KREVAとPUNPEEはラップ、ビートメイク、DJという3つの専門的な役割の全てを1人でこなしてしまい、しかも全ての要素においてオリジナリティーと強度があるという、稀な共通項を持っているアーティストだ。
世代が異なる2人は、これまで共演こそなかったもののPUNPEEはKREVAの作品に影響を受け、KREVAもまたPUNPEEの作品に刺激されてきたという。そして時を経て2020年、PUNPEEのEP『The Sofakingdom』に収録された"夢追人"にKREVAがフィーチャリング で参加し共演が実現。その後にKREVA主催のイベント『908 FESTIVAL ONLINE 2020』にPUNPEEが出演するなど一気に交流が進んだ2人の対談をFNMNLで行った。
オールラウンダーだからこそ語り合えるお互いの音楽についての印象や、2人が愛して止まない機材について、そしてPUNPEE曰く「満を持して」のタイミングだったというコラボレーションなどについて語り合っている。
取材・構成 : 伊藤雄介
写真 : cherry chill will.
- PUNPEE君がラップを始めた頃、KREVAさんは既にラッパーとして活躍していた時期だと思われます。PUNPEE君の中で、初めてKREVAというラッパーを認識したのはいつだったか覚えてますか?
PUNPEE - 自分が知ったときはKICK THE CAN CREW時代でしたね。2000年ぐらいだったっすね
KREVA - ちょうど、メジャーに行くぐらいの時かな?
PUNPEE - KICK THE CAN CREWの“カンケリ”とか、“イツナロウバ”が出るちょい前ぐらいですかね。それ以前だと、大学生のときに知り合った先輩が『PUNPEEの家にはMTRがあるから曲が録れる』って言って来たときに持ってきたインストがBY PHAR THE DOPESTの“PARTY”だったんですよ。でも、そのときはKREVAさんのことはまだ分かってなくて。KICKではすごく活躍して……しなさっていて……。
KREVA - (笑)。
PUNPEE - 自分がDJとかライヴをし始めて、初めて決まったレギュラーイベントがあったんですよ。新宿のizmっていうクラブでやってたんですけど、そのイヴェントでゲストDJとしてKREVAさんが出たんですよね。「え!? KREVAが出るの!?」ってなって、5lackとGAPPERとあとふたり、当時一緒にやってた人たちと出たんですよね。その時点でもKREVAさんは人気あったし、平日のイベントなのに女性ファンの方とかもいっぱいいて……自分たちは一発目でライヴさせてもらったんですけど、めちゃくちゃスベりまくって、その後にKREVAさんがDJしたらドカーンって盛り上がって。そうなったときに、俺の友達が気を使って「いや、お前らの方が絶対ヤバかった」って言ってくれて、「いや、ヤバくねぇから!」ってキレた記憶がある(笑)。
- KREVAさんはこのときのこと、覚えてますか?
KREVA - いや、まったく覚えてなくて。
PUNPEE - 絶対覚えてるワケないぐらいのファーストコンタクトですね。
KREVA - izmって、上のフロアがバーカウンターで下がフロアだったから、俺が下に降りて行ったらファンの子が他の人のライヴ中に俺の方に来たりとかして失礼じゃん? だから、俺はバーの端っこにいつもいたんだよね。この時の話も、後でSONOMIか熊井吾郎に聞いて、「あ、そうだったんだ」って繋がった感じ。
PUNPEE - そのイベントに同期で入ったのがSONOMIさんと自分たちだったんですよね。熊井君もバックDJでいて。
- PUNPEE君は、「ビートも作ってラップをする」というKREVA氏のスタンスに対して「自分世代はみんな食らってた」と、YouTubeに公開された対談動画で語ってましたよね。今振り返ると、当時の自分や同世代のプレイヤーたちはKREVAさんのことをどう見ていた?
PUNPEE - 機材をウェポン的な感じで扱ってる人、というか。で、しかもメジャーでバッチリかましてる人っていうのは、それまでいなかったと思うんです。
KREVA - 「機材推し」ってことね。
PUNPEE - 自分がヒップホップを聴き始めた時期だったっていうのもあると思うんですけど、そこがすごく新鮮に映って。でも、周りの古株の人たちは「いや、MPCは3000でしょ。4000(KREVAが2000年代に使用していた)は認めん」って話してたりして。そういうやり取りとか、自分が機材にのめり込むキッカケになったんですよね。ヒップホップ専門誌の『BLAST』とか見ると新しい機材を紹介したりしてて、それが新鮮でした。KREVAさんがMPC4000を導入した頃に、Missy Elliottの“Pass That Dutch”のリミックスをDJでかけてたときがあったんですよ。
KREVA - あれ、オフィシャルリリースされたんだよね、日本で(“Pass That Dutch 顔PASSブラザーズREMIX”)。Missyにも会って聴かせて。
PUNPEE - あれを聴いて「ウォー!」ってなって。4000で作ったんですか?
KREVA - 4000。「MPC4000らしいサウンドで作ろう」ってDJ TATSUTAと話して。パリッとした質感で。
PUNEE - 「4000……スゲェ……気がする」ってなりました(笑)。当時はMPC4000の24ビットっていう音質についてもよく分かってなかったですけど。KICK THE CAN CREW『GOOD MUSIC』の一曲目(“OPENING”)とかもヤラれたし、機材について知ることで更にヤラれましたね。
- あの時期に「ハイファイサウンド推し」だったのには、何か理由があったんですか?
