FNMNL (フェノメナル)

【特集&プレイリスト】mitokon & audiot909が選ぶ「進化するAmapiano」

昨年から今年にかけ、南アフリカ発のダンスミュージックAmapianoは目覚ましい進化を見せている。ハウスを根源とし、そのスムースなグルーヴ感が多くのリスナーに衝撃を与えたこのジャンルは、今や南アフリカを飛び出しUKやアメリカ、そしてここ日本にまで広がりを見せている。SNSでその名を目にすることや、クラブでAmapianoのトラックを耳にする機会も少なくないはずだ。

FNMNLでは昨年、TYO GQOMのメンバーであり南アフリカの音楽やカルチャーを発信し続けるDJのmitokon、そしてAmapianoに関する情報を日本で一早くキャッチし、日本初のAmapianoの作品『This is Japanese Amapiano EP』をリリースしたプロデューサー、DJのaudiot909の対談を掲載した。

それから一年以上が経過し、日進月歩の変化を続けるAmapianoの現状を捉えるべく、両氏に「進化するAmapiano」をテーマとしたプレイリストを選曲してもらった。

それぞれ異なる視点から選ばれたトラックと詳細な解説により、Amapianoの魅力が更に理解出来るプレイリストとなっている。

写真提供:mitokon

mitokonが選ぶ10曲

1. Blaqnick & MasterBlaq - The Whistling Man (feat. Uncle Jo)

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Blaqnick & MasterBlaqは今南アで大ヒットしているDBN GOGOの“Khuza Gogo”にも参加している注目の若手プロデューサーズ。

口笛はパーティーなどで踊る際に盛り上げたり、人を呼び止めるために吹いたりと南アでは日常的に使われますが、ギャングが仲間との伝達方法として使う場合もあり(夜道を歩いている最中に口笛が聞こえたら大変危険なんだとか!)曲中に銃声が入っていたりすることもあってやや不穏さを感じる曲ではありますが、TikTokやInstagramではこの曲を使用してコミカルに踊るのが流行っています。

Amapianoはこの1年でより低音が効いてディープな印象の曲が増えたように思います。今回選曲するにあたって、Amapianoが南アではポップスとして受け止められていることをお伝えできればと思いそういった曲を中心に選びましたが、もちろんクラブミュージックとしても大変魅力的で、この曲もサウンドシステムでばっちり鳴ってかなりかっこいいです!

2. Reece Madlisa & Zuma - Jazzidisciples (Zlele) [feat. Mr JazziQ & Busta 929]

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元JazziDisciples※のMr JazziQ、そしてBusta 929のコンビによるプロデュースで、Reece MadlisaとZumaがAmapiano、そしてクワイトのスターとして爆発的にヒットしたきっかけの曲です。曲とともに“Junkpark”と呼ばれる彼らのダンスのステップが流行り、これもソーシャルメディアによってものすごく広がりました。

※JazziDisciplesはAmapianoのパイオニアの一組でもあるデュオでしたが、残念ながら分裂してしまったようです。

3. Busta 929 & Mpura - Umsebenzi Wethu (feat. Zuma, Mr JazziQ, Lady Du & Reece Madlisa)

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これも大ヒット曲!プロデューサーのBusta 929とクワイト・ラッパーMpuraによる曲で、ナショナル・アンセムとまで言われています!この曲もとにかくソーシャルメディアでのダンス動画がたくさん!「4歩下がって3歩進む」ようなダンスでパーティーでも相当盛り上がります。参加メンバー全員がAmapianoの重要なアーティストです!

4. Musa Keys - Vula Mlomo (feat. Sir Trill & Nobantu Vilakazi)

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これまた大ヒット曲!Sir Trillが「愛している」と優しい歌声で甘く歌っていると思っていたら、どんどん盛り上がっていきスキャットとログドラムで爆発する曲の構成が最高です!!エモーショナルで優しい部分と強く激しい部分が一曲のうちに同時にあるのが南アらしくていいなと思います。パーティーでは女性ファンを一人ステージに上げて見つめあったり愛を囁いたりするパフォーマンスをしていて、マイケル・ジャクソンのパフォーマンスでそういうのがあったな……と。そういえばMusa keysは自身のことをツォンガのマイケル・ジャクソンと言っていました!(Musa keysはSho Madjoziと同じツォンガ民族です)

