その衝撃の余波が収まりそうにもないChildish Gambinoの新曲"This Is America"のミュージックビデオ。同曲については昨日コレオグラファーのSherrie Silverが語るビデオ制作の裏側を紹介したが、Gambinoのクリエイティブディレクターを務め、ビデオのプロデューサーの1人であるIbra Akeが、ラジオ局 WNYCのインタビューに登場。制作の意図について話している。
Akeは黒人のクリエイターの自分たちの主張は、白人中心の構造になっているメディアでは疎外化されており、これまで作られてこなかったようなものを作ることにチャレンジしたと述べている。
さらにAkeは、「ビデオでは黒人の感情、暴力的な感情を、楽しい感情に還元している」と、ビデオ内の享楽的にみえるダンスシーンは、暴力的な感情と紙一重であることを示した。またAkeはビデオ内のショッキングな殺害シーンの記憶は、「黒人として生きる限りトラウマとして刻み付けられている」ものだとも話している。
Akeは南アフリカのダンスなどがビデオでフィーチャーされていることについて、「私たちのゴールは黒人の経験を標準化するもので、それを編集し見せようとは思っていなかった」と述べている。政治性や黒人の歴史などをコンテクスト化し、他者に説明するものではなく、「私たちがただ存在すること、私たちが、人間として検閲されずに存在するのを見せること」を目的にしたミュージックビデオであると、Akeは語った。
Akeの言葉をそのまま受け取ると、このビデオから読み取れるコンテクストは副次的なものであり、重要なのは黒人の身体性や存在のこれまでにない表出であるということになる。"This Is America"のビデオは関係者の発言によりさらに様々な議論が喚起されていきそうだ。