スペースシャワーによるオンライン・ライブハウス『LIVEWIRE』でPUNPEEによるワンマンライブ『Sofa Kingdomcome』が9/13(日)に放送された。最新EP『The Sofakingdom』をリリースして以来初となった、2年ぶりのワンマンライブは、渋谷のManhattan Recordsの前の路上からスタート。
路上に止めてあるのはアルバム『MODERN TIMES』のジャケットに用いられているオールドタイプのオープンカーだ。アメコミが置かれ車内の古時計が時を刻む中、PUNPEEは上下adidasのジャージに自転車で登場し、車の横に自転車を止めると、そのまま”P.U.N.P. (Communication)”でライブをスタートさせた。
”P.U.N.P. (Communication)”は音楽活動をスタートさせた頃の描写が印象的な楽曲。その時代に、よく通っていただろうManhattan Records、そして今は亡きCISCO前の通称CISCO坂を歌いながら登っていく。そして坂の中腹ではダースレイダー、METEOR、丸省、インダラがサイファーを行っているという、当時を再現させるような演出も。常に自身のルーツや経験してきたことと向き合った表現をしてきたPUNPEEらしい滑り出しだった。
バックDJを務めるDJ ZAIと原島“ど真ん中“宙芳も登場したところで、『Movie On The Sunday』や『MODERN TIMES』にも収録されている名曲”Renaissance”では、渋谷の街を歩いていた通行人からも熱烈歓迎を受けると、メイン会場となる渋谷WWW Xに入っていく。
2人のバックDJとは別の場所にいるPUNPEEのセットは最新作『The Sofakingdom』のジャケットを模したものだ。その中でEPのオープニング曲”The Sofakingdom VR”を歌うと、「この世界に潜っていきましょう。Sofa Kingdomcome レッツゴー」と促す。そしてそのままステージに移動するとMVのサプライズ公開も話題となったKREVAをフィーチャーした”夢追人”をパフォーマンス。思うようなことができない状況だからこそ、ポジティブに夢を追う両者のバースが刺さってくる。
続けて行ったフリースタイルではテニスの大坂なおみ選手へのシャウトなども含みつつ、コロナ禍における状況を「アバターになり、息が詰まって」とラップし、「誰もいないステージでラップしている」と変わってしまった世界を歌いつつも、「ここはまだ夢が詰まってる」と前を向いた。そしてそのフリースタイルをしているPUNPEEの後ろにはStones ThrowやNo Limitなどの音楽レーベルからPublic Enemy、Pete Rockなどのアーティスト、RocawearやCross Coloursなどのブランドまで、ルーツにあるロゴが写し出されて行った。フリースタイルの最後を「俺らなりの新しいやり方で、見出す活路 そんなシナリオ」と歌い、”Scnario (Film)”へと続けた。
その後「もう1人くらい呼ぼうかな」と話すと、PUNPEEが参加したBIMの”Buddy”のイントロが流れ、BIMが登場するが、なんと上から降りてきたのはぺらぺらのBIMのAR。ユニークな動きをみせるBIMのARの前にPUNPEEも困惑気味だが、BIM本人が登場し、「なんだよ、これ」と空手有段者らしい動きで、ペラいARを蹴っ飛ばすとPUNPEEも笑顔を見せた。
曲が終わるとPUNPEEとBIMはソファに席を移し、MCタイムへ。PUNPEEは、渋谷の街中での待機中にファンに話しかけられたことを明かし、笑いを誘う。BIMは「ぺらぺらにされて悲しい」と笑いながら話し、PUNPEEは「ペラペラ(のARにして)BIMが、それを蹴るというのをやりたかった」と受けたこのようにただ単に最新の技術を使うだけでなく、自分らしいやり方で用いるという意味では実にPUNPEEらしさが出た瞬間だったと言えるのではないだろうか。そしてこのらしさは後半にかけて、より加速していく。
BIMが去ったあとはPUNPEEのもう1つの代表的な客演曲であるSTUTSの”夜を使いはたして”で再びステージへ。ステージの後ろに映し出される、MVでのなんでもない夜の風景が画面越しで見るとエモーショナルだ。「上がっていきましょう、Sofa Kingdomcome、新しいチュートリアル」と”GIZMO(Future Foundation)”がスタートすると、ステージは一気に仮想空間に変化し、ARの観客が踊る中で、ギズモやレーベルSUMMITのロゴ、PSGのアルバムジャケット、Red Bullの缶など、PUNPEEに縁のあるものが浮かぶ。
「タクシードライバー、フォートナイト すげーな どちらのトラビスも病んだ世界が産んじゃってる」という箇所では、映画『タクシードライバー』でロバート・デニーロ演じるトラビスと、フォートナイトの世界で巨大化してしまったTravis Scott(?)の一部も登場。その後また世界は一変し、動物が暮らす大自然から水中へと世界は移っていき、PUNPEE自身も水中のにいるかのような声でラップした。
ライブへの関係者へのシャウトの後には1stアルバム『MODERN TIMES』のジャケットの車がスクリーンから飛び出し、”タイムマシーンにのって”が始まる。シュレディンガーの猫も浮かぶ中で、画面が歪むと、そこにはARで再現されたPUNPEEの地元・板橋駅が出現し、"タイムマシーンにのって"のMVに登場する若かりしPUNPEEの両親も登場する。
その後また光景が変わっていき、板橋駅は2057年にタイムスリップ。釣部東京により構築された世界は、PUNPEEが愛する映画『バック・トゥー・ザ・フューチャー』へのオマージュも施されたPUNPEEの頭の中にある板橋を緻密に表現したものだった。
「楽しくやっていきましょう、ポジティブに捉えて」とMCしたように、PUNPEE自身がこの状況の中で最大限できることは何かというのを詰め込んだ、まさに今しかできないライブを見せてくれた。彼のバックグラウンドになっている過去や、頭の中にある未来も堪能できるライブは、9月20日21:00までLIVEWIRE WEBサイトでチケットを販売しており、購入者は20日23:59まで見逃し配信を視聴できる。PUNPEEらしさが詰まったライブは、ぜひこれからでも視聴しておいた方がいいだろう。
Info
Tracklist
Opening
1.P.U.N.P. (Communication)
2.Renaissance
3.The Sofakingdom VR
4.夢追人 feat. KREVA
5.Freestyle
6.Scenario (Film)
7.BUDDY feat. PUNPEE
MC
8.夜を使いはたして feat. PUNPEE
9..GIZMO (Future Foundation)
10. タイムマシーンにのって
LIVEWIRE PUNPEE
“Sofa Kingdomcome”