大阪市・西成区の閑静な住宅街にある、20年前に閉鎖した元おかき工場を改修やリノベーションをせずに、そのまま展示/スタジオスペースにしている山本製菓にて、イラストレーターのSimon FowlerとペインターUC EASTは合同展『さび』を開催している。
ロンドン出身のSimon Fowlerは、Sunn O)))やBoris、ベース/グライムプロデューサーのThe Bugなど数々のミュージシャンに作品を提供しているイラストレーターだ。今年の3月に大阪・堀江のギャラリーPulpにてSimon Fowlerは自身の回顧展を開催。
UC EASTは大阪をベースとして活動するペインター。DJ NOBU, YA△MA, 宮武BONESなどのアートワークを担当し、ベルリンのWEBマガジンにもフィーチャーされる新進気鋭のアーティスト。今年3月に山本製菓で行った展示でのミュージシャンとのセッションが話題を呼んだ。
3月にSimonが回顧展のために大阪に滞在している時に、大阪で活動するペインターUC EASTと出会い、意気投合。インデペンデントかつ、アンダーグラウンド・ミュージック・シーンの周りで活動する2人は共作展をすることを約束。その合同展『さび』が山本製菓にてただいま開催されている。
その2人に共作展のきっかけや、山本製菓で展示を行う意義などを聞いた。
Photography and Interview by Jun Yokoyama
では今日はよろしくお願いします。もうさっそくいくみ(UC EAST)はうるさいな。
UC EAST - UC EASTの時はあんまり喋らないほうがいいって言われる。作品とのギャップが激しすぎるんやって。周りの人に結構言われるねん。作品が暗くて、静かな感じやのに、人がこんなんやから。男の人と思われたり、思ったり体のサイズちっちゃいですねって言われる。(笑)
Simonの事を紹介してよ。
UC EAST - Simonの絵は緻密。ほんで大きい。私の絵と、とにかく逆。
Simon Fowler (以下、Simon) - けど考え方は似ている。
UC EAST - スタンスが似てるからな。
Simon - けど最近はペンで描くのも慣れてきちゃったから、ペンの代わりに版画の「線」で描く。彫刻刀を使って。
UC EAST - Simonは結構実験的な人やから。前会ったときに話したんやけど、二人共音楽を軸にしてるってとこが共通してるかな。
Simon - 二人共適当。こうやって展示会場の山本製菓に集まって、ダラダラして。打ち合わせることもないし。
UC EAST - けど喋ってるうちにだんだん固まってくる。前の個展もほとんどずっとしゃべってた。
2人はいつ知り合ったの?
UC EAST - ちょうど自分が今年の3月に山本製菓で個展をしてる時に、SimonはPulpで個展をしてて。お互い観に行って。Compufunkでたまたま会ったんやっけ?両方酔っ払ってて。結構熱い話して。絵の話とか。その時に絵の制作のスタンスが似てるよねっていう話になってん。
Simon - UC EASTのライブペイントを観に来た時にこの建物に入って、絶対にここで展示したいと思った。あんまり普通のギャラリーでは展示しないね。そんなオファーも来ないし。自分でできないかって聞いたりもしない。
UC EAST - Simonにどこで一緒にやろうって聞いたら、山本製菓でやりたいって。お互いの展示中にすぐ決まったわ。そのまま山本製菓のしょうちゃんに聞いたら、すぐにやろうって。
展示の一週間前やのに作品が全然ないねんけど…。これインタビューっていうより、展示自体の作戦会議って感じやねんけど大丈夫なん?
UC EAST - 制作過程やんこれが。
けど、普通のインタビューは「私たちはこういうのをつくりまして…」やで。
UC EAST - 大体そんなんみんなカッコつけてるだけやって。
そんなインタビューないて。
UC EAST - インタビューなんて初めてやもん
じゃあ今の気分はどう?
UC EAST - 不思議 (笑)
Simonはインタビュー100回くらいされてるやろ?
Simon - あんまり。誰もおれのことなんて興味ないから。CDとかのジャケットとか作ってもクレジットとかちゃんとされないし。(笑)
UC EAST - Simon声ちっちゃいから。
あんたは声でかいねん (笑)
なんでいくみ(UC EAST)がSimonと一緒にやりたいって思ったのかを聞きたいんやけど。作品が気に入ったから?
