FNMNL (フェノメナル)

【特集】XXL Freshman 2017に選出されたラッパーたち pt.1

XXL

6/13に今年のXXL Freshmanが発表された。2016年は若干東よりな選出のイメージもあったが、2017年はAmine(オレゴン)Ugly God(ヒューストン)など地域的にはバランスの取れた選出となっているようだ。
SNSではすでに選考基準への不満も出ているが、そこ含めてのFreshmanだといえるだろう。

FNMNLでは選出された10名を2回にわけ、A~Z順で紹介していきたいと思う。ニューカマーをチェックできていない人はこれで一気におさらいして頂きたい。()の中は年齢である。

1. A Boogie Wit Da Hoodie(21)

 

NYはブロンクス出身のラッパーA Boogie Wit Da Hoodie。心地よいメロディアスな歌声が特徴でとてもキャッチーだ。そのため客演でフックを任されることも多々あり、ラッパーとの相性も抜群だ。もしかしたら彼の名をワイルドスピードの挿入歌でお聞きしたことあるのではないだろうか。

彼が注目され始めたのは2016年に入ってからだ。まず2月14日のバレンタインデーにリリースされ、Billboard 200で最高位70位を記録したミックステープ『Artist』のヒットでその実力を証明し、それ以降はRihannaの"Work"のリミックスやニューヨークのコンクリートジャングルを歌った"Jungle"のミュージックビデオなどで地道に活動の進め地元NYなどから確実に支持を得ていった。

そして同年8月にはSummer Sixteen Tourのマディソンスクエアガーデンライブの際に、Drake、Future、T.I.、Young Thug、A$AP Ferg、J. Cole、Fat Joeなどそうそうたる面々がステージに立つ中で、最初のミックステープが発表されてからまだ半年ほどのA Boogie Wit Da Hoodieも同じステージに上がったのだ。

彼はDrakeとのコラボも実現可能だと確信しているようだが果たしてどうなるのだろう。

XXLのインタビューではヒップホップのゴールは?といった質問には「俺はアーティストになりたいんだ。ラッパーにはなりたくない」と答えている。彼の本名はArtist J. DuboseでありミックステープもArtistだ。彼の血にはArtistが流れているのだと思う。

Amine(23)

Amineについて書く前にとりあえずこの曲を聴いてもらいたい。これを聴かずに続きを読むわけにはいかないだろう。

中毒性の高いフックを持ったこの曲は1億6000万回以上Youtube上で再生されており、誰が何と言おうと間違いなく大ヒットしている。キャロラインとは女性の呼称のことでサウスの重鎮Outkastからインスピレーションを受けたようだ。一方でAmineから印象を受けたのは、曲中にちりばめられた彼の器用さである。

もちろん曲を歌っているのはAmine自身だが、プロデュース自体もポートランド出身のPasqueと共同で行ったらしく、ビデオのディレクターも彼自身だ。そのためビデオを注目してみると面白い。Amineが着ているのは『Pulp Fiction』とプリントされたTシャツだが、もちろんこれはクエンティン・タランティーノ監督の映画で、"Let's get gory, like a Tarantino movie"の歌詞の部分に対応している。

またこの映画は1994年に公開された映画でAmineと偶然にも同い年だ。ビデオの中でAmineの隣にNBAのユニフォームを着た男がいるがこれは当時強豪であったフェニックスサンズのチャールズバークレーが1994年在籍時に着ていたジャージであり自分の年代をレペゼンしているようにも見える。ここまで着たら偶然ではないだろう。

社会的な一面も彼は持ち合わせており『The Tonight Show Starring Jimmy Fallon』で披露した"Caroline"は最後のバースにオリジナルのトランプ批判を組み込んでおり反トランプ陣営から高く評価されている。

2017年に入ってからの最初のビデオREDMERCEDESではお金持ちの歌を表現しているが、自身の肌を白く塗り逆ミンストレル・ショウのような表現は今後ムーブメントを起こすかもしれない。

 

Kamaiyah(24)