KREVA - まだ、「サウンド(クオリティ)の勝負」が成立してたからじゃない?「誰の音が良い」っていう、そういう判断基準がまだあった。Dr. Dre『2001』とか、A Tribe Called Quest『LOVE MOVEMENT』とか。MPC4000は、「出るぞ」っていうニュースを聞いて、発売日に楽器屋行ってすぐ買って、一週間後ぐらいには4000をレコーディングで使ってた。だから、日本では多分、MPC4000で曲を作ったのは俺が一番早いと思う。それは結構自信がある。当時、熊井吾郎がSONOMIの曲をMPC2000で作ってて、「お前、コレでやってたらこのままの勝負では勝てないよ」って言って4000を買わせたんだよね。そこから熊がよりビートメイクを掴み出したってところがあったと思う。
PUNPEE - 俺は結局、MPC2000を10年以上使い続けるっていう。
KREVA - でも、AKAIのサンプラーで今、一番需要があるのはS950だと思うんだけど、フィルター的な使い方として欲しいんだったら、今ならMPC2000の方がいいと思うよ。みんな、音を劣化させたいからカセットテープの音質を再現するようなプラグインとかがめちゃくちゃ流行ってるわけだし。
- Metro Boominも最近はMPC2000で作ってるみたいですしね。
KREVA - あの、丸い具合いの音質にしたいんだったらカセットテープに録音してまたDAWに戻すか、MPC2000にサンプリングするか。MPC2000XLだとちょっと今は微妙な気がするけど。Pete Rockが前、2000XL使ってたんだけど、アレは2000だったら昔っぽさが残ってもっとカッコ良かったんじゃないかな……って、誰が聞くの、この話(笑)! でも、当時はそういう、「メイン機材に何を使ってるか」っていうのは、一種のアイデンティティみたいなものとしてあったよね。
- でも、ラッパーでそういうアイデンティティを全面に出した人って、他にいなかったですけどね(笑)。
PUNPEE - だから、KREVAさん以前/以降でその傾向が分かれる気がしますね。
- PUNPEE君も、現在に至るまでトラックメイクとラップの両面をこなすアーティストなわけですけど、KREVAさんの活動が一種の指針になったというのはあるんですか?
KREVA - 指針というか、一回TOKYO FMの『サイプレス上野の日本語ラップキラッ!』(ヒップホップサイト:Amebreakが制作していた不定期の深夜ラジオ番組)に出たときにPUNPEEに会ったときがあって。俺、PUNPEEのブログを読んでて、そこで「Mary J. Bligeの“Everything”で使われてる音って何だろう?」みたいなことを書いてて、会った瞬間いきなり言ったんだよね。「あれ、シタールだよ」って(笑)。
PUNPEE - J Dillaの“Time: The Donut Of the Heart”(『Donuts』に収録)って曲でも使われてましたよね。で、「あの音なんだろう?」ってブログに書いたんですよ。でも、まさかそれを見てるなんて思わないじゃないですか。それが初めて交わした会話ですね(笑)。
KREVA - そのときにPSGの音源をもらったんだよね。そのCD、まだ持ってるよ。
- 2000年代後半頃の話ですけど、その時点で既にKREVAさんはPUNPEEの活動や『CONCRETE GREEN』でのフィーチャーをチェックしていたことを、当時のインタビューを振り返ると分かります。
KREVA - 俺は、『CONCRETE GREEN』でのPUNPEEが彼のファーストインプレッションって感じ。当時、SEEDAに電話したもん。「アレが一番ヤベェ」って(笑)。
PUNPEE - 2008年でしたね。『CONCRETE GREEN 7』に“お隣さんより凡人”っていう曲が入って。アレは俺的なLil Wayneの“A Milli”オマージュだったんですよね。
KREVA - Snoop DoggとPharrellの“Drop It Like It's Hot”みたいな感じもして、「そういうのが出来るヤツが日本にいるんだ」って思ったし、サグ感押しだった『CONCRETE GREEN』の中でも一番食らったんだよね。
PUNPEE - 『日本語ラップキラッ!』のトーク中に、KREVAさんがあるま君とかSTICKY氏とか推してるのを聴いて、当時のアンダーグラウンドシーンはざわついてましたよ(笑)。
KREVA - 『CONCRETE GREEN』の中では、何曲かお気に入りがあるんだけど、PUNPEEの曲はぶっちぎりだったね。PSGのアルバムもマジでヤバかったし。シンプルに、「センス」だよね。スキルはどんどん盗んで上げていくことが出来るんだけど、センスは独自に磨いていかなきゃダメじゃん? 例えば、ガヤの入れ方とか、あれはセンスでしかないから。あんなにガヤ入れたり、途中で急に喋り出したと思ったらまたラップに戻るとか、ああいうのはセンスだよ。単純に「ノリが良い」とか「オシャレ」とか、そういう意味でのセンスじゃなくて。「このビートだったらこういうことをやっていい」みたいな、トータルで見れるセンスが凄いんだな、って思った。アルバムとしての統一感も、『DAVID』は凄かったね。
PUNPEE - (小声で)ありがたいです……。
KREVA - 今でもPUNPEEってそうだと思うんだよね。「やれ」って言われても簡単には出来ないよ。
PUNPEE - 宇多丸さんからは、「手法がDTM以降かも」って言われたことがありますね。
KREVA - あー。でも、DTMって言うとちょっと調べたら出来ちゃいそうなイメージがあるけど、ちゃんと蓄積してきたセンスで編集/デザインする能力が高い、っていう気が俺はするけどね。
- マッシュアップ的な手法だったり、DJ的な視点も反映されてるのかもしれないですね。
KREVA - あ、確かに確かに。それは大事かも。
