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Denzel Curry & Kenny Beatsのコラボアルバム『UNLOCKED』のショートフィルム|リークされたアルバムを取り戻しにPCの中を大冒険

先週金曜日にリリースされたDenzel CurryとKenny Beatsによるコラボアルバム『UNLOCKED』。同作の楽曲を題材としたショートフィルムが公開されている。

監督はこれまでにDoja Catや Gold Link、AmineらのMVを手がけたスタジオPsycho FilmsのJack BegartとChristian Sutton。実写と様々な絵柄のアニメーションが入り混じるクオリティの高い映像作品となっている。

ストーリーは以下の通り。Kenny Beatsのスタジオを訪れたDenzel Curry。かなり腹を立てている様子で、今回の『UNLOCKED』がリリース前にリークされていることをKennyに伝える。責任を擦りつけ合う押し問答にうんざりしたKenny Beatsは、ダンボールの中から謎の機械を取り出し、アルバムを取り戻しにコンピューターの中に入ろうと主張。「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』かよ」と文句を言いながら渋々機械を装着したDenzel CurryとKenny Beatsは、そのままコンピューターの中に入りリークされたプロジェクトファイルを探す冒険に出る。ショートフィルムのコンセプトに合わせ楽曲のタイトルにもそれぞれ“.pkg”、“.m4a”といった拡張子がついており、まるで作られたばかりのプロジェクトファイルが本当にリークされてしまったかのようだ。

コンピューターの中へと入った二人は、Kenny Beatsの特殊性癖が明らかになるなどのハプニングを経て1曲目“Track 01”が隠されたゾーンへと侵入。ポリゴンの中コンピューターウイルスや絵文字などが飛び交う極彩色の世界に二人は放り込まれる。イントロのボイスサンプルは精神的な抑圧を抱えた男について語っており、メンタルヘルスへの言及はDenzel Curryのこれまでの作品とも通ずるところだ。

続いて彼らはモノクロの不気味な世界へと移動。伊藤潤二のホラー漫画『うずまき』のパロディであるこのパートでは、同作に登場する人物や怪物を思わせる的が二人に立ちはだかる。2曲目“Take_it_Back_v2”はハードに韻を畳み掛けつつ公民権運動や黒人差別といったトピックへの言及も為され、Denzel Curryのリリシズムが存分に表れた楽曲に仕上がっている。渦巻き模様の中に無数の目を持つ不気味な敵を撃破しプロジェクトファイルを取り戻した二人は、これまた不気味な幽霊屋敷風のダンジョンに突入。ツノを持った巨大な怪物から逃げ回りながら、3曲目“Lay Up.m4a”のファイルを求め探索する。

続く4曲目“Pyro (leak 2019)”のファイルが隠されているのはクレイアニメ風の世界。輝く太陽の中に隠されたファイルを取り戻すため、二人は超能力を使ってピラミットを建造し太陽に手を伸ばそうとする。同曲の中でDenzelは様々なネームドロップやレトリックを用いたセルフボーストを披露しており、改めて彼のスキルの高さに驚嘆させられる。

5曲目“DIET_”ではジャングルを思わせるパーカッションが用いられたトラックに合わせ、無数の凶暴なゴリラが襲い来る森の中での冒険が展開される。森に迷い込んでからわずか2分で何故かゴリラの王となっているKenny Beatsが抱くちょっとした葛藤が可笑しい。6曲目“So.Incredible.pkg”ではファンシーな怪物たちとの謎のレースゲームが開始。巨大な車に乗ったDenzel Curryが俊敏なペガサス相手に苦戦する中、一人自転車で走ることを余儀なくされたKenny Beatsが思わぬ活躍を見せる。浮遊感のあるトラックとDenzel Curryのハードなライムとの対比も聴き所だ。

カートゥーン風の世界での冒険を経てインタールード的な7曲目“Track 07”を取り戻した二人は、とうとうラストトラック“’Cosmic ’ .m4a”を取り戻すべく最後の戦いに臨む。最後に彼らが立ち向かうのはもう一人のDenzel CurryとKenny Beats自身。これまでのコミカルな雰囲気はどこへやら、リアルな絵柄と力の入った作画の迫力あるバトルが展開される。楽曲もクライマックスに相応しいバンガーとなっており、フロウと格闘のSEは明確にWu-Tang ClanとOl’ Dirty Bastardへのオマージュであることが分かる。

今作はKenny Beatsのビートに合わせて様々なアーティストがフリースタイルを披露する企画『The Cave』をきっかけに生まれたもの。Denzel Curryが出演したエピソードではWu-Tang ClanのODBについての言及がなされており、今作のいくつかの部分で見られるDenzel Curryのフロウはその影響下にあるとも推測出来る。

一方でアルバムのアートワークは同じく90sのニューヨークを代表するグループのひとつであるOrganized Konfusionの『STRESS』へのオマージュとなっており、今作が90sのニューヨークをイメージして制作されたものであることが分かる。前作『ZUU』ではサウスのギャングスタラップにオマージュを捧げていたDenzel Curryが、今作ではニューヨークに接近している辺りが興味深い。

二人の冒険は一体どのような結末を迎えるのか、それは本編を見てのお楽しみ。ファンならずとも必見な『UNLOCKED』のショートフィルムはこちらから観ることが出来る。

Info

Denzel Curry & Kenny Beats
UNLOCKED
Loma Vista Recordings
February 7th, 2020

1. Track 01
2. Take_It_Back_v2
3. Lay_Up.m4a
4. Pyro (leak 2019)
5. DIET_
6. So.Incredible.pkg
7. Track07
8. 'Cosmic'.m4a

https://found.ee/DC_ListenUNLOCKED

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