UKのダンスミュージックシーンの最前線に立つTesselaことエド・ラッセルとTrussことトム・ラッセルによる兄弟デュオOvermonoが、アルバム『Good Lies』を本日リリースした。
それぞれソロのアーティストとしても高い評価を受けている両者によるアルバムは、ジャンルの壁をそもそもなかったかのようなパワーを持った内容となっている。兄弟だからこそ可能な率直なコミュニケーションを元に制作された本作について、またOvermonoのクリエイティビティについて、同じくアルバムをリリースしたばかりのパソコン音楽クラブが質問を投げかけた。ツアー中に滞在先のホテルから取材に応じてくれたOvermonoの回答をチェックしてみて欲しい。
質問 : パソコン音楽クラブ
通訳 : 青木絵美
- まずは、お二人のこれまでの音楽体験を教えてください。どういった経緯でどんな音楽を聴き始め、そしていつから音楽を作るようになったのでしょうか?
Truss - 音楽は子供の頃から聴いていたよ。でも最初は(ダンス・ミュージックではなく)ミュージシャンの音楽を聴いていたね。だから子供時代から俺たちは音楽と関わってきた。二人とも音楽に昔から魅了されてきた。ある時、友達のお兄さんからテープをもらったんだけど、その中にUKハードコアが入っていて、それがきっかけでエレクトロニック・ミュージックにハマった。あれほどまでに反復がすごい音楽は今までに聴いたことがなくて魅了された。今はそれがブレイクビーツだったと分かるんだけど、当時は、とにかく反復しているドラムのプログラミングにヴォーカルサンプルが入っているものだということしか分からなかった。そして13歳か14歳くらいの時にディストーションがかかったキックドラムが「ドンドンドン」と鳴っているのを聴いて、さらにハマった。それまではメタルなどを聴いていて、メタルは力強い音楽だと思っていたんだけど、テクノを聴いてからは圧倒されて、そこからはこの通りさ。
Tessela - 俺が覚えているのは、トムの部屋からレコードを取ってきて、何のレコードだったか思い出せないんだけど、トランス寄りのものがいくつかあって、それを聴いた時に夢中になった。そんな音楽は今まで聴いたことがなかったから。そこで俺はターンテーブルを2台買って、トムのレコードを使って遊んでいた。でも俺はまだ10歳か11歳くらいだったからミックスなんて出来なくて、ただミキサーのEQやエフェクトをいじって、音の感じを変えたり、違うスピードで音を出したりしていた。そういうことをやっているだけでめちゃくちゃ面白かった。その音をテープに録音して、そのテープを学校に持って行って、学校で売っていたんだ(笑)。
Truss - (笑)
Tessela - アートワークもマイクロソフトのMSペイント(グラフィックソフトウェア)で作ったりしてさ(笑)
Truss - その頃からビジネスをやっていたよな(笑)一時は俺のCDまで売りに出していたんだぜ(笑)
Tessela - 駐車場に自分の店を広げて、トムの部屋から盗んだCDを売っていたんだ(笑)
- では、音楽を作り始めたのはいつ頃でしょうか?
Tessela - イギリスではシリアルの箱に、色が変わるプラスチックのスプーンなどのオマケが入っていたんだけど、ある時、どういうわけか、そのオマケが「Dance eJay」というソフトウェアのCD-ROMが入っていたことがあったんだ。すごく基礎的な音楽制作ソフトだよ。なぜかシリアルのオマケとして当時ついていたんだ。俺が食べていた「コーンフロスティ」にそれがついていたから、家のパソコンにダウンロードして、頭がおかしくなるような、エピックトランスや、さまざまなジャンルやテンポが入り乱れている、12分間くらいの音楽を作っていたよ。まるで壮大な協奏曲だったな、あれは(笑)!
