ある特定の場所から発生したトレンドは、どのように広まっていくのかをハンガリーのブダペスト大学のチームが、PSYの大ヒットチューン"江南スタイル"を元に研究した結果を発表した。
このチームによれば中世の流行病、例えば14世紀に3500万人から2億人が死んだと言われている黒死病は、波状のパターンによって広まっていった。しかし20世紀に入ると、飛行機の普及により、波状に広まっていくパターンは少なくなり、突然別の場所に流行病が飛び火していく可能になってしまったのだ。
しかし現在のネットワーク理論家たちは、インターネット上においての流行のあり方が中世の流行病の広まり方と似ていると仮説を立てた。
そのパターンにぴったりと当てはまるのがPSYの"江南スタイル"だったのだ。PSYの"江南スタイル"が特殊だったのは、この曲が大ヒットするまでPSYが韓国以外で全く知られていなかったことがある。
2012年の6月にリリースされたこのミュージックビデオは、その年の終わりにはYoutubeで最も再生されたビデオになり、新しい流行の形を作り出した。
では"江南スタイル"は韓国の次に、どの国に波のように広がっていったのか。研究チームがTwitterのデータなどを駆使した結果、それはフィリピンだったという。フィリピンはもちろん韓国にも近く、より多くの民族が住んでおり、何より英語が強い国であるということが重要だった。
しかしこれは理論家たちが期待したように、"江南スタイル"は地理的に中世の流行病と同じように広まったのではないというのがポイントだ。そうではなく、そのものが広まるための有効距離に到達すれば、あとは広まっていく。"江南スタイル"の場合はそれがフィリピンだったということで、フィリピンにネットワークを通して到達した、その波はあとは爆発的に広まっていくだけだった。
中世においては現実世界で波状に広まった黒死病は、今度はネットワーク状で"江南スタイル"という形をとって広まっていった。
なぜ中世と現代、そして病気と楽曲が同じような形で広まるのかはわかっていないが、とても興味深い事実であるというのは確かだろう。