FNMNL (フェノメナル)

【ライブレポート】Watson BUDOKAN | 思い描いた未来を生きる

Watsonの初武道館公演は、実際に彼本人がステージに登場する前からその期待感がパンパンに会場を包んでいた。開演の前のアナウンスが流れると、会場中からWatsonの名前がシャウトされ、ヒュー!という歓声が上がる。この日を、みんなで待っていた。Watsonが歩んできた武道館までの道のりは、そのままファンと歩んできたものだ。

客席から自然と湧き起こるWatsonコールともに、背景には地元・徳島の様子が映し出される。"Intro “Soul Quake”"とともに、いよいよ開幕だ。緊張感も伺えるクールな表情を崩さぬまま、一言一句、スムーズにスピットしていくWatson。それはステージの上の彼だけではなくオーディエンスもまた然り。興奮を伝えるように、会場にいる全員がWatsonとともに彼のリリックに声を被せていく。"MJ Freestyle"の後、火蓋を切るようにeyden、ralph、JUMADIBA、BIMとゲスト・ラッパーたちが登場して、"Working Class Anthem"、"Get Back"、"Natural"と繰り出していく。

Watsonがステージ上に設置されたベンチに腰掛けると、IOが登場して"知った。"へ。意図的なものか分からないが、次の"24/7"からは地元の情景から転じて、背景に眩しい都会の夜景が映し出される。"知った。"で歌われている通り、徳島の田舎から出てきた一人の少年が、都会でラッパーとして成功できることを知ったという彼自身のストーリーとリンクする仕掛けだろうか。同時に、地元からラッパーのLucyを呼び込む。残念ながら同曲に参加しているNeroは登場ならず。が、「代わりにNeroのお兄ちゃんです!」とNero兄を紹介。Lunv Loyal、SEEDAとともに"高所恐怖症"を披露し、間髪いれずBenjazzyとの"Fashion Week"、"NOOFFSEASON"へ。MIKADO、¥ellow Bucksも加わった四人フルメンバーでのマイクパスでさらに会場を沸かせた。「武道館が終わっても、もっともっとリッチになる」と前置きし、guca owlとの"MOTO"を歌うと、「徳島の若い奴らがライブします。観てやってください」と言い残してWatsonは一度退場。その直後にYoungbullet、smiley 、P-Free、Yen Need、そして再度Lucyらが登場してステージを盛り上げていった。

ステージの中央から再びWatsonが現れると"ヤングリッチ"、"小リッチ"を続けてキック。C.O.S.A.が加わり、ステージの雰囲気に重厚感をプラスする。そのままDADAもステージに合流し、足元に焚かれたスモークも迫力を演出する"Koshy Freestyle"へ。さらにNENEが現れて"ヘビー"でそれぞれが高速フロウを披露。「みんな好きな人いますか?」と呼びかけると"Fake Love"へ、そしてそのまま対をなす"Real Love"へと展開していく。Watsonが"Real Love"の1ヴァース目を歌い終え、初披露となるゲスト・ヴァースを繋いだのはなんとSonsi。ステージ上で「お疲れ様です」とWatsonと律儀に握手を交わした後、Sonsiのヒット曲"OYJ"にWatsonが参加したリミックス版をタイトにパフォーム。

そして、フレッシュな空気を断ち切るかのように高鳴るイントロとともに現れたのはAK-69とEric.B.Jr。「地方馬だってこのゲーム勝てると知る」とWatsonのリリックがこれまで以上に熱く響く。間髪入れず"Money Money"へ続き、文字通り奈落からANARCHYが飛び出してくる。火花が散りそうなほどのヴァースの応酬をクールダウンさせるかのように、背景に映る渦潮をバックにした"阿波弁"へ。"Keep Goin"ではWILYWNKAが登場し、一気にシリアスなモードへと引き込んでいく。

