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【インタビュー】(sic)boy × KM 『HOLLOW』 | 常に実験中

K-POPの躍進を感じる今日この頃。10年来のファンとしては嬉しさを感じつつ、同時に日本の音楽もどんどん世界に届いたらもっと嬉しいな、とも考えてしまう。そんな時、(sic)boy&KMのメジャー1stアルバム『HOLLOW』を聴いた。本作はガラパゴスに独自進化した日本のロックとヒップホップの新しい結節点である(sic)boyと、世界中のダンスミュージックを自由に解釈するプロデューサー・KMが、互いに個性を引き出しあった作品だ。

本作を聴いて、日本人の特徴は、要素Aと要素Bを説明書とは違う角度で組み合わせて、新しい価値を生み出せることだと思った。ヒップホップであり、ラウドミュージックであり、ダンスミュージックでもありつつ、J-ROCKでもあって、そのどれでもない。この音楽なら世界にも届くのではないだろうか? そんな可能性を秘めた怪作「HOLLOW」制作の舞台裏を(sic)boyとKMの2人に聞いた。

取材・構成 : 宮崎敬太

撮影 : 雨宮透貴

幽霊船はNew Jeansの“ETA”と同じ音色を使ってた

- 『HOLLOW』は日本のロックとヒップホップの文脈を踏まえつつ、世界にも届くインターナショナルなアルバムだと思いました。最初に発表された“living dead!!”は2022年6月20日リリースのなので、かなり長い時間をかけて制作されたんですね。

KM - “living dead!!”が1年前かあ……。その後にできたのなんだっけ?

(sic)boy - “Dark Horse”じゃなかったでしたっけ?

- リリース的には同年8月17日に“君がいない世界 feat. JUBEE“が出ています。

KM - あーそっか。合宿の後にChaki Zuluさんのスタジオで“君がいない世界“を作ったんだ。

- 合宿?

(sic)boy - ユニバーサルのスタジオで3〜4日間くらい缶詰で制作して、“Miss You“の原型と“Dark Horse”を制作したんです。

KM - あと“幽霊船“も。午前中に俺がトラックを作って、午後にはシド((sic) boy)がリリック書いて。Daichi(Yamamoto)くんにオファーする前のデモは1日かからないでできた。

(sic)boy - かなり意味のある合宿でした。それが去年の5月とか。このアルバムの制作は結構バタバタしてたので、みんな時系列がごちゃごちゃになってるんですよ(笑)。個人的にも2022年は駆け抜けた1年という印象です。ライブをやりながら制作するのも初めてだったし。結構大変だった。

- ちなみにアルバムは事前にコンセプトを決めて制作したんですか? それとも完成した曲が溜まっていく過程から全貌が浮かび上がってきた?

(sic)boy - 後者かな……。でもKMさんの中には最初から何となくアルバムの原型はできた気がします。

KM - できてた。けど制作期間が長かったじゃない? 自分の中でどんどんモードが変わってきちゃったんだよね。だから今回、音に関してはバラバラだったと思う。曲順は8割くらいは俺だけど、結構みんなで話しながら決めたし。結果的にシドが言うように、積み重ねていく中でアルバムができてきた印象がありますね。

- バラエティに富んでいるけど、アルバムとしてはまとまりがあるので、コンセプチュアルに制作されていたんだと思いました。

KM - それはレックが全て終わって「いよいよ締切だぞ」ってタイミングで一気に最終調整したからです。

(sic)boy - だいぶ微調整したっすね。

- どの程度いじったんですか? 例えば音圧とかミックスレベルの調整?

KM - いや、リミックスレベル(笑)。

(sic)boy - 180度変わった曲もありました(笑)。“Wasted”とか。

KM - “sober”もすごい変えたよね。そもそも俺はエレクトロのアルバムを作りたかったんですよ。だから“君がいない世界”はChakiさんと組んで制作したんです。俺の中ではTHE LOWBROWSの方だから。ただシド自身がやりたいことや、トラックとヴォーカルとの相性もあったので、徐々に現在のようなバランスにシフトしていきました。

(sic)boy - 僕はすぐにギターを入れたくなっちゃうんです(笑)。“君がいない世界”も制作過程ではもっとギターが鳴ってたけど、Chakiさんが「もうちょっと抑えたほうがいい」ということでこの形に落ち着きました。

