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Star Slinger Interview

Star Slinger

4月にGold PandaのJapan Tourのスペシャルゲストとして待望の初来日を果たしたUKの若手トップクリエイターStar Slinger。Hiphop~House~Discoなどをジャンルレスに飛び越えた純度の高いパーティーミュージックで日本でも高い人気を誇っている。2010年にリリースされたビート集『Volume 1』がこのたびボーナストラックを追加して日本盤CDとして6/5にリリース間近の彼のスペシャルインタビューを行った。

取材 和田哲郎 写真 寺沢美遊 取材協力 よしもとアール・アンド・シー

- はじめまして、今回東京は初めてだと思うんですが、東京で行ってみたい場所とかはありますか?

Star Slinger -東京に僕の顔写真の缶バッジとかUSのラッパーのLil'Bの缶バッジとかをブートで作っているRadd Loungeって店があるみたいでそこに行ってみたいんだよね。Super Wi-FiってTシャツも売っててそれも欲しいんだ。あとジブリ美術館も今回は行きたいんだけど行けないんだよね。

- 日本のアニメも好きなんですか?

Star Slinger -アニメでいうとジブリのハウルとかラピュタが好きなんだよね。あと日本のゲームも好きで、「二ノ国」ってゲームにハマってるんだよね。それをするためにPS3買ったんだ。

- Ryan Hemsworthとか海外の若いプロデューサーは日本のゲーム音楽とかからインスピレーションを受けているみたいなんですが、あなたもインスピレーションを受けていますか?

Star Slinger -日本のゲーム音楽だけじゃないけど、ゲーム音楽はめちゃくちゃ好きだよ。それこそ子供の頃からずっと聞きながら育つしね、影響は大きいと思うよ。TimberlandがNelly Furtadoの曲にゲーム音楽のサンプリングを使った曲を更にサンプリングして大事件になったこともあるしね。

- 昨日は2.5Dでプレイしたと思うんですが日本のクラウドの反応はどうでしたか?

Star Slinger -ライヴストリームの観客は熱狂的でめちゃくちゃ良かったよ。ただ面白かったのは一緒にやった日本のDJたちが、すごく変なUKのダンスミュージックをかけてて「なんでっ?!」って思ったよ。ガバとか、そんなダンスミュージック今のUKだと誰も聴かないよみたいな笑

- いま日本の若手のDJの一部だとイギリスのマニアックなジャンルが流行ってるんですよね

Star Slinger -僕もナードっぽいとこあるからそういう変なダンスミュージックはすごい好きなんだよね。例えばVice Magazineが"Donk"っていうダンスミュージックのドキュメンタリーを作ったんだよね。それがめちゃ面白くて(笑)。ベースラインが「ドンク、ドンク」っていうからDonkっていうんだよね。公営住宅に住んでる子供が作っててクオリティーもひどいんだけど、すごい面白いんだよね(笑)

- 東京の若いDJの話が出たので聞きますけど、あなたが住んでいるマンチェスターにもIllum Sphereとか、Rone,Krystal KlearとかいいDJがたくさんいると思うんですがマンチェスターのシーンについて教えて下さい

Star Slinger -彼等のやってるパーティーHoya:Hoyaのことはよく知ってるよ。LAのLow End Theoryみたいなんだけど、それをマンチェスターでやってるのが面白いよね。なかでも特に好きなのはKrystal Klearかな。すごい90年代ぽくてダンサブルなトラックを作るから自分のDJでも、彼の曲を使っているよ。

- あなたの音楽もとてもエモーショナルでメロディックで常にダンスフロアを意識しているような音だと思うんですが、あなたは自分をどういうタイプのクリエイターだと思っていますか?