5. De Mthuda - John Wick (feat. Sir Trill & Da Muziqal Chef)

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2019年に“Shesha”が大ヒットしたDe Mthudaの現行ナンバーワン・ヒットがこの曲!“Vula Mlomo”でも歌っているSir Trillがここにも参加しており素晴らしい歌を乗せています。De MthudaはAmapianoのプロデューサーの中でも音色がユニークで、Amapianoの元になったDeep Houseにより近いような疾走感のある曲調が特徴的です。こういった曲はなかなか他のプロデューサーにはありません。

この曲も非常に流行っていて、一夜のパーティーで何度もプレイされ、プレイされすぎて某ヒップホップ・ラッパーが苦笑いでそれをツイート、なんてエピソードもありました。ちなみにSir Trillは今そこら中で引っ張りだこのシンガー。彼が歌っている曲は大体良い、と目安にしています!

6. Kwiish SA - LiYoshona (feat. Njelic, MalumNator & De Mthuda) [Main Mix]

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“Iskhathi (Gong Gong)” でログドラムを一般的にしたKwiish SAの素晴らしい最新アルバムから!南アの人たちがみんな大好きな曲で、パーティーで大合唱が起こっている場面をよく見ます。この曲はとてもスピリチュアルな曲だという南アの人の評をよく見かけていて、私はまだその意味を探しているところですが、みんながこの曲をとても幸せそうに歌い踊っているのを見ると泣けてきてしまいます。本当に素晴らしい曲!

7. Major League Djz & Abidoza - Ayeyeye (feat. Costa Titch, Reece Madlisa, Mr JazziQ & Zuma)

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「Amapiano Live Balcony Mix」など素晴らしい仕事ぶりでAmapianoを世界へ向けて発信するMajor League DJzとAbidozaによる1曲!Major League DJzは元々ヒップホップやクワイトのプロデューサーとして活躍してきた人たちで、最近トラップにログドラムを取り入れた作品を多くリリースしているラッパーのCosta Titchや、Amapiano、クワイトの若手スターZumaとReece Madlisaを迎え、Amapianoをよりヒップホップに近付けて新しい方向性を提示した曲です!かっこいい!痺れます!

8. Khuli Chana - Buyile (feat. Tyler ICU, Stino Le Thwenny & Lady Du)

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“Ayeyeye”ではAmapianoがヒップホップを取り入れた例をご紹介しましたが、こちらはヒップホップがAmapianoを取り入れた例です!最近そういった曲が増えてきていて、一般的なAmapianoよりもBPMを遅くする傾向があります。
Khuli Chanaはボツワナと南アフリカで話されるツワナ語と英語や現地の他の言語を混ぜてラップする「モツワコ」を広げた重要なアーティストで、南ア・ヒップホップ界でもレジェンド的存在ですが、これまでは音楽的にはクワイトやGqomなどの南ア特有のジャンルを取り入れることはあまりありませんでした。そんな人もAmapianoを取り入れた!という驚き!ブレイク中のヒップホップ・デュオStino Le ThwennyとAmapianoクイーンの一人であるLady Duをフィーチャーしています。

9. Kabza De Small, DJ Maphorisa & TRESOR - La Vie Est Belle

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Amapianoを牽引してきたKabza De SmallとDJ MaphorisaによるデュオScorpion Kingsと、コンゴ民主共和国出身のアフロポップシンガーTRESORがタッグを組んだアルバム『RUMBLE IN THE JUNGLE』の中からの一曲。より高次元に、より新しい領域へ、そしてより世界へ進出することを意識したかなり意欲的な作品です。“La Vie Est Belle”では、紛争や火山の噴火により家族や住む家を失い、難民として各地を転々としながら最終的に南アに辿り着いたTRESORを支えた亡き母の教えがフランス語とスワヒリ語で歌われています。長い旅の間に培われたTRESORのパン・アフリカ的な魅力を最大限引き出したScorpion Kingsのプロデュースは本当に素晴らしいです。是非アルバムも聴いてみてください!

10. Zu. - Believe (feat. Msaki & Stakev)

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Zu.やMsakiのように、アフロ・ソウルやジャズ、トラディショナル・ミュージックのアーティストがAmapianoに取り組む例もよく聞くようになりました。2人の歌声がAmapianoにぴったりでとても気持ち良く響きます!この曲は元々ジャジーな既存曲のAmapianoリミックス。既存曲のAmapianoリミックスを正式にリリースするアーティストが増えたように感じます。欧米のヒット曲のAmapianoリミックスがソーシャルメディアで流行る例も増えてきているように思うので、今後更にグローバルにそういうことが起こるのではないかと思っています!

