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NYのビエンナーレで展示中の「棺の中に入った黒人少年」を描いた絵が論争を呼ぶ理由とは?

アメリカ・ニューヨークのホイットニー美術館で開催されているホイットニー・ビエンナーレ2017で展示されている絵画作品が多くの黒人アーティストからの批判を集めている。

"Open Casket"はニューヨークのアーティストDana Schutzによる絵画作品。この作品がアメリカの歴史上で未だ解決されておらず、癒えていないトラウマを搾取しているとして、多くの黒人のアーティストから抗議の声があがっている。

この絵画の題材になっているのは1955年にミシシッピ州でリンチに合い殺されたアフリカ系アメリカ人の少年Emmett Till(エメット・ティル)。イリノイ州出身の彼はミシシッピ州の親類を訪ねた際、白人女性に口笛を吹いたと因縁をつけられ、リンチに合い、目玉を繰り出され、銃殺された。そして遺体は重しを付けられ川に捨てられた。この事件は全米で抗議活動を巻き起こし、公民権運動に繋がった大きな出来事になった。

この絵画作品はエメット・ティルの報道写真を元にしている。エリオット・ティルの母親が棺を開いたまま葬儀を行ったため、死体の写真を撮影した報道写真が広まり、多くの人が目撃することとなった。*

アート系のメディアArtnetは、先週の金曜日に数人のグループがこの絵画の前に立ちはだかり、美術館が閉館するまでこの絵を見れないようにして抗議したと伝えた。

Dana Schutz, Open Casket (2016). Oil on canvas. Collection of the artist; courtesy Petzel, New York.

ベルリンのアーティストHannah Blackはビエンナーレに対して公開書簡を公表し、「この絵は破棄されるべきであり、ミュージアムやマーケットに流通しないこと」を求めた。

今週火曜日にホイットニー・ビエンナーレ2017のキュレーターである、Christopher Y. Lew 、Mia Locksは以下のように公開書簡に回答した。

ホイットニー・ビエンナーレ2017は暴力、人種差別、死の直面といった痛み、困難さといった人間が経験してきた状況に光を当てています。

Dana Schutzの作品である"Open Casket (2016)"もアフリカン・アメリカンに対する長年の暴力を明らかにする、暗い歴史に光を当てるような作品です。特に、この作品は多くのアフリカン・アメリカンに大きな感情的共鳴を与えます。

この作品を展示することで人々に、アフリカン・アメリカンの歴史上そしてアメリカという国における人種関係の歴史上で、非常に重大なイメージとの重要性を知ってもらおうと思いました。展示のキュレーターとして、アーティストたちがこれらの重要なイシューについて探求するプラットフォームを提供できると信じています。

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