UC EAST - 作品っていうよりかは、人。喋って。絵に対するスタンスが似てるっていうのが一番。作品も大事やけど、自分が好きな作品って、自分に似たりする可能性もあるし。あんまり自分と似た人とやっても意味ない。程よく距離感がある人が一番いい。似てる人は周りにいる人間も近かったりするから、一緒にやってもあんまり意味ない。
Simonやったら、周りも違うし、まず人種すらもちがうし。けどSimonやったらスタンスも似てるし。あとは、私の描けない絵を掛けるっていうのが。
そのスタンスってなんなの?
UC EAST - 音楽を軸にしてるっていうのと、別に大学に行ったりしていないっていうの。
Simonは大学行ってないの?
Simon - 5年位シェフしながら、作品を作ってた。手で何かを創るのが好きで。だから最近はペンで描くことがつまらなくなってきて。もともと、いろんなものを使って創るのが好き。
そういう意味では二人共パンクな感じがするよね。
Simon - 自分は音楽の興味はパンクから始まってるし。まだまだ自分が小さい時はパンクがアンダーグラウンドだった。その時はDIYでやるのが一番だった。
UC EAST - アカデミックじゃないし。前にしゃべった時に「今の絵でOK」っていう満足感がないって話になって。自分もそうだし。次の新しいものに、次の新しいものにって、いう。SimonもPulpでやった展示の後に「これはこれで、もういいんだよ、また別の面白いことやりたい」って言ってて、「マジで!じゃあ一緒にやろう!」っなった。
作品展だったもんね。
UC EAST - 次は別って言ったから興味が湧いた。こういう絵を、すっごい細かい絵を描ける人っていうのはあんまりおらんし、ずっとそれをやる人っていうのも多い。けどSimonは違う。それだけで満足しない。版画を始めてるし。
Simon - 点描をうまくやれる自信もある。一つのスタイルで同じもの、死ぬまで同じものをやる人はたくさんいる。世界中には上手い人たくさんいる。ぼくはいつもcomfortable(居心地のいい感じ)になるのはあんまり好きじゃない、問題を自分で設定して、どういう作品を創るのが分からないっていうのがいい。
今は自分に自信が出てきたから、テーマとかもギリギリまでない感じでも、できるようになった。リミットを設定して、話しながら作業をする。それが楽しい。
ちょっとした即興アートみたいな感じだね。
Simon - 山本製菓でやるっていう意味もあるし。いくみと、この建物で話すことで、山本製菓の建物と一緒にアートを創る感じ。
UC EAST - だから山本製菓も作品の一部って感じ。やっぱり場所がすごいから。家で制作して、ここに持ってくると、どうしても違和感出そうな感じして。ここの感覚を信じてやるほうがフィットするというか。
同時にここの雰囲気に飲まれてもあかんねんけど。変わったとこでやる意味というか。せっかくこんな変わったところでやるんやから、そういうやり方がええなと思って。普通のホワイトキューブ(白い壁に囲まれたギャラリー)なら、また別のやり方するやけど。
来週から展示やけど、2人は本当に何にも作ってないん?
UC EAST - まったく。さっきまで別の仕事のフライヤー作ってた。
Simon - おれも別の仕事してた。
展示できんの?ここ広いで。
UC EAST - なんとなくはもうあるで。
前ここで展示した時めっちゃ時間かかってたやん。
UC EAST - いや、絵を描いたのは2日間。絵はすぐ出来たけど展示方法はめっちゃ時間かかった。結局会期中ずっと展示方法をいじってたから。ここはインスタレーション的な方がおもしろいと思ってるし、その方が面白いと思ってる。
作品も大事やけど、見せ方も大事。山本製菓じゃないとできへん作品やと思うし。こないだの個展の時に新しいタッチの作品が増えたし。自分でもびっくりした。「わたし、こんな絵描くんや」って。
自分でも分からんねんけど、家でやんのとは違う。
Simonはここに泊まってるんでしょ?
UC EAST - 住んだり出来る場所ってここしかないから。
ここでやるとイマジネーションが湧いたりするの?
Simon - まあ、はじめたらね。今はゆっくり。今は西成を自転車で走ったりして、建物とか雰囲気をつかんでる。ここに来る前には、釜ヶ崎のこととか調べた。60年代からの話は、すごく興味がある。去年から大阪は3回目なんだけど、その時はPulpのおしゃれな堀江のPulpの二階に泊まった。今回は反対の場所。
UC EAST - だって、毎日ここの前を歌唄いながらチャリ乗ってるおっさん通るもん。一日一回絶対に。この間の日曜日はサザエさん歌ってた。平和な街やわ。
Simon - 昔、20年前のロンドンのハックニーに似てる。(サイモンはロンドンのハックニー出身)
Simonは、いくみの作品を見てどう思った?