昨年のAmapiano対談の最後に「Amapianoは多くを受け入れられる度量のある音楽」というお話がありましたが、やっぱりそうだなと改めて思います!間違いなくこれからも新しいAmapianoの表現やそれを超えた新しい音楽を聴くことができるでしょう!

audiot909が選ぶ11曲

1. Teno Afrika - Smooth Criminal(Main Mix)

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「ここ一年でのAmapianoの進化が分かるようなプレイリストを作ってほしい」とオファーが来てまず浮かんだのが、「この音楽は非常に特徴が捉えにくく、そこを明確にしないと何がどう進化したのか伝わらないのではないのだろうか」という懸念だった。なので今回は作っているうちに気づいた音楽的特徴、つまり文法についてまとめて書いてみようと思う。英語の文法だけを押さえても必ず話せるようになるわけではないが、体系的な把握は理解への近道だ。

また、2021年に入って現れたUK Amapianoについて考える時この文法を押さえておくと理解がスムーズになる。まず1曲目はスタンダートなスタイルのトラックを選び、特徴を順に説明するところから始めようと思う。長くなるがお付き合い願いたい。

おさらいになるが、Amapianoという音楽は南アフリカのハウスから派生して生まれた音楽だ。再生して、まず気づくのがそのBPMの遅さだろう。南アフリカのAmapianoは大体113前後で作られるものが多い。

ハウスと聞くと所謂四つ打ち、キックが1小節に四回イーブンに入り裏にオープンハイハットが入り2拍4拍とスネアが入るドラムパターンを想像した人もいるだろう。そういったハウスと比べるとキックがとても小さく(正確にはほぼローしか鳴っていない)、裏拍にハイハットが入っていないものも多い(これは小さくリリースが短いハットが入っているが)。ハウスと比べるとキックとオープンハイハットの支配力が小さいと考えると良いかもしれない。代わりにシェイカーとパーカッションでリズムを構成していることが分かるだろうか。

0:50~からハイハットの代わりにルーツレゲエのように管楽器が裏拍を刻み始める。コードが入りさらに進むと短いブレイクを挟み、1:40~からスネアとベースがリズムの核を作りグルーヴし始める。

このリリースが短く、ベースと低音のパーカッションの中間のようなベースが所謂ログドラムと呼ばれるもので、Amapianoの最も分かりやすい特徴として挙げられることが多い。

2:31~からの「タッタラ、タッタラ、タッタラ、タッタラ」というエレピのフレーズはTeno以外でも様々な楽曲で使われ、特にUK Amapianoでも引用されることが多いフレーズなので合わせて覚えておきたい。あとはボーカルが入っていたり、コードが薄かったりなどの差異は曲によってあるが、大体ここで挙げたのがAmapianoの言語化しやすい特徴である。ただこれらを全部満たしていなくても、ツボを押さえればAmapianoと区分される。あくまでも文法だからだ。

さて、この曲自体の説明だが、なんとこの曲が収録されたEPは世界初のフィジカルリリースされたAmapianoだ。しかもリリースがアメリカのレーベルAwesome Tapes From Africaからで、恐らく世界中のAmapianoマニアが驚いたはずだ。決して有名どころとはいえない、言ってしまえば通好みのするTenoがまさか世界初リリースを担うとは ......と。

そういった経緯があり、SNSやレコード屋のウェブページ(売ろうとすれば当然推薦文を書く必要があるからだ)で日本でもTeno Afrikaという名前を聞いたことがある人も多いのではないだろうか。このレーベルはこれ以降も南アのトラックをフックアップしてリリースしているので、これ以降どういったものがリリースされるか、どう影響を与えるかはこれからも注目していきたい。

2. Kamo Mphela - Suka Emabozeni

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続いて歌物のトラックを聴いてみよう。0:17〜から入る「ホロロ...」というトレモロがかったシンセの単音フレーズ、これもまたAmapianoの頻出フレーズで「Tremolo Signal」と呼ばれるプリセットだ。Amapianoはよく独特の浮遊感があると耳にすることが多いが、その一端をこのシンセが担っている。

1:24〜から3度目の「Let’s Go!」の掛け声と共に「タッタラ、タッタラ...」と例のフレーズが入る。今度は明らかにシンセサイザーが使われている。Amapianoはこの単音のフレーズの繰り返しでグルーヴを紡ぐことが多い。Tenoの曲と比較してみて欲しいのだが、ボーカルが入っていたりコードの付け方が全然違うが、共通している音楽的な特徴がいくつもあるのがお分かり頂けるだろうか。キックが小さい、シェイカーが大きい、裏拍に管楽器が入り、ログドラムが入っていたりと、その共通点は枚挙に暇がない。