今回ただ一人のフィメールラッパーとして選出されたのがKamaiyahだ。2012年にIggy Azalea、2015年にDej LoafとTinkと大体2年に1人くらいのペースでしか選ばれていないのをみると女性ラッパーは軽視されている、のような意見があがってもおかしくない。事実HipHopのミソジニーについては依然今後の課題だろう。
今回はその話は一旦置いておいて、Kamaiyah自体にスポットを当てたい。西海岸はベイエリア出身で同じく西海岸出身のYGから猛烈なサポートをうけ全米に知れ渡った。まずはDrakeとともにフィーチャーされたYGの"Why you always haitin?"のミュージックビデオを見てほしい。

フックで登場した彼女は、シャンパン片手に屈強そうな男を従え「Please tell me why you always haitin?」とドスの効いた声でラップする。この存在感は今回は選からもれてしまったが東のYoung M.Aとも匹敵する。

Kamaiyahは割りと現実的な一面も持ち合わせている。インタビューにて、今後の目標を2、3年に定めていて女性MCの中でまず権威を得たく、そこから徐々にビジネスについて参入していきたいようだ。「とにかく有名になりたい」のように抽象的な目標を自信満々に話すラッパーもいるが現実的であり実現性も高いように感じる。また彼女のミックステープ『A GOOD NIGHT IN THE GHETTO 』のジャケット画像では仲のいいホーミーの家で撮影されたらしく地元を愛しているようだ。

Kap G(22)

Kap Gはカリフォルニアのロングビーチで生まれ、アトランタの南カレッジパークで育ったメキシカンラッパー。アトランタといえば最近だとMigos、Future、Young Thugなどを思い浮かべる人は多いだろう。彼らに負けず強い個性を持っているのがKap Gだ。前髪を一部金色に染め横に流すこのヘアースタイルは今まで存在しただろうか?Chris brownとの"I See You"はR&Bとヒップホップの垣根を越えた1曲だ。

ようやくフレッシュマンに選出された彼であるがいままでヒット曲がなくスルーされていたのは否めない。19歳の頃からじわじわと力をつけていたのは事実ではあるがここまで注目されたことは今までなかったのだ。まるで地下に溜まったエネルギーが何かのきっかけで噴火したようなヒットが"Girlfriend"だ。Ty Dolla $ignとMigosのQuavoによるリミックスも登場したこの曲が、彼のキャリアを変えた。

またスペイン語も堪能なバイリンガルだ。この曲ではKap Gが英語とスペイン語でラップをしていてる。不自然な感じなどは全くなくむしろ心地いい。ラテン系のラップスターの新しい流れを今後Kap Gが作っていくに違いない。

Kyle(24)

Kyleといえば昨年のFreshmanに選出されたLil Yachtyをフィーチャーした"iSpy"の大ヒットで一躍知られるようになった。子供のころ『ミッケ!』という絵本で遊んだこと、もしくは見たことはないだろうか。やったことある方はわかると思うが子供の頃に目を細くして絵本に隠された秘密を探したはずだ。"iSpy"はこの絵本からタイトルが来ている。

Kyleの場合それは絵本の中で探すのではなく現実で女の子を探すのだからこれまた面白い。曲では何度も"I spy with my little eye"と唱えている。ミッケをやっている子供とインスタグラムで女の子を探すKyle自身重ね合わせているように思える。PVも絵本の中のような展開で進められており、顔がでかくなりまるで子供のようなKyleとLil yachtyやクレヨンの柵、砂浜に捨てられた巨大なキャンディーなど徹底した世界観だ。

カリフォルニアのヴェンチュラという海に面した温暖な気候で育った彼はその地の特徴を感じさせるようなこれからのシーズンにぴったりの"Doubt it"や90年代のバイブスも感じられるメロウチューン"Don't Wanna Fall In Love"などがある。

暖かい気候の地で育ったラッパーらしいキャッチーなトラックを武器に、Kyleは新しいカリフォルニアの顔になれるだろうか?(Yoshito Takahashi)

後編に続く

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