KM - あとエレクトロの名残で言うと“幽霊船”はNew Jeansの“ETA”と同じ音色を使ってたり。完全に偶然だから、めちゃくちゃびっくりした。

- 気づきませんでした!Debonair Samirの“Samir's Theme”ですよね。

KM - そうそう。音色も打ち込み方も同じなんですよ。俺としては、ロックとヒップホップの中間にいるシドの音楽性にダンスミュージックの要素を入れたかったんです。正反対の要素を入れて、しかも曲として成立させたかった。“Dark Horse”もいわゆるミクスチャーだけど、裏で鳴ってるシンセ音はMajor Lazerにインスパイアされた音色。全然(文脈が)違うところから持ってきた音でああいうミクスチャーをやってるんですね。あの音は絶対ロックでは使わない。“shockwave“も最初は00年代のパンクをやりたいと思ってたけど、そのままやったらコピーだから(sic)boyのシグニチャーになった808で全部ぶっ飛ばすような音像にしてみたり。

- KMさんは新しい混ぜ方をするプロデューサーですが、(sic) boyさん的に「これ違うな」と思ったビートはありましたか?

(sic)boy - なかったですね。自分が「違う」と思ったら「違う」と言います。物理的に乗せられないビートはありましたけど(笑)。結局ボツになった三拍子のやつとか。やっぱKMさんのビートって難しいんですよ。だからできそうなビートにはとことんいこうと思って、今作は『vanitas』や『CHAOS TAPE』の時よりもかなり色々なフローを考えました。

(sic)boyとKMのプロジェクトは常に試行錯誤して実験中

- ヒップホップであり、ラウドミュージックであり、ダンスミュージックでもありつつJ-ROCKでもあって、そのどれでもない。(sic)boyさんはそんなビートでどのように自分の世界観を表現していったのでしょうか?

(sic)boy - 僕はいつも通りかな。このタッグももう長いし。ジャンルとかシーンみたいなことで言うと、僕はもうルーキー枠じゃない自覚があるので、“Heaven's Drive“とかいろんなきっかけで自分を知ってもらった人たちの心に再び火をつけなきゃなって葛藤があったくらい。

KM - シドはデモをすごい作るんですよ。

(sic)boy - そうっすね。ビートを打ち込むパターンもあるし、弾き語りとかラフなのもあるし。

KM - そのデモを俺がとっかえひっかえ組み上げていくことが多いんです。結果的にトラックを全部入れ替えちゃうこともあるけど、芯にあるのはシドのデモなんです。

(sic)boy - (sic)boyとKMのプロジェクトはそういう試行錯誤してる感じがいいのかなって思うんですよね。常に実験中みたいな。制作中にガラッと印象が変わってびっくりすることが結構ある(笑)。でもそこが音楽の面白いとこだと思うんですよね。たぶん僕が作りたいものだけを作ってたら、ただのロックアルバムになってた。そこにKMさんのアレンジというか、逆転みたいなサプライズが加わると、プラスアルファの変化球になって、結果バラエティーに富んだアルバムになったと思う。

- 『HOLLOW』は前半に(sic)boyさんらしいJ-ROCK/ラウドミュージック/エモ感があって、“(stress)2”から始まる中盤でDaichi YamamotoさんやOnly Uさん、JUBEEさんにいったラッパーが参加し、さらに後半は海外のプロデューサーも参加してサウンドのスケール感が増すイメージでした。個人的には中盤がすごく好きでしたね。

(sic)boy - 日本語ヒップホップの人たちへのリスペクトがあるんですよ。僕は、ロックとヒップホップを混ぜてて、なんなら「ロック寄りの人でしょ」って思われることも結構あって。今回のアルバムには“(stress)2”や“Resonance (feat. Only U)”みたいな曲を入れないと予想した人もいると思う。もちろんロックは大好きだけど、同時にクラブカルチャーや日本のラップシーンの大ファンでもある。だから僕らはどの曲にも日本語のかっこいい歌詞と、ライミングと、面白いフローを意識して作っています。シンプルに日本語のヒップホップシーンからも愛されたいし。

KM - 後半に“Dark Horse (feat. JESSE(RIZE / The BONEZ))”があることで全部繋がるよね。


(sic)boy - そうっすね。JESSEさんに参加していただいたのがデカいと思います。僕自身、00年代初期のファッションや音楽にめちゃくちゃ影響を受けてて。リスペクトしてる方と一緒に作れたことに意味があるというか。JESSEさんが参加してなかったら、このアルバムも雰囲気もかなり変わってたかもしれない。

Miss You (feat. Vernon of SEVENTEEN)は難しかった

- 冷静に考えると客演の並びが2023年の東京を感じさせますよね。JESSEさん、Only Uさん、JUBEEさん、Chaki Zuluさん、Daichi Yamamotoさんに加えて、SEVENTEENのVERNONさんまで。

