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【インタビュー】uami『昼に睡る人』|ヴェールに覆われたポップネス

どんぐりずやPICNIC YOU、tamanaramenなど剥き出しの若き才能を多数擁する注目のレーベルCONNECTUNE。その第1弾アーティストとして2019年より勢力的に活躍を続けるのが、iPhoneでのトラックメイキングやライブを主軸とする奇才シンガーソングライター・uamiだ。

2018年頃に突如としてSoundCloud上で発表した音源やhonninmanとのユニット・解体ザダン壊が話題を呼び、続く2019年には作品集『Composition baby exercise book (five)』『Composition baby exercise book (long)』に加えEP『消費散文』を3作同時リリースし、70曲もの楽曲を一度に発表。その後も多数のトラックを世に送り出し、君島大空、没 a.k.a NGS(Dos Monos)、サ柄直生といったアーティストとジャンルの壁を飛び越えるような共作も手掛けてきた奔放な活動で注目を集めてきた。

そんな中、待望の1stアルバム『昼に睡る人』が、対を成すEP『zoh』と同時に11月24日にリリースされた。エクスペリメンタル感と繊細さが同居する唯一無二のサウンドに神秘性すら感じられ、且つ音楽家としての背景には未だ謎も多い氏に、作品についてのヒントを尋ねた。

取材・文:NordOst

- まず『昼に睡る人』『zoh』を聴かせていただいた感想ですが、手堅さや守りの姿勢を感じさせない、挑戦的な作品として仕上がっていることに感動しました。一貫してiPhoneで制作されていることが不思議で…。グランドピアノの厚みやuamiさんらしいグリッチ感がGarageBandの中で同居しているのは、ちょっと想像できないぐらい凄いなと。例えば収録曲の“灰の在処”を聴いているときに、僕は再生機器の故障を疑いました。

uami - あはは。ありがとうございます(笑)。嬉しいですね。

- 作品のリファレンスやアイデアの元となったのは、どういった作品でしょうか?まずはそこからお伺いできればと思います。リスナーの立場としては、謎の多い神秘的な雰囲気を感じるので…。

uami - アイデアの元ですか…うーん…。まず作曲しようと思うキッカケって色々あるんですけど、大きく2パターンあって。最近聴いてた曲の中で「これやりたいな」とインスピレーションを得てバッと作りはじめる場合と、なんとなく「音作ってみようかな」と思って目的なくGarageBandを開く、みたいな感じで。

- uamiさんのルーツにはどんな音楽が影響していますか?

uami - そもそも抽象的な音楽、例えばBjörkとかを聴きだしたのは作曲を始めてからで。3~4年前の話ですね。それまでは椎名林檎とか、K-POPとかみたいなメジャーなポップスを聴いてきた期間が自分の人生の中では長くて。核となっているのはそういうものなんですが、王道みたいなことはしたくないな、とは昔から思っています。

- あくまでもポップスが根底にあるんですね。作曲を始めたきっかけというのは?

uami - まずはGarageBandというアプリを見つけて、カバー曲のBGM(トラック)を作るところから始まりました。他の人が作ってるようなカラオケ音源だと著作権とかが怖いな、と思って、かと言って当時はピアノの弾き語りをバリバリ出来るわけでもなく、ただ耳コピは少しできたので。そう思って自分でトラックを作ってカバーを始めたのが…諸悪の根源みたいな(笑)。でも、「趣味でカバー曲作ってる」みたいな説明を人にするのが面倒になってきたので、じゃあ作曲をしてみようかなって。決して音楽系の学校に通っていた、とかは無いですね。

- なるほど。uamiさんは『powwwerrr』や『K/A/T/O MASSACRE』などの配信イベントに映像出演という形で積極的に関わっている印象ですが、その場合でも通常のイベントでも、毎回独特の世界観を確立されていますよね。いわゆる普通のアーティストとは違うところで「ライブ感」を追及しているように思われますが、そうするようになった理由はありますか?

uami - ライブにお誘いをいただきはじめたのはSoundCloudに自作曲をアップロードするようになってからですね。歌っているときに顔を見られるのが苦手なので、ヴェールを被ったりする試みに取り組んでいますね。ただそれも私のイメージとして定着してしまっているので、今後は例えば自分の顔にアクセサリーを付けるみたいな、今までと違うアプローチを取るかな。

- VRアバターの文化、海外のWebを拠点としたアーティストが表面するような反・ルッキズムの姿勢を感じていて、今後のパフォーマンスも楽しみです。

uami - あはは。最近は人前で歌えていなかったので、そろそろ外でやってみてもいいかなと思っています。顔は隠したいですけど。例えば皆さん携帯でライブの模様を録ったりしてますけど、そこを「録らないでほしい」と呼びかけたり、あとは手拍子などを求めたりすることには忌避感がありますね。

