DJや様々な国内の人気ラッパーにビートを提供してきたLISACHRISが、初めてのソロ名義のEP 『Ariake』を本日リリースした。今回のEPは、自身にとってもチャレンジだったと語っている通り、インストチューンだけをパッケージしたものとなっており、トラップなどをはじめとしたLISACHRISに影響を与えたサウンドをベースとしつつも、彼女らしい艶のあるカラフルなメロディーも楽しめるものとなっている。
これまであまりそのパーソナリティーが明かされていなかった彼女だが、最近はSeedaの主宰するYouTubeチャンネルのニートTokyoにも出演し、話題となっている。
FNMNLでは、LISACHRISの音楽のルーツや、彼女の音楽のコアにはどんなものが眠っているのかを聞いた。
取材・構成 : 和田哲郎
写真 : 横山純
- これまでどういったものに影響を受けてきたのかを教えてください。
LISACHRIS - 子供のときはSpice Girls、The Coresとか、Enyaとかですね。母親もSpice Girlsとかを聴いてて、近所に住んでたおばちゃんたちにエクササイズとしてダンスを教えてたんですよ。でもいま思えば当時から大ヒット曲じゃなくてマイナーっぽい曲の方が好きな子供でしたね、Spice Girlsだと"Wannabe"じゃなくて"Too Much"とか"Naked"って曲が好きで。あの時代の「宇宙人ぽさ」があるなって。
- 宇宙人ぽさ?
LISACHRIS - サウンドに90年代が目指していた「宇宙人ぽさ」があると思っていて、今よりも宇宙人のイメージが凝縮されてて熱いと思うんですよね。はははは(笑)
- プロフィールにもリスペクトしている人物としてヴィクトリア・ベッカムの名前がありますもんね。
LISACHRIS - なんのプロフィールですか、それ(笑)
マネージャー - 内々の資料みたいなやつに書いてあって、だいぶ前に話聞いたときにヴィクトリア・ベッカムに影響を受けてたって言ってたから。
LISACHRIS - ヴィクトリアは超好きで、初めてのハロウィンのコスプレも彼女でしたね。最近気づいたんですけど、自分が写真撮るときのバイブスがすごい影響されてるって思って。冷静と情熱の間って感じの雰囲気が好きなんです。
- 子供のときはよく引越しをしていたということですが。
LISACHRIS - 日本・イギリス・アメリカの3カ国で計10回転校をしていて、でも自分はそれが普通だったから、転校先で新しく友達を作るのが楽しみでしたね。全然苦ではなかったです。
- 音楽を意識的に聴き始めたのはいつ頃ですか?
LISACHRIS - 中一で吹奏楽部に入って、高三までやったんですけどそこからですかね。あとお兄ちゃんが3歳上でB-Boyじゃなかったんですけど、Eminemとかバンドとかも聴いててその影響も大きかったですね。ビートが入った音楽と出会ったのは高校で、m-floとかTERRY THE AKI-06とかPerfumeとかテリヤキボーイズとかライムスターを聴いて、カラオケで歌ったりしてたのが最初ですかね。でも今思うと曲でも歌詞じゃなくて、ずっとトラックの方を聴いてたんですよ、そっちにばかり耳がいってましたね。
- 吹奏楽部では何を担当してたんですか?
LISACHRIS - アルトサックスで、その経験はすごい今の曲作りにも役に立ってますね。自分のトラックの作り方も、オーケストラ風のやり方が染み付いてるかもしれなくて、オーケストラの指揮者になったつもりで作ってるんですね。頭の中に空想のオーケストラメンバーがいて、ここはメロディーだから、あなたはここを支えてねって感じで、指揮する感じで作っていくんですよね。サックスはバンドの中でもメロディーが多いから、だからメロディーが目立つようなものを作っちゃうんですよね。たまに怒られたりするんですけど、はははは(笑)
- DTMを始めたのはいつなんですか?
LISACHRIS - 22歳のときで、DJは20歳のときに始めましたね。最初はすごいDJがやりたいって感じで、どんどん小さい箱からやっていった時代でしたね。DJは学校の友達が一式を安く譲ってくれて、成人式のあと学校のパーティーがあって、その時が最初。EDMもかけてたし、David GuettaとAkonの"Sexy Bitch"が超流行ってて一晩で6回くらいかけましたね、ははははは(笑) その時は今のDJのスタイルとは全然違って、カチ上げですね。
- 今のDJとしてのLISACHRISのイメージはそんなメインストリームなものはプレイする感じはしないんですが、どうやって変わっていったんですか?