Truss -(笑)色々なループをつないで音を作れるというソフトで、できることが限られていたけれど、ステップシーケンサーみたいなドラムのプログラミング機能は付いていたんだ。その時に初めて、リズムをプログラミングできるということを知った。そこでハードコアやジャングルを作りたいと思ったんだけど、それらの音楽にはブレイクビーツのリズムが使われているということを知らなくて、4つ打ちのプログラミングでそれをやろうとしていて…
Tessela - だから、「ドッツ、ダッツ、ドド、ディッ」みたいな、すっごく変なものが出来ていたよね(笑)それが音楽にハマり始めた頃だった。そして俺が14歳の時に、トムがリーズンを誕生日プレゼントに買ってくれたんだ。当時はリーズン3だった。このソフトは150-200ポンドくらいする、すごく高価なものだと思った。だからちゃんと使わないとなって思った。しかもトムはソフトをくれた時、俺にこう言ったんだ。「これは投資だからな」と。
Truss - (笑)
Tessela - 「これはまずいな、このソフトをちゃんと習得して、しっかり仕事をしないとな」と思った。その時から音楽制作にはハマっていて、リーズンのブートレグ版を使っていたんだけど、パソコンが何度もクラッシュしていたからトムが正規品を買ってくれたんだ。俺は当時バンドをやっていたんだけど、その時点ですぐにバンドを脱退して、ソロの道を歩んだんだ。もう自分一人でパソコンで全てできるようになったからね!
- それぞれ個人のプロジェクトをしていたところから二人での活動にシフトしていったきっかけはありますか?
Truss - 「このプロジェクトをやろう!」といきなり決めた訳ではなかった。二人とも各自のソロプロジェクトに窮屈さを感じていたというか、エドは、ハードコアやジャングルの流れを汲むブレイクビーツを使った音楽を作っていて、俺は、ハードテクノやアシッドテクノにルーツを持つディストーションのかかったキックドラムが入った音楽を作っていた。そういう音楽が昔から大好きで、それは今も変わらない。でも、人々が俺たちに期待するものと、かけ離れたものを作り続けていたら、俺たちの音楽が響かないと思ったんだ。そこで自分たちの領域を広げることにした。昔から色々な種類の音楽が好きだったし、色々な種類の音楽を作ってきた。新たな領域に足を踏み入れ、色々試してみないと、新しい世界は見えないと思った。それに、俺たちは何年も前から一緒に音楽を作ってきたんだ。クリスマスに母親の実家に帰省したときなどは、二人で飲みながら「どっちが最もデカいキックドラムの音を作れるか大会」みたいなことをしていたんだ。だから昔から一緒に色々とやっていたんだけど、今までそのことに特にフォーカスしていなかった。ある時、二人で話していて、どこかのコテージを借りて、機材をたくさん持ち込んで、一緒に音楽を作ろう、ということになった。一緒にプロジェクトをやるとか、そういう何の期待も一切なしに。ただ、どこかへ行って、音楽を作って楽しんで、何ができるかみてみよう、という感じだった。それがすごく順調に行って、5日間のセッションで13−14曲くらいができた。その時に初めて、この楽曲には一貫したサウンドがあるということに気づいた。
Tessela - 意外だったよな。自分たちが何をやりたいのかという計画は全くなくて、とにかくコテージで音作りをして遊んでみて、どうなるかやってみよう、という感じだったから。出来上がった楽曲を全て聴いてみると、そこにはある特定のサウンドというか、音の性質が一貫して感じられた。そのサウンドは今のOvermonoの楽曲にも感じられるものなんだけど、そのサウンドはその時に自然に生まれたものだった。俺たちは、田舎のコテージで昼夜、作曲をしていた。スタジオではなく、モニターやミキシング台など、機材を全て家から持ち込んだんだ。それをキッチンのテーブルにセッティングして、そこから外に向かってとても綺麗な景色が見えた。周りは何もないところだったから、俺たちは夜通し音楽を作っていたよ。とても解放的な経験だった。
Truss - (頷いている)
- 二人で制作することに関して、一人きりでの制作やあるいは3人以上のバンドでの活動との違いを感じることはありますか?
