爆笑したらどうなるんだろうって想像しちゃったり。人として絶対にやっちゃいけない選択肢を考えてる自分がいたりもする。そういう面ってみんなも口に出して言えないから歌にする意味があるんじゃないかな。って思ったりします。
tofubeats - ほんとそれ。今日のVaVaちゃんヤバい。良いこと言いすぎ(笑)。
VaVa - 俺からするとdodoちゃんって、そういうことを代わりに言ってくれるアーティストって認識ですよ。
ミュージシャンは不幸なほうが良い曲を作るって都市伝説が嫌い
- 仕事でめっちゃくらってる自分の友達も、dodoさんのラップに助けられてるって言ってました。
dodo - それで言うと、結構幸せになってしまった自分がいて。
tofubeats - ミュージシャンは不幸なほうが良い曲を作るって都市伝説でしょ。
dodo - 都市伝説なんですかね? 自分は最初期の頃と比べるとだいぶ幸せになってて、あの頃の気持ちは完全に消えてるんですよね。きっと今のVaVaさんも同じような感覚だと思うけど、一貫してヒップホップを感じるんですよ。全ての立ち振る舞いから。ストラグルしてるというか。
tofubeats - それは昔のdodoちゃんが不幸せを創作のガソリンにしてたからってことじゃない?
dodo - あ、なるほど!
tofubeats - 俺もVaVaちゃんもそこをガソリンにしてないんだよ。
dodo - そっかそっかそっか! じゃあ今の2人のガソリンはなんなんですか?
VaVa - 自分もdodoくんとまったく同じで、キャリアの中で幸せを感じた瞬間があったんですよ。その時はあえて人生のすべてが不幸せになる選択をしてましたね。
tofubeats - そうだったんだ!
VaVa - でも疲れちゃって(笑)。当たり前を当たり前と気付けない自分になってたという結論に至ったんですね。でも世の中にはそういう人もいっぱいいると思うんですよ。ループする日常の中で当たり前の幸せを幸せと気付けない人って。幸せを感じるセンサーが普通に鈍っていくというか。だったら自分はその気持ちをそのまま曲にしようと思ったんです。しかもそこに共感してくれる人が必ずいて。だからなるべくそのまま書くようにしてるんですよね。ガソリン的な話で言うと、昔はdodoくんと同じ。今はいろんな音楽聴いて、インスピレーションを感じた瞬間に作り始める感じですね。
tofubeats - ほんまめっちゃいい話やな。自分は結構早い段階から活動してたので、基本的にどこいっても後輩だったんですよ。昔はずさんな扱いに対する反骨魂で頑張ってた部分があるし、男子校出身やったから、彼女いないとか、そういう精神的な理由をガソリンにしてました。でもある時CE$さんから「彼女ができたら2度とモテてなかったとか言うなよ」ってキツく言われたんです。「一個進んだ時、進んでないふりすんな」って。「いつまでも引きずるな」って。普段はそんな感じじゃない優しい人だから、すごく記憶に残ってる。
VaVa - めっちゃいい話。
tofubeats - あともう一つエピソードがあって。とあるアーティストさんがある大ヒット曲をリリースされた時、その方は大失恋された直後だったらしいんです。そしたらレコード会社の人がさっきの「ミュージシャンは不幸なほうが良い曲を作る」って言ってたんです。そんな嫌な感じで言ってたわけじゃないけど、僕はすごく嫌な気持ちになりました。だってその方には他にもたくさんヒット曲があるから。その度に失恋してたわけじゃないし。直感で安易に原因と相関しがちだけど、別に検証されたわけじゃない。
- 事実としてあるのは、良い曲を作るために努力したってことですもんね。
