Wu-Tang Clanの中心人物であり、先日は自身が愛するアクション映画を解説付きで配信するプラットフォーム『36 Cinema』をローンチしたことも報じられたRZA。そんな彼が、アメリカのアイスクリームブランドGood Humorの、販売トラックで使用されるテーマソングを新たに制作したことが明らかになった。
Good Humorは小売店だけでなく街中を走る専用のトラックによって販売されるアイスクリームブランドで、100年近い歴史を持ち、アメリカでは幅広い世代に親しまれている。トラックも「Ice cream truck」と呼ばれ愛されてきたが、トラックが近所に訪れたことを知らせるためのジングルとして、この音楽を流しながら走ることが特徴であった。
この楽曲は“Turkey in the Straw”と呼ばれるアメリカ民謡。日本では主に「オクラホマミキサー」と呼ばれ、フォークダンスの際に聴いたことがある方も多いはずだ。しかし、実はこのメロディには人種差別的な背景があることも知られている。19世紀から20世紀前半にかけ、アメリカのエンターテイメント史の中で最も恥ずべきものとされる「ミンストレルショー」(「ブラックフェイス」と呼ばれる顔を黒く塗った演者が、黒人のステレオタイプを風刺し揶揄するような踊りや演技、歌などを披露する人種差別的な催し)で演奏されていた歴史があるのだ。
Complexによると、自社で使用してきた楽曲の背景を問題視したGood HumorはRZAを招き、新たな販売トラック用の楽曲を制作。RZA自身がTwitterにて、Good Humorのために楽曲を制作した背景を説明している。
投稿された動画では「みんな、あのアイスクリームの曲を知っているか?もちろん、みんな知ってる。今あの曲を流したりはしないよ。それが人種差別的なルーツを持つものだって知ったからね。でも聞いて欲しい。Good Humorは俺に電話して、“Riz、これをどうにかしなきゃ”って言ってくれたんだ。俺たちはダイナミクスを変えることが出来る。新しい時代のための、新しいアイスクリームのジングルを作ることが出来るんだ」と語られた後、RZAがスタジオでMPCなどを用いて、新しいジングルを制作する模様を観ることが出来る。
「これならどんなドライバーにとっても、どんな子供にとっても良いものになる。誇りを持って言うよ。久しぶりに、新しいジングルがアメリカ中のアイスクリームトラックに提供されることになった。永遠にな。Wu-Tangが永遠であるように」という言葉も印象的だ。
そして、RZAによる新たなジングルがGood HumorのYouTubeアカウントにて公開となった。可愛らしいメロディながら凶悪なベースを響かせるバンガーチューンとなっている。
RZAの楽曲を流しながらアイスクリームのトラックが街中を走る光景は、きっと希望に満ちたものであるに違いない。