FNMNL (フェノメナル)

BlocBoy JB、Key Glock、Three 6 Mafiaの再評価 | 再び脚光を集めるメンフィスのヒップホップシーン

Three 6 Mafiaや8ball & MJGなど、現在のヒップホップシーンにまで強い影響を及ぼすラッパーを多数輩出してきたことで知られるメンフィスのシーンだが、現在、このメンフィスを中心に再び新しい動きが起こっている。

“Shoot”のバイラルヒットやDrakeによるフックアップで一躍その名を世界中に知らしめたBlocBoy JBや、そのプロデュースを手掛けているビートメイカーのTay Keithを中心に、メンフィスのシーンは新たな盛り上がりを見せつつある。

Tay Keithはメンフィスの新世代ラッパーのプロデュースを一手に引き受けている他、Wiz Khalifaのようなビッグネームに起用されるなど今まさにシーンの中心にいるプロデューサーであると言っても過言では無い。

ここでは、Tay Keithがプロデュースしているメンフィスのラッパーを中心に紹介していきたい。

BlocBoy JB

FNMNLでも幾度となく取り上げられているが、BlocBoy JBは”Shoot”や”Rover”、Drakeとコラボした”Look Alive”などのヒットにより今最も勢いのあるラッパーの一人といえる。

Tay Keithとは幼馴染で、多くの曲のプロデュースを彼が手がけている。Shootダンスという独特なダンスはミームとしてネット上に広がり、Childish Gambinoの”This is America“のMVにフィーチャーされていることにも象徴されるように2018年のユースカルチャーにおいて大きなトピックとなった。

 

Key Glock

弱冠21歳のラッパーKey GlockはThree 6 MafiaやProject Patに影響を受けてラップを始め、”Momma Told Me”や”Russian Cream”などの自身の生まれ育った厳しい環境をリアルに綴ったリリックやトレードマークとなっている”The Fuck?!”というアドリブで人気を博している。彼が2015年に暴行や強盗などの容疑で拘留されていた際従兄弟のYoung Dolphが保釈金を支払い、そのままDolphのレーベルPaper Route Empireと契約したという。

Tay Keithは他にもXavier Wulfのようなアンダーグラウンドで活動してきたラッパーや、Juicy Jのようなレジェンドのプロデュースも行なっている。
Xavier WulfはいわゆるSoundCloudラップシーンで活動してきたラッパーであり、インターネット上のゴスラップに強い影響を与えたことでも知られるが、その重くドラッギーなトラックとラップのスタイルからはTommy Wright Ⅲなどに代表されるメンフィスのアンダーグラウンドラップの系譜にあることを実感させられる。

Juicy Jは言わずと知れたThree 6 Mafiaのメンバーであり、近年では$uicideboy$とのコラボミックステープをリリースするなど未だに精力的な活動を続けている。$uicideboy$はニューオーリンズ出身だが、Three 6 Mafiaなどのダークなメンフィスサウンドに影響を受けているユニットであり、ヒーローであるJuicy Jとの共演には大きな感銘を受けていた。

ここ最近はThree 6 Mafiaのクラシックチューン”Who Run It”のリミックスが流行したことから、自らもフリースタイル音源をアップロードし大きな話題になるなど、再び大きな注目を集めるようになっている。

またG Eazyの大ヒット曲"No Limit"では、Three 6 Mafiaの“Slob On My Knob”のフックを元に再構築されるなど、他地域のラッパーたちもメンフィスの残した遺産に注目している。そしてご存知のように"No Limit"のリミックスではJuicy Jが参加するなどメンフィス復権を印象づける曲としては文句なしのインパクトを残している。

しかし残念なニュースもある。Three 6 Mafiaの再評価の機運が高まる中、Juicy Jとともに中心人物だったDJ PaulがTwitter上で激しくディスしたのだ。これでThree 6 Mafiaの再結成は遠のいたと言わざるを得ない。

ただ現在のメンフィスにはベテランから若手に至るまで、多様なラッパーが揃っており、活躍できる豊かなシーンの土壌があり、新しいサウンドが生まれ始めている。これからも多くのラッパーがブレイクしていく気配を感じさせる。
どのようなムーブメントがメンフィスから発生するのか、アトランタを中心としたサウスのヒップホップ地図が徐々に塗り替わっていくのだろうか、今後も目が話せない。(山本輝洋)

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