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Chance the Rapperと26歳のマネージャーPatrick Corcoranが作るアーティストの新しい生き方

Chance The Rapper

Chance The Rapperのグラミー賞の3冠獲得は、近年のグラミー賞の中でも最もポジティブなニュースだったのではないだろうか。時代遅れと囁かれることも多くなった、この賞に新しい風を吹き込んだChance The Rapperは、散々ニュースなどでも言われている通り、これまで自身名義の作品を売ることはなく、レーベルに所属することもせずに活動を続けてきたアーティストだ。若いこれからのアーティストの手本になるためと、険しい道を切り開いてきたChanceには強力なパートナーがいる。

それは26歳のマネージャーPat Corcoranだ。同郷シカゴ出身のCorcoranは心理学者になるために勉強しながら、コンサートプロモーションを同時に学んでいた。シカゴ出身のバンドKids These Daysと共に動いていたCorcoranは、彼らを通してChanceに出会ったとFaderのインタビューで振り返っている。Kids These DaysのメンバーはChanceのコレクティブSave Moneyのメンバーだったのだ。

Chanceが1人でリリースしていたミックステープ『10 Day』の大ファンだったというCorcoranはその後親交を深め、Chanceの父親、Ken Bennettから要請を受け、フルタイムでChanceをマネジメントするためにCorcoranは2012年に大学をドロップアウトする。当時彼はある友人に「Chanceがフェスティバルでヘッドライナーになってグラミーを取るまで、もしくは俺がクビになるまで、俺はChanceのために働くんだ」とBillboardに対して語っている。その夢はすでに叶ってしまった。

着実に知名度を広げていったChanceにはEpicやUniversalなどメジャーレーベルからのオファーが届き、Corcoranはメジャーに活動の場を移すことを考えていたというが、500人収容の会場でのライブがソールドアウトになった時に、彼らは考え方を改めメジャーとの契約はせずに、今後もやっていけることに気づいたという。

「レーベルと一緒にやっていくのは僕たちのためじゃないということを発見したんだ。

かつてはパイロットになりたいと考えていたCororanは、父親の友人で裕福な男が彼に言った、「プライベート機の後ろに座ってる方が、前に座ってるより涼しいぞ」という言葉を今でも覚えていて、これがずっと頭のどこかに引っかかってたと振り返っている。

「PatrickがChanceを生かしているの、そして長期での目標のことになると彼は容赦ない」とは2012年末からのChanceの代理人Cara Lewisは前述のBillboardのイ記事で答えている。

「私たちの最初の日の支払いは500ドルだった。今ではChanceはあらゆるメジャーフェスティバルでヘッドラインとして出演し、40もの都市をツアーで回っている」

「ソーシャルメディアのおかげで、今はこれまでにないほど透明性というものがあるんだ。」とCorcoranは話す。「(SNSの普及で)近年は一般の人々がアーティストに対して、より正しい理解をするようになってきたんだ。どういう風にアーティストが周りの人と働いているか、彼らがどういう信念を持っているかとかね」とも語るCorcoranはChanceの誠実なパーソナリティーと革新的なアーティストとしての姿勢が、大きなレーベルを通さなくてもSNS上でファンに広まっていくのがわかっていたのかもしれない。

そんなCorcoranは今の音楽業界ではマネージャーの存在がとても重要だと語る。「レーベルに資金が大量にあったときは外部のA&Rなどを雇えばよかった。ただ今あなたが若いマネージャーならクリエイティビティやマーケッティング、ブランディング、SNSなどの多くのものをアーティストと一緒にやっていかなけれならない」とインディペンデントのアーティストをサポートするためには、様々な知識が必要なことも強調した。

Chance The Rapperというアーティストはただ音源をリリースするだけではなく、例えば選挙の啓蒙活動をしたり、地元の野球チームとキャップをリリースしたり、絵本をリリースしたり、シカゴのアフリカ・アメリカ史博物館の運営委員としても活動している。これがもしレーベルに所属していたら、このような幅の広い活動はできずに、今よりも目立たなかったかもしれない。

インディペンデントでも様々な活動を続けることで、常に話題を提供してきたChance The Rapper自身の才覚と、それを慣習にとらわれずにサポートするCororanは、間違いなく新しいアーティストのロールモデルを形作っている。

「グラミー賞を獲っても満足はしないよ。なぜならChanceと僕は決して満足しないと思うから」という彼らは次はどんな夢を描いているのだろうか?(和田哲郎・辻本秀太郎)

 

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