(sic)boy - ほんとめちゃくちゃですよね。スマブラみたい(笑)。

- Only Uさんとの共演は"Kill this (feat. Only U)"以来ですね。


(sic)boy - 実は彼がSoundCloudで活動してた高校生のときからずっと友達なんです。僕、オンリーがすげえ好きで。曲はもちろん、ファッションもかっこいいし。しかも今回初めて一緒にスタジオに入って制作できたんです。これまではずっとリモートで作ってたから。同じ空間で彼の熱量ある仕事ぶりを見られたことが収穫でした。

KM - この曲はレイジとジャージークラブを混ぜてます。意外とないんですよ。ジャージをやりたいってアイデアはオンリーがくれました。イントロのギターフレーズってなんかダサいじゃないですか。でも耳に残るんですよね。あの感じはMajor Lazerからインスパイアされました。レコーディングでは、俺が弾いたデモをギタリストのリュウくんに弾き直してもらったんですけど、「本当にこれでいいんですか?」ってめっちゃ心配されましたもん(笑)。後ろでシンセとかと交わるとちょうど良くなるんですよね。俺の曲は結構そういうことが多い。逆に難しかったのは“Miss You”のギター。マジでどうしていいかわかんなかった。

(sic)boy - 俺はDTMやってる人が手癖で作ったリフって感じがしました。いい意味でプロっぽくないギターが、むしろ曲の引っかかりになってると思う。

KM - 別に俺とシドの曲ならあのギターでも全然良いんだけどさ。これは「SEVENTEENのVERNON」っていう海外のビッグネームが参加してるわけじゃん。普段シドの曲を聴かない人にも届けなきゃって思いがあったのね。これは外せないというか。結果を出したかった。なんでもかんでも尖ればいいってわけじゃないし。誰にも聴いてもらえないと意味ないから。それにアルバム的にもポップに寄り添った曲を1曲入れたかったんですよ。そういうこと考えすぎた結果、何が良いのかわかんなくなっちゃった。

- 僕はリスナーとして、いつも新しくて、面白くて、ワクワクできて、ポップで、かつかっこいい日本語で、みたいな相反する要素が混在したものを求めてるから、『HOLLOW』というアルバムにおける“Miss You”は完璧でしたね。

KM - そう言ってもらえると助かりますけどね(笑)。あと俺はシドは言葉選びがクールだと思うんですよ。

(sic)boy - そこはかなり気にしてますね。ただこれはKMさんの音の話と一緒で、自分ではよくわからないというか。リリック的にも響き的にもかっこいいけど、字面にするとおかしいよな、みたいな(笑)。でもそういうのほど、周りの反応が良かったり、KMさんも「これで行きなよ」って背中を押してくれる。これは前作の話になっちゃうんですけど、“Last Dance”で自分的にはウケ狙いくらいのノリでフリースタイルしたら、謎にKMさんがめっちゃフィールしてくれて。そこから変なリリックを書くようになったかも(笑)。

最初に出てきた言葉に乗った感情のエネルギーを大事に

- (sic)boyさんはリリックをしっかりと書くタイプですか? それともフリースタイルで一気に?

(sic)boy - ケースバイケースですけど、今回のアルバムに関しては最初に書いたまま、手直ししないようにしたっすね。いつも何回も書き直すんですよ。

- それはなぜ?

(sic)boy - 最初に出てきた言葉に乗った感情のエネルギーを残したかったからです。英語とかに言い換えたほうがかっこよくはあるんですよ。内容も良くはなる。でも選び続けていくと、言葉の感情が失われていくというか。細くなっていく感覚があるんですよね。だから今回は直したい気持ちを我慢して感情を優先しました。そうしたほうがレコーディングにも感情が乗るんですよ。ある種の実験ですね。

- それは結構わかるかもしれない。

(sic)boy - 前作までは自分の中にある抑鬱的な感覚やダークな面を出すのが恥ずかしくてできなかったんですけど、今作はかなり開き直れた。ストレートな歌詞のほうがフェスとかでも伝わりやすいかなって。みんなが一緒に歌ってくれると僕も嬉しいですし。そもそもKMさんとのプロジェクトは、コロナ禍に始まって、コロナ禍で大きくなっていったんです。リリースパーティーがなくなったり、ライブで声が出せなかったりっていうのを経て、今の状況があるので。実際今年に入って「ああ、そういえばライブってこんな感じだったな」って思いましたもん。てことは、ライブでお客さんがシンガロングできるリリックを書きたいなっていうのは改めて思ったことですね。

- ちなみにVERNONさんとの共演は、どういった経緯で実現したんですか?