Star Slinger - 特に最近の自分の音楽性はダンスミュージック志向になっていっていると思うよ。それはある時僕は自分の音楽をプレイするのをやめて、DJにフォーカスするようになったのが大きい理由だね。ただボタンを押すだけの人になりたくなくて、むしろちゃんとその場の空気感に合わせてコントロールバイナルを回すDJプレイしたかったんだよね。DJやってるとすごいミスもしたりするんだけど、そのパーフェクトじゃないところが良いんだよね。ミスって自分のプレイがパーフェクトにならなくても「そんなのどうでもいいだろ」って思う方だしね(笑)ただボタン押すだけよりは全然楽しいから。そういう感じでDJをやっているから(昔から思ってるけど)今が一番ダンスフロアを意識した音になってると思うよ。

- 今度日本でボーナストラックを追加してCD化される2010年の「Vol.1」のときは、どういう感じで音を作っていたんですか?当時の方がリスニングよりかなって思ったんですが

Star Slinger - このアルバムはほんとに何も考えずに作ったんだ。ラフにどんどん新しい曲を作っていって10曲出来たときに、これをアルバムにしたら良いかもって思ったんだ。だからこのアルバムの曲をライヴで演奏するとか、DJでプレイするとかは思ってもみなかったんだ。考えてたことがあるとすれば、車の中とか街を散歩しながら聞くといいなって思ってたんだと思うよ。

Star Slinger. VOLUME 1

- 確かにラフなんですけどいま聞いていても新鮮というか、2013年にリリースされてもおかしくない音だと思いますね。

Star Slinger -シンプルなところが魅力になってると自分で聞き返してみても思うよ。

-アルバムでも80年代のレゲエから色んなジャンルのサンプルがあるし、ミックスを聞いても、Three 6 Mafia(USメンフィスの重鎮ヒップホップグループ)からディスコに繋いだり、音楽性の幅広さがすごいと思ってるんですが、どんな音楽を聞いて育ってきたんですか?

Star Slinger -ほんと色んな音楽を聴いて育ってきたから、そういう折衷的な音の使い方になるんだよね。みんながトラップを始める前にアルバムの1曲目の"Mornin"ではハイハットの「パパパパパ」って音を使ってるんだけど、それは2005年くらいからThree 6 Mafiaを聞いててそのハイハットの使い方が好きだったから自分もそういう感じで使ってみたんだよね。でも今のトラップはそういうオリジナルのところを失ってて、あんまり好きじゃないけどね。だからほんとに色んなジャンルで自分がハマった部分を使ってるから、折衷的な感じになるんだよね。

- 2011年にリリースされたあなたの"Dumpin"って曲のリミックスでThree 6 MaifaのJuicy Jが参加してるんですが、ずっと聞いててやっぱり嬉しかったですか?

Star Slinger -まじで大ファンだったから、あれはめちゃくちゃ嬉しかったね。あの曲はMountain Dewのために作っていて、ディレクターに「リミックスは誰がいい?」って言われてすぐに「Three 6 Mafia!」って言ったんだ。で今いるメンバーのなかだとDJ Paulは違うなって思ったから(笑)Juicy Jにしたんだ。彼が曲のなかで自分の名前をシャウトアウトしてくれてるのは感激だったなあ。今でも自分のセットで使うよ。

- 今回の来日はGold Pandaとの共演になるわけですけど、日本のファンはあなたのことをGold PandaのMarriageのリミックスで知った人も多いかと思うんですが、あのリミックスを作ったきっかけはなんだったんですか?

Star Slinger -Vol.1を作る前からGold Pandaのファンだったんだけど、ある日Gold Pandaのマネージャーからメールがきて、「Gold PandaのVinylを何枚かあげるから、あなたのことを買収できる?」って書いてあったんだ。「それどういうこと?!」って返信したら僕の音楽を聞いて気に入ってたみたいだから飲みにいくことになったんだ。その後マネージャーにあった時に、「Gold Pandaのリミックスをしてみない?」って言われたから"Marriage"が一番好きだったし、することにしたんだ。でそれだけじゃなくて彼は「僕のマネジメントもしたい」って言ってくれたんだよね。僕も、彼がマネージャーならいいなって思ってたからその後ずっとマネージメントをしてもらってるんだよね。

- リミックスが思わぬ出会いをもたらしたんですね。

Star Slinger -そうだね、新しく家族ができたって感じだね。

- Gold Pandaとあなたの共通点はジャンルレスであったり、メロディーをとても大事にしていたりするところがあると思うんですが2人の共通点はあると思いますか?