Tessela - 一人で音作りをしていると、(何が良いのか、何をすればいいのか)よく分からなくなってしまう時がある。
Truss - (頷いている)
Tessela - 作った音をトムに聴いてもらうと、すごく当然で基本的なことを言ってくれたりするんだ。その通りにすると、「ああそうか、こうすればよかったんだ」と気づく。最近も俺が音を作っていてトムに聴かせたら、曲のフルート音のアンプ・エンベロープを変えればいい、もっと短くすればいいとアドバイスしてくれた。そうしたら、ずっといい感じになって、曲ができた。二人だとそういうやりとりができる。作曲している時は、お互いの意見を100%信頼できるから俺たちは恵まれていると思う。自分とは別の視点が常にあるというのはとても役に立つね。
Truss - 他の人とアイデアを交換し合うということが昔から好きだった。俺は昔からコラボレーションをするのが好きだったんだけど、Overmonoは今までにやったコラボレーションの中で一番やりやすいものだね。俺たちは兄弟だから、何かが気に入らなくても嫌味なくそれを正直に言えるし、別にそんなに気にならない。スタジオで音楽を作っていて、色々な決断をしないといけない時、相手に対して気を使ったりせずに、率直に作業できる関係性が基盤にあるのはいいことだと思う。
- 既存のジャンルごとの根幹を掴みつつも、ジャンルの枠にはまらない音楽を作り続けていると感じます。制作するうえで特定のジャンルの音楽的な「マナー」や「ルール」のようなものをどのように捉えていますか?
Tessela - 俺たちはジャンルの音楽的な「マナー」や「ルール」を考慮していないんだよ。だから1つのジャンルに合わせたり、ジャンルの枠にはまらないんだと思う。「ハウスの曲を作っているから、これはやっちゃいけない」などという考え方で曲を作ったことは一度もないと思う。そもそも、作曲しているときに、特定のジャンルを想定して書いていないんだ。
Truss - スタジオで音作りをする時は、特定の枠に収まっていないといけないという考えは持たないで制作に臨んでいる。Overmonoは、「これをやったらどうなるだろう」「これとこれをぶつけてみたらどうなるだろう」みたいな姿勢で制作をしているんだ。それでどうなるかやってみる。多くの場合、ダメなものができるけれど、時々すごく面白いものができて、「これはいいな!」と思う。その音を、誰かがガラージだと捉えてもハウスだと捉えても、それは俺たちには関係のないことだ。
Tessela - ポップミュージックでも、何とでも捉えてもらってもいいよ。
Truss - クリエイティビティのさまざまな方向性を探ってみるのが楽しいんだ。
Tessela - YouTubeでシンセの使い方の動画なんかがあるんだけど、そこではプラグインなどを使ってシンセ音の出し方を説明している。「これはディープハウス的なサウンドです」とか「でもこのパラメーターを変えるとベースハウス的なサウンドになります」とかの説明があるんだけど、そういう超細かくて狭いサブジャンルがあるんだ、そんなの知らないよ、と思った(笑)!このジャンルを作るなら、このパラメーターを使用しなければいけない、などそれぞれに細かいルールがあるみたいなんだけど、俺たちはそういう考え方で音楽を作っていないんだ。その時々で良いと思うサウンドを作っているだけだよ。
- またオリジナリティーのある音楽を生み出していくために、特定のシーンに帰属するか、あるいは距離をとるかといったことをどのように考えていますか?
Truss - 俺たちは、自分たちが特定のシーンに属しているという自覚はない。おそらく何らかのシーンにはいると思うんだけど、でもそれが何なのかはよく分からない。自分たちの「バブル」にいることに満足している。別にシーンを拒絶している訳ではないんだけど、自分たちの領域を狭めたくないんだ。自分たちがやりたいことを、タイミングに合わせてやりたい。
Tessela - (頷いている)
Truss - レコードをリリースする度に、以前のものとは違ったサウンドのものをリリースできているのは、人々が俺たちのことを信用しているからだと思うし、それは特別なことだと思う。俺たちがそういう立場にいることはとても恵まれていることだと思う。
- お二人の音楽はリスニングミュージックとしてもクラブツールとしても、とてもエキサイティングです。制作の際にこのバランスを意識することはありますか?そもそも、そのような意識の垣根は存在しませんか?
Tessela - それは、「車のための音楽」だからだよ(笑)!