(sic)boy - VERNONくんはずっと僕の曲を聴いてくれてて。新曲が出るたびにインスタグラムにポストしてくれるんです。そこからDMでやり取りするようになって。「今度東京ドームでやるけど来る?」「いきます」みたいな(笑)。で実際に会って、話して、ちょっと仲良くなって、「じゃあ韓国で曲録ろう」という話になって、僕が韓国に行って一緒に録ってきた感じですね(笑)。すっごいフランクな人でした。iPhoneにリリック書いて、一緒にブース入って。

KM - すごい話だよねえ。レコード会社とか、マネージメントとかすっ飛ばして、二人で完結した感じでしょ?

(sic)boy - そうですねー。韓国ってアイドル本人の意向は可能な限りスタッフが実現させるってスタンスだったので、わりかしスムーズだったと思います。

KM - 実はこの曲って他にも2つバージョンがあるんです。リリース時期がわかんなかったから。シドには3ヴァージョンのトラックを託して渡韓してもらったら俺のおすすめが採用されてました。

- しかし、世界のポップスのトップランナーがお二人の作品に反応してるっていうところが面白いですよね。

(sic)boy - すごい嬉しかったですよ。あと僕とVERNONくんは同い年なんですよ。韓国の人って結構年齢が違うとお互いに気遣っちゃう文化があるので、僕らはそういう意味でもいい感じでやれました。

- “君がいない世界”にはお馴染みのJUBEEさんが参加されています。

(sic)boy - JUBEEくんとはこれで3曲目ですね(『CHAOS TAPE』収録“Set me free feat. JUBEE”/JUBEE『Explode』収録“手紙 feat. (sic)boy“)。僕からするとJUBEEくんには段違いの安心感がある。

KM - いるシーンも近いもんね。

(sic)boy - そうですね。彼もAge FactoryとAFJBってバンドをやったりして、ロックとヒップホップの垣根を壊そうとしてる一人で。彼が入ると曲に00年代の良い部分が表現できるというか。

- Daichi Yamamotoさんが参加されてるのが意外でした。

(sic)boy - 僕自身がDaichiさんのファンなので、前作くらいからずっと「一緒にやりたいです」って話してたんですよ。

- 前作でもAAAMYYYさんをフィーチャーされたりと、必ず予想外のラッパーが参加されてますよね。

KM - そこは我々の感覚ですね。普通なら(sic) boyのアルバムにAAAMYYYさんやDaichiくんは入らない。

- Daichiさんのどこに惹かれたのでしょうか?

(sic)boy - たくさんあるんですけど、僕が思う一番の魅力はリリカルなこと。あとトラックに対してラップの自由度が高い。遊び心がある。

KM - そうだね。Daichiくんにはどのジャンルにも馴染める柔軟性があるんですよ。

何より重要なのは日本の音楽に対するリスペクトと再現度

- アルバムの後半にはSaint Patrick、Zakk Cervini、Daniel Geraghtyと海外のプロデューサーが参加していますがどのように実現したのでしょうか?


KM - Saint Patrickは前作から繋がってたんだよね。

(sic)boy - そう。実は前作に収録予定だったけど大人の事情で入らなかった某アーティストとのコラボ曲があるんです。で、そのアーティストについてきたのがSaint Patrick。彼はAG CLUBのプロデュースをしてるんですね。その時に仲良くなって「今度一緒に曲を作ろう」ってなったので、僕がロスにある彼のスタジオに行って、「こういう感じがいい」と伝えて。その場でギターを弾いてもらって録ったデモが“Afraid??”です。

- LAはどうでしたか?

(sic)boy - 僕はもともとLAのロックバンドが好きで、古いのだとMötley CrüeやGuns N’ Roses、新しめだとblink-182みたいなポップパンクも聴いてたんですね。だからめっちゃ楽しくて曲を作りまくりました。”Falling Down”も“Wasted”もそのタイミングで制作しました。

- 向こうのスタジオはどんな感じだったんですか?