- 表現者側とつながるような、双方向性を求めるギャラリーも多いとは思いますが、ひとつにまとまることを強制されるのも辛いところがありますよね。

uami - そうですよね。私もライブを観に行って何かを強要されるのが苦手です。

- 『昼に睡る人』の話に戻りますが、今回のコンセプトに「昼間の微睡みを邪魔するつもりはなく、しかし再生機の調子が悪い模様です。」というものがあり、かつ楽曲それぞれにさまざまなテーマが付加されていますよね。例えば“はるのめざめ”なら「穢れた精霊」という抽象的なモチーフや、“きにしない”のように「電話の不具合」という日常性を感じさせるものが混在しているところも興味深かったです。現実/非現実を横断する感覚や、インストゥルメンタルを「休憩」と取る視点なども新鮮で。どちらに振り切った表現をするアーティストも多い中、なぜこういった形での表現を選択したのでしょうか?

uami - 各曲のテーマはリリックの要約みたいなイメージですね。コンセプトの大枠は、大体自分が日常で感じた経験や、そこから考えたことが元になっているので。文章だけを書くときとかは空想をベースにすることが多いんですが、歌詞は基本的に自分の経験がベースになっています。

- あくまでも現実から得た着想が下地にあるんですね。差し支えなければ具体的なエピソードなどを教えていただけると嬉しいです。

uami - 例えば“きにしない”だったら自宅で知人と電話をしているとき、部屋の外から聞こえる雨や風の音がうるさく感じたり、「電話をもう切りたいな…」みたいなときに感じたモヤモヤが着想になっています。“はるのめざめ”に関しては、アーティストの作品と言動とでギャップを感じたことが元になっています。それに不満をいだいてしまうことがありました。

- 情報過多に関するもどかしさ、のような感じでしょうか。

uami - そうですね。あと“灰の在処”の「去年の私は死んだけど」という歌詞は、自分という物質的存在が続いているのに精神は変わり続けていると思っていて、去年の自分と今の自分は他人だな、と感じたことについて歌っています。去年の自分まで面倒見なくていいじゃん、切り離して考えてもいいじゃん、みたいな。「意識ってなんだろう?」と日頃から考えていて。作曲を始める前までは「生きる/死ぬってどういう状態?」って考えてましたけど、始めてからは「自分という存在って何だろう?」と自問自答するようになって。そういう思考の過程や精神状態が作品に現れているかもです。歌詞についてはそういう感じですが、トラックに関してはスピーディーにパッと作ることが多いので、考えて制作するというより「自分の中に埋め込まれた手順書」みたいなものに沿って感覚的に音を置くことがありますね。大体バーって作ってから、ちょっと位置をズラしたり納得する配置にしたり。

- 音楽を音楽として捉えるというよりは、図形や構造物のような眼差しで作っているような感覚でしょうか。単純な作曲とも違って。そこが面白い所でもあるな、と思っていて。

uami - そうかもしれないですね。「ここに音があったら気持ちいい」「ここしかないな」というときもあるし、「どこに置こうかな?」と悩むこともあるし。構造物的な要因はあるかもです。

- uamiさんには昔から一貫した姿勢として「エクスペリメンタル感とアコースティック感の同居」のようなものを感じます。例えばグランドピアノの音色などもすべてiPhone由来のものなんでしょうか?

uami - 『昼に睡る人』の中には実際のグランドピアノを録音したものと、GarageBandのピアノの音色を使っているものが両方存在してて。“在処”、“灰の在処”は生楽器の音を録音してiPhoneに入れてますけど、“弾けて”は全部GarageBandの画面上で打ち込んだ音で、ピアノの音色もそうです。その後でベロシティを調整したり、音を組み替えたりしています。

- すべてをGarageBandでまとめていく、というのは基本的なスタイルなんですね…。驚きました。生楽器を外から取り込もうと意識しはじめたのはいつ頃からでしょうか?SoundCloudや2019年頃の音源はGarageband特有の質感が感じられますが。

uami - 2018年頃から曲をアップロードしはじめてから、ヒップホップなどを聴きはじめて。既に存在する曲の断片みたいな音とか、ひとの話し声がトラックに入っているのが気になっていたら、それがサンプリングだよ、と教えてもらって。すごく驚きがありました(笑)。そういう手法を知ってから自分の曲に録音した外の音なども入れ込むようになりましたね。GarageBandの音色だけでは出せない雰囲気や質感があるな、と思うようになったのもサンプリングって概念を知ってからですね。作曲を始めて1年ぐらいの頃かな。

