FNMNLで新たにインタビューシリーズ「Waiting Room」がスタート。このコーナーでは、注目され始めたラッパーやアーティストなどをいち早くフィーチャーし、まだ知られていないキャラクターなどを解き明かしていく。
第一回目に登場するのは、今年6月に公開された楽曲"Road Trip"が大きな注目を集めた姫路のラッパーShurkn Pap。最新作『Various 2』をリリースしたばかりの彼に若手らしからぬファンクを感じさせるサウンドのルーツや、自身のクルーMaisondeや、その独特なステージネームの由来についても話は及んだ。
取材・構成 : Hironori Hayasaka, Tetsuro Wada
- DJからキャリアを始めたとのことなんですが、いつ頃からDJをしていたんですか?
Shurkn Pap - DJは15歳くらいからですね。中学3年生の終わりくらいから始めて、最初はずっと色々なクラブで回してて。今のMaisondeっていうグループの前にHash Tと太陽でサブロクっていうグループを組んで、僕はバックDJで。そこからですね。
- DJをはじめたきっかけみたいなのはあったんですか?
Shurkn Pap - サブロクをやることになったんですけど、僕はフリースタイル出来なくて、でも歌はめっちゃ好きだったから関わりたくて「僕DJします」って。
- DJの時もヒップホップを流していたんですか?
Shurkn Pap - そうですね。イベントとか、時間帯によって少し変えたりはしてましたけど、基本ヒップホップでした。
- 結構色々な音楽を聴いて育ってきたんですよね。
Shurkn Pap - 親父の影響で、幼い頃からアメリカの80年代のファンクとかソウルとかを聴いてましたね。
- お父さんはどういう人?
Shurkn Pap - めっちゃ普通の人ですね(笑)。ちょっとカーネル・サンダースっぽいです。DJとかではなく、レコードを持ってる音楽好きって感じです。
- そういう音楽を聴き始めたのはいつ頃ですか?
Shurkn Pap - 覚えてないくらいですね。でもヒップホップを聴き始めたのは小学校1、2年くらいです。兄貴が車の中でEminemのMDを聴いていて、それがちょうど『Curtain Call』の“Lose Yourself”の時で、それで喰らって、ヒップホップにハマっていった感じですね。
- ちなみに、今は何歳ですか?
Shurkn Pap - 今年で21歳です。
- DJ時代はDJ Koodyっていうアーティストネームで、そこからShurkn PapっていうMCネームになったわけですが、由来は?
Shurkn Pap - 幼稚園の時から映画の『スパイキッズ』が好きだったんです。主人公の2人が変な木の家に入る時に指紋認証をするんですけど、それで自分の本当の名前を言うときに「ロケットレーサー〜」みたいに言う場面がかっこいいなと思っていて。それと、自分自身がずっと「パプリカ」って言葉が好きだったんです。フランスっぽいし。別に食べないんですけどね。なんか、母親にも小さいときから「俺絶対パプリカっていう名前に改名するから」って言ってたみたいで。それで、MCネームにパプリカって言葉を入れたいなって思って。ちょっと上品だし、響きもいいし。最初は「パプリカスラム」とか、グランドスラム系で超ゴージャスな感じの名前で行こうかなと思っていたんですけど、やっぱり日本人だし、日本ぽい言葉も入れようと思って、「ニンジャパプリカ」って名前にしてみたんですけど、語呂もあれだし色々ダサいなって(笑)それで、とりあえずニンジャパプにしてみて、「これもなんか違うなー」と。で、ニンジャの武器系を攻めようってことで「手裏剣でよくね?」ってなって。そんな感じで、適当に付けました(笑)
- Maisondeもフランスっぽい名前ですが、フランスが好きなんですか?
Shurkn Pap - いや、それはほんとにたまたまそういうことになっちゃったんですよ(笑)Maisondeの由来は、僕らが「メゾンドレール」っていう名前のアパートでシェアハウスしてて、そこから「Maisondeでいんじゃね」ってなりました。「Maisonde」はフランス語で「立ち上げる」みたいな意味らしくて、「いいやん」みたいな(笑)フランスにはなにもゆかりはないです。
- Maisondeのメンバーは元々どういう繋がりなんですか?
Shurkn Pap – みんな昔から小学校が一緒で。特にHash Tは僕と同じ建物に住んでて、太陽も3ブロック先くらいに住んでたんです。サブロクは、小学校5年生くらいの時に5人くらいで結成したスケートボードチームみたいな感じだったんですよ。そこから、僕は歌が好きだし、皆もヒップホップ好きで、気付いたらみんながフリースタイルをしだして。僕はついて行けなかったので、ひたすら違うことしてって感じでしたね。
- その頃はフリースタイルが流行っていましたよね。
Shurkn Pap - そうですね。「高校生ラップ選手権」がそのとき流行ってて、多分その影響もあります。
- その頃はラップが本当に出来なかったんですか?
