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BLACK SMOKERによる総合舞台芸術『BLACK OPERA - 鈍色の壁 / ニブイロノカベ -』が開演間近 | 大谷能生による紹介文を掲載

東京・赤坂のゲーテ・インスティトゥート 東京ドイツ文化センターでベルリンの壁の崩壊から30年を迎える今年11月、「壁」をテーマとしたイベント・シリーズが14日(木)〜17 日(日) の4日間に渡って開催される。このシリーズを仕掛けるのはBLACK SMOKER RECORDS。

総合舞台芸術作品の2019年版『BLACK OPERA -鈍色の壁 / ニブイロノカベ-』と二夜連続のオープニング・ パーティーが、昨年に引き続き再び未知のエンターテイメント空間を出現させる。

昨年の模様

今年の公演は昨年を上回る大胆な演出と実験精神、さらに混沌を極める音楽、映像、美術 、ダンスなど多様な分野からの挑戦的 アーティストたちの参加によって作り上げられていく。まさに誰にも予測不能でカテゴライズ不可であり、全く新しいオペラのあり方を、今年も更新する。Rokapenisが手がけた4本に渡る予告編も公開中だ。

前夜祭では80年代のデカダンな音楽シーンを中心に、壁崩壊直前までの西ベルリンの様子をマンチェスターからやって来た音楽青年の視点から描き出した幻のドキュメンタリー映画、昨年の『BLACK OPERA - Hole on Black-』の魅力を振り返るショート・ドキュメンタリーの上映に加え、逸脱のテクノロジーとそこから生まれる音楽の可能性をテーマにしたアーティスト・トークを1日目に。2日目は、昨年京都で開催された日本の最もカッティング・エッジな音楽を結集したフェスティバルMAZEUM​と、欧州でも最も進んだプログラムで知られるポーランドの​Unsound​フェスティバルとのパートナーシップの第一弾として、今年はアーティスト交換が実現。ワルシャワのアート・グループBNNTとMAZEUMとUnsound両方に出演を果たした空間現代を招聘し、山川冬樹とスガダイローの初共演、角銅真実のソロ・ライブを。

ここからは『BLACK OPERA』に企画の初期段階から関わってきた音楽家で批評家の大谷能生による紹介文を掲載する。

今回は自分の公演とかち合ってしまったので残念ながら出演できないのだが、『BLACK OPERA』にはその初回の企画段階から参加しており、会場はその時は渋谷のWWW。ヴィジュアル面を全面担当するV.I.I.MとBlack Smoker Recordsのダブルネームでの開催だった。出演者は(記憶によれば)メチクロによるさまざまに強烈な造形のマスクを選んで着用し、ライブハウスに持ち込まれたR領域の舞台美術の量は1日で搬入・撤収できる限界を軽く超えた大掛かりなもので、「ギャンブラーの誤謬」というタイトルの下、ラッパーとダンサーと光線と美術と朗読がぶっつけ本番でぶつかりあう、今思い出してみてもどのように進行したのかはっきりと思い出せないほど過剰な舞台だった。よくちゃんと終わったなと今更ながら思う。まさにギャンブル。

しかしその年末にこれ、もう一回やるんですよ。しかも今度は12月31日の深夜にカウントダウン・イベントとして。映像の演出として、ライブの後半に演奏のバックに巨大な時計の映像が映し出され、ライブ中、年が変わるその何分か前から時が刻まれて、年が変わった瞬間に・・・みたいな演出が付けられていて、前回よりももっと細かくステージ上でのタイムテーブルが切られていたのだけれど、ゲネプロなどもちろん出来ないのでまたもやぶっつけ本番。開演はJUBE、Killer-Bong、田我流、大谷がテーブルを囲んでカードゲームをしながら一人一人フリースタイルをかまし、何周かしているうちにテーブルの上に頭上から大きな肉の塊が落下して、それをきっかけにテーブル下から野澤健が這い出してきて演奏がスタートする、と言った感じだったと思う。スガダイローがトイピアノを持ってぶらりとステージに現れたり、いろんな風に細かい仕掛けが散りばめられて、実際ライブは前回よりもかなり「オペラ」風な舞台になった訳だが、さらに増加した総勢二十名以上の出演者が入り混じって、忘年新年の高揚感とともに、バックヤードの混乱ぶりは前回に輪をかけて凄まじかった。この回もよく無事に終わったなと思わざるを得ない。

このように、BLACK OPERAは単なるライブではなく、綿密な仕込みが必要な、会場側との緊密な連携が必須である「作品」であって、さすがにもう簡単には出来ない/やらないだろうなー、と思っていたら、なんとGoethe-Institut Tokyo東京ドイツ文化センターからの協力によって新作『Hole On Black』を制作発表することが出来るという話になった。これが昨年のことですね。会場をGoethe-Institut Tokyo東京ドイツ文化センターのホールに移し、前夜祭も含めて三日間、今度は設営の時間もある程度は余裕があるぞ・・・と思っていたら、関係者全員がおそらくそう考えて予算とスペックをフルに使った装置と演出を用意してきたものだから、結局またしても本番の準備はパンパンで、しかし、鎮座DOOPNES、呂布カルマ、マヒトゥ・ザ・ピーポー、ermhoi、ENDONといった初参加陣もライブは絶好調。スガダイロートリオの演奏をステージのコアに置き、随時そこにトラックを導入するといった音楽の方向性も功を奏して、多彩ながら統一感のある舞台を作ることが出来たように思っている。集客にも恵まれて充実したステージだった。