tofubeats - そう。アーティストのクリエイティビティをなんだと思ってるんだって。だからしっかりとした根拠があること以外は、安易に信じないことにしてます。その経験以降、自分は音楽を作ること自体に喜びを見出すことにしました。そこがガソリンなら一生続けられる。同時に(音楽制作を)外的要因と結びつけすぎたり、ジンクスを作らないようにもしてます。ただ頑張ってる。ってAbletonしか使ってないんですけど(笑)。
- 自分のように0を1にしてない人間からすると、みなさんはそれぞれとんでもないです。
VaVa - あ、いやいやそうじゃないです。外的要因も一要素でしかないんです。
tofubeats - そうそう。ナラティブ的にインタビューとかやったら1個のトピックが曲と合致しちゃうけど、実際はそれまでの人生全部が結果に作用するんです。それはそれとしていいけど、(作り手である)自分はひとつの外的要因のみに頼りすぎないようにしよう、みたいな。
VaVa - 自分も外的要因を求めてた時は新しい刺激を求めて外に出てましたし。でも、そもそも頭の中にはいろんな経験と記憶が入ってるんですよね。(自分の中に)いっぱい引き出しがあるのに開けようとしないで、新しい引き出しを探して開けようとしてたというか。だから、すでにある自分を探ろうという考え方になってからすごく楽になりました。
tofubeats - わかる。だから自分はすごいメモをとります。引き出しを整理して使いやすくしてる感じ。
VaVa - 自分もめっちゃメモとります。1月か2月にケータイ変えたんですけど、すでにiPhoneのメモが6000くらいある(笑)。小4で練馬区から杉並に転校したんですけど、練馬区の記憶がすごく曖昧なんですね。だから地図なしで行ってみて、思い出したことを全部メモしたりしてます。そういう時はそんなに写真をそんな撮らないようにしてます。
tofubeats - 記憶のトレーニングみたいだね。
VaVa - しょうもないのがめっちゃいっぱいありますよ(笑)。自分でも何を言おうとしてるのかわかんないのとか。
dodo - 歌詞を書く時に読み返して、その気持ちをまた思い出して、 臨場感を高めるんですか?
VaVa - そうですね。ただ自分の場合は途中で止めちゃうと絶対に良いのができないんです。客観的に「VaVaがこう言ったらおもろいかな」とか考えちゃうと感情が乗らないし、ビジネスというか、面白くない。1曲一気に書き上げることができなくても、絶対に1ヴァースは書くようにしてます。
dodo - 「じゃあVaVaだったらこうしたい」っていうのは極力どかす?
VaVa - 別に人はそれを求めてないと思うんですよ。
tofubeats - 曲を作ってる時は、他人から見た自分っぽさみたいなものを極力排してるってことよね。
VaVa - そうです。自分はめっちゃエゴサするタイプだから、VaVaっぽさみたいのはめっちゃ入ってくるんですよ。良い意見も悪い意見も含め、いろいろ読んで改めて思うのは、自分は誰かをアゲるために音楽をやってるというより、自分がアガるために音楽を作ってるなってこと。そういう音楽をやってるほうが音楽を好きでいられる。同じように、他人に好かれる自分になるより、自分が好きでいられる自分でいることのほうが難しいと思う。
tofubeats - 確かに他人に好かれることよりも自分が好きなことをやってたほうが音楽は好きでいられるよね。てかマジで今日のVaVaちゃん良いこと言い過ぎ(笑)。
3人で曲作りたい
dodo - さらにお二人に質問したいんですけど、共演のきっかけってどうやって作ってるんですか?
tofubeats - お願いすればいいいやん。
dodo - 例えば、トラックがどの程度完成した状態でお声がけすればいいかとか。
tofubeats:僕は森高千里さんと藤井隆さんのところにいきなり行ったよ。なんも知らなかったからできたことだけど。でもまあ普通に自分がやりたいと思った人にお願いすればいいんじゃない?