Shurkn Pap - なんか、本当に汚くなるんですけど、フリースタイルしたら本当に「うんこ」とかしか言えなくなるんです(笑)「うんこ、おっぱい」とか、全部。
- 高校生の頃に海外によく行かれていたということですが、具体的に何ヶ国に行かれたんですか?
Shurkn Pap - 19、20ヶ国です。結構間を空けて、ぽつぽつ行っていました。
- どうして海外に?
Shurkn Pap - 17歳のときにおじいちゃんが亡くなって、結構食らってしまって。それからはボーッとしていたんですけど、たまたまその時にお金があったので、行きたかった海外に行ってみようって思ったんです。初めて一人で行った国がフィリピンで、行って以来どハマりしちゃって。
- どんなところにハマったんですか?
Shurkn Pap - いつもと違う風景を見られて、色んな文化に触れられるところですね。道を30メートル歩くだけでも全部が新鮮で。海外に行ったらたった1日が二週間、三週間に感じられるんです。自分自身もレベルアップしていく感覚が超気持ちよくて。
- 今まで行った中で一番印象に残った国はどこですか?
Shurkn Pap - やっぱりベタだけど、去年行ったアメリカです。カナダから出発して、ニューヨーク、ワシントン、アリゾナ、ラスベガス、LAって、雑に横断したんですけど、良かったですね。
- 去年アメリカから帰ってきて、それからラッパーとしての活動を始めたんですか?
Shurkn Pap - そうです。アメリカに行ったことで自分の中の考え方が変わって、「自分マジ無やな」みたいに思って。アメリカではやりたいことをやってる奴とか、好きなことをやってる奴がめっちゃ輝いて見えて。それで、「自分の好きな物はなんやろ」って考えたら、服と音楽だったんです。アメリカに行く前、去年の6月にも歌を録っていたんですけど、そこから半年ぐらい空いてしまって。その間にアメリカに行って、帰ってきたらたまたまMaisondeを結成することになっていたから、「じゃあ僕もラップする」って。
- "Road Trip"もそういう、アメリカの好きなことをやっていこうみたいな感じを表したかったものなんですか?
Shurkn Pap – そうですね。"Road Trip"はラスベガスからグランドキャニオンまで運転した時の感じにインスピレーションを受けて作りました。それだとやっぱり人の共感を得られないから、ちょっと日本っぽくしたんです。みんなも多分運転が好きだと思うんで、それをイメージして作りました。
- あのビデオに出てくる車はどうやって集めたんですか?
Shurkn Pap – あれは、僕が今まで20年間生きてきた中の友達先輩みんなが協力してくれて集めることが出来ました。
-ビデオを撮影した Spikey Johnとはどういうきっかけで知り合ったんですか?
Shurkn Pap – それはタカくん(Willy Wonka)が繋げてくれました。彼から「Shurkn Papってお前?」って連絡が来てて、「あっそうです」って答えたら「あっ、ラップしてんねや」みたいになって。その後、僕がまだDJをやっていた去年の1月にあった大阪でイベントでたまたま一緒になったら「"Road Trip"はマジでやばいから絶対ビデオ撮れよ、Spikeyでも俺が繋げられる人達なら、繋げるから」みたいな感じで言われて、音楽の話とかも色々聞いて、その時に自分も火がついて。当初今年の夏はロス行って一人で服売りに行く予定だったんですけど、その場で飛行機をキャンセルして、もうお金貯めて。結構自分の中でもあの日はターニングポイントだったってくらいやる気になったっていうか、やってみようって。
- 今の若手ラッパーはどちらかと言うとトラップが中心で、“Road Trip”のようなウェッサイっぽい感じではあまりやらないですよね。特に関西だとトラップのラッパーがとても多いですが、あのようなサウンドにしようと思ったのは、やっぱり歌うのが好きだからですか?
Shurkn Pap - 僕自身がファンクとかを聴いて育ったっていうこともあります。最初はヒップホップの中のジャンルを色々試してたんですね。アルバムとかEPでも違うジャンルを全部入れたら面白いと思って。聴いてくれる人も絶対マンネリにならないだろうし。今のトラップってずっとトラップやってておもんないし、「お前一緒やんコレ」っていうやつが多くて面白くないなって思って。結構めちゃくちゃ色んなジャンルを敢えてわざと引っ張って来ました。
- じゃあ"Road Trip”もそのバリエーションの中の一つでなんですね。
Shurkn Pap - そうですね。逆に言ったらあれはあれしか作らないぐらいに思っています。ああいうスタイルを自分の代名詞だと言うつもりもなくて、もう、「聴いて下さい」ぐらいの(笑)評判も良かったし。
- あれは結構リアクションあったと思うんですけど、そうなる予想はしていましたか?