Star Slinger -もちろん2人は違う人間だから、全然違うところの方が多いと思うけど似てると思うのは2人ともサンプルを使うっていうところと、2人とも独自のスタイルをもっていて、似ている音楽をやってる人がいないってところかなと思うよ。

- 独自のスタイルといえばあなたがSoundcloudにアップしているブートのリミックスはA$AP ROCKYの"Peso"がムームバートンになっていたり、とてもオリジナルだなと思いますがリミックスのアイディアはどこから生まれてくるんですか?

Star Slinger -自分ではあんまり"Peso"のリミックスは気に入ってないんだよね、オリジナルが好きで作ってみたんだけど。でもあのリミックスをRockyが聞いてくれて、彼とUKだけじゃなくてフランスとオランダでも一緒にツアーを回れたんだよね。リミックスって自分では気に入らなくても、そういう良いところがあったりするんだよね(笑)

-あなたのレーベル名であるJET JAMは同時にスロベニアで友人とやってるパーティー名でもありますよね。日本に住んでるとスロベニアのダンスミュージックシーンが分からないので、スロベニアのダンスミュージックシーンについて教えて下さい。

Star Slinger -はっきりいってスロベニアにはダンスミュージックシーンはないんだよね。1つクラブがあるだけ。でもそれが気に入ったんだよね。シーンとか関係なくとにかく楽しめるし、自分たちがやればそこが埋まって友達と、とにかく楽しめるんだよね。で、それをスロベニアだけじゃなくて世界中でやろうってなったのがJET JAMなんだよね。ちなみにその2人のDJのうち1人は、僕のガールフレンドなんだ。

- 最近ハマっているアーティストで、あんまり人には教えたくないアーティストをこっそり教えてくれませんか?

Star Slinger -アイルランドの2人組のFion & Brameっていうユニットがいるんだけど、ダンストラックの中にMichael Jacksonのアカペラをマッシュアップしたり、聞いてるとちょっと変な感覚なんだけどめちゃくちゃ良いんだよね。あとはNYのLion Babeっていうアーティストがいて、"Treat Me Like Fire"って曲が気に入ったんだけど彼等も絶対ビッグになると思うよ。

-日本盤のCDがリリースされますけど、その後にニューアルバムの予定ってありますか?

Star Slinger -夏にアルバムをリリースしようと思っているんだよね。そのアルバムには誰も知らないようなゴスペルのサンプリングを全編に使っているんだよね。僕は別に宗教的な人間じゃないんだけど、ゴスペルのサンプリングをしたおかげで、そういう人間的な愛があるような暖かみのある作品になっていると思うよ。ジャンルでいうとヒップホップの影響があるハウスとかになると思うよ。

- それはすごい楽しみですね。今までTeki LatexとかJuicy Jとかとコラボレートしてきたと思うんですが、今一番コラボレートしたいラッパーは誰ですか?

Star Slinger -結構自分のモチベーションも変わって来ていて、今はあんまりラッパーとコラボレーションしたい気持ちはあんまりないんだよね。今はR&Bのボーカリストと一緒にやりたいと思っていて、特にBeyonceの妹のSolangeはマドンナみたいな声をしてるし、プロデューサーのDev Hynesはヤバいプロダクションをしてるから一緒にやってみたいね。

- SolangeのEPは最高ですよね

Star Slinger -Lightspeed Championをやっていた、ギークな格好だったDevがあんなポップな音を作ったなんてすごいと思うよ。彼にとっても良い方向性だと思う(笑)

- ありがとうございます。じゃあ最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

Star Slinger -ワイルドな気持ちを持ち続けて、お店でこのVol.1をみつけたら絶対買ってね。旅をするときのいいお供になるはずだよ。それで夏にまたできれば日本に戻ってきたいと思っているよ。

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