(sic)boy - みんなすごく音楽に真剣でしたね。午前のセッションが終わったら、すぐ荷物まとめて他のレコーディングに行ったりとか。ミュージシャンが動き回ってる感じは刺激的でしたね。

KM - こういう海外勢はシドのリクエストももちろんあるんだけど、スタッフのチャーリーから提案されることが多いんです。結局、俺も、シドも、チャーリーもみんな好きな方向性が似てるから、突拍子のないところにオファーはしないかも。

- しかし(sic)boyさんは柔軟ですよね。同時に自分らしさも表現できていて。理想的な制作環境のように感じます。

(sic)boy - 最初に「『HOLLOW』はインターナショナルなアルバム」と言ってくださって、僕としてももちろん海外の人たちに聴いてほしいし、海外から自分の音楽がどう思われるんだろうとも考えますけど、それ以上に重要なのは、何より日本の音楽に対するリスペクトと、その再現度なんです。KMさんがさっき言ってたJESSEさんとの共演の重要性というのもまさにそこで。あとどれだけアップデートできてるか。焼き増しもひとつの正解だと思う。だけど僕はプラスアルファしたい。00年代の感じを懐かしんで聴いてくれる人もいて、さらに23年のリアルも感じてほしい。

KM - しかも俺たち自身はそこをそんなに意図的にやってる訳ではないんです。作りたいアルバムを作ったらこうなった感じ。

(sic)boy - さっきKMさんはMajor Lazerを例に挙げてシンセのお話をされてたけど、僕からするとあの音はKMさんの音なんですよね。そこが大事なんです。僕もMy Chemical Romanceに影響を受けてるけど、ただのモノマネじゃ僕自身はやっててつまらない。

KM - シドが面白いのは、普通にEDMも好きなんですよ。例えば、ロックに憧れてるラッパーがいて、その人に“Dark Horse”のトラックを渡したら、たぶんあのシンセはいらないって言うと思うんですよ。実際なくても成立するし。むしろないほうが聴きやすいとすら思う。だってみんなが聴いたことあるフォーマットだから。でもそれじゃ意味じゃないですか。せっかく自分たちにメジャーからアルバムを出す機会を与えられたんだから、自分たちの音楽を大事にしたい。

(sic)boy - よく「メジャーに行ってあいつは……」みたいのあるじゃないですか(笑)。同時にいろんな人に自分たちの音楽を聴いてもらえるチャンスでもあって。僕が意識してたのは『CHAOS TAPE』、『vanitas』を大幅にアップデートした作品を作りたいということだけでしたね。僕は制作が好きなんです。作ってる時に音楽してるなって感じる。だから歌詞やフローに驚きを詰め込みたい。焼き増すこともできるけど、僕は常に新しいことをしたいですね。

- 最後の質問です。今回はメジャー1stアルバムということになりますが、お二人にとってこれまでの活動にどのような手応えを感じていますか?

KM - シンプルにシドみたいなラッパーが増えたよね。俺の世代のラッパーって、みんなXLのTシャツ着て、ニューエラのキャップ被るみたいな、なんだろう、「ラッパーとはこうあるべき」みたいのが強かったと思うんですよ。そういうのがシド以降明確に崩れたってのはあるんじゃないかな。

(sic)boy -「こうあるべき」みたいなのは今でも全然ありますよ。ただ僕は音楽は誰でも柔軟に始められるってことだけが大事だと思うんですよ。ロックが好きで、バンドをやりたいけど、環境的に仲間を見つけられない人が、マイクとインターフェースだけ買って、SoundCloudに音源あげるみたいな。実際僕自身がそういう青春時代を過ごしてきたし。それに「こうあるべき」って考え方も一つの正解だと思う。でも違う人もいるってだけ。唯一言えるのは、曲をたくさん作った方がいいすってこと。そのときにしか書けないことがあるから。ほんと、それだけですね。

Info

◾作品概要
□タイトル:HOLLOW(読み:ホロウ)
□発売日:7/21 (金)
□価格:5,500円税込 *1形態
□仕様:BIGポスター(882×588mm / A1変形サイズ)付き見開きLPサイズジャケット仕様
□収録曲:13曲+CDのみボーナストラック1曲 全14曲収録
□予約サイト一覧:
https://sicboy.lnk.to/HOLLOW_reserve

◾メジャー1stアルバム「HOLLOW」トラックリスト
M1. hollow out (intro)
M2. shockwave
M3. living dead!!
M4. sober
M5. (stress)2
M6. Resonance feat. Only U
M7. 君がいない世界 feat. JUBEE (Rave Racers / AFJB / CreativeDrugStore)
M8. Miss You feat. Vernon of SEVENTEEN
M9. 幽霊船 feat. Daichi Yamamoto
M10. Afraid?? feat. nothing,nowhere.
M11. Dark Horse feat. JESSE (RIZE / The BONEZ)
M12. Falling Down
M13. Wasted
M14. Patient!! ※CD限定ボーナス・トラック

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