二曲目にこの曲を紹介したのは、このAmapianoという音楽はその特徴の掴みづらさの割に楽曲の幅が大きく、これだけの差がありながら何故同じAmapianoというカテゴリに入っているのか分かりづらいのではないだろうか、との考えからだ。実は共通する音楽的な特徴が多くあり、捉え所がないと見せかけてかなり文法がある。そういった文法を守りつつ、(時に大きく逸脱しながら)どれだけ独自のフィールを入れクオリティを高めることが出来るかが優れたプロデューサーと凡百のプロデューサーを分ける境目であると考える。

曲自体の紹介だが、Kamo Mphelaは元々インスタにダンス動画を上げたことで人気を得て、そこからシンガーとしてデビューしたアーティストだ。Tenoの曲と比較しやすいであろうこの曲を選んだが、本来、最新のヒット曲としてはPVで素晴らしいダンスが見られる“Nkulunkulu”や去年大ヒットした“Amanikiniki”を上げるのが筋だとは思う。

だがそれは大した問題ではない。何故なら参加している音源は全て(本人名義ならなお顕著だ)クオリティが高いので、言ってしまえば挙げる曲自体はどれでも良いのだ。ぜひ検索して聴いてみて欲しい。

3. Samthing Soweto - Hey Wena

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次はもう少しメロウなトラックを聴いてみよう。Samthing Sowetoは若いプロデューサーが多いAmapiano界隈では珍しい比較的長めのキャリアを持ったプロデューサー、シンガーソングライターだ。

前作“Isphitiphithi”が大ヒットを飛ばし満を持して2020年12月にリリースされた EP『Danko!』はやはり素晴らしいものだった。 最初のコードが置かれた瞬間からグッと心を掴まされるが、0:33〜からシンセサイザーで裏拍を強調 ている点は見逃せない。

ウェットかつ儚げな歌い出しの後に、1:42~からログドラムとスネアのパターンがリズムを紡ぎ、グルーヴし始める。よく聴くとフレーズ的には少し激しめのパターンなのだが、そう感じさせないのは柔らかくアタック感を強調したログドラムと綺麗に処理されたスネア(これの如何に難しいことか!)、つまり抜群のミックスの上手さから来るものだ。また、控えめに入れられたスネアの置く位置のセンスも絶妙だ。これを真似するのが難しいのだ、本当に。

ログドラムとスネアのパターンがAmapianoのリズムの核となることが今まで聴いた三曲からも分かるだろうが、同じ音色を使っていてもかなりプロデューサーや楽曲ごとに個性や技量があり、そういった点に注目しながら聴いても新たな発見がある。

2:17〜から例の「タッタラ、タッタラ...」が入り更にグルーヴが加速していく。 これだけのメロウな楽曲でも例の「タッタラ…」が違和感なく馴染むことから、汎用性が高いフレーズであることはお分かりいただけると思う。必ず入っているわけではないが、これ、もしくは派生形の単音フレーズが入っていると所謂Amapianoっぽさは増す。

ここまで南アのAmapianoを理解してもらうために三曲続けて聴いてもらったが、これらは「①メロウさとドープさを兼ねたインスト」、「②ドープさに寄った歌物」、「③メロウさに寄った歌物」に区分される。何の説明なしに聴くとここまで曲調の開きがあるのに何故これが同じAmapianoと呼ばれているのか少し理解しづらかったかもしれないが、文法から紐解けば実は多くの共通点があることが理解してもらえたと思う。

この三曲を基本として残りの楽曲を聴くと新しい発見があるはずだ。

4. Karen Nyame KG,Mista Silva - Koko

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南アのスタンダードなAmapianoへの理解が深まったところで、今年に入って台頭してきたUK Amapianoの紹介に移りたい。UK Amapianoに関しては以前自分のnoteで詳細を書いたのでそちらも参照にして頂けると幸いだ。

この曲は南アフリカ産Amapianoの音楽的な特徴を割と忠実に引き継いでいる曲だ。 強いて挙げるならボーカルに深くリヴァーブがかかっていることとログドラムの下に敷いているサブベースが随分ファットであるところに違いを感じる。
そして随分曲が短くなった。なんと3分を切る。自分を含め南アのオリジナルを参照にしてかなり寄せようと思っていても、どこかで必ず感覚の違いが出てくるのが非常に興味深い。Amapianoの進化という観点からいうと、この一年で(南アフリカから見て)海外のプロデューサーが随分増え、新たな解釈が見られるようになった。