Truss - (笑)
Tessela - 俺たちが作る音楽はいつだって「車で聴くための音楽」なんだ。それが、クラブで聴く音楽と、家で聴く音楽のちょうどいい中間地点だと思っている。自分たちの音楽を車で聴いてみて、良いと感じたら、俺たちは満足する。それはミキシングの観点からでもあるけれど、バイブスというか、それを聴きながら気持ちよく運転できるのであれば、それはクールな曲だということになる。もちろんミキシングのレベルを確認するために車で聴いているという点もある。Joy Orbisonと一緒にスタジオに入ったとき、そこにあったモニターはおそらく10万ポンド(日本円で約1600万)くらいする代物で、SSL (Solid State Logic)のデカいミキシング・コンソールもあった。俺たちはOvermonoのアルバムをそこで作っていて、色々な回線を通して音を聴いて、「これはすごいね、素晴らしい!」と思った。その音源を車で聴いてみようということになり、駐車場にあったトムの車の中で聴いたんだけど、すぐにみんな「これは違う」と思った(笑)これは全く合っていないから、もう一度、基礎からやり直さなければと思った(笑)何が間違っているのかピンポイントで指摘するのはできなかったんだけど、とにかく、何かが間違っていた。だからスタジオに戻って最初から全てやり直したよ。
- ヴィジュアルの話になりますが、Overmonoのジャケットといえばおなじみのドーベルマンの写真のイメージがありますが、この犬はお二人の愛犬ですか? またドーベルマンを起用してきた理由があれば教えてください。
Tessela - 俺たちの犬じゃないよ。友人のだ。俺たちは犬が大好きで、ドーベルマンは長い間、間違ったイメージが植え付けられていると感じるんだ。耳が直立していて、攻撃的になるように躾けられている、凶暴な犬というイメージがあるけれど、本当は全くそんなことないんだ。普段は、人懐っこくて、すごく可愛い犬なんだよ。でも人間の介入によってめちゃくちゃにされてしまった。だからドーベルマンの汚名を返上しようとしているんだよ(笑)。
Truss - ドーベルマンの本来の姿を見せようとしているんだ(笑)
- 日本で音楽を作っているファンのために、制作の少し具体的な質問をさせてください。制作に使用しているDAWや音源など基本的なセットアップを教えてください。またアナログとデジタルソフトウェアのバランスなどに拘りはありますか?
Tessela - 全部使うよ!
Truss - ワークステーションにはAbleton Liveを使う。それが唯一、コンスタントに使っているもので、それ以外は毎回変わってくる。去年からツアーをたくさんやってきたから、最近はプラグインだけを使っている場合が多い。でもそのセットアップが良いということが分かってきた。それ以前はロンドンに共有スタジオがあって、そこにたくさんのアナログ機材があって、色々なものと配線されていたから、それとは全く対照的だった。俺たちは常に新しい作業方法を模索していて、それは新しいセットアップの仕方であったり、新しいプラグインや機材を使ってみることだったり、配線の仕方だったりする。決められたセッティングで音楽を作っているわけではなく、常に変化しているんだ。
Tessela - このアルバムの楽曲に関しては、スタジオでシンセやドラムなどの音源を録音するケースが多かった。そうすることによって、ツアー中でも、スタジオで作って録音しておいた音源を使って作業することができた。その音源をどこにでも持ち歩いて、加工したりすることができた。でもそのやり方は毎回変わっていて、飛行機の中でラップトップを使って作った曲もあるし、スタジオでたくさんの機材を使って作った曲もある。やり方は毎回違うんだけど、結果としてできるものは、いつも同じようなものができる。求めているサウンドのイメージがいつも明確だからね。だからやっていることは同じなんだけど、使っているツールがその都度違うということ。
- 制作のフローはどのようなものですか? 一緒にスタジオに入って作業を進めることが多いのでしょうか? それとも二人それぞれのスタジオでの作業が多いですか?
Tessela - それも毎回全く違うんだよ。決まった作業の仕方というものがないんだ。毎回違うやり方でやることが俺たちにとって重要なのかもしれない。一緒にスタジオで何日もかけて一緒に作曲をしてから、その後は、キッチンのテーブルにパソコンとスピーカーを2台設置して、そこでもう何日か一緒に作曲したりする。そうやって作業の仕方を変えていくことが良いと思っている。ツアー中に作曲するのもその点がいい。ツアーの滞在先のホテルのベッドに寄りかかって、一緒に音楽を書いたり、滞在中の都市でスタジオを借りてそこで音源を録音したり作業したりもする。だから決まったやり方は全然ないんだ。曲は毎回ドラムから作る、とかそういうのもなくて、曲をどのパートから最初に作るというのも毎回違う。
Truss - (頷いている)
Tessela - だから結構ぐちゃぐちゃなんだ(笑)
Truss - ハハハ!
