言わずと知れた80年代の伝説的なグループRun-DMCのラッパーであるDMCが、現在のヒップホップシーンに対して苦言を呈している。
イギリスのメディアであるDouble Down Newsの動画コンテンツに登場したDMCは、6月にXXXTentacionが射殺された事件を踏まえて「Jam Master Jay(Run-DMCのDJ)が撃たれて、2Pacが撃たれて、Biggieが撃たれて、XXXTentacionが撃たれた。悲しいことだ。でも何より悲しいのは、名も無い若い男女が撃たれて殺されていることだ。2Pacが撃たれて、“ヒップホップは二週間か三週間喪に服した”って、どうしてその後も同じことを繰り返すんだ?最初に銃殺事件が起こった時点で、同じことが起こらないようにしろよ。どうして銃を持ったクソ野郎がクールだなんて思うんだ?それがヒップホップのメンタリティだからか?俺たちがヒップホップを作ったんだから言うが、ヒップホップにギャングとドラッグディーラーは必要ない」と、数々のラッパーの悲惨な死を経ても未だに変わろうとしないヒップホップシーンを痛烈に批判した。
「俺は教育の必要性をライムの中で歌ったし、Zulu NationもKRS-Oneも殺し合いを止めるよう言ってきたはずだ。ヒップホップは“お前に何が出来るか?”ということ、変われるという可能性や必要性を歌ってきたんだ」と語るDMCの話は更に現在のシーンにまで及び、「今の若い世代は正しいことについて歌うのをダサいと思っている。子供たちはザナックスやリーンについて歌うが、Run-DMCは彼ら以上にウィードを吸って酒を飲んできた。地球上で作れるだけの酒は全て飲んできたが、それを曲にはしなかった。Adidasについて歌っていたんだ。ヒップホップラジオを聴いてみろよ、ザナックスやコデインの曲ばかりだ。ヒップホップにはハイにならない、ストリートギャングじゃない男が必要だ。Kendrick LamarとChance The Rapperと共に、今のヒップホップを超えなくちゃならない」と、ドラッグや暴力を曲にするのではなくKendrickやChanceのようなメッセージを歌うラッパーが必要だと持論を展開している。
DMCは、ドラッグや暴力をクールな物として描くのではなくそれらを止めるよう発信するべきだと説いている。例えばChance The Rapperが “Finish Line”でザナックス中毒について歌っていたように、DMCが例に挙げた二人もドラッグやストリートライフについての曲を作っているが、それでもドラッグの使用や殺人をいたずらに煽る内容を歌っていないことが他のラッパーとの違いだろう。
DMCが憂いている通り現在のシーンにはドラッグや暴力について歌うアーティストが多く、またそれらを行う様子をSNSで配信し、フレックスしている。しかし、Lil Pumpや6ix9ine、Boonkのように奇行をネットに公開したことでバズを起こし人気を得た例があるため、名声を欲しがるアーティストがそのような行動に出ることを止めるのは難しいと言える。
現在の状況を変えるような、ポジティブなメッセージを歌うアーティストが今後増えて行くことはあるのだろうか?DMCのインタビューの全体はこちらから観ることが出来る。