昨年よりトランプ大統領の支持を表明し、「ヒラリー・クリントンの政策には男性として共感できない」と女性蔑視的な意見を披露したことで失望を広めたKanye West。そんな彼が、またもや物議を醸しそうな発言を行っている。
Pitchforkによると、人気トーク番組『David Letterman Show』への出演が決定しているKanye Westは、#MeToo運動について「俺たちの社会は常に恐怖に晒されている」と発言したという。これを聞きとがめたDavid Lettermanは「あなたが言及した恐怖とは男性の側にとっての物ですよね。それは、女性が抱えている恐怖とは絶対に平等ではないものです」と反論。それに対しKanyeは「俺は女性を全面的に支持するよ。俺が言いたいのは、俺たちには対話が許されていないってことなんだ。裁判所では両方の側が話すことが出来るだろ。世論という名の裁判所では、誰かが最初に爆弾を落とせば議論が終わってしまうんだ」と返答している。
XXLの記事にある通りKanyeは昨年のアルバム『Ye』に収録された“Yikes”の中で#MeTooの流れで性暴力を告発されたRussel Simonsに対し「Russell Simmons wanna pray for me too, I'ma pray for him 'cause he got MeToo'd /Thinkin' what if that happened to me too/Then I'm on E! News(Russel Simonsも俺のために祈るだろう/俺は彼のために祈る、#MeTooされたからだ/俺の身に起こったらどうなるだろうって考えてる/それで俺は“E! News”に出るんだ)とラップし、告発を受けることに対する恐怖を明かした過去がある。
広く知られる通り#MeToo運動は女性が受けたハラスメントや性暴力を公の場で告発するという運動だが、告発を受けたハリウッドセレブが社会的に重い処分を受けたことで男性側からネガティブな反応が出る事例がしばしば存在する。しかし、男性と女性の間に明らかな格差が存在し多くの女性がハラスメントや性暴力の被害に苦しんでいる現状がある以上、Kanyeだけでなく男性がしばしば口にする「息苦しい社会になる」や「男性が恐怖に晒される」といった意見は的外れと言う他ない。恐怖や息苦しさは女性が常に抱えてきた感情だからだ。
先のKanyeの意見を受けたDavid Lettermanは「これらの教訓は時間をかけて学ばれ理解されてきていますが、将来の啓蒙によって、女性を恐怖させない異性間の友好の表現が生まれることでしょう」と#MeTooをはじめとする運動の意義について語っている。#MeTooをはじめとするフェミニズムの運動は男性がこれまで当たり前のように行ってきた女性との会話や関係について再考させるきっかけとなるものであり、反射的に恐怖や息苦しさを主張する前に自身や社会における男性が抱える問題について考え直すことが建設的な態度と言えるだろう。
番組が放送される頃には今以上に議論を呼びそうな今回のKanyeの発言。既に公開されている『David Letterman Show』のトレーラーはこちらで観ることが出来る。