- 曲の中で絶妙に配置されるクラックル(ヴァイナル)ノイズやホワイトノイズなどの扱いがひじょうにカッコいいです。ノイズを使うことに意識的な拘りはありますか。
Tessela - そういう音は大抵、スタジオの古い機材からの音なんだ。放送用の古いイコライザーがあって、ほとんどの音はそれに録音されるから、変なファズ音やヒス音が加わるんだ。他にも古いコンプレッサーなど、同じようなことが起こる機材がいくつかある。「音と音の間の空間にあるもの」、という概念が面白いと思うんだ。
Truss - それから素材を何度もリサンプルするのも好きなんだ。だから、俺たちが最終的に自分たちの音楽に取り入れるものは、元の素材と全く違っていたりする。
Tessela - うん。
Truss - そのリサンプリングの過程で、雑音やノイズやヒスが拾われていく。それが結構気に入っている。スタジオで作業した刻印みたいな感じがして。スタジオからの音がまるで生き物のような感じがして。
Tessela - そのスタジオの音という意味だからね。スタジオをどうやってセッティングするかとか、何をどこに通して録音するのかということを俺たちはじっくり考えるんだ。結果としてそのスタジオでできた音は、そのスタジオの環境の音だから、それが聴き取れるのは素敵な感じがする。それに音楽の周辺に、余分なノイズがあるということで、乾き切ったところではない、音楽が存在できる場所が生まれるような感じがする。音楽が存在できる空間にあるような感じがするんだ。
Truss - Overmonoの音楽はミニマルなものも多いから、その(何もない)空間を埋めることで利点が生まれると思うんだ。全ての人がそれに気づくわけではないけれど、そういうノイズを取り除いたら、全く違う風に聴こえると思う。
Tessela - 俺が聴くと、ノイズのレイヤーが多すぎて、メイン部分の音楽が聴きたいのに気が散ってしまうこともあるよ(笑)
- ドラムの音色がどの曲も秀逸かつ印象的です。サンプル選び・音作りに何か考えはありますか。
Tessela - ドラム音の多くはスタジオで録音されたものが多い。ドラムマシーンやシンセで録音するドラムサンプルはあまり使わないね。ドラムをサンプルする時も、色々な加工を何度もするから、元の状態からかけ離れている場合が多い。キックドラムはMS-20を使ったり、シンセのノイズを使ってそれからドラム音を作ったりする。その時もシンセドラムみたいに聴こえないような音にしている。あの音はあまり好きじゃないからね。それから色々な加工をするんだ。さっき話したような放送用のイコライザーや、サチュレーターなど色々な機材に音を通す。自分たちの求めているサウンドは分かっているから、それになるまで色々と試すんだよ。結構時間がかかる時もあるけれどね。
Truss - (頷いている)
Tessela - 俺たちが今まで作ってきた大量のドラム音のサンプルライブラリーが出来てきたから、それを使ったりもする。同じようなサウンドを毎回使いたくないんだ。たとえば、変化がないサンプルやスネアの音が聴こえてくるというのはやりたくない。ドラムにも多少の動きを加えたいんだ。
- Ableton LiveとOctatrackを使用していると他のインタビュー記事や動画で拝見しました。どちらもシーケンサー、サンプラー、サウンドエンジンを組み合わせたワークステーションですが、それぞれの利点はありますか。
Truss - Octatrackは作業の仕方が決まってくる。Abletonの方が真っ白なキャンバスのような使い方が出来るから色々な使い方ができる。Octatrackは、(メーカーの)Elektronが設定した枠組みの中で操作しないといけないから作業の仕方が多少狭められる。でもそれには利点もあって、それは、自分が普段ならしないようなことも、結果としてやるようになるということ。Octatrackでできることは、全てAbletonでもできることなんだけど、Octatrackを使っていて気づくのは、もし自分がAbletonを使っていたら絶対に生まれていなかった音ができたりするということ。
Tessela - 嬉しい偶然の産物みたいなものだね。
Truss - それにハンズオンな操作方法も好きで、音作りに簡単に夢中になれる。Octatrackを使ってその世界に没入して、サンプルを組み合わせたり、LFOやクロスフェーダーをいじったりと、色々なことをやり続けていると、自分がデジタルのオーディオ・ワークステーションを使っていたら絶対に生まれなかったであろう何かが出来上がったりするんだ。
- ヘッドホンもしくはスピーカー、どちらで作業される時間が長いですか。
Truss - ヘッドホン。
Tessela - 最近はヘッドホンが多い。最近、2組のAirPods(ワイヤレスイヤホン)からAbletonの音源を同時に聴くことができるようになって、かなり衝撃的だったよ(笑)。すごく作業がしやすくなった!
