Rolling Loud FestivalはLil Pump、Ski Mask the Slump God、Smokepurpp、そして20才という若さでこの世を去ったXXXTentacionなど、当時SoundCloudでバズりかけていたマイアミベースのアーティスト達を集結させ、その人気を一気に全米へ押し上げた。
2015年に始まったフェスは2018年には、本拠地マイアミで3日間で18万人の動員数を記録。LAにも進出を果たし、世界最大級のヒップホップフェスへと急成長した。チケット代は決して安くはないが、それでもミレニアム世代のファン層をガッツリ掴んでいるのは、出演アーティストのラインナップだ。とにかくエグい。全米各地の注目の若手ラッパーから、トップチャートを賑わす錚々たるメンツを一挙に集める。先のマイアミでの開催の際には120組以上のアーティストが出演。ラインナップをチェックするだけで、USヒップホップシーンの動向がわかってしまう。今回は12/14~15にLAで開催されたRolling Loudの模様を、日本の皆様にお届けしよう!
取材・構成・撮影 : 池尻安希(Aki Ikejiri)
Rolling Loudが始まって以来、初のフィメールラッパー、まさに人気絶頂のCardi Bが大トリを務めたこともあり、最終日の観客は、女の子が多め。バックダンサーを従えたCardiのパフォームは素晴らしかったが、なんとも後味が悪く、翌日にはRolling Loudまで叩かれる騒ぎが勃発。MigosのOffsetが、Cardiのステージを中断させたのだ。12月頭にOffsetと別れたと宣言したCardiのステージに未練タラタラのOffsetが、突然ケーキを持って、登場。しかも、「Cardi、戻ってきてくれ」とデカデカと書いたセットまで持ち込んだ。
「俺が悪かった。愛してる、この通りだから、許してくれ。よりを戻してくれ」と懇願した。Cardiは、Offsetの顔を見るなり、不機嫌モード全開。マイクを切って、鬼の形相でOffsetに何やら話している。口の動きから察するに、「信じられるか、胡散臭い」的なことを繰り返している。(破局の原因は、Offsetの浮気だと報じられている。)Offsetの登場に観客も最初こそ盛り上がるも、Cardiの不機嫌さに凍りつき、復縁不可能だと悟る。照明も落とされたまま、そして、なかなかその場を立ち去らないOffsetに、会場の空気はさらに重くなる。
SNS上では、初の女性ラッパーの大トリに汚点を残した、そしてこれは明らかにハラスメントであるとして、Offsetに非難が集中。復縁が成功していたら、状況は180度違っていたのだが。ちなみに主催側のRolling LoudもOffsetと共謀したとして一緒に叩かれた。それを受けてRolling Loud側は、ステージ演出はすべてアーティスト側がコントロールしていて、Cardi側からMigos3人がサプライズとして登場すると、報告を受けていたことを明かした。恐らく、"Motorsport"を演る予定だったのだろう。Cardi本人も、Offsetの暴走は寝耳に水だったのである。
ただし、予兆はあった。前日の21 Savageのステージに、誕生日だったOffsetがサプライズ登場し、Metro Boominと2人のコラボアルバムの中から、”Ric Flair Drip” そしてMigosの代表曲”Bad and Boujee”をお一人様で熱唱した後Offsetがステージからはける際に、21が「Cardiと復縁うまくいくように!」とシャウトしたのだ。思えば、Offsetが「結婚してくれ」と指輪を差し出したのも、ステージ上。(実は、この時、すでに婚姻届は出されていたのだが。)Offsetも、後に、復縁も公の場で申し出るのが筋だと思った、と語っている。
追記しておくと、OffsetがCardiに復縁を迫る際、語尾に「Bruh」と使ったことも、非難の種になってしまった。これは、男同士に使うスラングで、brother (兄弟)から来ていて、Migosの出身地であるアトランタでは、特に多用される。最近では、女同士でも(sisterのsisと使うのが正解なのだが)Bruhが使われているので、違和感こそないのだが、「自分の奥さんに対して、しかもあの状況でBruhはないだろう」と責め立てられた。
当のCardiはOffsetをステージから追い出した後、何事もなかったかのように、もう一人のサプライズゲストPardusin Fontaine を迎え、パフォーマンスを続けた。さすが、女は強し!しかも、セット終了後に自身のインスタで「子供にとっても、私にとっても、彼は、よき父親であることには変わりないし、これからもそう。だから、彼が非難されているのは、我慢できない!」と、計り知れない懐の深さを見せた。
Cardiを始めとするヘッドライナーたちのステージは撮影不可だったので、ここからは撮れた写真と一緒に紹介していきたい。サプライズでいうと、Ski Mask The Slump Godは、Juice WRLDを、PouyaはJ.I.D、Lil Skies はYung Pinchを登場させ、それぞれのコラボ曲をパフォーム。そして、Chief Keefは自分のセットには現れずに、何故かトリのLil Uzi Vertのステージに登場し、自分の持ち歌”SoSa”を演って退場、ただの遅刻だろうか。Ski Mask、Trippie Red、Lil Skiesは、XXXTentacionへの強めの追悼も行った。
特筆すべきは2018年に10年以上の時を経て、トップチャートにカムバックを果たしたTyga。地元ということもあり、盛り上がりは半端なかった。
今年、Rolling Loudは、オーストラリア、イギリス、中国、そして日本での開催が決定しているが、機会があれば、ぜひ本場のフェスを体験してほしい。USヒップホップの動向がわかると同時に、サプライズゲストにも期待できるし、それに、今回のように、ヒップホップ史上に残る珍?事件を自分の目でしっかりと見届けることができるかも!