照明が落とされ、スポットライトに照らされながらアカペラで歌うのは"Feel Alive"。「人生変えたのは T-Pablowのパンチライン」というリリックの後、"今日という日は"のイントロが静かに流れ始める。いよいよ、人生を変えたというT-Pablowとの共演の瞬間が来た。背後から登場しエールを送るようにWatsonと並ぶT-Pablow。両者の軌跡を繋ぎ合わせるかのように、噛み締めつつ曲を歌い切る。その後、T-Pablow名義の"dassai"へ。炎の特効とともに「川崎Southside!」の掛け声が会場を盛り上げる。去り際に「お前、めちゃくちゃかっこいいよ」とWatsonに声を掛け、T-Pablowが退場すると同時に、場内はクライマックスの空気に包まれる。無数に光るスマホのライトに照らされながら"ダイヤ"、そして"Plan A"へ。スクリーンに映る大きな夕焼けがステージに建てられた電柱を照らし、ノスタルジックな想いを馳せつつステージを降りるWatson。

T-Pablow

その後、アンコールを求める大きな声援とともにステージに再度登場したWatsonがキックしたのは"Rando"。まるで自分の原点を確かめるように歌う姿が印象的だ。そして、約2時間に及ぶ武道館ライブを締めくくるべく披露したのは2021年にリリースされたミックステープ『Thin Gold Chain』に収録された"18k"。イントロが流れると悲鳴のような歓声が湧き起こる。スマホの光に照らされながら歌うWatsonの姿に、自分の夢を重ねる観客もいたはずだ。「書き換えてく未来持つ安いペン」と歌うWatsonの姿は、まさに自分が思い描いた未来を生きる成長した姿。客席に背を向ける彼の背中は、充足感に満ちていた。ステージから去る間際に、客席から聞こえてきたのは「Watson行かないでーー」という一言。エンディングを飾るかのように会場には"ペンとノート"が流れ、名残惜しそうに帰り支度を始めるファンたち。この日、武道館で行われたステージは幕を閉じても、彼にはさらなる大舞台が待っているはず。それにしても、息を乱さず高速のフロウをスピットし続ける脅威のブレスコントロールには脱帽だ。Watsonが描いてきたストーリーと夢が、若い観客それぞれの想いと交差し、文字通り魂が揺れるほどの熱気を生み出していた。しっかりと地に足を付けながら、着実にラッパーとして歩んできた彼の”Watsonらしさ”が満ちていた。伝説と呼ぶにはまだ早いかもしれないが、ラッパーとしての確固たる地盤を十分に感じることができた充実のステージだった。(取材・構成 : 渡辺志保 撮影 : 三浦大輝

Info

Set List

M1 Intro “Soul Quake”
M2 MJ Freestyle
M3 Working Class Anthem feat. eyden
M4 Hokori
M5 ralph - Get Back feat. Watson, JUMADIBA
M6 STUTS & ZOT on the WAVE – Natural feat. BIM, Watson
M7 NICHIA (hook only)
M8 知った。 feat. IO
M9 24/7 feat. Lucy, TORO
M10 Lunv Loyal - ⾼所恐怖症 (REMIX) feat. SEEDA, Watson
M11 Fashion Week feat. Benjazzy
M12 Benjazzy – NOOFFSEASON feat. Watson, MIKADO, \ellow Bucks
M13 MOTO feat. guca owl
S1 Youngbullet – rojou
S2 DJ REX - freestyle feat. smiley, P-Free
S3 DJ REX - Baliin feat. Lucy, Yen Need
M14 ヤングリッチ
M15 小リッチ feat. C.O.S.A
M16 Koshy Freestyle feat. DADA, C.O.S.A
M17 NENE – ヘビー feat. DADA, Watson
M18 Fake Love faet. DADA
M19 Real Love (REMIX) feat. Sonsi
M20 Sonsi – OYJ (REMIX) feat. Watson
M21 AK-69 - ONE SHOT feat. Watson, Eric.B.Jr
M22 Money Money feat. ANARCHY,
M23 阿波弁
M24 Keep Going feat. WILYWNKA
M25 Feel Alive (acapella)
M26 今⽇という⽇はfeat. T-Pablow
M27 T-Pablow feat. Watson
M28 ダイヤ
M29 Plan A
EN1 RANDO
EN2 18k

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