PUNPEE - DJをやってた時期、結構ありましたしね。
KREVA - 俺もそうだったし。
- DJがバックグラウンドのひとつという共通点もありますね。
PUNPEE - 知らず知らずの内に、後ろを追っていた感ありますね(笑)。
- 自作リミックスをDJでかけたり、マイクでMCしながらDJしたりと、スタイルも共通していますね。
PUNPEE - 1stソロアルバムの『新人クレバ』を初めて聴いたとき、すげぇクラブサウンド的な要素を感じたんですよ。
KREVA - 実際、まだあの頃はクラブにいたしね。『FG NIGHT』もやってたし『DYNAMITE』もまだ行ってたから。それこそアカペラをブレンドして作ったリミックスをDJでかけたりもしてた。そこの景色を歌っていたというのはあるかもね。
- 時を進めて、2013年のアルバム『SPACE』に収録されている“王者の休日”という曲があって。僕は当時、あの曲にPUNPEE/高田兄弟からの影響を感じて、実際にインタビューでそういう質問をしたことがあるんです。そのときに、KREVAさんはハッキリと影響を認めていたわけではないんですが、当時『Movie On The Sunday』をよく聴いていた、ということを語られていたんですよね。
KREVA - あー、あのミックステープは最高だったね。あの作品は、トータルプロデュースがめちゃくちゃされてる。あと、友達の(客演での)入れ方の感覚が抜群だったよね。その客演と張り合うというより、ちゃんとその人を立てる感じとか、「プロデュース脳」が凄いな、と思った。「このシーンはこの人に登場してもらう」みたいなことが出来る人って、あんまりいないよね。
PUNPEE - キャスティングしてる感じかもしれないです。ビートが出来た時点で客演の人が浮かぶし、「今、この人がこういう曲をやったら面白いかな」とかは考えながら呼んでるんで、正に「引き立ってほしい」と思ってやってるし、そう聴こえているんなら嬉しいですね。
KREVA - アレ、どこで買ったんだったかなー?
PUNPEE - 確かにアレ、DISK UNIONとかでしか売ってなかったですからね。KREVAさんは結構、下北沢のDISK UNIONでの目撃情報が結構ありますね。
KREVA - そうだね。だって当時、下北のユニオンは俺が支えてると思ってたもん(笑)。毎週のように行ってたし。
PUNPEE - 下北で買ったのかもしれないですね(笑)。
- ソロデビュー以降、ソロアーティストとしてのKREVAさんの活動や作品を通して、どんな影響を受けてきましたか?
PUNPEE - ひとりでMPCとか弾きながら武道館公演をやったときとか……どんどんハードル上げていく感じ。当時は、「何でこんなハードル上げていくんだろう!?」って謎だったんですけど(笑)。でも、自分もツアーだったりワンマンをやっていく内に、その気持ちが分かるようになってきましたね。サンプリングの感じとかも、一回やったことはその後あまりやらない、とか。最近は「自分のことをしっかりやってきてる人、伝導してる人」という風に見えてきてて、そういう印象が重なった上で今回の共演があるんです。今回の“夢追人”は、自分の中で「満を持した」感があって。
KREVA - ありがたい。
PUNPEE - なんか、「今だったら自分、誘えるぐらいに……なってないかな……?」って。
KREVA - 熱いね。でも、スゲェ分かるな。自分もMummy-Dにオファーした時とか「いつがいいかな……」って、自分に自信が持てるタイミング、自分の名刺/手札が揃った状態で声をかけたいって思ってた。
PUNPEE - 『MODERN TIMES』では身内の客演だらけだったし、今回のEPでは意外性のある人とやりたかった。あとは5lackが「いいんじゃないの?」みたいな感じで言ってきたし。
KREVA - 5lackが俺の名前を口にしてるっていうのは、俺の中では不思議な感じがする(笑)。多分、ずっと俺の音楽を聴き続けてる人って、(アーティストでは)あまりいなくて、ポイントで「聴こえてる」感じだと思うんだ。自分の活動に夢中になってる時はあまり他のアーティストは聴かないじゃん?でも、常にちょっとずつでも聴こえるようにやり続けてきたのが今に繋がったんじゃないかな?と思うよ。
PUNPEE - あと、俺は定期的に『愛・自分博』を聴くんで、そういうのもあるかも。
- PUNPEE君的に思い入れのあるKREVAさんのアルバムは『愛・自分博』になる?
PUNPEE - 曲単位ではまた違うかもしれないですけど、アルバムとしてだとそうかもしれないです。あと、ライヴDVDは定期的に観ます。自分の中で、『愛・自分博』は「キャッチーさ」のひとつの指標になってるんです。2000年代初期のR&Bの感じやKanye West、Just Blazeがやってたようなサンプリング早回しの感じとか、そういう良いところが詰まってるんですよ。そういった要素がKREVAさんのフィルターを通して出ていて、自分の中ではかなり完成度の高いアルバムだと思ってるんです。ビートの硬くて乾いた感じは、俺の中でのひとつの正解として、ずっとあるかもしれない。
KREVA - 今言ってた「硬さ」とかクリスピーな質感はすごい意識してたから、それをキャッチしてくれてるのは嬉しい。当時、俺自身もまだ30歳前だったからチャラかったというか、ギラギラしてたから、世の中的に素直に「良い」って言いづらい空気もあったと思うんだ。でも、今のシーンでキテる人たちは普通にあのアルバムを聴いてくれてて、それはありがたい。当時、同じようにシーンで活動してた人でアレをスゲェって言える人って少なかったんだ。DABO君ぐらいだったんじゃないかな?DABO君はすごいフラットだったね。
- 2010年代からPUNPEE君も着実にキャリアを積み上げていって、KREVAさんとは違う形でのサクセスストーリーを描き続けていると思います。PUNPEE君のここまでの活動を、KREVAさんはどう見ていましたか?