Simon - 最初に観た時は熱くなった。ライブペイントだけど、いいなあと。ライブペイントってほとんどダサいから。イギリスにいると。ライブペイントっていつもおんなじ感じで。すこし偉そうな感じになっちゃうけど。けど、いくみのはきれいな動き方。そして、ノイズとめっちゃ合って。30分だったけど、1時間30分でも出来ると思う。
UC EAST - うーん。でもライブペイント…。なんて言うんやろ。ライブペイント自体はダサいもんやと思われてると感じてる。やっぱりライブペイントやってますって言うと、「ダサ」って言われるし。「ライブペイントなんて興味ない」って言われるし。けど、自分の中のライブペイントと世の中のライブペイントって全然違うし、ライブペイントの可能性はまだまだあると思ってる。
最近はこだわってやってる。この間のライブペイントみたいに、ミュージシャンのライブに合わせたり、描くモノも、紙とかキャンバス紙に描くんじゃなくて、アクリルパネルに和紙を貼ったりしたものに描くとか。こだわればこだわるほどライブペイントは面白いと思ってる。
Simon - 一人では作れないものを作れるよね。
UC EAST - 一緒にやってもらうアーティストは自分で選んでる。自分はパーティオーガナイザーじゃないから、ライブペイントでミュージシャンと一緒にやるっていう関わり方しかできんし。普通にも観たいけど、だいたい自分が呼んでる人って、ライブ観に行った時に絵が浮かぶ人で。やっぱこの人やったらライブペイントできるって思える人。
出来上がりの綺麗さよりも、音に合わせてどう動くかとか。手の流れとか結構意識してる。抑揚付けててやるようにしてる。 私も飽き性やから、来てくれてるお客さん数時間とかやっても誰もじっと見てられへん思うし。この間初めて映像化したけど、やっぱり生で観てほしいっていうのはある。現場で、現場の空気っていうのはあるし、そこを大事にしたい。
大人しくない人が集まってたもんね。
UC EAST - けどライブペイント始まったらみんな静かに観てたやん。
まあそれはいくみっていうのもあるんじゃないかな。いくみのライブペイントって、アートの世界じゃなくて、ライブっぽいし。「いくみライブペイントはじめるの?ほんじゃあ観よか」みたいな。
UC EAST - やっぱり来てるお客さん信用できるもん。観るもんは観る人らやし。おもんなかったら帰るやろうし。言うし。その辺は面倒くさいけど、それで黙って観てくれて、よかったって言ってくれたから、「やったった」って思えるし。
普通のアートのイベントだとしたら終わったら、お金とかキャリアの話の話にもなるわけやん。「この作品はどこかに応募するの?」とか「お金はどうするの」とか。
UC EAST - まあそういうのは金持ちがすることちゃう?金持ちでもないし、学歴もないし。
いくみは中学校も出てないんやんな?
UC EAST - 中学校は出てるわ!中学校は義務教育やから。だっておもんないもん。高校は16歳の時におもんなくなって辞めた。で、ライブペイントは16歳の時にはじめてる。その時からスタンスは変わってないかな。私はその時にライブペイント観たこと無いのにライブペイント始めて。
どういうこと?
