SPARTAが11月3日に東京・WWWでワンマンライブ「SPARTA『兆し』Release Tour In Tokyo」を開催した。10月24日の熊本・NAVARO、30日の大阪・CIRCUSに続く、3rdアルバム『兆し』のリリースツアーのファイナル公演となる。この日のWWWはソールドアウトとなった。
客電が消えるとバックDJのshakkeがブースに入る。青白い照明に照らされて鳴らされたのはソウルジャズを感じさせるフェンダーローズ、ソプラノサックスにベースラインが絡みつくビート。そこにホーンの効果音が響き渡ってSPARTAが登場する。まずはDiaspora skateboardsのスケートビデオ『SYMBIOSIS』のサントラに収録された“Skate”から。ビートは16FLIP。そのまま2曲目はDJ SCRATCH NICE&GRADIS NICEがビートを手がけたISSUGIとSANTAWORLDVIEWとの楽曲“Possible”に。自身のルーツであるスケートにまつわる2曲をクールにキックし終えると、SPARTAは「みなさん、こんにちはー!」と笑顔で挨拶。声出しができない分、観客は大きな拍手と身振り手振りで歓迎した。SPARTAは「緊張しちゃうから、拍手とかいっぱいもらえると嬉しいです。声とか出しちゃだめなんですけど、体とか拍手とかで表現してくれると俺はみんなと繋がってる感じの気持ちになるんで。一緒に楽しみましょう」と話しかけた。
ポジティブだが押し付けがましくなく、洗練されているのに熱い。SPARTAはアルバム『兆し』から“Stay Humble”と“俺たち”を歌う。フックでは観客と一緒に大きく手を振る。次の“Nostalgia”では最初のゲストであるGO a.k.a. 男澤魔術がステージに。実は2人でライブをするのが今日が初めて。90年代から活動してきた先輩がラップで熱いエールを送る。GOはMCで「SPARTAくんは僕の“大峠”という曲(のMV)を撮影してくれてるんですね。その時カメラにSPARTAって書いてあったんですよ。『なにこれー?』と聞いたら、『実は僕ラップもやってまして』と教えてくれて。そっから4~5年経ってからの今日だよね。こうして一緒にステージに立ってる」と感動的なエピソードを話す。が、SPARTAは「いや、そんな経ってないす。1〜2年前……」とつっこむ。観客は笑い声の代わりに拍手で反応した。
GOの言葉を受けたように、JJJがプロデュースした“ありのまま”で「次は俺の出番だ」と宣言。UKガラージの“RUN”は同郷・熊本のラッパー・DENAMI TXを迎えて一緒に駆け抜ける。“RUN”が終わってすぐ袖に戻ろうとするDENAMI TXを「ちょっとまだいて。緊張してるのはわかるけど」と引き留める。この日のために熊本から飛行機に乗って来た仲間をSPARTAは東京のオーディエンスに紹介。リリースされたばかりの2ndアルバム『BRIGHTSIDE』をしっかりとプロモーションさせた。次の“飛べる”にはNEIが客演。ドリルのビートに爽やかなカッティングギターを合わせたナンバーで、NEIと共に若いエネルギーを発散させた。
小さな一歩でも行動することの重要性を歌った“近づく”、その行動に伴って辛い局面が出てきても自分らしさを見失わないと己に言い聞かせるVaVaのビートによる“FLOW”を経て、SPARTAは「みんな知ってるかわからないけど、友達の曲を1回リミックスさしてもらって。一瞬だけインスタグラムにあげてた曲があって。今日はワンマンということでその曲を披露させていただけたらな、と思います」と話して鳴ったのはBIMの“吐露ノート”のイントロ。SPARTAが1ヴァース目を歌ったあと、なんとBIM本人も現れる。shakkeも交えて、3人で息のあったパフォーマンスを見せてくれた。
BIMは「この前、熊本(のワンマン)にもお邪魔したんですけども出番を忘れて楽屋でくっちゃべってたら、SPARTAが楽屋に呼びに来てくれて」と話し出す。SPARTAが「本番中にですよ」と観客に暴露すると、shakkeも「(今日はちゃんといるか不安で)ステージ袖を見ちゃったもん」と相槌を打つ。するとBIMは「舐めんなよ、マジで。今日はすごい早くから袖で待機してたんだよ。(出番よりも)だいぶ早くからいたから、TXくんやNEIくんに『緊張してるんですか?』って聞かれちゃったよ」と笑いながら話して会場を和ませた。BIMとはさらにもう1曲。SPARTAの2ndアルバム『Count Your Blessings』から“Nobody”をそのムードのまま披露した。
BIMとのトークで緊張がほぐれたのか、SPARTAはここからのびのびとしたパフォーマンスを見せ始める。それを後押しするのがKMのトラック。スイッチが入ったかのように、“Hiroi”、“One by One”、“Family”で凄まじいエネルギーを放出する。“I Need Your Love”では鎮座DOPNESSも歌とラップを自由自在に織り交ぜながらSPARTAをサポートした。続いて登場したのはanddy toy store。Mizukamiがプロデュースしたハイセンスな四つ打ち曲“Jungle”と、anddy toy storeの新曲“Skynet”という高音と低音が交差する難しい2曲をハイテンションに歌いあげた。
「楽しいです。私は。みんなの拍手が嬉しいです」とSPARTAが言うとさらに大きな拍手が響く。「自分はもともと映像を撮ってて。ラッパーじゃなかったんですよ。3〜4年前までは普通に仕事してたし。今ここに立って俺のことを知ってる人がこんなにたくさんいるのが不思議なんですけど。なんかちっちゃい奇跡みたいのを積み重ねてここに立ってると思うんです。みんな(の中に)も目標とか夢とかある人がいると思うんですけど、夢とか目標があればどこまでもそれが連れてってくれるんで。みんなも俺と一緒に頑張っていきましょう。今日は本当にありがとうございます」と話し、1stアルバム『3』から“いつも通り”を歌った。
そして、満を持して披露されたのは出世作“ALIEN”。SPARTAが歌う1ヴァース目はまだ夢を見て努力してる時の話。「俺がもしもこれで飯を食えたら多分みんなの夢を持つべき」というラインが感慨深い。2ヴァース目は最後のゲスト、KID FRESINO。マイクスタンドを魔法使いのほうきのように跨いだ笑顔でステージに歩いてきた。KID FRESINOが歌うのは、叶えた夢の先の話。「ダサい日もあるから楽しい」はリアルなパンチライン。“ALIEN”を歌い終えると、KID FRESINOは観客を見渡して「この方たちがSPARTAを好いている人たちですね。素晴らしいことだと思います。素敵なことだと思います」と話し観客のテンションはさらに上昇した。
その勢いのまま“緑と青色”、“Fresh”、“Beyonce”をSPARTAは歌いきる。ライブを通して印象的だったのは、観客がリリックのひとつひとつにジェスチャーで反応していたこと。会場に集まった多くのはファンたちは、しっかりとSPARTAの歌と歌詞を聴いてフィールしている。等身大だがしみったれてない、夢を見させてくれるが大言壮語ではない。トラック選びのセンスもある。しかもライブパフォーマンスは安定していて、伸び代も十分。マスクを外せるようになった日は、一緒に思い切り歌って踊りたくなる、そんなワンマンライブだった。(宮崎敬太)