KREVA - いやー、「スタッフさんが大変だろうな」と(笑)。(制作ペースが)「遅ぇよ!」っていう(笑)。
Summit 増田(PUNPEEのA&R) - いや、全然。一回も思ったことないですよ。
- 増田氏は本当にそう思ってるから、凄いA&Rだと思いますよ(笑)。
KREVA - 「リリース数が少ないな」とはずっと思ってた。もっと聴きたいし。でも、作品が出て来る時のコンセプトとかの「詰まり具合」を聴くと、「(完成させるのが)大変だろうな」とは思うんだけど。
PUNPEE - 確かに、量は少ないですね……。
KREVA - もっとリリース量があれば、更に上に行くのかな、って気はするんだけど。
- ここ数年、いろんな人から言われてきたでしょ(笑)。
PUNPEE - 『MODERN TIMES』を出すまではいつも言われてましたね(笑)。
KREVA - 『MODERN TIMES』もちゃんとCDを買って聴いたよ。あと、あの後にストリーミングで解説入りの(ヴァージョンを)出したりしたよね? ああいう発想もセンスと言えるかもしれないし、凄いよね。「そうだよな、解説を売っちゃいけないって決まり、ないしな」って思ったし。
- KREVAさんも『SPACE』リリース時にインスト盤を先行で出したりとかしてましたよね。活動全体でどういうアイディアを取り入れてアウトプットするかという意識が、おふたりはすごく高い印象があります。
KREVA - そういうアイディア性をヒップホップと呼びたい!というか。ケンカとかもしない、東京の中ではど真ん中でもない、どちらかというと田舎寄りな場所で育ってきた自分みたいな人間からすると、そういうアイディアやテクニックで勝負することはすごい大事だと思ってきたし、そういうPUNPEEのセンスも凄いと思う。
PUNPEE - 自分はやっぱり、今日話してきたようなKREVAさんの機材観とかから来てる部分もあると思います。
KREVA - いや、ありがたい。そういうところをキャッチしない人はホントしないからね。「俺もあんな機材、持ってみたい」みたいな。言ったら俺も昔、TVで『夜のヒットスタジオ』を観てたら、お姉ちゃんが好きだったTM NETWORKが出てて。小室哲哉さんが持って来てた機材について「今日の機材、全部で1千万円かかってるらしいです」って司会の人が言ってて、それを観て「カッケー!」って思ったもんね。そうかと思ってライヴ観てたら鍵盤に乗っかってぶっ壊したりするわけよ。「あれ、いくらするんだろ……」っていう、そういう憧れがあったし、小室さんの機材に囲まれてる「コックピット」感をキャッチしてた。
- 2007年に敢行した『K-ing Special (ノン・ゲストデー)』のあのセッティングはTM NETWORKインスパイアだったのか(笑)!
KREVA - (笑)いや、その影響はないことはないよ。小室さんのスタジオに行ったら壁一面にシンセが積んであったんだけど、全部MIDIで同期されてた。設定、すごくめんどくさいと思うよ。でも、その次にスタジオ行ったらそれが全部、パソコン一台に変わってた(笑)。
- ふたりがガッツリ会話を交わしたという意味でのファーストコンタクトはいつ頃だったんですか?
PUNPEE - それこそ、"夢追人"の時なんじゃないですか?
KREVA - そうだよね。今回の制作の時なのかな。これまで、ガッツリ話したことはなくて。
- そうなると、交流を経ての今回の共演、というわけではない、と。PUNPEE君の活動を知っているとは言え、これぐらいの距離感だとすると、他のアーティストだとKREVAさんはオファーを受けてなかったかもしれないですよね。
KREVA - それはそうだろうね。
PUNPEE - でも今回は、一気に決まっていった感がありますね。で、前からフィーチャリング名なしでMVをプレミア公開してみたかったから、KREVAさんとの曲でそれをやりたいって伝えて。最初に動画を再生したらみんな驚くように。
KREVA - そういうアイディアもセンスだよね。今日の取材をやるにあたって、メールでのやり取りを辿ってみたんだけど、2周目ぐらいのやり取りでそのアイディアのことが書いてあった。だから、曲が出来る前からそのアイディアがあったはず。
PUNPEE - だけど、新型コロナとかがあっていろいろ遅れちゃったりはしたんですけど、自粛期間が終わってから一気に進めていきました。
KREVA - 直でオファーをもらって、直接会って話して、みたいな感じで決まっていったかな。
PUNPEE - 緊張しましたね……今も緊張してますけど(笑)。
KREVA - トラックはその時点で決まってたね。
PUNPEE - 90'sな感じのブーンバップじゃないですけど、そういう感じのビートに乗るKREVAさんを聴きたかったし、面白いかな、って。
- あのトラックはUSのプロデューサーNottz作ですよね。NottzのビートにKREVAさんのラップが乗るというのは、なかなか萌えますけどね(笑)。
KREVA - 最初、「ホントにあのNottzだよな……?」って思ってスペルをチェックしたもんね(笑)。
PUNPEE - Busta RhymesとKendrick Lamarの新曲“LOOK OVER YOUR SHOULDER”もNottzプロデュースでしたね。
KREVA - やっぱノリがデカイね。