では次に、極端に進化したUK Amapianoを聴いてみよう。

5. Scratchclart & Razzler Man - Razzclart 

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恐らくこの曲を単体で聴かされても、「一体これのどこがAmapianoなのか分からない」と思った人もいただろう。しかしここまでお読みになった上でこの曲を聴くと、その認識は覆っているはずだ。最初から裏拍に管楽器が入り、0:16〜からログドラムが入る。その上に入っているのは、よく聴くとTenoとKamoとSowetoの曲に入っていた「タッタラ、タッタラ...」の改変フレーズであることが分かる。細かいことを言うと、途中で使われる声ネタはAmapianoのサンプルパックによく入ってるフレーズだ。

大きな違いは0:31〜からの、南アフリカのAmapianoからは絶対出てこないであろうUKダンスミュージックスタイルのベースやハイハット、パーカッションの組み方で、何よりBPMが124とかなり速いことなどが挙げられる。

これだけ違いがありながらもAmapianoからの影響をしっかり感じることが出来るのは、前半に挙げた特徴に依る所だろう。正確にいうとこの曲はAmapianoというよりは、Amapianoに大きな影響を受けたUK Funkyの亜種と考える方が妥当なのかもしれない。

ただそれは些細な問題で、ScratchclartとRazzler Manが偉大な一歩を進めたことに変わりないことは理解してもらえると思う。

一年かけてAmapianoの特徴を掴んできたと思ったところに聴いたこの音像はあまりに強烈で、紹介するのは何度目になるか分からないが、それだけ衝撃だった。

6. DJ Polo - Smoked Out

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「どこまでがAmapianoでどこからがそれ以外か?」その命題を考えるにあたって非常に適切なコンピレーションがある。Scratchclartが主催するレーベルDRMTRKから出ている『FFR』シリーズだ。どれも良いが、DJ Poloが提供したこの楽曲は非常に興味深い。

BPMの違いもさることながら、南アのものと比べると随分キックが強く鳴っておりログドラムとの共存したグルーヴが聴ける。しかし裏拍を強調するフレーズが鳴っていたり、大物プロデューサーVigro Deepがよく使うフィルインが差し込まれていたり、その取り入れ方には目を見張るものがある。上手く使えばAmapianoと他ジャンルへの接続の要となるだろう。無論UK Funky のセットに組み込んでアクセントとして使うのも良い。

今のところ三枚リリースされているが、「Amapianoか否か?そもそも定型的なAmapianoとは何か?」、このコンピレーションはそういったことを考えながら聴くのに最適だと言える。ただ全曲がAmapianoからの影響があるわけではなく、個人的には大体半分ぐらいのトラックがAmapianoの影響を感じ取ることが出来るものであることを注意してもらいたい。また、これはストリーミングサービスにはないのでBandcampで聴いて、気に入ったらサポートしてほ しい。

7. K.O - 4AM

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ここでもう一度南アフリカに目を向けてみよう。以下のリンクは今年5月にOkayAfricaにて掲載された「808s & Logdrums」という素晴らしい記事だ。

https://www.okayafrica.com/how-amapiano-and-south-africa-fell-in-love/

言うまでもなくKanye Westのアルバムから取ったタイトルだが、K.Oは記事中にてこのように語っている。

OkayAfrica 2019のインタビューで、K.Oは“4AM”が生まれた経緯を語っています。「Apple Music でゴールデン・オールディーズを聴いていたところ、マンドラ・スピキリのクワイト・バンガー“Money Talks”が流れてきた。私はそこに座って、"待てよ、この曲に何かできるだろうか "と考えていました。この曲を聴いたとき、"Drakeの立場になって考えてみろ、Drakeならこのレコードで何をするだろう?あるいはこんなレコードで”と」。

クワイト(Kwaito)とは南アでAmapiano以前にポピュラーだった、ハウスから進化した音楽である。「もしクワイトクラシックをDrakeが聴いていたら」という着眼点のユニークさもさることながら、南アでもDrakeは大きな存在であることにずいぶん驚いた。結果出来たものはとても素晴らしく、大胆なまでに落とされたBPMに乗せてまず聴こえてくるのは 二曲目のKamoの曲で紹介したトレモロシグナルだ。独特の浮遊感と歌を堪能していると、その内ログドラムが入ってくる。

