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【スペシャルライヴレポート】 ANARCHYのツアーファイナルにMACCHO、般若、SEEDA、AKLO、IO、T-Pablow、AwichからKOHHまで集結

ANARCHYが6月12日に東京・EX THEATER ROPPONGIでスペシャルライヴ「ANARCHY “THE KING” TOUR SPECIAL -Supported by Bitsmith-」を行なった。これは3月21日の大阪・THE PINK公演からスタートして全国16箇所を回ってきた「ANARCHY “THE KING” TOUR」を締めくくるライヴ。場内は若い男女のヒップホップファンで埋め尽くされた。

取材・文 : 宮崎敬太
photo by Cherry Chill Will

客電が落ちると3月13日にリリースされた最新アルバム「The KING」の冒頭を飾る楽曲“The KING”のイントロへとつながるピアノソロが。怒号のような歓声がステージ幕の後ろに立つ男に向けて浴びせられる。薄いスモークの中でライトに照らされたANARCHYは“KING”の風格を漂わせる。そして幕が落ちついに登場したANARCHY。1曲目から大合唱。今回のアルバムは若手、中堅、ベテランを問わず、現在の日本のヒップホップシーンで飛び抜けた存在感を放っているラッパーをフィーチャリングしている。“The KING”の「般若とか漢やクレバじゃない / AK マッチョ ジブラでもない / KOHHやPABLOWにはちょっと早い(この日は「100年早い」と言い換えた) / 文句あったら電話ちょーだい」はANARCHYしか言えない。今回のバックDJはYEN TOWNのU-LEE。2曲目もアルバムと同じく「Run It Up」。客演のMIYACHIが登場して、違和感のある日本語と流暢な英語ぐちゃぐちゃに混ぜたラップを披露する。


続いてANARCHYは観客に向かって「ラッパーになりたい人はどれだけいる?」「一番の近道を教えてあげる。ANARCHYを殺せ!」と“Kill Me”がスタート。この曲のテーマは仁義なきマイク稼業だ。客演は般若。『フリースタイルダンジョン』の元ラスボスがタイトなラップで観客を大いに盛り上げる。その余韻に浸る間もなく次の曲へ。ANARCHYは「みんなを俺の地元に連れて行っていいかな」と“Where We From”に突入。PVにもなったアルバム屈指のハーコーチューンだ。観客はフックの「motherf*cker」で大合唱。さらに中盤にはT-Pablow(BAD HOP)もステージに登場する。細かくたくさんの言葉を詰め込むフロウはさすがの一言。彼の地元である川崎南部にちなんだフック「Southside motherf*cker」にも熱がこもった。そしてU-LEEが“Dirty Work”のイントロを流すと次はAKLOが現れる。ANARCHYは「マイメンAKLO」と紹介。日本語ラップでも指折りのフロアバンガーが投下されると、観客は楽しすぎてもみくちゃになるほど盛り上がっていた。



「ANARCHYのライヴはめっちゃ楽しいやろ? 今日はスペシャルなラッパーがいっぱい来てるし、(これから)もっと楽しくなるよ。俺がみんなに見せたいと思うラッパーがみんな集まってます。さすがでしょ? ステージの上では王様なんで、俺。(ステージを)降りるとクソやけど」と笑う。次の曲は“The Professional”。客演はDef Jam Recordingsからアルバム『Player's Ballad.』をリリースするIO(KANDYTOWN)だ。日本人離れしたセクシーな雰囲気を放つIOにANARCHYも「ヤベーよ、好きになっちゃうよ」と絶賛する。

アルバムの流れでいくと次の曲はANARCHY主宰のレーベル/プロダクション「1%」の若武者・Leon Fanourakisをフィーチャーした“Shine In The Life”。彼がパイセンに呼ばれて来ないわけがない。大舞台に臆することなく堂々としたパフォーマンスを披露する。さらにANARCHYは一旦退場。ステージを任されたLeonは、1%からリリースしたアルバム『CHIMAIRA』から“Guerilla”“Bounce feat. SANTAWORLDVIEW”をパフォーマンスした。

ステージが暗転すると、セクシーな衣装にピンヒールを履いたAwichが現れる。暗闇の中で“Loca”の冒頭をアカペラで歌いだすと、一瞬静まり返って観客がこの日の紅一点の声を聴き入った。するとANARCHYが衣装を変えて再びステージに。「恋人との寸劇を思わせる掛け合い“Loca”で中盤戦がスタートした。AwichとANARCHYが揃ったら、もちろん“あの曲”が聴きたい。そう、Awich “WHORU? feat. ANARCHY”だ。当然のことながら、この曲は盛り上がり倒す。

アルバムの曲順だと次に登場するのはOZROSAURUSのMACCHOだ。しかしANARCHYは「一応声かけてるけど、本当に来てくれるかな? 一番心配なんだ……」と発言。U-LEEがウエッサイバイブス満タンの“Rollin'”を鳴らして、ANARCHYは自分のヴァースをラップし終える。そこでようやくMACCHOが登場。迫力満点のラップで観客をがっちりロックした。ANARCHYは「俺が最初に名前を挙げる日本人のラッパーがオジロのMACCHOだ。今日はこれだけ覚えて帰ってくれ」とリスペクトを示す。そしてMACCHOに「俺、“あの曲”を一番近くで聴きたいし、一緒に歌いたい。それが俺の夢なんです」とお願いする。MACCHOが快諾するとANARCHYが「WHOOO バイブスは満タン!」と歌いだす。そう。2001年に発表された日本語ラップクラシック“WHOOO”だ。しかもこの日はANARCHYも加えたスペシャルバージョン。ヘッズは泣くしかない瞬間だった。自身のルーツを垣間見せたところで、ANARCHYは懐かしのナンバーを披露。“Growth”、“Fate”、“Playing In The Ghetto”で観客は全ヴァース大合唱していた。