UC EAST - ただライブペイントっていうものが存在していることは聞いててさ。先輩に「ライブペイントってどんなんですか?」って聞いたら、「ギャーッとやってわーっとやったらいいわ」って言われて。「そうなんだ」ってなって。 一回目のライブペイントはペンキを投げてた。
ひたすら投げて、塗って。そこからそのままのスタイルで今に至るかな。汚しまくるから最初の頃はクラブの人には嫌な顔されてた。(笑) 徳島から大阪来て初めてしたライブペイントなんて、ずっとクラブの床掃除してた。誰かにペンキをこぼされて (笑)
ライブペイントなんて、イベントの邪魔にならない所でこそっとやってみたいな感じやん。誰が観てんのみたいな。ライブペイントする方も飲みに行ったり、ダラダラして、本気でやってんの?みたいな。大阪来てからそういうの見てがっかりした。仲間が出来ると思ったのに。
…この半年くらいでいくみのスタイル変わったよね。
UC EAST - 前までの絵って「これでいいかな」みたいな、びくびくした感じやった。今の絵はスケッチブックに描いてた感じのそのままの絵。ライブペイント1年半くらいやってない時があって、その時に自分のやりたいようにやってたら、これ調子ええやんってなって。
それまでは結構かわいい感じのマトリョーシカみたいなの作ってたやん。モチーフみたいなものがあるっていうか。今は、なんかよく分からんもんな。点数付けられへんもんな。
UC EAST - だから茨の道やなって思う。てわも今の方が楽しい。自分のやりたい事をやってるし、実験したくなる。
Simon - 今回、版画のプリントスタジオにも入る予定。いくみちゃんに版画をやってもらう。昔の版画屋さんみたいに、誰かが絵を描いて、それを版画屋さんが版画を作って、プリントする。最近そういう風にコラボレーションしてて。結構昔の感じ。でもパソコンとかPhotoshopとかも使うけど。一番大事なのは触感。
UC EAST - データだけだと分からんけど、プリントでは全然違うから。観て、触ると全然ちがう。版画ってもっと違うから。
Simon - 最近版画への興味があって。何かが始まる感じがしてる。10年やってやっとここまできた。
UC EAST - 版画って絵と違って、色を足したり、引いたりするプリントする作業があるからまたいろいろ違う。
Simon - 生活とか…。版画なら50枚作って安く売れるから。お金ない人にも作品売りたいけど、お金が無かったら買えないと思うから。100枚位つくったら安くして渡せるから。
展示のタイトル『さび』やねんけど。だれが決めたん?どっちの?さび?
Simon - 錆びる方の。けど、わびさびでもいい。
UC EAST - 建物は錆だらけやから。
(みんなで『シン・ゴジラ』を観に行くという中断を挟んで…。)
んで、や、山本製菓…
UC EAST - 聞く気ないやん。(笑)
思い出してんねん…。ここでの展示は何回目?
UC EAST - 2回目。
きっかけは?
UC EAST -インスタで山本製菓を見付けて誰かに紹介してもらった。インスタのDMで「やりたい」って言って、下見に来た時に「ここで絶対やりたい!」って思って「やらしてくれ!」って言って決まった。まだその時は山本製菓としての展示が2回目が終わったくらい。これは、早い者勝ちでやりたいと思って。自分の個展やけど、山本製菓と山本製菓スタッフと私で作る、共同作みたいで楽しかった。
絵を書き終わってからもずっと1ヶ月間ずっと展示方法をいじってた。最初と最後で全然展示の様子が変わってた。
建物の感じはどうですか。
UC EAST - ちょうどホワイトキューブに飽きてて。面白いところで展示したいなって思ってて。ギャラリーとか全然知らんし。絵描きの友達もおらんし、そんなタイミングで。
何がええん?
UC EAST -ここは場所の印象が強いから、下手したらのみこまれる、完全に。もともとギャラリーじゃなくて、お菓子工場やから。だから面白いんやけど。ここの壁の感じはすぐに作られへんやん。約60年の歳月があって出来た壁やから。
作品の感じって変わりつつあるん?
UC EAST - 徐々に変わりつつあって…。この3月の展示で全然違う絵になったもん。
ここで作業したんやんな?
UC EAST - 家はゆったりする所やから。滞在して制作出来るとこもないから、山本製菓はそこらへんは柔軟にしてくれるから。
Simon - こういうところですると時間の感覚がなくなるから。過去も未来も考えずに、今だけを考えて作品を作る。
UC EAST - ちょっと話変わるんやけどな…。
Simon - (話を続ける…)
ちょっと、ごめんやけどインタビューやから。話変えんとってくれる?(笑)
UC EAST - ごめんごめん (笑)
Simon -3年前、昔に蒲田に3ヶ月くらい泊まったことがあって。シン・ゴジラが最初に壊した場所。そこに住みながら描いた作品がこれ。
予言してるみたい。
Simon - 人が住んでいない所に住んで、作品を作ると、作品のイメージと場所のイメージがコラボレーションし始める。山本製菓に入った時も同じようなことを感じた。今みんなで『シン・ゴジラ』を観て、2人で作るっていうのも影響あるかもしれない。時期も。
UC EAST - 時期は大事。季節感は大事。だってギャラリーで季節感あるところってないよな。ここはエアコンもないから。しかも外の光とかも入るから、日中と夜で作品の雰囲気も変わるし。建物は大事。こういう建物が残っているのはすごい。
なんで山本製菓の昇太郎君はギャラリーをやろうと思ったん?
