毎年クロアチアで行われるサウンドシステムカルチャーの祭典OUTLOOK FESTIVALでは、UKをはじめとする世界各国のサウンドシステムやアーティストたちが、世界各国から集まってくる低音狂たちを熱狂させ、フードコーナー横に特設されたステージでは、機材メーカーやメディアがクリエイターやオーディエンスがよりカルチャーを深く知るためのワークショップが開催されたりもしている。
そのワークショップの一環として、オーディオメーカーのVOID ACOUSTICSの創始者であり、オーディオ・エンジニアのRog Mogaleたち、サウンドシステムエンジニアを迎えてのトークセッションが行われた。
VOID ACOUSTICSとは、UK発の世界最高峰のクラブサウンドシステム。クラブの聖地イビサ島を筆頭に、ロンドン、ベルリン、アムステルダム、モスクワ、ニューヨーク、サンフランシスコ、シカゴ、そして広州と世界各国のトップクラブにインストールされており、日本でもTAICOCLUB、ULTRAなどのフェスでその威力を発揮するクラブサウンドシステムだ。
トークセッションでは、RogやVOID ACOUSTICSとも親交の深いNeuron Pro Audioのメンバー、グラスゴーのサウンドシステムMungo's Hi-Fiのメンバーが登場し、サウンドシステムの歴史、哲学、失敗話などを語った。今回、Rogの好意により、FNMNLで特別にトークセッションの書き起こしの翻訳をシェアすることができた。
Special Thanks to Tocci (Tokyo Sound System Labratory)
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司会 - それでは、Rog、これまでどんなことに影響を受けてきたか?このサウンドシステムの世界に行き着いたプロセスを話してもらえますか?
Rog Mogale (VOID Acoustics) - わかりました。僕のバックグラウンドは、レコーディングと音楽制作で、80年代から様々なトップアーティストのアクトをプロデュースしてきて、80〜90年代はPAエンジニアのビジネスに関わったりとみんなの仕事を請け負ってきたよ。
それは会社の、仕事の良い背景作りにとても役立っていると思っているんだ。90年代後半になって感じたことは、その辺のクラブを見回すと、音はまあまあなんだけど、すべてのクラブのスピーカーが真っ黒でどこか退屈だと思ったんだ。照明でさえかっこよく未来的な表現をしていた時代なのに、誰もスピーカーをデコレーションだと考えていなかったし、スピーカーだけがどこか退屈に見えたんだ。クラブのオーナーはクラブのデコに大金を使っていたのにもかかわらず、スピーカーはただの黒い箱だったんだ。そこでクラブをかっこよく見せる必要があった。それがVOIDが生まれた理由なんだ。
僕には、VOIDの他に、DIYサウンドシステムという別な一面がある。確か90年代中頃からウェブサイトspeakerplans.com [1]DIY Sound System Web Site: speakerplans.comをRogが開設した。を始めたよ。インターネットを使って自分のサウンドシステムを作り出すプランをシェアしたんだ。当時はそんなに良い設計図もなくて、1970年代の設計アイデアとかばっかりだったんだ。もっとモダンな設計アイデアが必要だったし、いくつかの設計図を提供する必要があったんだ。そして、その時に考案された設計図には今でも使われているものもあるよ。
Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - Mungo's Hi Fi Sound Systemは、そういったフリーの設計図から2002年に生まれたんだ。Mungo'sはRogが考えていたフリーダウンロードできる設計図から生まれて、フリーパーティーをやる人たちの為、自分たちでは高額なサウンドシステムを買えない人たちに、フリーで使ってもらうことから始まったんだ。
今のVOIDとコネクションがあった、それこそ最初にやったパーティーは50×80ホーンを使ってたね。警察が毎週くるようなマンチェスターの危ないウェアハウスパーティーで使い始めたんだよね。あの時にVOIDクルーから購入したスピーカーは、Looney BinのウーファーとSTASYS SYSTEMじゃなかったかな?