0:54~ごろログドラムが抜け、808キックベースがコードの下に差し込まれグッと音像に変化が生まれる。差し込まれるタイミングや効果が抜群でアタック感の強いログドラムの代わりにサブベースが差し込まれることでグルーヴがウェットに変化していく快感は何にも変えがたい。スローなクワイトから着想を得て、USのDrakeを経由してAmapianoとして落とし込むその手法はあまりに見事だ。

リリース自体は2019年なのだが、スローなAmapianoが増えつつあることを紹介するのに適切だと思ったのでここで挙げた。

では次は更に分かりやすくUSのヒップホップと接近した例を見てみよう。

8. Da les - Elon Musk(feat. Focalistic,Kamo Mpela,Jobe London)

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まず再生してトラップビートが流れてくることに驚くと思うが、もう少しだけ聴いて欲しい。なんとそのままAmapianoに移行するという仰天する仕掛けが施されている。このシームレスなグルーヴの変化を堪能してほしいので、ここでは敢えて何秒から変化したかは書かない。

このように南アフリカでは伝統を脈々と引き継ぎつつ、時に新たなブレイクスルーを経て革新を繰り返していく。その最新系が現在Amapianoと呼ばれている、と自分は考えている。南アフリカの音楽を聴いていると、不思議と一つ一つのパーツは似ていないのに、何故かAmapianoを感じることがある。それこそ文法でカバーしきれないAmapianoの、そして南アフリカのバイブスの正体だ。

KwaitoもGqomもAmapianoも、脈々と流れる南アフリカという大きな川のようなものの内の一 つに過ぎない。

話のスケールが大きくなってしまったが、それにしてもこの曲は客演しているラッパーが豪華だ。先程紹介したKamoを始め、FocalisticやJobe Londonなどが参加している。これらは皆著名なラッパーで、無名なプロデューサーの作品にクレジットされることはまずない。Amapianoは非常にコラボレーションが多く、一つの楽曲に3人、4人とフィーチャリングアーティストがついていることもざらだ。好きなプロデューサーや曲にフィーチャーされていたラッパー、シンガーを辿ることによって更に素晴らしい楽曲にたどり着くことも多い。

では次はラッパーから繋げてみるとしよう。

9. Focalistic(feat.Vigro Deep) - Ke Star

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この一年を振り返るのにあたり、ラッパーFocalisticの躍進を触れずに終わるのは難しい。それだけ重要な作品への参加が多い。その大きな一歩になったのがこの“Ke Star”だ。後に自身の楽曲と、それ以外で何度もリワインドされることになる決め台詞「Ase Trap Ke Pina Tsa Ko Kasi.(英語でIt's not trap, it's songs from the hood.という意味)」(1:04~)はここでも聴ける。

プロデューサーは南アフリカAmapiano界のトッププロデューサーであるVigro Deep。この時なんと18歳。2:00〜からのヘヴィなログドラムとスネアのロールが彼の専売特許だ。このリズム感覚とヘヴィさを誰も真似出来ないのだ。

彼の最もヘヴィな曲を堪能したければ『Rise Of A Baby Boy』収録の“Piano King”を聴いてみるといいだろう。自分はよくVigro Deepを「極北にして最先端」と表現するが、その理由が分かって頂けるはずだ。

本当に素晴らしいプロデューサーで、語るべきこともたくさんあるのだが、更に長くなってしまうので今回はこの程度の紹介に留めておきたい。

実は“Ke Star”は今年に入りリメイクされていて、しかも参加したのがナイジェリアの超大物DaVidoだ。これも当然のように大ットした。

10. DJ Neptune - Nobody(Amapiano)

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DaVidoが“Ke Star”をリメイクしたことは大きなトピックではあったのだが、実はナイジェリアではそれ以前からAmapianoが大きな流行の兆しを見せている。

この“Nobody”という曲についてだが、やはり元々ナイジェリアでヒットした曲をAmapianoにリメイクしたものだ。その際、南アのラッパーの誰かをフィーチャリングしようということになったのであろう。そこで白羽の矢がたったのがFocalisticだ。

歌の裏で細かく刻まれるログドラムは中々南アでは見られないもので、個人的に「ナイジェリアンスタイル」と呼んでいる。

細かい指摘だが、Vigro Deepがよく用いるフィルインが随所に挿入されている点にも注目しておきたい。Amapianoでは何故か一度流行ったフィルインや声ネタが何度も何度も様々なアーティストによってリワインドされる不思議な慣習がある。

