FNMNL (フェノメナル)

【特集 朝霧JAM】FNMNL編集部がオススメする新しい可能性を感じさせる5組

いよいよ今週末10/6(土)~10/7(日)に開催される朝霧JAM。富士山麓 朝霧アリーナ・ふもとっぱらという絶好のロケーションの元で、ベテランから新鋭まで、バンドやヒップホップアクト、ダンスミュージックシーンの気鋭のプロデューサーまで、バランス良いアクトが一堂に会するのは朝霧JAMならでは。

すでに全券種完売となっている今年の朝霧JAMに参加される方のガイドになるように、FNMNL編集部がオススメのアクトを5組ピックアップ。どれも新しい可能性を感じる音楽を奏でるラインナップとなっている。

構成 : Hironori Haysaka, Akihiro Yamamoto, Tetsuro Wada

Jay Daniel

アメリカはデトロイトを拠点として活躍するDJ、Jay Daniel。デビューアルバム『Broken Knowz』の鮮烈的な衝撃は今でも覚えている。

彼は、今ではデトロイトハウスシーンの新星として世界を股にかけ活躍しているが、そんなJayが一躍注目を浴びたのは2013年、デトロイトハウスの重鎮Theo Parrishが率いるレーベルSound Signature RecordsからデビューEP『Scorpio Rising』をリリースしたときだ。その後も彼は作品をリリースし続け、着実にキャリアを歩んできた。

そして、彼がスターダムを駆け上るきっかけを作ったTheo Parrishは去年の朝霧JAMに出演しており、今年は満を持してその正当の後継者であるJay Danielが登場するというわけだ。

Jayの楽曲ー特に『Broken Knowz』に収録されている楽曲ーにはヒップホップやファンクとのクロスオーバーを感じさせるものが多い。

彼は『Broken Knowz』を制作する際に、マシンに頼った楽曲制作における感情の欠落に嫌気がさし、自らドラムスティックを握って曲を録音したという。それにより、Jayの楽曲にはハウスのフラットなビートの上に生の楽器の音が加わっているため、それこそ往年のファンクやオールドスクールを想起させる生なグルーヴが加わっているのかもしれない。このヒップホップとハウスのクロスオーバーはデトロイトの先人達の1人Moodymannなどと同じものを感じたりもする。
音楽ジャンルの境目が無くなってきていると言われている現代において、ヒップホップなどは特に他ジャンルの音楽の境目が無くなってきているといえるだろう。
例えばA$AP Rockyはニューアルバム『TESTING』でMoby、Travis Scottは『Astro World』でTame ImpalaのKevin Parkerをフィーチャーしているというようにだ。

結局、このようなクロスオーバーを実現しているアーティストに共通していえることは「常に新しいことに挑戦している」ということで、Jay Danielも同じである。前述したように、彼は今回、自ら演奏して曲を制作した。その結果として、今まで先人達が積み上げてきた伝統を重んじながらも、それをアップデートすることにJayは成功したのだ。伝統を受け継ぐことはとても重要なことだが、それと同じようなことをやりつづけては意味が無い。いかに、伝統を守りながらも革新を起こしていくか、そこを出来るのがいいアーティストだと私は思う。

JayはDJ中、体を大きく揺らしたりはしない。だがその中には確かに静かな情熱がある。その情熱をとくとご覧あれ。

KID FRESINO

日本のヒップホップシーンの中で、新たな黄金世代と言われている1993年生まれの世代。BIMやRyugo Ishidaなど輝きを放つアーティストが多く存在する中で、KID FRESINOは飄々と自身の道を開拓しているようにみえる。JJJやC.O.S.A.といった盟友に恵まれつつも、探究心が尽きない彼は、最近ではSeihoとのコラボライブセットでは、ダンスミュージックのエナジーを注入したステージを披露、さらにEP『Salve』から開始したバンドとのセットや制作でも、これまでのヒップホップにおけるバンドがジャズやソウルの方角を目指したのとは違い、独特のフラットなグルーヴ感を追求したサウンドを展開している。

またバックDJも務めるDJ CH.0とのDJイベント『Off-Cent』ではハウスをはじめとして、ヒップホップと様々なダンスミュージックのブレンドを試みており、本稿でも紹介したデトロイトハウスの新鋭Jay Danielや、謎のプロデューサーGrantなどをフェイバリットにあげている。

越境的な動きを続けているようにみえるFRESINOだが、その動きはヒップホップの外に出る試みというよりも、ヒップホップにおけるオルタナティヴを模索し続ける動きのように感じられる。ということはそれはヒップホップが根源的に持っていたもの、既存のものをズラしていくことで、新しい何かを発見するというものを現代的にアップデートしているといえるだろう。

近日リリース予定のニューアルバム『 ài qíng』はディレクションを自身で行い、三浦淳悟(bass / ペトロールズ)、 佐藤優介 (keyboard)、斎藤拓郎(guitar / Yasei Collective)、石若駿(drum)、小林うてな(steelpan, Chorus)という強力なバンドで制作した楽曲が中心に収録される。さらにBACHLOGIC、VaVaというビートメイカーに加えSeiho、ケンモチヒデフミという名も見ることができる。そしてゲストには盟友JJJ、C.O.S.Aを筆頭にCampanella、5lack、ISSUGI、鎮座DOPENESS、ゆるふわギャングのNENEとRyugo Ishidaという個性的なラッパーたちが控える今作は、FRESINOが追求してきた新たな可能性を感じることができるものとなっているはずだ。

