11/2(金)~11/4(日)の3日間、渋谷CASTでSONYの最新テクノロジーを体験できるイベント『WOW Studio』が開催された。その中の1つとしてInnovation CubeというDJブースが登場、3日間にわたり人気DJがパフォーマンスを披露した。
取材・構成 : 和田哲郎
撮影 : Marisa Suda
このDJブースにはPioneer DJ社とCOTODAMA社が共同開発した「rekordbox lyric」が使用されている。「rekordbox lyric」DJがプレイする楽曲の歌詞が、オーディエンスの前のスクリーンに映しだされる画期的な機能。ライヴアーティストよりオーディエンスとコミュニケーションを取ることが難しいDJにとって、この機能はその曲をわからなくても歌詞をその場で見ながら楽しめることで、DJがチョイスする曲の意図や、プレイ全体のストーリー性がより伝わりやすくなり、深いレベルでのDJとオーディエンスのコミュニケーションを可能とするものだ。
11/3(土)には鎮座DOPENESSをはじめ、THA BLUE HERBのDJ DYE、DJ HASEBEの3人が登場、それぞれのキャラクターを活かしたプレイで週末の渋谷を魅了した。
一番手で登場した鎮座DOPENESSは、ラッパーとしてもそのパフォーマンスが高く評価されているだけあって、初めて使用する「rekordbox lyric」を、彼らしく自由に使いこなす。トリプルファイヤーの最高の煽り曲”カモン”で、オーディエンスとのコミュニケーションを行うと、本人も「どんな感じか見てみたい」とブースからフロアに飛び出してくる。
その後もECDの「天国よりマシなパンの耳』に収録されている、警察からの職務質問の体験を落とし込んだ”職質やめて!”で、コール&レスポンスが巻き起こり、ザ・タイマーズによるトリッピーアンセム”タイマーズのテーマ”のライヴバージョンなどもプレイ。センセーショナルな歌詞の曲をピックすることで、フロアの盛り上がりを作っていった。
そのあとに登場したのはTHA BLUE HERBのDJ DYE。日本のラップチューンを軸にメッセージ性がある楽曲を中心としたプレイで、やはり際立っていたのはBLUE HERBの楽曲。Bossによるスキルフルかつ強力なリリックが映しだされると、改めてその言葉の持つ重みをDJプレイであっても、そこに本人がいるように感じられる。クラシック”未来は俺等の手の中”や”THE WAY HOPE GOES”などを巧みなプレイで織り込んだプレイは、成熟した日本のヒップホップシーンのリリックの妙を視覚で楽しめるものだった。
最後に登場したのはクラブDJとしても圧倒的なキャリアを誇るDJ HASEBEだ。近年では『CITY HIP POP MIX』というミックスCDもリリースしているHASEBEは、渋谷の街中にスイートな空気を注入するメロウな楽曲を中心にしたチョイス。これまでの2人とは一転映しだされるリリックもロマンティックなものが多く、HASEBEからフロアへのラヴレターのように感じられる。唾奇とおかもとえみが参加した自身名義の楽曲”ROOM VACATION”などをプレイしつつ、後半ではニュージャックスイングなどに展開、最後はSugar SoulとZeebraを迎えた自身のビッグチューン”今すぐ欲しい”で甘く締めくくる。
今回登場した3人のDJはヒップホップをバックボーンに持ちつつも、それぞれ全くタイプの楽曲をプレイしたことで、「rekordbox lyric」の多様なパフォーマンス性を体感させてくれた。鎮座DOPENESSはオーディエンスとのコール&レスポンスのツールとして、DJ DYEは楽曲の持つメッセージ性を理解させるもの、最後はDJ HASEBEがフロアのムードを作るものとして、それぞれ使いこなしていたのが印象的だった。
今回見た使い方以外にも、「rekordbox lyric」の可能性は無数にあるだろう。リリックがほとんどないダンスミュージックのDJといえどもアクセントに使用することで、ピークタイムを作れることもできるかもしれない。早くクラブでこの機能を体感してみたいと思わせるイベントだった。