Truss - 昨日の夜もパブで飲みながら二人で音楽を作っていたんだけど、その時も二人でヘッドホンから音を聴いていた。それからラップトップ内蔵のスピーカーも使うよ。新しいマックブックのスピーカーの音はすごく良いからね。もちろんスタジオにはスピーカーがあるんだけど、最近はスタジオで過ごす時間がどんどん減っていっているんだ。昔はヘッドホンはほとんど使わなかったんだけど、ここ2年はヘッドホンを使っての音作りの方法を学んでいるんだ。それにも慣れつつあるから良い感じだよ。
- 今年はフジロックでの来日公演が決まっています。日本での公演はお二人にとっていかがでしょうか。
Tessela - 待ち遠しいよ!
Truss - すごく楽しみ!
- そういえば、大阪で公演をやっていましたね。
Tessela - ああ、だからとにかく楽しみで待ち遠しい!
Truss - 日本での公演も楽しみだし、日本で時間を過ごすのも楽しみなんだ。
Tessela - いろんなものをたくさん食べたい(笑)!
- エレクトロニックアーティストのライブにはさまざまな形態がありますが、Overmonoのライブショーはどういったものなのでしょうか。
Tessela - 6フィート(約2メートル)のドーベルマンが真っ向から突進してくる感じ(笑)。
Truss -(爆)
- 最後に、リリースされるデビューアルバムはお二人にとってどのようなものでしょうか?
Truss - Overmonoの今までの5年間を包括する、一貫性のある作品。俺たちは、この5年間、このアルバムに向けて動いてきて、Overmonoのサウンドという世界観の基盤を構築してきた。そしてこの作品は、俺たちが今までリリースしてきた音楽を代表するものであり、また、今後進むかもしれない方向性をも示すものとなっている。
- ありがとうございました!
Info
label: XL Recordings / Beat Records
artist: Overmono
title: Good Lies
release: 2023.05.12 ON SALE
国内盤CD
XL1300CDJP ¥2,200+税
解説+歌詞対訳冊子 / ボーナストラック追加収録
限定輸入盤LP (限定クリスタル・クリア)
OLE1896LPE
輸入盤LP(通常ブラック)
TOLE1896LP
BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13234
TRACKLISTING
Feelings Plain
Arla Fearn
Good Lies
Walk Thru Water
Cold Blooded
Skulled
Sugarrushhh
Calon
Is U
Vermonly
So U Kno
Calling Out
Dampha *Bonus Track For Japan
パソコン音楽クラブ
◆2023.5.10 Release 4th Album
『FINE LINE』(読み:ファインライン)
◉生産限定特別仕様盤
透明スリーブケース+28Pブックレット+ロゴステッカー+オリジナルステッカー
PSCM005 ¥3.500 税込
◉通常盤
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<収録曲>
M-1 Prologue
M-2 PUMP! feat.chelmico
M-3 Ch.XXXX
M-4 It’s(Not)Ordinary feat.MICO(
M-5 KICK&GO feat.HAYASHI AOZORA
M-6 Dog Fight
M-7 Omitnak
M-8 Sport Cut
M-9 UFO-mie (Album Mix) feat.The Hair Kid
M-10 Phase-Shift(skit)
M-11 Playback
M-12 Terminal
M-13 Day After Day feat. Mei Takahashi (LAUSBUB)