同作のリリースを前に、新しい可能性を感じさせるアーティストが揃った朝霧JAMの舞台はFRESINOを歓待するだろう。

Snail Mail

わずか16歳にして作り上げたEP『habit』でインディーロックファンから大きな注目を集め、今年の6月に待望のデビューアルバム『Lush』をリリースしたSnail Mail a.k.a. Lindsey Jordan。

90年代オルタナティブロック、ローファイUSインディーと通じるサウンドと繊細かつストレートな歌詞は、グランジやエモのファンなら好きになること請け合いだ。インディーロックファンには言わずと知れた名門レーベルMatadorに所属していることからも、彼女がローファイの系譜を正当に受け継いでいることを感じさせる。

Snail Mailの音楽は生々しいフィーリングに満ちている。「思春期特有の〜」「10代の〜」と括られがちな彼女だが、人間関係の軋轢、叶えられない欲望、漠然とした不安感などの普遍的な感情をストレートに描き出す楽曲は誰もが共感出来るようなものだ。代表曲“Pristine”の「あなたが私の元を去っても、私は他の誰も好きにならない」という歌詞は確かに若さから来るものだろうが、過度なエモーションを抑えることで不思議な諦念をも感じさせる同曲のバランス感覚はむしろ老成しているとさえ言えるだろう。

脱力したラフなギターサウンドはSonic Youthや今回の朝霧JAMにも出演するYo La Tengoを彷彿とさせるが、Liz PhairやAvril Lavigneをルーツに持ちPrincess Nokiaをフェイバリットに挙げる彼女ならではのキャッチーなメロディが楽曲の独特なバイブスを作り出す。

抜けるような力強い歌声と爽やかなバンドサウンドは朝霧JAMのような野外フェスにぴったりだろう。

Tennyson

LukeとTessによるカナダの兄妹ユニットTennyson。Ryan Hemsworthのレーベル「secret songs」からデビュー、Skrillexにフックアップされたことで一躍その名を世界に知らしめた二人が、今回の朝霧Jamで二度目の来日を果たす。

Tennysonの音楽を一つのジャンルに当てはめることは難しい。エレクトロニカやジャズ、フューチャーベースを通過しオリジナルなポップミュージックを作り続けている彼らはSoundCloudシーンを出自に持つが、ベッドルームミュージック的な内向性を感じさせないその楽曲たちを一口に「インターネット音楽」と括ることは出来ない。例えば“Fault Line”において使用されているサンプルやフレーズはフューチャーベースの文法を踏襲したものであり、上手くいかない恋人同士を描いたリリックとキュートなサウンドには確かにインターネット的かつナードなセンスが見え隠れする。

しかし、それぞれピアノとドラムの技術に長けた二人の作り出すグルーヴの身体性によって、彼らの音楽はSoundCloud上に存在する多くのエレクトロニカやFuture Bassと一線を画す物になっている。兄のLuke TennysonはChance The Rapperの弟であるTaylor Bennetの“Favorite Colors”をプロデュースしており、ヒップホップファン的にも注目の存在と言える。

幼少期からジャズをプレイし続けて来たという二人はかなりテクニカルなライブパフォーマンスを披露するが、決してそこに耽溺しないチャーミングさが彼らの最大の特徴だろう。兄Lukeのシンセ使いと妹Tessのドラムによって生成される人力エレクトロは一見の価値あり。

J.Rocc

 

ここまでは新しい可能性を感じさせるアーティストたちを紹介してきたが、最後の1人は確実に安心して楽しめるパフォーマンスを繰り出すアーティストだ。南カリフォルニアが生んだ天才的なDJのJ.Roccは、92年にBabuやRhettmatic、Melo Dなどと共にターンテーブリストクルーThe Beat Junkiesを結成、ターンテーブリズム全盛期に華々しい記録を残している。ITFチーム・ワールド・チャンピオン2連覇などを成し遂げたThe Beat Junkiesの面々たちはその後は個々の活動へとシフトしていき、J.Roccは間違いないスキルと貪欲な探究心で、様々なジャンルのディグを行いJames Brown関連楽曲だけで構成されたミックスCD、『JAMES BROWN & FRIENDS』などコンセプチュアルなミックス作品を次々と発表していきファンやディガーたちの首を問答無用で振らしている。

現在ではDr DreとApple Musicによるラジオ番組Beats 1 Radio 『The Pharmacy』のレジデントDJに就任するなど活動の幅をさらに広げているJ.Roccは、もちろんここ日本でも所属するレーベルStones Throwのレーベルショーケースをはじめとして、何度も来日を果たしてきたが、今回はディスコ・ハウスセットということで、ファンキープレジデントの名にふさわしいワンアンドオンリーなダンスミュージックのプレイを体感できるはずだ。

Info

It’s a Beautiful Day~Camp in 朝霧JAM
10月6日(土)~ 7日(日)富士山麓 朝霧アリーナ・ふもとっぱら 
開場・キャンプ開始:10月6日(土)10:00~
開演:10月6日(土)14:00~
終演:10月7日(日)20:00  予定
キャンプ終了:10月8日(月)11:00 ※指定キャンプサイトに限る

http://asagirijam.jp

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