先日より予告されていた通り、現地時間10/11(木)に行われたKanye Westとトランプ大統領のランチミーティング。世界的なニュースにまでなってしまったこの会談だが、中でもトランプ大統領を前に行われたKanyeの10分間に及ぶスピーチは大きな波乱を呼んでいる。
もはやお馴染みの「MAGA」キャップを被って登場したKanyeは、元々は刑務所制度の改革について話し合う予定が、トランプ大統領の前に座るや否や凄まじい剣幕で大統領への賛辞を並べた。地元シカゴの現状についてひとしきり捲し立てた後、問題の帽子について語った。
「みんなは俺にこの帽子を被らせないようにするけど、この帽子は俺にエネルギーをくれる。幼い頃に両親が離婚して父親が家に居なかったせいで、俺には男性的なエネルギーが足りてないんだ。結婚して家族も出来たけど、男性的なエネルギーは無い。ヒラリーは好きだし、みんなを愛してるけど、彼女の政策には男として共感することが出来ない。彼女の政策の中に“父親”を見ることが出来ないんだ。俺はこの帽子を被ると、まるでスーパーマンになったような気分になる。あんたは俺をスーパーマンにしてくれるんだ」と大統領に語り掛ける彼は、幼少期の父親の不在の反動からトランプ大統領のマチズモに父性を見出し、支持を表明することで精神的に力を得られるとの告白を意図せず行っているようにも見える。ここにはヒラリーだけではなく女性全般への蔑視的な視線もみてとれ、現代の大統領を目指す人物としては致命的なジェンダー観だろう。
他にも大統領に専用飛行機「エアフォースワン」に代わる飛行機を使用するよう提案し、二人でハグを交わすなど仲睦まじい様子を見せている。トランプ大統領もKanyeを「賢い」と評価し、彼が次期大統領選に出馬しようと考えていることについても「可能性はある」などと評価した。ちなみに、会談の最中にKanyeが携帯電話を操作した際パスコードを打ち込む様子がカメラに映りこんでしまい、「000000」というあまりにシンプルなパスを設定していることがバレてしまうという珍事も発生した。
WATCH: Kanye West accidentally revealed his iPhone password in the Oval Office. Hint: It's 00000 https://t.co/Zm89TP3sW6 pic.twitter.com/jCPtpCk12O
— CBS News (@CBSNews) 2018年10月11日
Kanyeはその後アップルストアに立ち寄り、机の上に立ってスピーチをした後に「アフリカに行く」と述べてその場を立ち去ったようだ。正常な行動には見えない。
I walk into the Georgetown Apple store and out walks Kanye West pic.twitter.com/QKlbOOCDZH
— Caroline Kelly (@caroline_mkelly) 2018年10月11日
“...It hurts us as people, specifically black people, the idea, because we say, was America ever great for us? So we made a updated hat that said, lmake America great, and Trump wore the hat so he is open to adjusting and listening” pic.twitter.com/nKgkDUKtga
— Caroline Kelly (@caroline_mkelly) 2018年10月11日
先日も「MAGA」キャップを着用し『Saturday Night Live』に出演し長時間に及ぶトランプ支持のスピーチを行ったことで大きな批判を浴びたKanyeだが、当然今回の件も多方面からの批判が寄せられた。代表的なところでは今年“Ye vs. the People”にてKanyeとコラボしたT.I.が激しい怒りを表明している。
Kanyeがトランプ支持を訴えた時に、”Ye vs. the People”で相手役を買って出たT.I.は自身のInstagramにて長文のコメントを投稿。「Yeのファンたちに言いたい。これはクールじゃない。これは彼が自分のことしか考えずに起こした行動だ。これは彼が自分の居たいポジションを得るための茶番でしかない」「お前のケツ舐めと靴舐めはもはや新しいレベルに達している」「もう限界、終わりだ。トランプと彼の賢い坊やにファック」と失望を露わにしている。
Kanyeが初めてトランプ大統領の支持を表明したのは遡ること2年前。2016年のSaint Pabloツアーの最中に突如「今回の選挙ではトランプに投票したかった」と発言して以来、彼は一貫してトランプ大統領を支持する姿勢を崩していない。Twitterにて「自由な思考」の大切さを訴え、TMZのインタビュー中に行った「奴隷制は選択だった」との発言で大炎上し、精神的な治療として行われたワイオミングセッションにて、『Ye』や『KIDS SEE GHOSTS』などのアルバムを完成させて高い評価を得るなど様々な出来事を経ての今回の会談だが、上の動画からも伝わってくる通り彼がまともな精神状態にあるとは到底考えられない。トランプ大統領との会談の中でも自身の患っている双極性障害を始めアメリカのメンタルヘルスの問題について触れていたKanyeだが、トランプの支持という行為は政治的信条への共感というよりも、彼の持つ「父」的な性質に惹かれ一つのアイコンとして崇拝していると考えた方が良いだろう。無論それに伴う「奴隷制は選択だった」発言などの一連の言動を擁護することは出来ないし、一種「躁」的な精神状態から来る行動とは言っても、今回のホワイトハウス訪問とトランプ大統領への賛辞は、ヒップホップシーンのみならず大きな失望が広がっている。
現在アルバム『Good Ass Job』を共に制作中だというChance The Rapperは「俺たちは自分自身の為にGood Ass JobをしているKanyeと仕事をすることを優先するべきなんだ」と彼をサポートする姿勢を見せているが、Kanyeの精神が平静を取り戻す日は果たしてやってくるのだろうか?そして、11月23日にリリースが予告されているアルバム『Yandhi』がどのような作品になるのかも気になるところだ。