そして、このフィルインはあるルーツレゲエからサンプリングされたものであることに最近気づいたのだが、サンプルスニッチになってしまう恐れがあるので具体的なアーティスト名は控えさせて頂く。

ところで興味深いのが、南アフリカから出たアマピアノはここナイジェリアでもやはり短くなり、ハウスというよりはどちらかというとR&Bやアフロポップのようなフィールが前に出てきている点だ。ナイジェリアといえばアフロポップやアフロビーツなど現行のアフリカンミュージックを語る際絶対に無視できない土地で、非常に音楽的な素養が高い国だ。インターナショナルな活躍を見せているアーティストも多く、そんなナイジェリアにAmapianoが流れついた結果、独自のアイデンティティを得たことは想像に難くない。

正直この題材だけで一本記事が書けるぐらい素晴らしいものが多い。

まだ研究の最中なので詳しい解説はいつかするとして、個人的なメモとして作成したプレイリストを貼っておくので南アのものと比べてみると新たな発見があるはずだ。

また、人から聞いた話で恐縮なのだが、南アではハウスやダンスミュージックのフォーマットが国に根付いているようで、そういったところから時間感覚の差やポピュラーミュージックの形態に差が出ることにも注目したい。

実はこれは DJプレイでも顕著で、南アフリカの DJ は元々長いAmapianoを一曲一曲長くプレイする人が多い。その他の国のDJは長くプレイするか短くプレイするかで分かれ、DJ一人一人に曲の尺を決める権利が委ねられる。極端な例を挙げると7分の曲を6分使うか、2分で使うか、である。前者と後者では同じ曲を繋げていてもグルーヴが全く変わってくる。

DJをしている人なら、この選択の難しさが伝わるかもしれない。ここから南アフリカの人々の特異な時間感覚、もしくはダンスミュージックを長尺で楽しむという文化が如何に根付いているかが推測できる。

南アフリカの音楽の特異さについて考える時、逆説的に他の国で解釈されたAmapianoを聴くことによって得られる発見もあり、興味が尽きない。

11. Kamo Mphela - Nkulunkulu

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「10曲選んでください」と言われたのに掟破りの11曲目だ。だがどうしてもこの曲をこの並びで聴いて欲しかった。

「一曲で今の南アのAmapianoの魅力を伝えられる曲はどれか」と考えたらこれを選ぶ。J-WAVEに出演した際にこの曲を選んだのも、これなら絶対リスナーを刺せると思ったからだ。

まず最初のドラムがからして強烈なのだ、とても。

音圧がなく一見地味に聴こえるかもしれないが、一つ一つパーカッションの絡み方が絶妙で、これもまた不思議なぐらい魅力的だ。

Amapianoは基本のドラムパターンをずっと同じ2小節の繰り返し、そこにスネアやコード、ベース、ボーカルなどが重なっていくということが多い。ハウスから派生したクラブミュージックなので当たり前といえば当たり前なのだが、リズムが複雑に変化するというより16分のシーケンスの範疇での音の選び方、置き方などのリズムのセンスが肝なのだ。今まで聴いてきた曲に比べると随分シェイカーが後ろの方にあるのにも注目したい。

そうこうしている内に、裏拍のシンセ、Kamoの決めセリフ「Haibo yebo」が入り、0:51~から「タッタラ、タッタラ…」の派生だと思われるフレーズが出てくる。このフレーズがまた最高で、どのプリセットを使っているのかも特定出来ているし、フレーズのコピーも簡単なのだが、真似しようとするとこれが何故か真似できないのだ。

Amapianoの魅力を言語化するのに骨が折れるのはこういうところだ。

強烈な歌いだしの後、1:42~から今までの曲と違いオープンハイハットがすいぶん大きく入ってくる。

そしてAmapianoの代名詞だと思っていたシェイカーも鳴っているが、ハイハットの方がリズムの優先度としては高い。

ここまで紹介した曲はログドラムとスネアでリズムの核を作っていると感じるものが多かったが、この曲ではオープンハイハットが大きく置かれており、リズムの優先度でもログドラムとスネアに負けないぐらい存在感がある。またここでは敢えてスネアに少し地味な音色が選ばれており、この辺りのさじ加減が一々絶妙だ。実際にはどういう手順や発想で作ったのかは知りようがないが、今まで紹介してきた南アのAmapianoと比較すると少しルールから外れている。