昇太郎 (山本製菓) -元々こういう場所をやりたいと思ってたわけではないけど、去年の頭ぐらいに大阪に帰ってきてから元々祖父母がおかき工場をやってたここに住むようになって。子供の頃走り回ってた工場も気づいたらかなり朽ちてて、でもそれが好きやったし、空間も面白かったし、ここでなんかやりたいなと。そこでスタッフのやっちゃんと久しぶりに再会したらとても気に入ってくれて、で一緒に住んでたスタッフのミカも絵を描いてたりしてたからじゃあ一緒に片付けよかというところから始めました。そのときに改装とかリノベーションもせずに、時間の流れのまま朽ちていくのがいいなと思ってそのまま。本当のことを言うと、埃を拭くのもいやなくらい。そのままにしたい。
Simon - 西成っていう場所の歴史とか調べてる。
UC EAST - 西成って言うとすごく「えーっ」って顔もされるけど。
実際やってみて、場所って作品にとって大事なの?
UC EAST - 山本製菓でやって思った。それまでは作品がよかったらいいって思ってたけど、この間の個展の時に設備とか展示方法とか考えたり、経費掛けたらその分帰ってきた。やっと展示の良さがやっとわかった。
どうプレゼンテーションしよう、受けてに何を考えさせようかってことを意識したの?
UC EAST - いや、むしろ前までそう思ってたけど、前回から完全に自分のやりたいようにやってから、周りはごっつい観てくれるようになった。
シンプルに作品に向かうようになったから。周りの人じゃなしに。逆に削ぎ落として。考え方も。そしたら周りからもストレートに感想を返してくれるようになった。いろいろ意見言ってくれるようになった。
じゃあ白いキャンバスに向かって、ホワイトキューブに飾ったら、作家の気持ちや表現を伝えてるって考えられてきたけど、ちゃうってことやんな?
UC EAST - まあそのキャンバスとかを和紙に変えたり、ホワイトキューブを山本製菓に変えたりすることも大事ってことや。
自分の作品をより面白くできるのは、ここで展示することやし。場所がよければ作品はもっとよくなるし、場所に負けたくないし。
Simon - いろいろなこの街にまつわる話を聞いたよ。西成のバックグラウンドとか。西成の説明とか、今宮とか。昔のロンドンみたいで。
UC EAST - ギャラリーやと、展示をしてどうなるかっていう「絵」が見えてしまうねんな。
Simon - 言いたいことあるので英語でいいですか。
Simon - もともとギャラリーっていうコンセプト自体に疑問を持っていて。アートを通じて、人間として色んな人とコミュニケーションをしたいと思ってる。けど、ギャラリーで展示をするとなると、スーツでキメたやつが部屋の中にいることになる。
自分と、作品と、観に来た人っていうコネクションが大事なんだ。けど、その空白の場所としてのギャラリーっていうのは、ロンドンとかニューヨークのクソ高い場所を誰かが借りて、「おれがこの場所の所有者だから1000ポンド払ってね」っていう風に、タダのビジネスのためにやってる人によって成り立っている。
だから、自分にとっても、観に来てくれる人にとっても、その場所っていうのは何の関係もないんだ。だから、自分がそのギャラリーのオーナーと会話をすることがなかったら、全くその場所っていうのは意味が無いんだ。
ぼくはイラストレーションをしている。それはヴィジュアルを使った言語なんだ。そのヴィジュアルはアイディアを伝えるのに完璧な言語なんだ。自分が30秒で言語で伝えようとすることもできるけど、ぼくはイラストレーションを使って、何かを伝えようとして、そしてそれが観た人がそれを読み取ってもらえるように祈るんだ。
10年くらいイラストレーションを仕事としている。と言っても結構DIYなんだけど、アルバムのジャケットなんかをコマーシャルにしている。けど本音を言うとそういうファンの人たちの反応から離れたところにいることに疲れてるんだ。
自分は「この場所で展示をすれば、オーディエンスと会話が生まれるか?そして自分が答えを押し付けるより、オーディエンスと一緒に何かある方向であったり答えを見つけ出すことが出来る場所なのか?」ということを考え続けている。
(ヤング・ブリティッシュ・アーティストとして有名な)デミアン・ハーストやトレイシー・エミンのようなアーティストは素晴らしいとは思うけど、彼らの作品はアート・ワールドで存在する作品であり、現実世界と何の関係もない。だから、自分はそれらの作品を観ても、何も思わないんだ。
近代の生。闘争や痛み。生きるために金を稼ぐこと。ぼくは、ファイン・アートの世界と反対の方に行くことに興奮を感じる。まあ、そうすることで自分自身が生きていくのが大変になっちゃうんだけど。(笑)
けど、そうする事で自分の作品がより面白くなるし、新しい詩的な表現やイメージが浮かんでくるんだ。より現実の多面的に観察することができる。
だから山本製菓はぴったりだよ。普通のきれいなギャラリーよりね。普通のギャラリーには文脈も、エクストラな情報は何もないから。
