本日開催されたアメリカ最大の音楽賞第59回グラミー賞授賞式でChance The Rapperが最優秀新人賞、ミックステープ『Coloring Book』で最優秀ラップアルバム賞、同作に収録されている"No Problem"で最優秀ラップパフォーマンス賞の3冠を獲得した。
しかしアルバム『Coloring Book』をリリースした時点では、グラミー賞の規定でChanceがグラミー賞にノミネートされる可能性もなかったのだ。
そこから1年もしないうちに状況は大きく変化しChanceはグラミー賞に7部門でノミネートされ、難しいと思われていた最優秀新人賞まで獲得してしまった。
Chanceがグラミー賞を獲得するまでの経緯を振り返る。
Chance The Rapperが自身3枚目となるミックステープ『Coloring Book』をリリースしたのは2016年の5/13だった。これまでの作品同様『Coloring Book』は販売はされずApple Musicで先行リリースされ、その後他のストリーミングサイトでリリース。この時点ではグラミー賞はストリーミングだけでリリースされる作品を候補作品に入れていなかった。
しかし風向きが変わってきたのは、同じ時期に開催されていた『グラミー賞の候補にフリーリリース作品を入れてほしい』という趣旨の署名だ。この署名の起草者はChanceを例にだし、作品の内容じゃなく、リリースの種別だけで候補作品を選定するのはおかしいという意見の元に署名を展開。4万筆以上の署名があつまった。
『Coloring Book』のリリースから1ヶ月後の6月にグラミー賞側は、Spotify、Tidal、Apple Music、Google Playでリリースされている作品に限り、フリー作品も候補に入れる変更を、59回グラミー賞から適用すると発表した。この変更が発表された際にはChanceもTwitterで「この勝利は僕の勝利じゃない。全てのSoundCloudでリリースされたアルバムの勝利だ」とTwitterで喜びのコメントを発表した。
The victory this morning isn't about me, it's about all the Soundcloud albums that may now be recognized for excellence.
— Lil Chano From 79th (@chancetherapper) 2016年6月16日
そして10月にはChance自身もBillboard誌上で「なんで僕じゃないの?」という挑発的な意見広告を掲載、12月の候補発表を控え、自身のノミネートを確実にするために華々しいプロモーションをおこなった。
Like everything he does, @chancetherapper's Grammy consideration ad in the new @billboard is not like the others pic.twitter.com/mRrqnbP3gw
— Frank DiGiacomo (@frankdigiacomo) 2016年10月6日
この広告がダメ押しになったのか、12月の候補発表では見事7部門にノミネートされたChanceは、その勢いのままに本日の授賞式で見事3冠を射止めたのだ。特に最優秀新人賞は、ラップ/R&Bなどのアーバンミュージックが軽視されがちなグラミー賞の傾向もあり獲得が困難とみられていたが、見事にThe Chainsmokersなどを押しのけて授賞を果たした。
Frank Oceanが授賞アーティスト/作品の偏向を指摘しボイコット、さらにはKanye West、Drakeなどが多数の賞候補になりつつも欠席し、その権威が揺らぎつつあると指摘されていたグラミー賞だが、今回のChanceの授賞は今後のグラミー賞にとっても大きな出来事となりうるものになったのかもしれない。
授賞式では"How Great/"All We Got"を壮大なアレンジで聴かせてくれ、スピーチでは家族への感謝や、マネジメントチーム、そして地元のシカゴに感謝を捧げたChance、今年はアルバムのリリースも噂されており、リリースされるとしたら来年再びこの舞台で彼の姿を見ることができる可能性は高そうだ。
CHANCE BROUGHT THAT GOSPEL TO THE #GRAMMYS pic.twitter.com/XGual2a8sE
— Genius (@Genius) 2017年2月13日