タイ生まれのニュージーランド育ち、現在は再びタイにもどりバンコクを拠点に活動する22歳のシンガーソングライターPhum Viphurit(プム・ヴィプリット)が音楽ストリーミングサービスAWAでプレイリスト『BYE BYE ANXIETY』を公開した。
Text:Toru Miyamoto
Photo:Toru Miyamoto
Phumは、2017年にクラウドファウンディングで制作したアルバム『Manchild』に収録された"Long Gone"のMVが、公開から半年で200万再生を超え、今年3月に公開された"Lover Boy"のMVはすでに500万再生を超えるヒットとなっている。
天性のボーカルとフォーク、インディーロック、ソウルなどを取り込んだハイブリッドな音楽性が話題になっているPhumは、日本でタイのヤングスターと呼ばれていると伝えたら、こう返答した。
「そんな呼ばれ方をされてるんだ。全然、ヤングスターじゃないのに(笑)」と笑い飛ばすPhum。
「幼少のときから、お母さんが聴いてた音楽で育ったんだ。マイケル・ジャクソンやホイットニー・ヒューストン、ジョージ・ベンソンとか。そういう曲を使って、お母さんの前でDJみたいなことをしてたよ。少し大きくなってからは、MTVを見始めて、たくさんのMVで、いろんな音楽を知って。16歳か17歳のときに楽器をやり始めたんだ。最初はドラムで、次にギター、そのあとドーターやヤング・ザ・ジャイアントのカバーをやったりもしたよ。そういう経験をしていって、自分ひとりでできなかった曲作りが、今では作詞作曲もひとりでできるようになったんだ」
と音楽に触れるきっかけについて話してくれた。母親の影響で80年代の音楽を聴いていたのが、今のPhumの音楽に取り込まれているのか、さらに音楽以外にも、その影響があるように伺える。インタビュー当日に着ていた服も古着のナイロンジャケットに、ReebokのヴィンテージTシャツ。話題となった"Long Gone"のMVには、CASIOのカセットプレイヤー、G-SHOCKの腕時計、古着のオーバーオール、CONVERSEのスニーカーなどが登場している。
「気づいてくれて嬉しいよ。"Long Gone"のMVに出てるカセットプレイヤーはお母さんのもので、それ以外はすべて私物なんだ。あのMVは90年代からゼロ年代初期の雰囲気を出したかった。高校のときから、レトロなものには興味があってさ。服も古着屋やリサイクルショップで、いつも買ってるよ。これはもう世界にひとつしかないって気持ちになって、すごいハッピーになるんだ。今日着てる服も古着屋で買ったよ。お母さんが聴いていた音楽で育ってるのが影響してるのかもしれないけど、オールドなものが好きなんだ。そういう要素を自分の音楽に取り込んでるよ」
自身の影響源を明かしてくれたPhumにとって、印象的な楽曲はやはりブレイクのきっかけとなった"Long Gone"なのだろうか。
「印象的な曲で言ったら、やっぱり"Long Gone"かな。アルバム『manchild』を9曲くらい作り終えたあと、だいたいの曲がフォーキーな感じだったんだけど、ちょっと違うことをしたいなって。それで、ルーパーエフェクターを使って曲を作ってみたんだ。MVも作って、SNSで紹介したら広がっていったっていう経緯があったから、1番印象に残ってるよ」
来日するのは今回が初めてだったのだろうか?
「日本で演奏するのはもちろん、来るのも初めてだよ。だから、来日公演が決まったときは、すごい興奮したんだ。夢が叶った感じ。前から日本の映画やアニメ、文化に興味があって、アニメの『ナルト』はすごい見てたし、『鉄拳』っていうゲームもすごいやっててさ。建物やファッションとかも、すべてかっこいいと思う。食べ物も美味しいよね。昨日は夕食に道玄坂にあるラーメン屋、七志を食べたんだけど、すごい美味しかった。あと、日本のタワレコにも行ったよ。日本にはCDっていうフォーマットがまだ人気があって、タワレコ行けば買えるし、日本の音楽ファンは他の国と違って、音楽を献身的に聴いてくれてると思う」
今回AWAで作成したプレイリスト『BYE BYE ANXIETY』についても聞いてみた。
「この提案はすごく嬉しかった。音楽を聴くのが好きなので、このプレイリストを楽しんでくれたら良いなって思ってるよ。プレイリストはタイのラジオ局で作ったことはあるんだけど、それ以外ではAWAが初めて。今回、作ったプレイリスト『BYE BYE ANXIETY』は、心配とかバイバイって意味で、自分が聴いてリラックスする音楽を選曲したよ。見えないかもしれないけど、ストレスを抱え込みやすくて(笑)。だから、このプレイリストはチルっぽい音楽が多いと思う。日本はどうなのか分からないけど、CDを買うことをなかなかしなくなって、音楽に対してお金を払うこともしなくなってるけど、ストリーミングは音楽を聴くこと自体も便利だし、それによってアーティストをサポートすることにも繋がってるし、良いことだと思う」
「大学の課程が全部終わっていて、あとは卒業するだけで。時間がたくさんあるので、音楽を作る時間に費やそうと思ってる。今年の終わりまでには新しいアルバムを出したいな。今後はアメリカやヨーロッパのツアーも行きたいし、またアジアツアーもしたいと思ってるよ」と最後に今後の展望について語ってくれている。