Shurkn Pap - ほんまに色々初めてなんで、基準が全然わからなくて。分からなかったですね(笑)
- 昔のツイートとかも遡ったら、結構聴いてるジャンルはアトランタとかドリルとかが多いなと思って。その辺りが好きなんですか?
Shurkn Pap - うん、そこも好きで。姫路なので。
- 兵庫のヒップホップシーンはどういうものだと思いますか?
Shurkn Pap - 難しいですね。ほんと地域によって違うというか、神戸だとちょっとオシャレなジャズも入ったやつとか、メロディアスな感じも多くて。加古川だとMerry Deloが居て。アイツぐらいだと思うんですけど(笑)姫路はもう、カオスです。最近はもうバグって来て、意味わからない状態ですね。いっぱい居て、訳わからない。CASSIDYっていうクラブがあるんですけど、みんなもうゴリゴリな感じで。最後みんなゾンビみたいになって。
- 姫路のシーンも結構盛り上がりつつあるんですね。
Shurkn Pap - そうですね、絶対今までに比べたら盛り上がってきているとは思いますね。
- Maisondeでパーティはやるんですか?
Shurkn Pap - まだやってないですね。これからやりたいんですけど。
- ちなみに、国内の同世代とか少し上のラッパーとかで意識してたり、もしくは上の影響を受けたアーティストはいますか?
Shurkn Pap - 僕、昔は日本のヒップホップ聴かなかったんですけど。でもやっぱり、Anarchyさんの”Fate"とかはめちゃくちゃ食らって。それでも日本よりアメリカのラップをずっと聴いてたんですけど、最近はカッコいい人がめっちゃ増えて、結構聴くようになりました。でも、良いと思ったらあんまり聴かないですね、意識してしまいそうだから(笑)やっぱりBADHOPさんは同じ8人のグループとして、一緒にガッと上がれてる感じがすごいなと思います。普通のヒップホップとレゲエの境目も分からないような、ヒップホップを全然聴かないような子でもBADHOPのことは知ってるじゃないですか。それがその人の価値観をちょっとでもヒップホップに向けられてるのが本当にすごいなって思います。
- 海外だと最近聴いてるアーティストはいますか?
Shurkn Pap - ラップするようになって全然ディグらなくなっちゃって。ヒットしてる曲とかは聴くんですけど。Moneybagg Yoとかは、煽りが天才やなって思います。煽りとかアホなヤツが好きで。Migosもカッコいいし。
- じゃあ結構ゴリゴリな感じが好きなんですね。
Shurkn Pap - そうですね、ヒップホップの中だったらゴリゴリが(笑)。僕ああいうの出来ないから、逆にカッコいいなって。
- ファッションもずっと好きだったんですか?
Shurkn Pap - はい、そうです。小学校の頃から夢がファッションデザイナーで、基本ずっと自分で作った服しか着なくて。"Road Trip"のPVで履いてるズボンも自分で作ったものです。"The WEEKEND"のPVで着てるシャツも自分で作ったり。作るのは冬物が多いんですけど。本当は去年の11月ぐらいから自分のブランドを始めようと思ってて、商標までとって、シーズンのコンセプトも決めてたんですけど、タカくんの話をきっかけに取り敢えず今は置いて音楽しようって。いずれは絶対服も絡めてやっていきたいなって思います。
- ちなみに、小学生でファッションデザイナーになりたいと思ったきっかけとかはあるんですか?
Shurkn Pap - きっかけは、昔小2か小3くらいで、おばあちゃんの家に行った時に近くのショッピングセンターに連れていってもらって、めちゃくちゃカッコいいウエスタンジャケットを買ってもらって、カッコいいと思って。そこからずっと服が好きになりました。
- 好きなブランドとかはあんまり無い?
Shurkn Pap - 無いですね。300円の古着とかをバッジでむちゃくちゃにするみたいなのが多いです。子供の頃もオシャレはしてなかったんですけど、絶対自分で買いにいくみたいな。しまむらとかの中からマシなやつを選んで(笑)
- Maisondeでは中心人物なんですか?