さて、今年である。出演者は前回よりもさらに増加している。いい加減にしろという程の豪華さだ。美術と映像も、おそらく懲りずにまた前回と同じように、凝りに凝ったものになることが予想される。3ステージほど一緒にやってみて心底わかったのだが、ほどほどにやる、ということがそもそも出来ない人たちばかりの集まりなのである。一騎当千、それぞれ一人一ジャンルのメンツが入れ替わり立ち替わり全力を尽くす姿を目撃して欲しい。前回の感想として「超人オリンピック」(キン肉マンですね)というものがあったが、今回は果たしてどうなるか。BLACK OPERA初の導入となる「俳優」の存在にも注目したい。ベルリンの壁の崩壊から30年。1世代が回って、現在わたしたちは皆、ポケットの中に液晶で出来た「壁の欠片」を持っている。その壁の欠片は、わたしたちに「あらたな分断」をもたらすのか。それとも、団結と協力の記憶を支えるツールとなるのか。歌と言葉、ダンスと映像で綴られるハイブリッド現代劇の開幕です。

Info

BLACK SMOKER × Goethe-Institut Tokyo present
BLACK OPERA - 鈍色の壁 / ニブイロノカベ

■会場: ​ゲーテ・インスティトゥート 東京ドイツ文化センター ホール(東京都港区赤坂7-5-56)
■WEBSITE:​ ​http://blackopera.jp/
■日時・プログラム内容

11/14(木)OPENING PARTY I - TALK & MOVIE SCREENING -

●映画上映 / MOVIE SCREENING
『B-Movie: Lust & Sound in West Berlin 1979-1989 』(​予告編​) 『BLACK OPERA 2018 - Hole on Black-』(Short Documentary)

●TALK
『技術の誤用から生まれる音楽』Music from Misuse of Technology 城一裕(研究者、アーティスト〈九州大学/YCAM〉)
伊東篤宏 (美術家、オプトロンプレイヤー)
●DJ​: Compuma
●FOOD​: クロメシ (黒煙米使用)
●TICKET:​ [座席] ¥ 1,000 e+:​https://eplus.jp/sf/detail/3082860001-P0030001

11/15(金)OPENING PARTY II- MAZEUM meets Unsound-

●LIVE
BNNT​(from Poland) 空間現代
山川冬樹 × スガダイロー 角銅真実
●DJ​: MOODMAN, 7e, suimin ●FOOD:​ 壬生 モクレン (Kyoto)
●TICKET:​ [立見] Adv ¥ 3,000 / Door ¥ 3,500
e+:​https://eplus.jp/sf/detail/3082870001

11/16(土)『BLACKOPERA -鈍色の壁/ニブイロノカベ-』本公演

昼公演:Open 13:00/Start 14:00 夜公演:Open 18:00/Start 19:00
■出演
KILLER-BONG、JUBE、スガダイロー、伊東篤宏、山川冬樹、志人 (降神)、RUMI、鎮座ドープネス、Jin Dogg 、荘子it (Dos Monos)、切腹ピストルズ、マヒトゥ・ザ・ピーポー、コムアイ、折坂悠太、テンテンコ、波多野 敦子、千葉広樹 (KNTC)、藤田陽介 、角銅真実、VELTZ、ANTIBODIES Collective、益山寛司 (劇団 子供鉅人)、 菅佐原真理、rokapenis、中山晃子

●DJ:​ L?K?O、AKIRAM EN、DJ SOYBEANS
●FOOD:​ IROHA
11/17(日)『BLACKOPERA -鈍色の壁/ニブイロノカベ-』本公演 Open 15:00/Start 16:00
■出演
KILLER-BONG、JUBE、スガダイロー、伊東篤宏、山川冬樹、志人 (降神)、RUMI、鎮座ドープネス、OMSB、 荘子it (Dos Monos)、切腹ピストルズ、マヒトゥ・ザ・ピーポー、コムアイ、折坂悠太、テンテンコ、波多野敦 子、千葉広樹 (KNTC)、藤田陽介 、ermhoi、VELTZ、ANTIBODIES Collective、益山寛司 (劇団 子供鉅人)、菅佐 原真理、rokapenis、中山晃子
●DJ:​ L?K?O、AKIRAM EN、DJ SOYBEANS
●FOOD:​ IROHA
●TICKET:​ [座席] Adv ¥ 4,500 / Door ¥ 5,000 [立見] Adv ¥ 3,000 / Door ¥ 3,500 e+:​https://eplus.jp/sf/detail/3082910001-P0030001
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BLACK SMOKER × Goethe-Institut Tokyo present
Direction by BLACK SMOKER, Atsuhiro Ito, rokapenis Production by BLACK SMOKER
Movie by rokapenis, Akiko Nakayama
Graphic Design by Kousuke Kawamura
Graphic Image by Akiko Nakayama
Audio Engineer by Hiromi MIzoguchi Nancy
Lighting by Masateru Numasaki
Stage Art by OLEO, Atsuhiro Ito
Stage Design by So Ozaki
Website by Daiki Sugimoto
Costumes by Megane
Text by Yoshio Ootani
Promotion by Yuko Asanuma
Supported by Arts Council Tokyo, Tokyo Metropolitan Foundation for History and Culture

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