PUNPEE - 自分が、割とああいう感じのこねくり回した説明っぽいラップになってしまうんで、「KREVAさんはストレートな感じでラップしてくれたら最高」とか勝手に想像してたんですけど、トラックを送った翌日か2日後ぐらいにラップが乗って返ってきて。
KREVA - 「王道でいこう」みたいな話をしたんだよね。
PUNPEE - 『新人クレバ』の頃の勢いある感じを勝手に想像してたから、それがアップデートされた形で返ってきましたね。
KREVA - ミーティングでストレートな感じだったり「“覇者感”みたいなのを表現したい」っていう話をしたし、リリックにも出て来るけど「なんで世の中にはまだこんなにダサいドラムがいっぱいあるんだろうね」って話もして。このトラック、ドラムがカッコ良いじゃん?そういう雑談みたいなのをギュッと凝縮して。自分のラップはすぐ録って返したけど、PUNPEEはやりっぱなしな感じじゃなくて「ここに“イエー”とかが欲しい」って言って録りに来たりとかして。
PUNPEE - そうですね、後半の「ウォウウォウ」とかも。
KREVA - 「ヴァースの終わり方はこっちのテイクの方がいいかもしれない」って、テンションが高い方を採用したりとか。やっぱちゃんと調整をしてくるんだよ。でも、スタジオに録りに来たときは、さっきまで話してたようなヒップホップの話を4時間ぐらいして、レコーディング時間は30分ぐらい(笑)。
PUNPEE - 30分というか、15分ぐらいでしたよ(笑)。ずっと話してましたね。自分が20年間見てきて感じてたヘッズ的な疑問をいっぱい聞いちゃいましたね。サンプリングについてとか、今使ってる機材だったり。ホント、常にチェックしてる人なんだな、って思いました。SoundCloudで100回ぐらいしか再生されてないような人のビートを聴かせてくれたりとか。Arcade(サブスクリプション形式のサンプルプラグイン)のこともその時教えてもらったり。5lackとやった“Wonder Wall”でもArcadeは使いましたね。
KREVA - あと、俺のリリックで“Shut, Shut'em Down”って入れたら「Public Enemyの“Shut Em Down”のPete Rockリミックスですよね?」ってすぐ出て来る感じとか、ここが信頼足りうるところでね(笑)。
- YouTubeにアップされた対談動画を見ると、KREVAさんは「最近、ビートメイカー(とラップを両方こなす)人が減っているから、奮い立たせたかった」というようなことを話されてました。実際、ラップからプロデュースのみならず、レコーディングまでひとりでこなすアーティストというのが、ふたりの共通点としては最も大きいと思いますが、おふたりの中で、そういったスタンスで音楽を作ることの意味や強みはどういったところにあると思いますか?
KREVA - 最初にビートが出来たときって、展開がないようなのが大体だよね?
PUNPEE - うん、最初はそうですね。
KREVA - ビートを作りながらラップを作ってると、そういうところをコントロールできるのは強みかもしれないね。足りない要素があるなら音を足していけるし。
PUNPEE - 自分はなんすかね……大きな会社の人とかを通さないで、当事者同士で制作が完結できるところとかはいいですね。KREVAさんとも、メールのやり取りだけで出来ちゃったし。
KREVA - 「こんな感じでどうですか?」「分かりました。じゃあ事務所にスタジオを押さえてもらったから何月何日にレコーディングできそうです」「ダメでした」みたいになったらテンションも変わっちゃうしね。
PUNPEE - 俺もKREVAさんも自分のスタジオでレコーディングが出来るから、調整もすぐ出来るじゃないですか。
- 思い立ったことをすぐ実行できる、と。
PUNPEE - 曲のテンポを早くすることとか、一瞬で出来ますからね。でも、誰かに頼まないと出来ない人とかもいるし。
KREVA - 逆に、外部のプロデューサーとやる時は、もっと歌に集中できることもあるけどね。
PUNPEE - 確かに。やっぱ自分でビートを作った上でサビを作る時と、他の人のビートでサビを作る時って、全然違う感じのメロディが出来たりするんですよ。
KREVA - 今回のEPとかを聴くと、PUNPEEの中でメロディが浮かんでくる感じがすごく分かる。そのメロディも日本の歌謡曲としても通用するようなものに挑戦してる。今となっては、トラックを聴いたらメロディを作ったり歌っぽいのにしようとしたら秒で出来ちゃうと思うんだけど、ちゃんとメロディを作ることに挑戦してる感じというか、それが浮かんでるんだな、って。だから、“夢追人”でストレートな俺像を求めてたんだったら、自分が作ったビートよりも野太い、力強いやつがよかったんだと思う。
PUNPEE - あのビートを聴いた瞬間に「あ、コレだ」ってなりましたね。だから、その通りですね。今の話の流れでの質問なんですけど、今はラップ曲でもみんな、サビでメロディが必要だったりするじゃないですか。でも、ラッパーがメロディを作る時って「ラップにメロディを足した」みたいな感じになっちゃうと思うんですね。自分も最初、そういう感じだったんですけど、KREVAさんの“瞬間speechless”を聴いた時に、音を伸ばして歌ってたんですよね。
KREVA - あー、ロングトーンね。
PUNPEE - それが当時、すごい衝撃的で。「これ、ラップの人が作るメロディじゃないな」って。メロディでサビを作る時に(アプローチが)変わった瞬間ってあるんですか?
