Tory Lanezが警告を発したことも話題となったインターネットミーム『MOMO Challenge』。不気味な女性の顔の画像とともに自殺を指示するメッセージが届く、という内容が広く拡散され注意喚起がなされたが、もとよりそのようなコンテンツは存在しなかったということが明らかとなった。(リンク先には実例としてショッキングな画像が表示されている物もあるため、ご注意下さい)
Guardianによると、『MOMO Challenge』はイギリスのウェストホートンに存在する保護者グループがFacebookにて警告を発し、それがローカルのタブロイド紙に取り上げられたことをきっかけに拡散された。結果的に、注意喚起の報道によってミームが広まってしまったのだという。イギリスのインターネット安全センターのKat Tremlettは「噂はループを形成し、ニュース報道が学校や警察による注意喚起のきっかけとなり、それがまた新たな報道を多く生み出しました。それはある種の現実味を持った都市伝説です」と語っている。YouTubeもこの事態を重く見たようで、『MOMO Challenge』に関連する動画全てに広告を表示せず収入が入らないようにするとの声明を発表している。
そもそも、『MOMO Challenge』に使用されている画像は日本人の造形作家である相蘇圭介氏の作品『姑獲鳥』が元ネタであったことは以前も報じた通り。同作品はアメリカの掲示板サイトReddit上のホラー作品についてのフォーラムなどで話題を集め、いわゆる「精神的ブラクラ」のような形で広く拡散。その後、とあるネットユーザーが『MOMO Challenge』なる噂話を作り上げ、それがあたかも事実であるかのように報道されてしまったようだ。実際のところネット上に自殺を喚起する「MOMO」なるユーザーは存在せず、YouTube上に自殺教唆の動画も存在しなかった。最終的にこれらの騒動は全てデマであったという形で収束しつつある。
しかし、YouTubeには現在『MOMO Challenge』を題材にした動画が数多く投稿されており、Google Playでも『MOMO Challenge』をモデルにしたホラーゲームが購入できる。「『MOMO Challenge』は本当だった」といった趣旨の動画も複数存在し、実際に子供向けの動画の最中に問題の画像を表示するフェイク動画を制作したユーザーも確認出来る。
ネットミームという現象の特性上、起源が何であったせよ一度拡散されたものは様々な形でインターネット上に残り続ける。『MOMO Challenge』と同じく存在が疑問視されているロシアのミーム『Blue Whale Challenge』にインスパイアされた動画、楽曲などはインターネット上に数多く投稿されており、子供向けの嫌がらせ動画「エルサゲート」もYouTubeに氾濫している。「善意、危機感による拡散、報道によって形成された」という点が今回の『MOMO Challenge』の特異な部分だが、皮肉にもそれらによって『MOMO Challenge』は現実のものとなってしまったのかもしれない。起源がデマであることは大前提だが、インターネット上の危険なコンテンツに警戒が必要なことは変わりないと言えるだろう。