マイアミ出身の23歳のラッパーDenzel Curry。インターネットのアンダーグラウンドシーンからキャリアをスタートし、“Ultimate”などのヒット曲で知られる彼はテクニカルなラップ、そして求道者的なアティチュードで熱狂的な支持を集めている。
2016年にはXXL Freshmanに選出され、また昨年リリースされたアルバム『TA13OO』ではこれまで以上に幅広い音楽性を見せヒップホップシーン以外からの高い評価も獲得。初めての来日公演となった今回のライヴでも激しいライヴパフォーマンスで来場者を魅了した。勢いを増して活動する彼にライヴ前に話を聞くことができた。
取材・構成:和田哲郎
Photo by Ryota Mori
- 今マイアミから移ってLAに住んでいるということなんですが、LAでの生活はいかがですか?
Denzel Curry - LAにいる時の方が生産的になれる。色々必要なものもすぐに手に入るし、一緒に仕事をする人ともすぐにアクセス出来るからやりたいことに集中できるよ。邪魔も入らないし、そういう意味でLAの方が俺にとって良いな。
- LAには多くのアーティストが住んでいますが、LAで会った中で一番「一緒に仕事をしたい」と思ったり、今後コラボをする予定のアーティストはいますか?
Denzel Curry - 今はTerrace MartinとかFlying Lotusと一緒に曲を作ってる。まだ曲が出来たり発表する予定とかは無いけどね。LAでは沢山のアーティストと会って、一緒にやりたい人もいっぱいいる。良い人ばかりなんだ。Billie Eilishは俺にとって妹みたいな存在で、彼女とのトラックは好きだしこれからも一緒にやっていきたいよ。IDKやJ.I.D.もずっと俺を支えてくれた仲間だ。Kenny Beatsもそうだね。
- Billie Eilishとは普段いるシーンも違うと思うんですが、どのように彼女と仲良くなって関係を深めていったんですか?
Denzel Curry - 彼女は元々俺のファンで、それでマネージメントチームに連絡してきたんだ。それである日彼女や友人たちと集まって遊んでいて、その中で一緒にトラックを作った。それはあまりにもふざけた物だったから発表するつもりは無いけどね。そうやってその日にすぐ曲を作るくらいに仲良くなって、それからずっと連絡を取るようになったんだよ。『TA13OO』を作ってるときに「この曲のフックを歌ってくれないか?」って言ったらやってくれて、それをJ.I.D.に送って“SIRENS”が出来たんだ。
- 最近のあなたの動きを見てるとヒップホップシーンだけに留まらないというか、ダブステップのアルバムを作るっていう話だったり、Willie Nelsonとコラボレーションするという話も聞いたんですが。やはり今後はヒップホップシーンにとどまらず、よりジャンルレスに活動していきたいという思いはあるんですか?
Denzel Curry - ダブステップのアルバムとWillie Nelsonとのコラボは全部ただのジョークなんだけどね(笑)ジョークで言ってたのをみんな本気にして、ニュースにも出たんだ。Willie Nelsonもよく知らないし、ダブステップのアルバムを作るつもりもないよ。でも俺は昔のダブステップは最近よく聴いてるよ。今のうるさいやつじゃなくてね。
- 海外のサイトもニュースを出したので本当なのかと思いました(笑)
Denzel Curry - 全部嘘だよ(笑)
- とはいえ去年の『TA13OO』ではこれまでのダークでエネルギッシュなイメージから、よりメロディックだったり新しい側面を見せてくれましたよね。その新しい側面はどうやって進化させていったんですか?
Denzel Curry - 元から歌えなかった訳じゃなくて、単に前はそれを出さなかったってだけなんだ。昔もメロディックな曲をやってたんだけど、叫んだりするようなパフォーマンスや曲をみんなが聴いてるからみんなそういうイメージを持ってるんだと思う。でも前からそういうメロディックな部分もあったし、『TA13OO』ではもっと自分が多彩なことを出来るっていうのを出したかったから今回はそういう風に聴こえるんだよ。
- 特に“CLOUT COBAIN”で印象的だったのがあなたのSNSに対する距離感で。今のヒップホップシーンはSNSと結びついて熱狂を生み出してると思うんですが、そういった風潮とは距離をとっているというか。今のSNSについてどう感じていますか?
Denzel Curry - 本当にSNSはユーザーによると思う。ユーザーの意図が大きくて、それが悪くなければ悪いものでもないし。でもみんなが「注目されたい」っていう思いで使ってるのも事実だと思うんだ。使う側、そして見る側の目的や意図さえ理解していれば全く悪いものではないと思う。ただ、悪意が無かったとしても利益を得たいがためにそういう印象を与えてしまうこともある。ただ音楽をプロモーションしてい人もいて、有名になりたいって人もいて。ユーザーそれぞれの使い方によってSNSの立ち位置は違うんだ。本当に悪意のある使い方をする奴もいるし、狂ったような騒ぎ方の引き金になってる部分もあって、そういうことは見る側が注意していれば分かると思うよ。
- 『TA13OO』でも“SUPER SAIYAN SUPERMAN”という曲があったり、『ドラゴンボール』からのインスパイアが凄くあると思うんですが。『ドラゴンボール』にハマった理由はどんなところですか?
Denzel Curry - 俺は『ドラゴンボールZ』を観て育った。アメリカでも15時くらいに放送されてて、いつも放課後に弟と一緒に観てたんだ。俺は大人になったトランクスが好きだ。子供のトランクスはそんなに好きじゃないけど。悟空ももちろん好きだ。ベジータはあまり好きじゃない。『ドラゴンボールZ』は自分が持ってるパワーを使って強くなっていく過程を強く感じるところが好きで、特に悟空にはモラルを感じるんだ。バカでも友情やモラルを守って、自分がやるべきことを分かってる。目標ややるべきことに向かって頑張る姿に感動したし、俺もそういうタイプなんだ。体づくりや音楽、生き方の全てに目標を定めるタイプだから強く共感したんだよ。
- 常に目標を持っているということですが、次の目標はなんですか?
Denzel Curry - 言うと叶わないから言えない(笑)
- ありがとうございました。