KREVA - BY PHAR THE DOPEST時代にトラックを作ってた頃から日本の歌謡曲をずっと聴いてきてたから、そのテイストを出したいな、とは思ってた。「(海外のプロデューサー/ラッパーは)ソウルとかジャズとか、お父さんが聴いていた音楽をサンプリングするらしい」って話を聞いた時に、自分はそういう(ルーツ的な)要素を出していったらいいんじゃないかな?っていうのは最初から思ってたね。
- でも、それこそ初期の“音色”のような曲の頃から、そういうアプローチのサビでしたよね。
PUNPEE - 確かに。あと、“スタート”で裏声使ってた時とか。
KREVA - あー(笑)、すごく歌に寄ってるよね。アレはトラックに呼ばれて出たメロディというか。メロディが先行で出て来ることはないかな。まずはトラックから。
- 2000年代前半って、ラッパー本人が歌サビを入れるのってかなり勇気がいる時代でしたよね。それこそKREVAさんはオートチューン使いもLil Wayneの“Lollipop”より早かったわけだし。
KREVA - 「ラッパーが歌ってる」っていうだけでディスられる時代があったからね。Drakeが登場してやっとみんな「良い」って言い出す、みたいな。
PUNPEE - “瞬間speechless”の時は何かインスピレーションがあったんですか?
KREVA - サンプリングネタを聴いて、トラックが出来た時から「これ、泣けるー!」って思って。で、あのメロディがもう鳴ってた。俺は全部、トラックにメロディがくっついてる感じだね。
PUNPEE - あ、聴こえてくる、と。
KREVA - “イッサイガッサイ”も“音色”もそうだったと思う。最初の頃は、トラック上にメロディラインを入れちゃうことが多かったんだけど --“イツナロウバ”で鳴ってるメロディみたいな -- そのメロディを「自分で歌えばいいんだ」って気付いたのが“音色”とかだよね。多分、KICK THE CAN CREWの頃は3人でラップするっていうのがあったから、メロディ感を殺しちゃってたんだろうね。
PUNPEE - やっぱ今の、メロディが必要なヒップホップの人でも「ヒップホップの延長線上」のメロディなんですよね。もちろんそれもかっこいいんですけど。だから、ああいうメロディを思いつけるのって特殊技能だな、と。
KREVA - メロディメイカーなんだろうね。でも、メロディ書く人が作る、ラップみたいな譜割りのメロディはやっぱり、あんまりカッコ良くないと思う。だから、(ラップ発でメロディを作るアーティストは)凄いメロディになりそうな時に、ラップのニュアンスを敢えて残していくというのは、オリジナリティに繋がると思ってる。
PUNPEE - 自分が最初の頃、メロディのフックを作ってた時に、メロディの入り方がいつも同じ入口からしか入ってないことに気付いて。「いつも同じだなー。ラップの延長だなー」ってなったときに、ちょっと上(の音程)から入ってみたりとかを試した時に『あ、全然違うのが出来た』ってなった記憶がありますね。
KREVA - そこに気付けたのは凄いと思うよ。
PUNPEE - メロディ作れるラッパーの人には、毎回こういう話を聞いちゃいますね。
KREVA - だけど、俺から言わせてもらうと、「これ、(メロディの入りが)同じだなー」って思って出すのを止めてるんだとしたら、その曲も完成させて出して欲しいとみんな思ってるはずだよ(笑)。俺は、一個気に入ったスネアの音があったら飽きるまでずっと使う。PUNPEEは分析能力が高いから、いつも「違う方、違う方」ってなっちゃうかもしれないけど、同じアプローチでもバーッと作って出しちゃった方がいいと思う。
PUNPEE - ちょっと(方向性が)被ってたら、「これ、前もやったからいいかなー」っていうのは結構あるかもしれないです。もうちょっと同じカラーでも柔軟にやってもいいのかもしれないですね。
- KREVAさんの作品は、その時期ごとに特定のシグネチャーサウンドがありますよね。一方、PUNPEE君はサウンドにシグネチャーがあるというより歌い方や構造面にありますよね。
KREVA - 葉加瀬太郎さんの『情熱大陸』のテーマソング、あるじゃん? ずっとサビが鳴ってる、みたいな。あれって、ずっと作り溜めてたメロディをギュッと凝縮してあの曲になってるらしいよ。だから、同じようなメロディが出来てリリースが止まるんだったら、同じようなのをいっぱい作っといて、曲を出すときに一個にまとめちゃえばいいんだと思うよ。
PUNPEE - なるほど。次は、似た感じでも「その時代を切り取ったもの」としてまとめて出しても切り口として面白いかな、っていうのは思ってますね。
KREVA - いや、絶対それでいいと思う。
- KREVAさんは昔から、そういう大胆さとか思い切りの良さがありますよね。PUNPEE君は熟考タイプだけど。
PUNPEE - やっぱ親父さんとか、音楽好きだったんですか?
KREVA - そうだね。家にレコードとかもあったし、トランペットとかあったり。
PUNPEE - 実は、ギターから始めてたんですよね?
KREVA - あ、そうそう。4歳の時にね。
PUNPEE - だから、ハモるとかの技術は、もしかしたらそこから来てるのかな?って。
KREVA - 4歳から小2〜3ぐらいまでギターをやってたのかな?その経験は絶対音感というか、そういう今の感覚には活きてると思う。やっぱり、トラックがあってそこに声をバンって出したときに、キーが合ってないヤツっていっぱいいるんだよ。自分に関しては、そこのキーは絶対に外さない。ギター習ってた時に先生がやってたチューニングをずっと聴いてて鍛えられたと思うよ。
- PUNPEE君も最初はギターじゃなかったでしたっけ?
