2015年2月にCreativeDrugStoreのYouTubeチャンネル(以下 : CDS)から“FRESH”のミュージックビデオが公開され、正式にCDSへ加入したJUBEE。そこから、THE OTOGIBANASHI’Sが2016年にリリースした2ndアルバム『BUISINESS CLASS』の中の楽曲“大脱出”への参加、2017年1月には自主制作のソロアルバム『TIME GOES BY』をリリースした。
その後はソロとして活動の幅を広げていくように感じたものの、その後の2年間、トラック提供や客演参加はありながらも、ソロとしての活動をしていなかった。JUBEEはその2年間について「あの頃のJUBEEというアーティストは腐っていたかもしれない。自分のプロジェクトを進めるために、こういう行動をしますって説明できる自信もなかったんです。」と話す。
しかし、2019年1月にソロとして久しぶりの楽曲“NOISE SURFER MIND”をリリース。その後、楽曲“BLUE ZONE”、EP『Mass Infection』をリリースし、中目黒solfaにて主催イベント『Rave Racers』を開催するなど、精力的にソロとしての活動を再開した。今回、JUBEEに『TIME GOES BY』リリース以降の自身の話、心境の変化、2019年にリリースした作品、主催イベントについてなどを、EP『Mass Infection』のジャケットデザインを手がけ、現在はJUBEEのバックDJをしているHiro "BINGO" Watanabe、JUBEEのロゴをデザインしたGUCCIMAZEと共に話を訊いた。
取材・構成・写真 : 宮本徹
- 2017年に『TIME GOES BY』をリリース以降、2019年にソロ活動を再開するまでの心境について教えてほしいです。
JUBEE - 『TIME GOES BY』をリリースしたあと、CDSやオトギ(THE OTOGIBANASHI’S)にオファーが来たら、メンバーと同じくらい話し合って、ライヴを考えたりしてたんですけど、それ中心の生活になっていたんです。ライヴで“大脱出”を歌うだけで良いのかなって思うようになってしまって。自分の中で引っかかってたので、当時住んでたCDSのヤサを出て、ひとりで頑張ってみようって決めたんです。メンバーに伝えたら、「その方が良いと思うよ」って言ってくれて。それが2017年の後半ですね。でも、ヤサを出たあとはすごい頑張れたわけじゃなく、ラップを書かずにビートばかり作ってました。
- なぜビート作りに集中を?
JUBEE - 自分の中で逃げてた部分があって、ラップを書きたいって気持ちがなくなってた分、ビートを作ることに集中しました。ビートはたくさん作っていたから、『TIME GOES BY』のときに作れなかったビートも作れるようになっていって。それで2018年のVaVaくんが“Call”のMVを出したときくらいですかね。VaVaくんがお互いの今年の目標を決めようって誘ってくれたんです。MVを何本だして、アルバムを出すとか。それを実現するための月の目標もお互い決めて。振り返ると、おれはそのときに決めたことを全くできてないけど、VaVaくんはやりきったんですよね。おれの中での情熱みたいのが足りなくて、自分ってなんだろうって思っていました。けど、時間がおれを昔に戻してくれたというか。時間が経つごとに、本来好きだったものに正直で良いんだなって思うようになりました。自分の好きなことをやらないと心が死んでいく感じがして。VaVaくんの背中を見て、喰らったのもありますね。
- そこで気持ちの変化があったんですね。
JUBEE - そう思うようになったときに“NOISE SURFER MIND”のビートができたんです。2018年の8月くらいですかね。おれの理想としてたものができたから、この曲でラップしたいと思って、久しぶりにラップを書きました。あと、PVも出したいなって。そこから初めて自分の力で、アーティストのJUBEEとして頑張ろうって思いました。ミックス、マスタリング、PVの制作費やスケジュールを初めて自分で決めて。そういう経験が全くなかったから、SUMMITの増田さんに坪井さん(The Anticipation Illicit Tsuboi)を繋いでもらったり、新保さん(Takuto Shimpo)にPVをお願いしたりして。ふたりとも快く引き受けてくれました。“NOISE SURFER MIND”は、めっちゃかっこいいって自分が思うから、間違いないんだって思ったんですけど、出したら数字としての反応がそんなになかったんです。その頃は数字を気にしちゃってたんですよね。
- でも、その後は楽曲“BLUE ZONE”を早い段階でリリースしましたよね。
JUBEE - CDSのメンバーが“NOISE SURFER MIND”を出したら、頑張ってるじゃんって思ってくれたみたいで。作ったばかりの“BLUE ZONE”も聴かせたら、かっこいいじゃんって言ってくれて。これはPV撮って早く出した方が良いよってなって、3月のCOMMON Galleyでの『CDS Pop Up Shop Vol9』の前に出そうってなりました。ミックスはまた坪井さんにやっていただいて、PVはCDSの九州ツアーをやったときに熊本で81.5が撮ってくれました。おれは“NOISE SURFER MIND”と同じ気持ちで出したんですけど、やっぱり数字としての反応があまりなくて。でも、おれが今まで出してこなかったから、こういうもんだよなって思うようになりました。
- なるほど。“NOISE SURFER MIND”と“BLUE ZONE”はJUBEEくんがひとりで制作費を出して、しんどくなかったですか?