Shurkn Pap - いや、全然(笑)ペーペーです。でも本当に昔からの仲間なんで、「うぇーい」みたいな(笑)なんかもうみんないじられ役になるし。リーダーとか居るわけでもないから、まとまらない(笑)
- "Road Trip"のMVでHash Tさんがハイタッチスルーされる場面があるじゃないですか。Hash Tさんはアー写も裸だし、おもしろいキャラなんですか?
Shurkn Pap - まあ、あんな感じです。「The 漢」みたいな、筋ばっちり通すみたいな、男らしい男で。
- でもハイタッチは気づかなかったみたいな(笑)
Shurkn Pap - 全然知らなくて。僕もコメント欄見て「ほんまや」って(笑)
- 制作ペースが速いですが、楽曲はどういう感じで作っていってるんですか?
Shurkn Pap - マイペースです。僕は絶対最低でも週一でスタジオに行って曲を作って、多いときは週三週四とかで行ったりするんですけど、他は結構…。みんなリリックは書いてるんですけど、スタジオめちゃくちゃ行ってるって感じはしないですね。ミックステープ出すタイミングとかが適当すぎて、誰も言わなかったらそれで通っちゃうんですよ。2ndはモロそれで、最後の二週間とかはみんな毎日「その日無理や」とか言ってて、そんな感じなんで。もうちょっと僕は、今回から計画的にやろうって思ったんですけど、Puneって奴が「いや、もう来週出そう」みたいに暴走して(笑)
- 個人としてはもう少し考えてやっていきたいんですね。
Shurkn Pap - じゃないと多分持たないと思うんですよ。マーケティングもちゃんと考えて、ビデオを出す日も決めて、逆算して「この日にビデオ絶対撮っとかなあかんな」とか、出すのはいいけど告知とか拡散はどうするのかとか。そういうことをちゃんと考えなきゃいけなかったんですけど、2ndはそれが全く出来てなかったので。
- 地元は結構荒れてたりしたんですか?
Shurkn Pap - 姫路は、どうなんですかね。でも間違いなく「姫路は治安悪い」っていうのは言われます。神戸行っても姫路出身って言ったら「マジで?」みたいな、そういう感じの地域ですね。東京とかは悪くても奥に秘めてるみたいな、構えてる感じがあるんですけど、関西はちゃっかり悪そうな奴は悪い。モロヤクザみたいな。
- 小学生の頃からスケートとかやってた訳じゃないですか。悪かった時期とかはあるんですか?
Shurkn Pap - 僕はもう全然、ほんとに音楽好きで、ダンスもちょっとやってて、スケートしてみたいな。結構ヘラヘラ自由にやってたタイプなんですけど、他はめちゃくちゃしてましたね。Maisondeも。
- 不良やヤンキーとは付かず離れずみたいな。
Shurkn Pap - めっちゃ仲は良くて、でもそんな一緒に悪さをした記憶とかは無いですね。小1のときに畑燃やしたくらいです(笑)
- ちなみに、Maisondeで一番ヤバかった人は誰なんですか?
Shurkn Pap - ジャンル多いな...(笑)一番悪かったやつはJunkyかGuiltyかな。それぞれ違う悪さがありましたね(笑)
- 普段楽曲のビートはどうしてるんですか?
Shurkn Pap - 僕は結構YouTubeで拾ってきてリースでやったりとか、すり替えたりとかですね。
- "Road Trip"もそういう感じですか?
Shurkn Pap - そうですね。
- 今日本でやってみたいビートメイカーとかはいますか?
Shurkn Pap - 一応今Zotさんと一緒にやったりしてます。あと、Chaki Zuluさんとかはやっぱりカッコいいなって思いますね。
- ちなみに、クルーでも個人でも今後どういうプランを持っていますか?
Shurkn Pap - やっぱりMaisondeとしてみんなで上がりたいなっていうのが一番。あと計画を持ってしっかりと定めていって、ポイントポイントでどんどん登っていけたらなと思います。お互いカバーしていけたら本当に強いと思うので。
- これからどういうアーティストになっていきたいですか?
Shurkn Pap - 立ち位置的にはティム・バートンみたいな存在がいいですね。「アイツよく分からんけどめっちゃヤバい」みたいな、一目置かれてる感じがいいです。そんなに他人ともガサガサしてないけど、なんせヤバいやつみたいな感じがいいですね。
- いい意味で変な奴というか、人とは違うみたいな感じで捉えられたいという感じですか?
Shurkn Pap - そうですね。「こいつはちゃうな、安全やな」みたいな。難しいな、なんかちゃうような気がして来た(笑)でも、「こいつはこの色や」みたいな、オリジナルな。安定感があって、「こいつなら間違いない」みたいな感じがいいですね。
- ありがとうございました。
Info
Shurkn Pap - 『Various 2』