次に鳴り響いたのはレゲエのクラシックである、ホレス・マーティンの“Unity”だ。この曲をサンプリングした曲は“Moon Child”。avexに移籍第一弾のアルバム『NEW YANKEE』に収録されている。この曲の客演はKOHH。『The KING』の参加メンバーではないがまさかKOHHがやってくるのか。観客はやきもきしながらANARCHYの1ヴァース目を見守る。するとステージ袖からKOHHがすさまじいバイブスで登場する。会場にいたほとんどの人間が、予想外のゲストに驚きを隠せない。ANARCHY曰く「MACCHOの次に来てくれるか不安だった」とのこと。そして般若も加わり、KOHHのクラシック“Fuck Swag (REMIX) feat. ANARCHY, 般若”を聴かせてくれた。

「いろんなヒップホップが生まれることは俺、すげーいいことやと思う。ただ……『それアリなん?』っていうのもいっぱいあるよね。別にいいねん。俺は文句言うつもりないねん。ヒップホップはヒップホップやから。ルールなんてないから。でもさ、それアリなん?」と話して“Yes or No”に突入する。イルなバイブス全開のSEEDAは、B*tchと合いの手を入れまくる。ステージを右に左に動き回って徐々にテンションを高め、フックに突入すると突如客席にダイブ。それを見たANARCHYは「これはアリ」と笑う。曲が終わると「あいつはマジでイカれてる」と賛辞を送った。続く“Brand”もイルだった。客演のJin Doggはなんと客席から登場する。若手MCの中では飛び抜けた存在感を放つ彼のパフォーマンスはクレイジーそのもの。日本のMCたちはみんな最高で面白い。“Spend It”ではYoung Cocoがオートチューンをバリバリに効かせて歌う。この曲は音源よりもライヴの方が危険な雰囲気が漂っている。

そうこうしているとライヴもあっと言う間に終盤戦。豪華客演陣のラストを飾ったのはWILYWNKAだ。彼はANARCHY自身がファンと公言している1%のメンバー。『The KING』収録曲“Lucky 13 feat. WILYWNKA”の前に、ANARCHYが好きだというWILYWNKAのソロ曲“Rapper's Flow”を2人で歌った。絶妙のコンビネーションを経て“Lucky 13”でライヴ本編を締めくくった。

ここまで約1時間40分。観客はこのライヴであまりにいろんなことが起こりすぎたため、やや呆然としてしまい、すぐにアンコールをすることができない。だがまばらにコールが生まれ徐々に大きくなると、それが一つに収斂していく。そして再びANARCHYが登場。自身のルーツを綴った“K.I.N.G.”、ゼロからスタートしたキャリアを振り返る“Right Here”を歌った。この日のライブはスマホでの撮影は禁止されていたが、ANARCHYは「次の曲だけ撮っていいいよ」と撮影を解禁。そして最後に日本のヒップホップへのリスペクトを込めた“Loyalty”を歌った。この曲には日本語ラップシーンで活躍するさまざまなラッパーの名前が出てくる。ライヴの冒頭で「今日から俺が王様」と歌っていたが、そこには彼の日本語ラップに対する猛烈な愛情が込められている。この「Loyalty」は2013年に無料配信されたアルバム「DGKA (DIRTY GHETTO KING ANARCHY)」の収録曲だ。この日披露したバージョンでは、リリース時にはシーンにいなかったBAD HOPやWILYWNKAにLeon、さらにSCARSやRUFF NECKへのシャウトも含まれていた。


ANARCHYの思いは“Loyalty”のリリックにある「今の日本語ラップ全部やばーい / Sceneは俺達で盛り上げる / お客さんは楽しむだけでいい」に尽きる。このライヴを観て、それは間違いないと確信した。日本のヒップホップはヤバすぎる。

INFO

ANARCHY「ANARCHY “THE KING” TOUR SPECIAL -Supported by Bitsmith-」
2019年6月12日(水)東京都 EX THEATER ROPPONGI
01. The KING
02. Run It Up feat. MIYACHI
03. Kill Me feat. 般若
04. Where We From feat. T-Pablow
05. Dirty Work Remix feat. ANARCHY / AKLO
06. The Professional feat. IO
07. Shine In The Life feat. Leon Fanourakis
08. Guerilla / Leon Fanourakis
09. Bounce feat. SANTAWORLDVIEW / Leon Fanourakis
10. Loca feat. Awich
11. WHORU? feat. ANARCHY / Awich
12. Rollin' feat. MACCHO
13. WHOOO feat. ANARCHY / OZROSAURUS
14. Growth
15. Fate
16. Playing In The Ghetto
17. Moon Child feat. KOHH
18. Fuck Swag (REMIX) feat. ANARCHY, 般若 / KOHH
19. Yes or No feat. SEEDA
20. Brand feat. Jin Dogg
21. Spend It feat. Young Coco
22. Rapper's Flow feat. ANARCHY / WILYWNKA
23. Lucky 13 feat. WILYWNKA
<アンコール>
24. K.I.N.G.
25. Right Here
26. Loyalty

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