アーティストのパフォーマンス中に観客達が円形の陣を作り、曲とともに体をぶつけ合うモッシュピット。一般的にパンクのライヴが起源とされているが、今ではヒップホップのライヴでも頻繁に見られるようになってきた。そんな中、Geniusにてモッシュピットの研究者が人々はなぜモッシュをするのかについて語る動画が公開されている。
モッシュをはじめ、ダイヴやクラウドサーフなどいずれもかなりの危険性を伴うものだが、観客同士のみならず、観客とアーティストで一体感を感じられるのも事実だ。今回、Geniusは20年近く実際にモッシュピットの中で研究を行ってきたモッシュ研究のエキスパートPaul Wertheimerを取材。彼は「モッシュピットはコンサート参加者の感情を解放するための一形態だ」と語り、オーディエンスがアーティストの音楽から得た感情をアーティストにも共有する手段になっていると説明した。加えて、彼はモッシュを構成している多くは若い男性で、彼らはモッシュピットを行うことにより怒りや苛立ちを解放しているとも述べている。
また、動画内ではモッシュピットの歴史についても語られており、先述したように70年代後半から80年代前半のパンクのライヴがモッシュピットの起源であるとのこと。そして、90年代に入ったところでグランジなどの流行に伴い、モッシュやダイヴなどはより一般的なものになっていったという。しかし、その当時はまだヒップホップシーンにはモッシュという文化は無かった。その理由としてPaulは、当時の人気ラッパー達はギャングのメンバーが多かったことに加え、激しい人種差別があったために特に白人は体を触れあうことすら出来なかったと語っている。動画によると、その流れを変えたのが90年代を代表するラップグループの内の1つ、Onyxだ。彼らは代表曲“Slam”をはじめ、自分達のMVやライヴでモッシュの要素を盛り込んだのである。
そして今や、ヒップホップシーンでTravis ScottやLil Uzi Vertを筆頭に、ド派手なモッシュやダイヴが頻繁に行われているわけだが、実際、近年では2014年にTyler,The CreatorがSXSWで観客を煽り、暴動を起こさせたとして逮捕されたり、2017年にはライヴ中に危険なダイヴを試みたTravisが、ファンに訴えられるなど悪い側面もクローズアップされつつある。
最近では、日本のラッパーのライヴにおいてもかなりモッシュが浸透してきているが、危険と隣り合わせであるということは常に頭の中に入れておくべきだろう。動画の全編は下から。