JUBEE - ミックスもPV撮影も自分で制作費を出してたから、かなりしんどかったですね。でも、“NOISE SURFER MIND”と“BLUE ZONE”の他にも何曲かできたから、作品を出したいと思ったんです。みんなどうやってるんだろうって悩んだときに、同じ大学の先輩のONEさん(ELIONE)が頭にふっと出てきて。クラブで会ったら挨拶する程度だったんで、飲みに行ったりするような関係性でもなかったんですけど。久しぶりに連絡したら、すぐに返信くれて、ご飯に行きました。おれの状況を話したら、いろいろアドバイスしてくれて。そのとき自分の曲を聴かせたら、かっこいいじゃんって言ってくれて、その場で思い当たる人いるから連絡するよってなりました。後日、ONEさんがセッティングしてくれて、マンハッタンレコードの粟倉さんを紹介してくれたんです。粟倉さんはおれに興味持ってくれて、一緒にやりましょうってなりました。制作費も問題ないよって言ってくれたことで、おれの悩みはなくなりましたね。
- そこからはどういう方針で進めていこうってなりました?
JUBEE - 今後のリリース予定も細かく決めたりしたんですけど、粟倉さんにレイヴカルチャーやアシッド感のあるテクノが好きってことを伝えたら、BINGOさん(Hiro "BINGO" Watanabe)にも関わってもらった方が良いんじゃないかってなって。当時、BINGOさんとは話したことがなかったけど、HABANERO POSSEはもちろん知ってたんで、そんなすごい人と関わることができるのかってなりました。
- BINGOさんはJUBEEの存在を認識してましたか?
BINGO - ライヴは見たことなかったけど、存在は知ってました。dooooくんとの“Just Another Day”のビデオも見ていたので。JUBEEのことは良い意味でCDSっぽくないと感じてたね。話したときは、すごい面白いなって。自分の若い頃の青春のカルチャーをストレートに愛してることが伝わりました(笑)。こんな子がいることに驚いた。それでグッチ(GUCCIMAZE)ともセンスが合いそうだなって思いました。
- JUBEEくんとGUCCIMAZEの出会いはBINGOさんが繋げて?
GUCCIMAZE - 三茶のジョナサンでJUBEEの共通の友だちと打ち合わせして、その後にBINGOさんと同じ場所で打ち合わせするっていう日があって、JUBEEの話題が出たんです。それでBINGOさんが早めに到着して、第一声目に「JUBEEくんっていう子と知り合って、めっちゃ面白い子でさ」って、またJUBEEの話題が出て(笑)。その共通の友だちがJUBEEとその翌週に飲むから、おれとBINGOさんのことも誘ってくれて、そこで知り合いました。当時、JUBEEの存在は知ってたけど、音源は聴いたことがなくて。それからJUBEEの音源を聴いてみたら、ここまでミクスチャーど真ん中だとは思わなくて驚いた(笑)。ゼロ年代に向かってる感じ。
- JUBEEくんはGUCCIMAZEの存在は知ってました?また、初めて飲んだときからロゴができる経緯についても知りたいです。
JUBEE - GUCCIさんとは接点がなかったけど、Nicki Minajの件で知ってました。初めて飲んだときからは、めっちゃ趣味が合って、そこから毎日ラインしましたよね(笑)。Kottonmouth Kingsってバンドがよく着てるSRHってブランドの話とかを共有できたり、THE MAD CAPSULE MARKETSを好きな人と出会ったことなかったから、すごい楽しくて。この人なら、自分の思うものを100%の形で表現してくれるって思ったから、ロゴを正式にお願いしました。
GUCCIMAZE - おれの世代の方がJUBEEが言ってたカルチャーに近いとはいえ、それを好きな同世代が意外といなくて。ここ数年で90年代の後半やゼロ年代初めのカルチャーを掘り返して、かっこいいなっていうモードに入ってた。そういうデザインをやりたくて、デザイン案件の仕事とかでも提案するんだけど、全然採用されなくて(笑)。そんなときにJUBEEと出会って、話が合いすぎて楽しかったよね。JUBEEのロゴはおれが作りたいと思ったから、即オッケーしたし、やりとりも早かった。共通言語でバンドやブランドのロゴとかあるから、自分としては2019年のベストワークスのひとつに入るね。