dodo - 共演のオファーってちょっと恋愛に似てるじゃないですか。告白に近いっていうか。
VaVa - 好きって言われて嫌な人はいないと思いますよ(笑)。
dodo - 相手のスケジュールとかコンディションが気になって、どのタイミングで声をかけるのがベストかわかんなくなっちゃうんですよね。
VaVa - でも好きな人と遊ぶ時ってどうにか時間を作るじゃないですか。そういうもんですよ。自分の場合だと、初めましての人にはとりあえず実際に会いに行ったりします。
dodo - 恋愛もそうなんですけど、振られるのが怖くてなかなか自分からいけないんですよ。あと僕からオファー来たら相手が嫌な気持ちにならないかとか。
tofubeats - 基本ダメ元じゃない? うまくいったらラッキーくらいの。断られたってなんのマイナスもないやん。もしくは事前にある程度エゴサしていくとか(笑)。自分の曲をラジオで褒めてたとか。Dream Amiさん(“POSITIVE feat. Dream Ami”)はそのパターンよ。『POSITIVE』というアルバムがそういうテーマだったし。
dodo - なるほど!
tofubeats - あとはこういうインタビューで自分から言っていくのもいいんじゃない?
dodo - それ言うと、shakkeちゃん伝いでVaVaさんからビートを受け取っていたけど、ふんわりしたままだったので、あれをしっかり形にしたいです。
VaVa - うん。一緒に作りましょう。遊びながらでも。
dodo - ぜひVaVaさんのスタジオにも遊びに行かせていただきたいです!
- てか三人で曲作ってほしいです!さすがに3マンまでに完成させるのは難しいと思いますが……。
tofubeats - (笑)。でも確かに3人で曲作りしたいですね。
VaVa - うん。人と曲作るのワクワクします。
dodo - と同時にやっぱ甘すぎてもいけないなと思うんですよ。自分の足でしっかり立ってないと共演のお話もこないだろうし。
tofubeats - 『POP YOURS』で前転した人がよく言うわ(笑)。
dodo - あれはトーフさんと観客の皆さんに感謝を込めた土下座です!
VaVa - そういえば昨日ファンの人に「スリーマン行きます」って言ってもらえたんですよ。
tofubeats - めっちゃいいやん。
VaVa:そう。自分もあんまない体験だったからすごい嬉しくて。
dodo - 僕、ちょっと前まで1人でぐるぐるしすぎてわけわかんない感じになってたんですけど、今はだいぶ落ち着いてきて今回のスリーマンはすごく気合い入ってます。結構答え出るライブになると思う。
VaVa - 突然まとめた(笑)。
tofubeats - でも俺らもすごく楽しみにしてるから、きっと来てくれるみなさんにとっても楽しいパーティになると思いますよ。
Info
初のワンマンツアーを大盛況で終えたdodo、
待望の新作EP「NOBODY」をリリースしたばかりのtofubeats、
先日、フルアルバムをリリースしたCreativeDrugStoreからVaVaの3組による豪華3マンの
オープニングライブにPeterparker69、DJとして原島"ど真ん中”宙芳、okadadaの出演が決定!
前売りチケットは絶賛販売中!( チケットぴあ : https://w.pia.jp/t/dodo-tofu-vava/ )
Spotify O-EAST presents
dodo x tofubeats x VaVa
2024.06.02(SUN)
at 恵比寿 The Garden Hall
https://gardenplace.jp/hall/
OPEN 16:00
START 17:00
TICKET :
ADV 5,000 YEN (+1D)
チケットぴあ
https://w.pia.jp/t/dodo-tofu-vava/
LINEUP -A to Z-
LIVE:
dodo
tofubeats
VaVa
OPENING LIVE:
Peterparker69
DJ:
原島"ど真ん中”宙芳
okadada
Design:north NADO
Photo:Miyu Terasawa
※小学生以上チケット必要。
※ドリンク代別途必要。
※出演アーティストの変更・キャンセルによる払い戻しは行いません。
※会場内、ライブ中の録音・録画は禁止とさせて頂きます。
※会場への飲食物の持ち込みはご遠慮ください。見つけ次第、没収させていただきます。
※スタッフの指示に従って頂けない場合はご退場頂く場合もございます。
Info :
Spotify O-EAST 03-5458-4681
【 New release 】
tofubeats 「NOBODY」
https://tofubeats.lnk.to/NOBODY
VaVa 「Rolling Stone」
https://summit.lnk.to/SMMT228