SBTRKTやDrake、Kanye Westなどの作品に参加し着実にその名前を浸透させていったロンドンのシンガーSamphaが2月にデビューアルバム『Process』をリリースした。昨年4年間ガンで闘病をしていた最愛の母との最後の日々の経験や感情が反映された同作は、Samphaのプライベートな経験が彼の神秘的なボーカルによって、普遍的な歌に昇華されている。
昨年12月にThe xxの来日公演のゲスト出演、そして翌日には彼の人生で最も重要な楽器だというピアノとボーカルのみのソロライブをWWW Xで行ったSamphaに話を聞いた。
取材・構成 : 和田哲郎 写真 : 古渓一道
- 日本でThe xxのゲストとしてと、WWW Xでのワンマンライブ2回パフォーマンスをしましたがいかがでしたか?
Sampha - すごくよかったと思うよ。ソロライブだったから、お客さんがちゃんと聴いてくれるかなって心配もあったんだけど、すごくみんな熱心に聴いてくれて終わったあとはハッピーだったよ。
- WWW Xのライブはピアノソロライブで、アルバムにもピアノについての曲があり、Samphaさんにとってピアノは特別な楽器だと思うんですが?
Sampha - ピアノは昔から弾いていたから、すごく大切な楽器だよ。自分自身を音楽を通して表現させてくれるものがピアノだし、耳を肥えさせてくれたのもピアノだと思う。ピアノのおかげでハーモニーが聞き分けられるようになったし、ピアノは振動と動きによって音をだしていく楽器だから、僕にとってはその行為がとてもスピリチュアルなものに思えるんだ。そういった意味でも自分がピアノを弾く機会を与えられてよかったなと思っているよ。みんながピアノを弾く環境にあるわけじゃないので、僕はピアノを弾く環境にいられてよかったなと思うよ。
- またSamphaさんは音楽を作る上で、とても感情を大事にしていると聞きました。ピアノはあなたの感情を伝えやすい楽器でもあるのですか?
Sampha - 確かにそうだね、ピアノを通して僕は様々な感情を発見することも、もちろん表現することもできる。それにピアノを通して自分の中にあった感情を、ピアノを弾くことで、再確認、再発見できることもよくあるよ。どんなハーモニーがどんな感情を呼び起こすとか、そういう脳神経学的なことはよくわからないけど、例えばハーモニーを聴いたときにも、ただ幸せかとか悲しいとかだけじゃなくて、もっと複雑な感情、例えば不安だったりとか誤解とかをハーモニーで表現できるんだ。僕はピアノがあるおかげで、自分の中に溜まってしまうような感情を外に解放できると思っているよ。
- 元々ピアノはお父さんからもらったもので、家でもずっと音楽が鳴っていたということですが、家族の存在はあなたにとってどういうものでしょうか?
Sampha - 4人兄がいて、かなり歳が離れてるんだ。僕のすぐ上の兄も12歳上で、1番上の兄は私より21歳上なんだ。みんな音楽を聴くのが好きで色々な音楽が家で常にかかってたんだ。1人はギターを弾いたり、趣味で音楽をプロデュースしてる兄もいるし、兄たちが聴いてた音楽が徐々に下に落ちてきて、植物が栄養をもらうような感じで音楽という栄養をたっぷりもらって育ったんだ。ブライアン・イーノやスティーヴィー・ワンダーとか、あとは西アフリカの音楽やクラシックも聴いたし、すごくバラエティーに富んだ音楽を聴いていたよ。
- お父さんは20年前に亡くなられて、お母さんが一昨年の9月に亡くなられたということですが、両親の死という経験が今作に与えた影響はどのようなものでしょうか?
Sampha - 父が亡くなったのは9歳のときだから、今回のアルバムは母の死の影響が大きいよ。母は4年間ガンで闘病していたんだけど、母は僕にとって最も近い人だった。父は別にしてそういう人が亡くなるのは初めての経験だった。ちょうどアルバム製作中に母は亡くなったから、それによって新しい感情とか新しい物の見方とかが出てきた。日常生活を送る上で、母の介護をしているときは気持ちが)麻痺していたというかセーブしていた部分があったんだ。ただアルバム製作が、押さえつけていた感情を解放させられる場所でもあったんだ。そういったものがプロダクションとか曲の雰囲気に出ていると思うよ。あと歌詞をとっても、コーラスの部分で母の介護をしたりとか、母に「気持ちを強くもってね」と語りかけている部分もあるから、自分のそうした経験が自然に反映された作品だと思うよ。
- 歌詞の中にはそうした個人的な感情を歌っている部分とは別に、自分を別のところから見下ろしているような客観的なモードもありますよね。
Sampha - 主観と客観はこのアルバムに両方存在していると思うよ。このアルバムは必ずしも自伝的なものではなくて、自分の素直な気持ちも入っているけど、ある種自分が監督というか作家みたいな第三者的な視点で物語を書いていたりとか、映画のシーンを撮っているみたいな部分もあるんだ。僕はすごいビジュアルで物事を考えているから、ビジュアルを思い描いた上で曲を作ってるんだ。このアルバムでも全てが本当に起こった話ではないから、想像の部分もたくさんあるよ。このアルバムはSamphaというキャラクターについてのアルバムなんだけど、インスピレーション源は僕で、僕が作り上げるSampha像があるんだ。ディープでエモーショナルな部分で感じていたことは本物なんだけど、想像で付け加えた部分や機転をきかした部分もあるよ。でも反対にそういった演出した面を剥ぎ取って、僕の声とピアノだけというすごく素朴な面を出したというところもあるよ。
- とても面白いですね。デビューアルバムなのにタイトルが『Process』というのも客観的な部分が出ているのかなと思ったんですがいかがでしょうか?
Sampha - 『Process』っていうタイトルだけど、インタビューを受けていて、質問に対する答えがわからないときがある。でも話をしていくうちに自分でもこういうことを考えていたんだというのがわかるときがあるんだ。そういう気づきみたいなものがあって、自分から表現することの大切さがわかったんだ。僕はちょっと完璧主義的なところがあるから、物事を考えすぎてしまって、自分がはっきりと理解するまで、そのことについて誰にも話さないんだ。それが正しい方法かはわからないんだけど、自分の中で先に理解してから外に伝えたいって思いすぎてしまうんだ。でもときには話しながら整理ができていくこともあるから、そういったプロセスが大事だなと思ったんだ。今回は母の死があって、悲しみっていう感情にどう対処するか、そういうプロセスについて考えていたんだ。常に物事は移り変わっていて先に進まなきゃいけない、そういった意味で『Process』と名付けたんだ。
- ありがとうございます。また日本に帰ってきてください。
Sampha - 絶対帰ってくるよ。
SamphaのFNMNLでのインタビュー第1弾はこちら。
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そして絶対帰ってくるとの言葉通り、早くも7/28~30の日程で開催されるFUJI ROCK FESTIVAL'17でのSamphaの再来日が決定!詳細は下記記事をチェック。
APHEX TWIN、BJÖRK 決定!出演アーティスト第1弾発表!first artist announcement! #fujirock #フジロック https://t.co/af0tOZOGlr pic.twitter.com/NUTPZwICuU
— FUJI ROCK FESTIVAL (@fujirock_jp) 2017年2月10日
Release Info
label: Young Turks
artist: Sampha サンファ
title: Process プロセス
cat no.: YTCD158J
release date: 2017/02/03 FRI ON SALE
国内盤CD:ボーナストラック6曲追加収録 / 歌詞対訳・解説書付き
定価:¥2,400+税
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