一言で言うとアーティストやオーディエンスを本質的な力から遠ざけちゃう(疎外=alienation)ってことだね。
コミュニティという概念が一番重要だね。ぼくらは孤独の時代を生きている。月曜から金曜まで、9時から5時まで、もしくはそれ以上働いてる。だからこそ、ぼくたちには社会的なつながり(social engagement=ソーシャル・エンゲージメント)が必要なんだ。ギャラリーで会って、作品を観て、会話をする、そんな時間と場所って当たり前のもでしょ?ここはそういう意味で最高だね。
だからこの場所は最高だね。気楽にコミュニケーションできるから。ギャラリーだと「作品は何が言いたいのか?」っていうことが重きに置かれてしまうからね。
インターネット以前、シーンというのはある都市から始まった。ハードコア、パンク、なんであれ。そのシーンからは、イラストレーターなどのアーティストも排出した。そのシーンのフライヤーなどを担当していたイラストレーターの作品は、何十年にもわたって傑作とされて、ギャラリーに展示されたりしてる。シーンを代表する、そして偉大なアーティストになった。場所というのは、それくらい大事なんだよ。
まあこのギャラリーでする理由の80%は可愛いネコのギギがいるからなんだけどね。
UC EAST - ほんまやな〜 (笑) ギギ〜おいで〜。
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大阪の展示情報。
『さび』
Simon Fowler + UC EAST exhibition
会期:2016.9.18(sun)ー10.2(sun)
Open 15:00-21:00 Fri-Mon 金土日月
会場:山本製菓 大阪府大阪市西成区天下茶屋東2-5-5
www.yamamotoseika.com
9/18(sun) Opening Party
live R A M Z A × paint UC EAST
dj: phonehead
Open.18:00-21:00 ¥1000 with 1D
10/2(sun) Closing Party
live GUILTY C. × paint UC EAST
and more..
Open.18:00-21:00 ¥1000 with 1D
来月は東京でも展示をする予定。
Simon Fowler UC EAST LOST FOR WORDS(Kosuke Kawamura ,Simon Fowler)
2016.10.23(sun)-10.27(thu) 平日17:00-22:00 日曜14:00-22:00
at ANAGRA http://www.anagra-tokyo.com 102-0093 東京都千代田区平河町1-8-9 地下一階 B1 1-8-9 hirakawa-cho chiyoda-ku TOKYO opening party 2016.10.23 START 18:00-
closing party 2016.10.27 START 19:00-
Simon Fowler
アーティスト、プリントメーカー。ロンドン出身。独学でイラストレーションと印刷を学ぶ。2006年、日本のInoxia Recordsで働く頃から、アンダーグラウンドの音楽シーンにおいて作品を発表し始める。2007年にSunn O))) と Borisの、日本ツアーのアートワークを手がけたところより、様々なミュージシャンやレーベルに作品提供を行うことになった。その一部として挙げられるのが、The Bug; Sunn O))); Master Musicians of Bukakke; Dylan Carlson; Earth;Stephen O’Malley; John Doran (the Quietus); Lustmord; Blackest Ever Black; Small But Hard Recordings (Art Direction); Bo Ningen; Kohhei Matsuda; Cafe OTO など。 これに相反するように、印刷の分野では様々な印刷技術を試している。HANGAと呼んでいる凸版印刷では、ヨーロッパとアジアの技術を組み合わせ、大胆な現代作品を制作している。また、DJ Scotch Eggと立ち上げたレーベル「Small But Hard Recordings」など多岐にわたる活動を行なっている。 cataract-operation.com
UC EAST
89年生まれ。 画家、ペインター。06年、ライブペイントを主軸に活動を開始。09年、初個展を開催。以降、公開制作展やグループ展など作品展示を意欲的に行う。その他にも壁画、CDジャケット、zine、Tシャツ、フライヤーなどの作品を発表。その時々により様々な手法で作品を制作している。 uceast89.blogspot.jp
インタビュー協力: 山本製菓、行松陽介