警察によるジョージ・フロイドさん殺害事件を契機に全世界で「Black Lives Matter」ムーブメントが発展を見せる昨今。音楽業界においても様々な方法で差別を撤廃する方向に動きつつある中、大手レーベルのRepublic Recordsが長らく指摘されてきた問題の一つに一石を投じた。
Geniusの記事によると、Republic Recordsは今後音楽ジャンルとして「アーバン」という言葉を使用することを禁止するとの公式声明を発表した。声明では「Republic Recordsは音楽ジャンルなどを表す言葉の中から“URBAN”を削除します。過去の時代遅れの構造に固執するのではなく、私たちが未来を形作ることが重要であるため、他の音楽企業にも同じ行動をとることをお勧めします」とされており、「アーバン」という言葉が差別的なニュアンスを含んでいることから今後一切の使用を中止すること、業界の他の会社やコミュニティにも同様の処置をとることを勧めることが明記されている。
「アーバン」という言葉は主にR&Bやヒップホップなどのブラックコミュニティにルーツを持つ音楽を表現するために用いられており、1970年代にラジオDJのFrankie Crockerがいわゆるブラックミュージックと呼ばれるジャンルを複合的に表現するために使用したのが始まりである。
グラミー賞にも「最優秀アーバンコンテンポラリーアルバム部門」が存在するなど、この言葉は業界全体で一般的に用いられるものであり、黒人のアーティストが発表するジャンルが全てこの言葉で括られてしまうことに批判的な意見も数多く寄せられてきた。
今年の1月にはTyler, The Creatorがアルバム『IGOR』でグラミー最優秀ラップアルバム賞を受賞した際のスピーチにて「ジャンルを超えたことをやっているのに、あいつらはいつも“ラップ”や“アーバン”ってカテゴリーに俺たちを押し込む。“アーバン”って言葉は好きじゃないんだ。Nワードをポリティカリーコレクトネスに配慮して言っているだけのように思える」と語り、「アーバン」という言葉が持つ欺瞞を批判していた。
今回のRepublic Recordsの決定はこのような批判と「Black Lives Matter」の動きを背景に行われたことが分かるが、これに続き「アーバン」を禁止する企業が今後も現れるかどうか注目だ。