FNMNL (フェノメナル)

1 of 2018 Selected by UMMMI.

FNMNLの恒例の年末企画、今年は『1 of 2018』を展開。この企画はアーティストやDJ、デザイナー、ショップオーナーなど今年を彩った重要人物たちに、個人的に印象的だった出来事、楽曲、映画、本などから1つテーマを自由に決めてもらい紹介してもらうもの。ベストなものから中にはワーストなものも飛び出すかもしれない、この企画をきっかけにそれぞれの2018年を振り返ってみては?

映像作家/アーティストのUMMMI.による2018年。

UMMMI.の2018年の最高だったパーティー

『Part Time Raver #1』

コメント

初めての土地で手探りのようにパーティーに行きまくっていたけれど、いまだに夢のように思い出してしまうパーティーは、今年の10月にロンドンのFive Milesで開催されたPart Time Raver #1のこと。開催されたっていっても大きなパーティーではなく、おそらくオーディエンスは50人もいなかったし、小さいクラブというか四角い箱の中の出来事のことである。

観客がアタシしかいないオープンのDJ、Body Motionは会場をあっためる気なんてさらさらなく、ひたすらアッパーな曲を流し続ける。しばらく前に東京で観たぶりの、台北からのMeuko Meukoは真っ黒のサイバーな服に身を包んでハードコアなノイズをひたすら垂れ流す。Lizztskyはガバとテクノを行き来しながらこんなに熱い会場なのにMA-1を着込んで無表情のまま誰よりも会場を攻め続ける。そして彼らがプレイしている間、Gabber Eleganzaは彼らの横にそっと寄り添って、片手をあげて涼しそうな顔で持参のうちわを仰ぐ。それはまるでパーティー全体の指揮者みたいで、会場にいるみんなが、ちゃんと取りこぼしなく遊べるように、心と身体の底から湧き上がるパワーを安全かつ素晴らしい方向に導くための、シラフの人だけが使える魔法みたいだった。

一瞬のようにしか思えないあの夜のことをどうにか思い出そうとすると、なぜだかDJブースの内側に設置された大型の扇風機のことを考えてしまう。4時すぎにトリのGabber EleganzaのDJが始まると、おそらくアタシよりも年下だろうめちゃくちゃ若いガバキッズたちがDJブースの前を陣取り始める。アタシもDJブースの前に行く。扇風機の風が顔にあたって心地いい。ガバのハイトーンで速いシャリシャリした音と、顔にあたって反射した風がうねるようにして耳に入る。アタシも、オーディエンスも、しじゅう興奮状態だった。こんなに一体感があって指揮者がいる(!)パーティーは生まれてはじめて。Gabber Eleganzaは完全に夜の・ハードコアの・大先生だった。音が鳴り止んだときも、興奮が隠せなくて、本当に終わりなの?!と思った。音が鳴り止んだことに混乱していると、目の前のガバキッズが叫び出す。「ダークミレニアムすぎる!」そして音が鳴り止んだのにまだ呆然とフロアに立ち尽くしているアタシの耳元に向かって叫ぶ「終わりがくるなんて信じられるかよ!」ほとんどのオーディエンスが最後までDJブースの前から離れなかったことがびっくりした。途中で酒なんて買いにいかずに、友人と話したりせずに、奇跡を探したりせずに、音の鳴っている1分間をもっと大切にすればよかった。そんな魔法みたいな夜。

2018年を締めるべきパーティーは、最近ずっと好きなBlocというクラブでYear0001 vs Trance Partyと題されたイベントに行こうと思ってる。(この間はBlocでThe Death of Raveのパーティーがあって、ほとんどのオーディエンスが黙々と踊っていて、荘厳だった。このパーティーもめっちゃよかった。)このBlocで新年にプレイする90年代のアムステルダムのハードコアガバシーンを20代で過ごした1971年生まれのDJ Waxweazleが今からめちゃくちゃ楽しみで、2018年に最高だったパーティー Part Time Raver #1を振り返りながら、最近はずっとこのMIXばかり聴いてしまう。

2019年の告知

3月 新作ヴィデオインスタレーション展示 at スパイラル青山
4月 新作短編映画「Janitor of Lunacy(日本題: 狂気の管理人)」英テレビBBCで放映

UMMMI.

映像作家/アーティスト
http://www.ummmi.net/

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