JUBEE - ラフで送ってくれた時点でめっちゃ良かったから、細かい修正くらいで終わりました。JUBEEロゴの上は蜘蛛なんですけど、The Prodigyみたいな動物系のマークを入れたいと思って、入れてもらいました。あと、よく見ると蜘蛛のところはアルファベットでJUBEEって書いてあるんですよ。
- ロゴができてからは、9月にEP『Mass Infection』をリリースして、その翌日には“Morning Dew”のPVを公開しましたよね。
JUBEE - “Morning Dew”のPVのイントロは『池袋ウエストゲートパーク』のオープニングシーンをオマージュしてるんですよ。堀田さん(Hideto Hotta)に撮ってもらったんですけど、撮影は車のシーンが大変でしたよね(笑)。撮影場所は千葉県の木更津で、PVにはBINGOさんにも出演してもらいました。
BINGO - 車でまっすぐ道を走るだけだと思ってたんですけど、運転するのが1年ぶりだし、サビに入るところでSoushiくんのスケートとピッタリ合わせるのが本当に大変だった。何テイク撮ったか分からないです(笑)。
- その後、10月には主催イベント『Rave Racers』も。
JUBEE - おれのやってる音楽をメインにしたいっていう気持ちがあって、本気でかっこいいしイベントにして、今の若い子たちにレイヴのカルチャーを伝えていきたいって思ったんです。ラッパーがレイヴのイベントをやったらクールだなっていうのもあって。イベント名はBINGOさんが案を出してくれました。このイベントの意義としては、新しいカルチャーというか、ヒップホップの中にもそういう音楽があるんだよってことを届けたい。Dragon AshやTHE MAD CAPSULE MARKETSのかっこ良さを知ってほしい。そういうのを伝えていきたいんですよね。イベントに出て頂いたBAKUさんのことは高校のときから好きだし、THE MAD CAPSULE MARKETSのKYONOさんと曲を作っていたりもして、今回のイベントには欠かせないと思いました。
BINGO - たまたまだけど、過去にBAKUくんとKYONOさんの曲のリミックスをHABANERO POSSEがやったりもしてて。
JUBEE - このイベントに出てもらった人たちは、実際にDJ聴いたりして、おれの中で感じるものがあったから、意味あって集めたメンバーなんです。本当はライヴなしで、音だけで狂乱させる感じが良いんです。けど、ミクチャーもかけるし、おれが好きな音楽を伝えたいって感じです。それに共通する人たちを呼んで、おれの中での新しいレイヴカルチャーですね。
- 2019年のJUBEEくんは音源のリリースや主催イベントを開催するなどして、大きく動いた年だと思うのですが、2年前と今を比べてみてどうです?
JUBEE - イベントやライヴをやっていくごとに周りのいろんな人が良いねって言ってくれることが多くなって、ようやく自分を取り戻せた2019年でした。2年前とは全然違いますね。数字よりも周りの人たちのおかげで自信に繋がりました。特に、いつもライヴに来てくれる人には本当に感謝してます。その人たちが最前列で盛り上がってくれてるから、いつも通りの自分が出せてますね。あと、今考えると2年前の自分には自信がなくて、CDSに甘えてたんだなって思います。
- JUBEEくんにとって、今のCDSはどんなチームですか?
JUBEE - 今のCDSは最高なチームだなって思う。みんな自分を持って、集まったときは団結できる。やってる音楽はバラバラだけど、まとまるとすごい団結しますね。今までみんなとイベントを作ってきた実績もあるし、まとまりのあるチームだなって。
- 最後に2020年の活動について教えてください。
JUBEE - 2020年はEPとアルバムを考えて動いています。アルバムはフィーチャリングゲストを入れたり、トラックの共作とかも考えています。今までひとりでトラックを作ってたから、誰かとセッションして作ったりしてみたいんですよね。