LISACHRIS - ずっとかっこいい曲ないのかなって模索してたんですよね、そんな時にFlosstradamusの"Roll Up"のBaauerのリミックスを聴いて、やばって思って。それでそういうトラップっていうジャンルを日本でやってるWATAPACHIって人がいるよって教えてもらって、それでWATAPACHIと出会ったのが大きかったですね。ビートメイクもWATAPACHIをはじめ友達がやってたんで、憧れて始めて。その当時好きだったのはやっぱりBaauerですね、曲の作りがどうなってんだろうって思ってました。今回のEPを作って、自分もようやくそういうちゃんとした曲が作れるようになったなって。最初はBaauerみたいな鬼打ち込みは全然できなくて、始めた頃は自分の感情をぶちまけるって感じでやってて。自分の曲じゃなくてほとんど他のアーティストへのビート提供だったし。だから今回のEPは去年の9月から作ってたんですけど、インストだけで成立するものにチャレンジがしたくて、出来上がったものですね。SoundCloudとかではアップしてたんですけど、やっとリリースできるようなものができたかなって。
- EPをリリースするきっかけとなった出来事はあったんですか?
LISACHRIS - 一人暮らしを始めて、自分一人でやってくしかないってなったからですかね。今回EPを曲として仕上げるというのは本当に大きな経験で。これまでラッパーに提供するのは楽だなと思ってたんですよ、ラッパーが乗ってくれて最終的に出来上がるから。でもEPを作って変わりましたね。提供する相手のことを考えて作るんですけど、もっと自分らしさを出せるんじゃないかなっていうのがわかりましたね。
- 今はDJは以前ほどやってないですよね。
LISACHRIS - そうですね、EPを制作中はあまりやっていなかったんですけど、DJもめっちゃ好きっすよ。単にお姉さんになったなっていうのがあって、20歳の時みたいにカチ上げではなくなったんですけど、ははは(笑)でも今年は熱いイベント出て行きたいですね。
- 今回の収録曲のタイトルにもありますけど、Instagramを見るとたまにルパン3世をアップしてますよね。
LISACHRIS - 好きっす、ルパンがきっかけでアニメを観るようになって、それは2~3年前とかですかね。huluとかで配信してて、そこから観始めましたね。ルパンはめっちゃ悪いのに、国民的ヒーローだから、そこがすごい魅力的。ダーティーヒーローが好きで、セリフも面白いし。今回のEPも最初はルパンのメインキャラ全員の曲を作ろうと思って始めたんですよ。1曲目は石川五ェ門の曲で、でも他のキャラの曲は作りきれなかったので今後作っていきたいですね。キャラの魅力にインスパイアされることはありますよね。"Lupin"に関しては自分の理想の男性の曲。
- 他にインスパイアされるものってどういうものがありますか?
LISACHRIS - 自分の体験とか感情ですね。結構怒ってる時に作ることが多くて、あとは恋に溺れた時っすね、やばいんですよ(笑)あとは本とかを読んでかっこいいフレーズがあった時に、その名前の曲を作りたいってなりますね。最初はそういう感情がベースにあるんですけど、仕上げていく時は冷静にやらないといけないんで、最終的には整理されて、その体験とかも自分の中で昇華されるんですよね。
- 怒りとかも収まっちゃうんですか?
LISACHRIS - そうですね、クラブでかかるようなかっこいい曲も、みんな怒って作ってると思うんですよ。でも怒ってるのが伝わるんじゃなくて、かっこいいというのが伝わったら成功なんですよね。クラブでかけるような曲に関しては激しい感情で作るものがいいと思いますね、クラブだとやっぱりそういう悪っぽいのがかっこいいって思うんで。やっぱりそういうダーティーさって自由な感じもするし。自分は普段は怖さとかはないんで、DJと曲でそういうオラオラ感は出してますね。
- なるほど、ちなみにプロフィールにさらっと書いてありますけどYENTOWNは抜けたんですね。
LISACHRIS - それはやっぱり1人で挑戦してみたかったからですね。YENTOWNの時期は自分にとって超いい経験でしたね。ちょうど色々吸収できる自分の年齢と合ってた。若かったしビートを作り始めたての頃で、YENTOWNのみんなとパーティーもやったりして、自分にとっては青春みたいな感じです。段々お姉さんとしての自我が芽生え始めたんですよね。
- 今年はどんな活動をしていきたい?
LISACHRIS - 今年は他にもEPを出す予定があるんですけど、熱いパーティーでDJもやっていきたいですね。それで才能あるみんなと映像作ったり、ビート提供も縁があったらやりたいですね。
- 今一番ビート提供したいアーティストは誰ですか?
LISACHRIS - えっと、21 Savageですね。
- そこのチョイスが全くぶれないのがさすがですね、ありがとうございました。
Info
アーティスト:LISACHRIS (リサクリス)
タイトル:Ariake(アリアケ)
発売日:2018年04月20日
品番:Less-003
*Digital Only Release
[トラックリスト]
ru a samurai
Stay
Night Knight
Lupin
both
Apple Music
[https://itunes.apple.com/jp/album/ariake-ep/1367089480?l=ja&ls=1]
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