しかしこれこそが2021年にアップデートしたトラックだと自信を持って言える。

話は飛ぶが、Netflixで現在配信されている『Jiva!』というドラマ番組をご覧になられた方はどれぐらいいるだろうか。

「南アフリカの都市ダーバンの郊外であるウムラジに住む元ストリートダンサーの主人公が、あるきっかけでダンスコンテストでの優勝を目指す」というストーリーだ。ダーバンといえばGqom発祥の地として知られていて、やはり劇中でもダンスの際の音楽として多く選ばれている。

少しネタバレになるが「アマピアノ・ガールズ」と呼ばれるユニットがこの“Nkulunklu”で踊るシーンがあり、これが最高にカッコいいのだ。

ストーリーとして必要な流れでなく挟まれるのだが、Amapianoやこの曲が如何に流行っているか、また音楽的ににも注目すべきシーンがいくつも出て来て南アフリカの人たちにとってどれだけダンスするということが大切な文化であるかが伝わるはずだ。これまで言語化しやすい特徴、文法にクローズアップして書いてきたが、言語化しづらいニュアンスを理解するために格好の教材なのでぜひチェックしてほしい。

ここまで書いてきたことと矛盾してくるのだが、「文法は文法に過ぎない」ということを最後に伝えたくて、無理を言って11曲目を入れさせてもらった。

ここ日本でもAmapianoという名前は自分が想像するより遥かに広がったが、音楽的な特徴が上手く伝わっているかというと少し疑問に感じる時があり、良い機会ということである程度スタンダートな形、文法を解説させてもらった。

特徴を理解することでより深く理解し魅力に気づいてもらいたいという願いから書いたが、「Amapiano Is A Lifestyle」という有名なスローガンから分かる通り、南アフリカの人たちにとってAmapianoは一つの音楽形式である以上にムーブメントであり、カルチャーであり、つまりライフスタイルであるという意味があることは忘れずにいたい。そこまで堅苦しく考える必要はないが、そういった成り立ちがあるのだということを把握してもらえると幸いだ。

そういえばここまで触れてこなかったが南アフリカは多言語国家で、主に英語以外で歌われることが多く、メロディやフロウの独特さは言語によるところも大きいように思う。

不勉強なので言語についてはこれ以上の言及は出来ないが、『Jiva!』を見ていてもダンスをする際のカウントの取り方も独特で、恐らくこういったところから読み取れる情報もあるはずなのだが、ここまで書いてまだ分からないことが多くあるというのが実情だ。

特にボーカリゼーションはかなり研究の余地がある。

もし日本語でAmapianoをやる場合、この問題をどのようにクリアするか、もしくは全く無視して日本語ラップなどの手法で乗せるかでサウンドに大きな影響を与えることになるだろう。

もし前者を日本語で達成出来たらそれは素晴らしいものになることは想像に難くないし、後者を選んだ場合はどのような化学反応が起きるのか、興味は尽きない。

今なんとか形にしようとしているところなので、もしリリースされた際にはそういった点も注目してもらえると嬉しい。

最初の「ここ一年でのamapianoの進化が分かるようなプレイリストを作ってほしい」というテーマに結び付けるが、2020年末~2021年は特にここに挙げた文法から外れているものを多く聴くようになった。

この文章を書くにあたって、ここ半年ぐらいにリリースされたものを聴きなおしていて驚いたのが、タブーだと思っていた2拍4拍にスネアを置き、オープンハイハットがハウスのように裏拍に入っている曲を見つけたことだ。

しかし決してハウスへの先祖返りには聴こえず、「これもまたAmapianoなのだ」と自然と思えるような曲だった。やはり文法だけでは解き明かせない。

だが、この後ここで紹介されている以外のものも聴いてみてほしいが、恐らくこれを読んだ後ではAmapianoに対する解像度がガツンと上がっているはずだ。

リスナーとして、DJとして、トラックメイカーとしてAmapianoないし南アフリカの音楽と向き合うとき何かのヒントになれば幸いだ。(トラックメイカー向けに以前こういった記事も書いたので合わせて参照してほしい。

またAmapianoが南アフリカ以外へ進出し、渡った国々で様々な進化を遂げた年であることがお分かり頂けたと思う。これからさらに様々な国や地域に広がり多用な解釈が進んでいくのではないだろうか。

個人的にやり取りしているUKのプロデューサーのメールでの一言が印象に残っているので、引用して終わりにしたい。

Would like to see how the world takes to amapiano when the clubs open back up properly. 

I think that's when it'll really take off in other countries

クラブがきちんと再開されたときに、世界がAmapianoをどう受け止めるか見てみたい。

その時こそ、海外での本格的な普及が始まると思います。

K Legacy

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