FNMNL (フェノメナル)

【特集】Lil'Yukichiがチョイスするミルウォーキー産 Low Endラップ8選

ラッパー・プロデューサー・DJとして活躍するLil'Yukichiが、藤沢出身の新鋭ラッパーSaggypants Shimbaとリリースした楽曲"FUCK THAT"。

高速でバウンシーなビートにSaggypants Shimbaのロウなラップが光るこの楽曲は、早耳なリスナーの間で話題になりつつあるUS ミルウォーキー産のサウンドを取り入れたクラブチューンとなっている。Lil'Yukichiがミルウォーキーのサウンドを知ったきっかけは「僕が中3か高1の頃からチェックしている僕の音楽プラグのLil PriさんがXで紹介していて」だという。またそのサウンドの特徴や魅力については、「8拍子で鳴っているクラップ、早いテンポに重たい重低音やゆるいラップが特徴で、踊って楽しむことが前提のジャンルで、乗りやすいのでかなりとっつきやすいのが魅力」と答えてくれた。

"FUCK THAT"については、「このジャンルを知って、とりあえずそういうビートを作った。ビートパックの中の1つとして数人のアーティストに送ったものでたまたまSaggypants ShimbaくんがこのビートなんかパンチがあってYukichiさんらしいし、ライヴでも迫力があって盛り上がりそうという理由で選んでくれた。とりあえずの1発目の歌詞はお任せして、返ってきたのが"Twerk Twerk Bitch 振れよケツ"だったのでShimbaくん流石と思いました。8/19に渋谷ライオンでSaggypants ShimbaくんのEPのリリパがあって、僕もDJ SETがあるので、お時間ある方はぜひ遊びにきてください!」と答えてくれた。

今回FNMNLではLil'Yukichiに、ミルウォーキー産の注目楽曲をセレクトしてもらうと共に、このジャンル「Low End」の解説もしてもらったので、ぜひチェックしてみてほしい。

(文・選曲 : Lil'Yukichi)

ミルウォーキーから話題になっているヒップホップの新しいサブジャンルがある。

ミルウォーキータイプビートやLow Endと呼ばれていて、このサウンド自体はミルウォーキーの東部から2010年代初期からあり、アーティストのMunch LaurenやBankheadが同郷のアーティストでサブジャンル「Jack Music」を提唱していたEastside L Boogからインスパイアされて作ったとされる。

「Jack Music」などの影響を受けて登場したのが8拍子で鳴っているクラップ、早いテンポに重たい重低音やゆるいラップ、そして大体の曲が平均して約2分という短さがこのジャンルの特徴だ。また、ニューオリンズ発祥のヒップホップのサブジャンル「Bounce」からの影響も色濃くある。

2020年代からは新しい世代のアーティストたちがこのサウンドを継承し、ローカル人気を拡大しながらもSNSを通して全国区にも拡がっている。Low Endの歌詞は、ダンスや車をテーマにしたユーモラスな内容が多い。音楽に合わせて、Twerkやミルウォーキーローカルのダンスが踊られ、TikTokで多くのダンスチャレンジを生み出している。

Lil'Yukichiが選ぶミルウォーキー産 Low Endラップ8選

1 Lil sinn - Lowend

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2020年代にLow Endがジャンルとして広がったきっかけの曲。因みにLow Endとはミルウォーキーの東部の貧しい(Lowend)地域からついた名前。

2. Eastside L Boog - How 2 Jack

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2010年頃にリリースされ、ミルウォーキーで大ヒットした曲。この曲が当時ヒットした理由としては、当時クラバー達がこぞってアンダーグラウンドのパーティーに遊びに行っている時期で、パーティーではローカルなアーティストがライヴをする事が多かった。そこからクラブで遊ぶ人達の間でそういうローカルな曲が話題になって広がったというのが一つの理由だ。

3. Certified Trapper - OI [Beat Da Koto Nai] 

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今のミルウォーキーで勢いのあるアーティストの1人。頭から"おい おい おい"と始まり、謎の中毒性が堪らない1曲。映像での何とも言えない踊りも相まってYouTubeコメント欄での"パーティー後・・・"ネタで弄られてるのもちょっと面白い。

4. Munch Lauren - Dummy Azz Part 2 feat. Mook G

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この曲、リリースは7年前だが、今のLow Endの要素が色濃くみられる。歌詞の内容はひたすら女性の尻について歌っている。

5. Èsco x Shawn P - Like Yhop

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このジャンルに多くみられるが、録音環境がとにかく悪い曲が多い。ただ、そういう曲でも人々に愛され広がっていくのはラップミュージックのいい所だなと思う。Natasha Bedingfieldの曲を大胆にサンプリングしたビートの上でやはり大胆に女性の尻について歌っている。

6. J.P. - Bad Bitty

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少しだけ夏に合う爽やかなダンスホールっぽい雰囲気もありすごく聴きやすい1曲。こんなに聴き心地が良いのにやはり女性の尻について歌っている。

7. Myaap & Lil RB - Wham

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ミルウォーキーのギャルも”野郎たちがみんな欲しがっているのは私。両ひざに手を置いて振るよ”と歌う。

8. Polo Perks <3 <3 <3 - ROCKBAND TEES 08 DENIMS feat. Current Joys

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ネバタ州のインディーロックソロバンドのCurrent Joysを迎えた1曲。他ジャンルでもLow End仕様で踊れる楽曲となっている。ビートは更に最近アングラなラップミュージックで再燃している2010年代に流行った西海岸のサブジャンル"Jerk"の要素もみられる。

最後に

冒頭でも伝えた通り、すごく乗りが良くてとっつきやすい音楽ジャンルで、ダンスとも密接なのでこれからももっと拡がっていく可能性がある。ここ日本でもやり方次第では1,2年後とかに増えていく可能性もありそうだ。新しいものをインプットするのはとても大切な事だ。

ただ新しいものと言っても、それには歴史がある。どこからともなくポッと発生したわけではなく、10年以上前から先人たちが活動をし、小さなきっかけが重なりあって新たな世代がそれを更に継続していく。これはこのジャンルに限らず、色々な事柄にも当てはまる事だ。

時間がかかってしまうかもしれないが、歴史を学ぶというのはとても大切な事だし、今自分がやっていることがあまり影響力がなかったり、無意味だと感じてしまうかもしれないが、時間が経てばそれが違う形で、違う人々に影響を及ぼす可能性があるな。と今回の記事を書きながら思いました。

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