NYを拠点に70年代からグラフィティを描き続けているレジェンドFUTURA LABORATORIESと、90年代から日本のストリートファッションを牽引してきたレジェンドNIGOLDによるコラボプロジェクトがCO:LABSでスタートした。
FNMNLではこの企画に関連して、両者の作品に触れてきたアーティストやデザイナーなど世代を超えた5人へのインタビューを敢行。第一弾ではMIN-NANOとTOXGOという2つのショップオーナーとしてや盟友のSHINKNOWNSUKEとのユニットUPPERLAKE MOBなどで、現在のストリートシーンに独自の価値観を掲示し続けているGOROが登場。両者のデザインやアイテムと90年代の裏原宿のムーブメントをきっかけに出会い、現在の店舗運営においても影響を受けているという貴重なエピソードを訊くことができた。
取材・構成 : 塩川優吾
撮影 : 横山純
- NIGOとFUTURA、知ったのはどちらが先ですか?
GORO - NIGOさんですね。はっきり意識するようになったのは、雑誌「asayan」で藤原ヒロシさん、JONIO(UNDERCOVERデザイナー・高橋盾)さん、NIGOさんの3人でやっていた連載「LAST ORGY 3」からだと思います。当時、ファッション好きな友人とよく読んでいました。
- FUTURAのことはどんなきっかけで知りました?
GORO - FUTURAを知ったのも「asayan」がきっかけです。絵が紹介されていて、たしか「猿の惑星」がモチーフのドローイングだったと思うんですが、そこでFUTURAという人がいることを知って。その頃、いわゆるトリップホップ的な音楽が好きで、DJ KRUSHのMo’Waxから出てたやつ(1stアルバム『STRICTLY TURNTABLIZED(94年)』)をよく聴いていたんですが、あとから「あ、このジャケもFUTURAなんだ」と気づいた感じです。当時は、グラフィティというカルチャーをあんまり意識していなかったということもあって、音楽や服をきっかけにFUTURAのことをだんだん知っていきましたね。
- “クラッシュ”といえば、FUTURAはバンドの方のThe Clashとも関係が深いですよね。
GORO - もともとバンドをやってましたし、パンクももちろん大好きだったんですけど、いわゆる「初期パン」的なものは結構ダメだったんです。はじめてThe Clashなんかを聴いたころにはもうメロコアとかがあったので、正直「なんかショボいな」みたいな感じで。今聴けばいわゆるレゲエ期のClashとかすごくいいなと思うんですが、当時の自分は一番退屈な音楽だと感じていました。なので、FUTURAがジャケットをデザインしていたり、共演していたりっていうことを知るのは、かなりあとになってからなんですよね。
- NIGOとFUTURAの関係が急接近する90年代後半、GOROさんはどんな感じだったんですか?
GORO - その頃は専門学生で、服だと最初はSTUSSYが大好きだったんですが、そこからだんだんLAST ORGY 3なんかの影響もあって、NIGOさんやその周辺の方々がやっていたブランドもいろいろまぜこぜで着るようになっていた感じです。そのなかで、HECTICで扱われていたProject Dragon(FUTURAとStashによるデザインスタジオ兼ブランド)も好きで買っていました。そんなグラフィティカルチャーにも興味を持ちはじめたころ、Concept Shopというお店がオープンするんですが、そこがすごく印象に残っていて。
- どんなお店だったんでしょうか?
GORO - NIGOさんがはじめた、FUTURAやStashのグラフィティをフィーチャーした店なんですが、asayan誌上にそういう店がオープンしたという情報はあっても、たしか住所は公表してなかったんですよね。そんななか、なんとかボロボロのビルの5階にたどり着いたんですが、そこだけもうバッキバキで。アルミの近未来的な扉を開けると完全に作り込まれた空間で、そこではCO:LABSの動画でも話が出ていた、スプレー缶に入ったTシャツなんかが売ってて。だいぶ衝撃を受けましたね。今回の取材の話をいただいたときは、真っ先にこのConcept Shopのことが頭に浮かびました。ここで体験した、行ってみるまでわからない感じとか、ドキドキする感じとか、欲しいものがあってすごくテンションがあがる感じとかっていうのは、形態に違いはあるものの自分が店をやる上で、今でもすごく大事にしている部分ですね。
- アートやカルチャーとリンクするファッションという意味でも、今のMIN-NANOやTOXGOにつながりますよね。
GORO - そうですね。単純にTシャツを買うだけじゃなくて、その先にあるなにかについて掘り下げて知ることは、自分にとってすごく大切なものになる。Concept Shopはそういうきっかけを与えてくれる場でしたし、自分の店もそういう場でありたいと思っています。Concept Shopといえば、同じビルの2階でSupremeやZoo York、Holms(SILASの前身ブランド)、Brooklyn Machine Worksの自転車なんかを扱うショップもNIGOさんがはじめるんですが、その感じは思いっきりMIN-NANOのルーツになっています。じつはこの店で働きたくて、履歴書を持っていったこともあるんですが、書類選考で落ちました(笑)。やっぱり、NIGOさんのエディット力にはすごく影響を受けていますね。
- GOROさんのお話にも出たProject Dragonや、自身の名を冠するブランドFutura Laboratoriesなど、FUTURAはファッションにまつわるデザインも多く手掛けていますが、とくに印象に残っているアイテムはありますか?
GORO - かっこよく言うならagnes b.とのコラボアイテムなんでしょうけど、残念ながら自分はリアルタイムじゃないので、やっぱりNike SBのDunk Proですかね。2005年かな、UNKLEのやつ。ハイカットで、アッパー全体がFUTURAのグラフィックで。あれはインパクトがありました。あとは服じゃないですけど、COLNAGOのトラックバイクだったり、ニューヨークのSupremeが移転したときの店内を手掛けたりと、意識的にずっと追いかけているわけじゃないのに、自分が好きなものを好きでいると、要所要所で必ずFUTURAが現れるんですよね。
- MIN-NANOオリジナル商品のグラフィックは、GOROさん自身によるものだけでなく、加賀美健さんや盟友SHINKNOWNSUKEさんなど、他の方に発注するケースも多いですが、もしFUTURAにお願いするとしたら、どんなものを作りたいですか?
GORO - それは夢だなぁ。まぁでもやっぱり、あの字体でなにか描いてほしいですよね。それこそ店の名前とか。Supremeの日本代理店だったワングラムのロゴもFUTURAでしたもんね。いつかそういう機会があったらうれしいです。
Info
インタビューにも登場しているFUTURA LABORATORIES × NIGOLDのMA-1などをはじめ、CO:LABS限定のスペシャルコラボアイテムを抽選でプレゼント。詳細は下記から。