PUNPEE - 俺もギターでしたね、中学の時に。
KREVA - おっ!マジだー。
PUNPEE - だからか、ハモりとかはその頃から出来たんですよ。
KREVA - ラップは?最初から出来た?
PUNPEE - ラップは出来なかったっすね。
KREVA - あ、ホント!?
PUNPEE - ラップは弟の方が早かったんですよ。最初はエミネムのマネとかしてて、2小節目の始まりがどこか分からない、みたいな感じだった気が。21歳ぐらいの時でした。Jay-Zが27歳でファーストアルバムを出したって聞いて「あ、じゃあまだ大丈夫だ」って思った気がします(笑)。あと、KREVAさんに聞きたかったのが、ここ10年ぐらいのヒップホップのトレンドって、トラップから次の流れになかなか動いていないじゃないですか。新しい流れを追うのもヒップホップを聴く楽しみだったじゃないですか。ここ数年はそういうのが以前ほどない中で、どうやって自分のサウンドやクリエイティヴ面に刺激を与えてるんですか?
KREVA - まずは、作る環境を思いっきり変えちゃう、っていうのはあるね。1年ぐらい前からAbleton Liveで作ってるし。あとは、思いっきり制限を設けてみるとか。「この機材だけで作る!」とかも面白いと思う。あと、ネット上で面白い作り方でやってるヤツを見つけたら自分でも同じようなことを試してみたりもする。今って、「草ビート・バトル」みたいな規模のバトルを観ても、日本のメジャーでやってるヤツよりカッコ良いヤツなんていっぱいいる。だから、刺激を受けるところは昔より多いから、今の方がむしろやりやすいと思ってる。
PUNPEE - 新しいサウンドのトレンドというより、制作手法を通して面白くしていく、というか。
KREVA - そうだね。今だと「脱トラップ」じゃないけど、トラップで使われてるようなサウンドを、どうやって昔作ってたような「厚さ」「ラグド(Rugged)さ」で出すか、とか。無理やり汚したようなサウンドにしたり、わざとヨレた感じの音にしたり、そういうのも刺激になってる。でも、実際にアナログ/ヴィンテージな機材を使ったことがある人と、そういう音を再現したプラグインしか使ったことない人とでは差が出ると思うんだ。
PUNPEE - 最近の自分は、サウンドや機材というよりMVとかの映像を通して面白くしていく感じとかに刺激を受けてますね。SNSとかも。
KREVA - 確かに。今は動画だよね。
- TikTokでどうバズらせるか、とかもトレンドを作る上でのポイントですしね。
PUNPEE - サウンド面ではそこまで変化してない感じがするんですよね。
KREVA - そうだね。これで安定しちゃってるんだよね。
- おふたりの音楽は、アルバム単位での作品をリリースするし、アルバムの作品性も強いじゃないですか。一方、ストリーミング時代になってアルバムの構成や曲自体の構成が変わってきてる時代背景もある。尺が短くなったりヴァースの小節数が減ったりとか。そういった現状を踏まえた上で今、考えてることはありますか?
KREVA - でも、今、聞いてて思ったんだけど、結局「キング」になる人、例えばKendrick Lamarとかは動画一本でバズった感じではないよね?アルバム単位で確固たる地位を築いてる。
- Kanyeも一貫としてそうですね。
KREVA - だから、一発大きな花火を上げるんだったら動画とかそういうアプローチでもいいかもしれないし、カッコ良いMVを出すことも大事なんだけど、やっぱりパッケージ化された時の楽曲の強さというのは、今の時代だからこそ逆に必要になってくるのかな?って気はする。それか、Futureみたいに「量」で勝負するとか。Internet Moneyとかも一日で何曲もビート作ってるよね。
- USにおいてはストリーミング時代だからこそ「質より量」の傾向になってると思います。
KREVA - あと、パソコンの進化もあるよね。どこでもパソコン一台で作れるようになったから。昔みたいに「止まったよ!」とか、もうほとんどないしね。 ずっと作ってられるし、すぐ誰かに送れるし、やる気があれば自分でミックスも出来るし。海外のヤツらもキッチンで作ったりとか、楽しみながら作ってるよね。
- コロナで自粛期間に入ってから、Twitchでビートメイク動画を配信する人が増えて、そういうビートメイカーのライフスタイルもより見れるようになりましたよね。
KREVA - Kenny BeatsとかIllmindとか。Timbalandもやってるしね。ベテランから若者までやってるよね。ヒップホップだけじゃなくてDisclosureみたいな人たちとかも、使ってるプラグインとか全部見せてくれて勉強になる。
- あと、Alex TumayとかMixed by Aliとか、エンジニアもTwitch上でミキシングのライヴストリーミングをやってますよね。
PUNPEE - それは、メイキングを見せるんですか?
KREVA - リアルにミックスしてるところを3時間ぐらい流したりしてるんだよね。ほとんどトークばっかりで何も作業しない時もあるけど。DECAPとかKenny Beatsとか、「どうやってストレスに打ち勝つか」とか「どうやって契約するか」とか、そういうレクチャーもやってたりする。
- サブスクしてるユーザーから応募を募ってビートバトルをやったりもしますね。
KREVA - DISCORD(チャットルーム)で投票して選ばれたエントリー曲をKenny Beatsが聴いたりするんだけど、くっそレヴェル高いよ。
PUNPEE - 番組みたいな感じでやってるんですね。
KREVA - 日本だとTwitchはまだゲーム実況が多いよね。色々調べたりしてたんだけど、もっと大きなコミュニティがないと日本ではまだ厳しいかな、って。
- プロデューサーシーンもネットを通して進化していっていて、面白いですよね。というか、KREVAさんのチェック振りがハンパないですね(笑)。
KREVA - ビートメイカーで誰か仲良い人っているの?