- サンプリングを知るきっかけになったヒップホップの楽曲や、衝撃を受けた楽曲などはありますか?

uami - この曲ってのは特に無いんですけど、当時聴いていたのは…どれだろうな…。(iPhoneのライブラリを見ながら)仙人掌、JJJ、Fla$hback$とか。ラップはそのあたりから聴きはじめましたね。

- その当時は国内アーティストに目を向ける機会の方が多かったんでしょうか?

uami - どうですかね…。ヒップホップは国内のものから聴きはじめましたけど。アブストラクトな表現は海外の方から、ヒップホップは日本のものが多いですね。音楽好きの友人から教えてもらってApple Musicで探したり、関連アーティストとして出てくる楽曲を聴いたり。

- ヒップホップの話題が出たところで伺いたいのですが、Dos Monosの没 a.k.a NGSさんと共作した『踊る火炎』(2020)やHonninmanさんと活動している解体ザダン壊、サ柄直生さんとの『まねごと』(2021)など、ジャンルレスにさまざまな方と共作することに積極的ですよね。uamiさん自身が多作であるのはもちろん、シーンを横断した動きが顕著だと思うのですが、その背景やきっかけなどはありますか?

uami - 「この人めっちゃ良いな、何か作りたいな」と思うことが動機ではありますが、私から一方的に依頼をしたことはほとんどなくて。「一緒に作りたいな、作ろうよ」と双方向的な関わりのなかで始まることが多いですね。サ柄さんに関しては年明けに「歌っていただけませんか」というお話をいただいて、そこからやり取りが始まりました。

- サ柄直生さんやネットレーベルのbrutshitを運営するHallycoreさんなど、Webシーンとの結びつきが強いアーティストの方々と混ざり合っているのも特徴的ですよね。Hallycoreさんのオンラインイベント『cicada』に出演されていたり。

uami - その辺のシーンに関しては、~離さんとの交流がきっかけですね。3年ぐらいの付き合いになるんですが、この間初めてお会いできました。~離さんの楽曲を含めた活動のスタイルは自分も好きだし、〜離さんも私の曲を初期から聴いてくれていて。サ柄さんも、~離さんを介して私を知ってくれたみたいで。

- そこから今のような関係性が始まっているのは面白いですね。ここ最近はDIYな活動をWeb上で行う若手のプロデューサーさんも増えてきていて。Webの出演はコロナ以降増えた感じでしょうか?

uami - そうですね。Web出演も出たいと思ったものを選んでいます。2019年頃にSoundCloudなど経由でライブイベントのお誘いをたくさんいただいたんですが、私はライブハウスの環境に苦手意識があり、観たいライブがあったのに入口で帰ったこともあるほどです…(笑)。社交的ではないと思いますし。ライブというものが分かってなかったので、逆に「出てみないと分かんないな」と思ってオファーをいただいたら極力出る、みたいな感じでした。コロナ禍で活動をセーブしてからは、今後は自分の雰囲気に合っていそうな出たいイベントを選定していきたいなとおもっています。

- ちなみに「出たいな」と思うイベントには何か共通する要素はありますか?

uami - 共演者の顔触れとか、会場の雰囲気との自分の相性とか考えます。あとはフライヤーかっこいいかとか大事かもしれないです(笑)。告知をしたいかどうかですね。イベント全体の雰囲気ですかね。Hallycoreさんの『#cicada1009』はサ柄さんから誘ってもらって、「出ます出ます!」って感じでした!(笑)

- 個人的には『powwwerrr』に出演されてるのもかなり面白いな、と。何でもありのハジケたイベントで、BBBBBBBさんのアッパーなテンションに静謐さのある映像で応える感覚も、同じような方は他にいないと思うので…。

uami - 西園寺流星群さんはAVYSSのオンラインイベント(『AVYSS GAZE vol.3』)に出ていたのを観ていて、勝手に「メチャクチャかっこいいな~」と思っていたら西園寺さんも私のことを知ってくれてたから誘ってくれて、みたいな流れでした。