PUNPEE - ビートメイカーだと……あんまいないかもしれないですね。
KREVA - なんか、そんな感じがしたんだよね。この間行ったスタジオに『SOUND & RECORDING Magazine』があってPUNPEEが出てたのを見たんだけど、紹介してる機材がエンジニアに教えてもらった感じの機材が多いと思ったんだよね。
PUNPEE - あー、Illicit Tsuboiさんとかよくやり取りしますね。
KREVA - エンジニアが使う機材/プラグインとビートメイカーが使うそれは、同じものでも使い方がまったく違ったりするし。そういうのもTwitchとか見てると「このプラグイン、ミックス向けだと思ってたけどバリバリ音作りに使ってるな」とか発見が多い。だから、もっとビートメイカーと情報交換するといいよ。俺だったら熊井吾郎とかとそういう話をするね。エンジニアと話すとやっぱコンプレッサーとか、ビートメイクとあまり直結しない機材が多くなっちゃうんだよね。しかも、エンジニアが良いって言ってる機材/プラグインって高かったりするよね? そういうのを買うんだったらネットで見たビートメイカーが使ってるプラグインをチェックした方がいい気がする。その中に「流行」があるからさ。
PUNPEE - BACHLOGIC君とは一時期よく連絡取ってましたけど、最近あまり取ってないですね……音源系とかはOmnisphere(定番のソフト・シンセ)ぐらいから何も更新してないですね、倍音系のプラグインとかは結構漁ったりしてますが。
KREVA - それこそネットを覗けばトラックメイク歴1年ぐらいのヤツでもキックにEQかけてコンプかけて、もう一回音圧上げて……みたいなことを普通にやってるんだよね。それはやっぱ、情報交換がしっかり出来てるんだな、って。俺なんて最初、ビート作り始めた時にEQなんてしてなかったもん。
PUNPEE - ドラムは重ねれば太くなるとしか思ってなかったですね。
- ここ数年のKREVAさんは、コラボレーション相手がミュージシャンというケースが多かったのが、最近はPUNPEE君もそうだし、ZORNさんだったりラッパーとのコラボが増えている印象があって、2000年代後半の「くレーベル」時代や“PROPS feat. KEN THE 390, LB, HI-SO, KLOOZ, サイプレス上野, SKY-HI”の頃の流れを彷彿とさせます。
KREVA - ホント、たまたまだし、レーベルのコンピや“PROPS”は自分主導で共演相手に声をかけたりTwitterで投げかけてたりして集めてたけど、それと「声をかけられる」というのは全然違うんだよね。こんな連続でラッパーから声をかけられて、しかも全部MVを撮ったりして。その流れはすごいありがたい。呼んでくれたアーティストの作品にも活きてきてると思うし。「自分にはこういうものが求められてるんだな」っていうのを気付けたりもする。
- PUNPEE君やZORNを例に挙げると、このふたりのようにKREVAさんの活動を見ながら育ってきた世代の人たちがアーティストとして成長していって、ZORNも武道館公演を予定してますよね。そういう世代がやっとKREVAさんに声をかけられるタイミングになったのかな?と思うと、長年ヒップホップを聴き続けてきた僕のような立場から見ても感慨深いものがあります。
KREVA - 俺みたいに、こういうタイミングでたくさん声をかけられる人、他にいないんじゃないかな? 例えば俺がオリコン1位とかになってた時にたくさん声がかかる、みたいのはあるかもしれないけど、ずっと活動してきてこの時期にそれが集中するっていうのは。しかも、このコロナ禍のタイミングで。こんなありがたいことはないし、ヒップホップの面白さを改めて体感できてるね。
PUNPEE - それは俺もありがたい。よかったです。
- 今回、こうしてこのふたりでの共作が実現したわけですけど、今後もこの組み合わせでいろんな展開の可能性がありますよね。ただ客演に呼ぶだけじゃなくて、KREVAさんにプロデュースしてもらうことだって出来るし、KREVAさんにトラック提供することも出来る。
KREVA - そうだよね。一緒にトラックメイクとか、やってみたいよね。
PUNPEE - やっぱりMVで2037年の未来を作ってしまったので、2037年に何かやりたいっすね……(笑)。いや、その前にもやりたいっすね。
KREVA - 一回レキシとコラボして昔に戻った方がいいよ(笑)。
- いちいち伏線を作らないといけないのか(笑)。
KREVA - あと、さっき話したようなプラグインの話とかだったら、もう俺にLINEすればいいわけだしね。もう繋がったし。
PUNPEE - 「なんか、今、大丈夫かな……?」みたいに思っちゃって。「家族タイムだったりしないかな……?」とか(笑)。
KREVA - 全然大丈夫だよ(笑)。ZORNとか、一日30通ぐらいやり取りしてる時とかあるよ(笑)。
2人が選ぶ最近のお気に入りプラグイン
KREVA
Aberrant DSPの「SketchCassette Ⅱ」
コメント
イントロプライスで安くなってた時に買ったというのもあると思いますが、そうでなかったとしてもかなり満足できるかかり具合です。何よりこの手書き風UIがいいですよね。
PUNPEE
Future Audio Workshopの「Sublab」
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対談の時に知ってあとで買いました。プリセット音の名前がヒットした曲の名前になっていて,その上ハーモニクスやエンベロープまでいじれる808特化型のシンセです。