- やはりAVYSSのような現行のエクスペリメンタルなシーンを追っているところは注目されているんでしょうか。

uami - はい。AVYSSのプレイリストに自分の曲を登録してもらったときが一番テンションが上がりますね(笑)。嬉しくなります。

- 制作をはじめたのがコロナ以降ですよね。正に「去年の私は死んだ」というリリックのように、uamiさんの作品には2019年、2020年、2021年でそれぞれ全く異なる雰囲気があるように思えます。今の自分を大事にされている姿勢というか。

uami - 最初はやっぱり「他人と違うこと」にこだわっていましたけど、「頑張って作った」とか「これだけ作りました!」みたいなのって、どうでもいいって言うとアレですけどあまり意識はしてないですね…。ビデオばかりがすごすぎてもそれは音楽なのか疑問を抱くところです。いまは、聴いていて心地良いものが作りたいですね。自分が好きで聴けるかどうかも大事にしたいと思っています。たくさん作曲をしてきたので、「いつでも作れるぞ」って時期もあれば、「もう作れないかも…」と悩むときも勿論あるので、だから作れるときに作るようにしていますね。

- MVについての話題が出ましたが、音楽と映像的なイメージについては切り離して考えているんでしょうか。先ほど話題に出た映像出演などでは、かなりビジュアル面についてのこだわりを感じたのですが。

uami - 正直視覚からの情報ってたくさん入ってくるので、ビジュアルをキッカケに入ってもらうことはしょうがないとは思うんですけど、そこは切り分けたい気持ちもあって。「でもビジュアルも大事だよな…でも音楽が…」という感じで、悩んでますね(笑)。

- 『昼に睡る人』『zoh』の前に『火と井』という非常に実験的なアプローチの作品もリリースされていましたが、このコントラストにはどのような意図がありますか?

uami - 『昼に睡る人』についてはフィジカルとしてまとめるから、ポップスの質感を念頭に置いて制作していました。意識的に分けています。

- 今回は初のフィジカルリリースとなりますが、作品をCDにしようと思ったのは?

uami - CONNECTUNEの高木さん、堀さんには「フィジカル出してみるのも良いんじゃない?」という話は以前からしていただいていて。そんなに興味が湧かなかったけど、時間が経って、CD出したいと思える時期が来たので。他の方の作品で、ディスクを外すとケースに別のイメージが現れて…みたいな体験に刺激を受けたので、デザインも自分で請け負って仕掛けを凝らしてみました。フィジカルにしかない質感を意識して。

- 今作におけるポップスの質感や、フィジカル特有の仕掛けといった部分は、ある意味ルーツに立ち返るような意識もあったんでしょうか。

uami - おっしゃる通りです。最初に自主制作した作品はJ-POPでありながらBGMになるようなものだったんですけど、そのときと同じイラストレーターさんにジャケットを頼んで。最初の作品に近い質感をトータルで意識しました。聴き心地が良くて気に入っていたので。その中でも違和感というか、仕掛けみたいなものは配しつつ。君島大空さんが昔オススメしてくれたりした盤なんですけど、今は廃盤で再発の予定も今のところは未定です。

- ポップさとアブストラクト感、さまざまなシーンとの関わりなどを経て、今後挑戦してみたい表現などはありますか?

uami - 先ほどの話に戻りますけど、たとえばミュージックビデオと音楽の質感の釣り合いは大事にすべきと思いつつ、それとは別で映像作品を作っていきたいなと思っていて。実は小6ぐらいの頃にクラスメイトを毎日家に呼んで映画を作っていたこともあって。昔から映像作品には興味がありますし、自分で劇伴音楽も作って、いつか映画監督とか出来たらいいかな…と思っています。

あとはライブですが、今はすべてをiPhoneで完結させていますが、流すだけじゃなくて演奏もできるし、実際に自分も制作時にiPhoneを手弾きして制作もやっているので、たとえばiPhoneを50台とか用意してそれを同時に動かす…みたいなパフォーマンスができたらウケるかな、とか考えています。

『zoh』のフィジカルリリースも計画中です。CDに限らず音を聴けるモノってたくさんあると思うのですが、具体的な内容は、とりあえずお楽しみに…ということで(笑)。最近Instagramでメチャクチャ自分の心に刺さるアクセサリーを見つけてしまってからは、アクセサリー作りにも興味があります。

- 単純な音楽としての感動や興奮にとらわれないのがuamiさんの魅力だと思っているので楽しみです…!過去作の『Composition baby exercise book (five)』にはXXXtentacionを彷彿とさせる激しいアプローチの楽曲が収録されていましたよね。予想もつかない新たな表現に期待しています。

uami - あ!そうだ。来年はまたラップをやりたいと思っているんです。ポップスとしての表現は今年出来た気がしていて。私がラップに取り組んでいたことを知らない方も多いと思うので、そういった方々にもなんじゃこりゃって言ってもらえるような雰囲気を目指したいですね。

- ありがとうございました。

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