このスピーカーは最近売ってしまったけれども、長い間皆んなあのサウンドにやられてたよね。僕たちもDIYのシーンから生まれて、次に音響のセミプロになっていったんだ…
Rog Mogale (VOID Acoustics) - まあここで言いたいのは、それって矛盾してない?と皆思っているんじゃないかな。一方で僕は、ハイエンドの会社(VOID)を持っていて、幸運にもお金を稼いでいる。世界中の大きなクラブやフェスティバルのビックステージにスピーカーを提供している。でも、同時にそこでDIYの設計図もウェブサイトに残しているんだ。それは確かに矛盾ではあるけど、矛盾ではないんだよね。
DIYのシステムでは、僕は絶対高い既製品を使おうとは思わない。使うべきではないとも思っている。ジーンズを自分で買いに行くのと一緒で、それはとても個人的なことで、すでに作られている一般的なものを使いたいとも思わないだろ?それらを組み合わせてマッチさせたいと思うんじゃないか?そういうものを組み合わせて自分のデザイン、自分自身の音を創るんだ。それがアップロードされるべきで、それを僕はクリエイティヴオーディオと呼んでいるんだ。それは、ただのフラットな周波数特性が欲しいわけじゃない。
クリエイティヴな自分のオリジナルのサウンドを作る事、自分たちがそれに取り組む事、それがサウンドシステムのカルチャーだと思っているんだ。だからそういう経験を皆に踏んでもらうことが大切だと僕は思っているんだ。Jerome、君はどう思っているんだい?
Jerome(Mungo's Hi Fi Sound System) - その通りだよ、良い時間を過ごすっていう経験が鍵だよね。僕はいつもクラブでパーティーしまくってたね。でもそこには何か足りないといつも思ってた。そして、グラスゴーでDag とTom とCraigと会って2003〜4年にMungo‘s Hi Fi Sound Systemに入ることに決めたんだ。スコットランドには良いスピーカーがなかったから、DIYで作り始めたんだ。今でもそれらのスピーカーを使っているよ。Rogの設計と同じもの。同じボックスで別なドライバーで今でも使ってるけどね(笑)。
その時は、さっき言ったように良いサウンドシステムがなかったから、もっと僕たちがやっていたようなサウンドをリプロデュースできるシステムが必要だったんだ。当時から僕たちはダブやレゲエをやってた。良いサウンドシステムがなかったら、その音楽を表現することができなかったんだ。だから、とにかく良い時間を持つことが鍵なんだ。オーディエンスがサウンドでダンスして、クレイジーになって、そんな人々が周りにいることが一番大事なんだ。DagにもMungo‘sについて語ってもらうよ。
Dag(Mungo's Hi Fi Sound System) - Rogのデザインのスピーカー設計はすごいと思うし、今でも使われているよね。誰が作っても強力なんだよね。とにかく、そういったコミュニティーが、今でも生きてるんだ。
Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - RogはVOIDの新しいプロダクトをリリースする影響力のある人だ。僕の会計士は、僕たちがそのプロダクトのすべてを毎年買っている事を嫌がっているけどね(笑)。まあとにかくこうして、毎年ここOUTLOOK(クロアチアのプーラ)に来てTHE VOID、GARDENでサウンドシステムを担当してるけど、こんな事は多くの周りのPA会社がやってるってわけじゃない。それをやるには、スタッフにお金を払わきゃならないし、、、毎年同じシステムを構築するのは簡単だよ。ただ、ここに来る人々の顔を見ると『Wow!今年はなんか違うな、ここで何が起きてるんだ』って顔をするし、それを体験してもらうのがポイントなんだ。
OUTLOOKがすごいのは、ここに出てるすべてのサウンドシステムは独特で、それぞれが独特な作りをしていて、ここにあるスピーカーで悪いサウンドシステムなんて無いんだよ。
ビーチにあるDub Smugglers Sound SystemはRogにデザインされたスピーカーにインスパイアされて作られたんだ。けど、Rogが考案したスクープなんて知らなかったフィンランド人のヤツが作ってて、基本的に彼がやったことは、Rogと同じプランで同じフォルムでデザインしたんだよね。彼はレゲエが好きで、結局マンチェスターに来て、チューニングし始めたんだけど、最終的に俺たちと全く違う音を作り出したんだ。その音はスーパースペシャルで、ぶっ飛んで、朝っぱらの俺らの目を覚ましたんだよ、、、。
システムを作るには何千ポンドって金がかかる。それは楽器だからね。そして、それをその音楽の為にチューニングするんだ。俺たちは、その音に順応しなきゃならないんだよ。音楽をパーフェクトに表現しなきゃいけないし、パーティーそのものを最高にすることを常に意識しなきゃならない。それがサウンドシステムカルチャーの鍵なんだよ。ジャマイカの時代でさえも、みんな自分達のボックスで自分たちの音を作り出して、他のパーティーやヴェニューに行ったら、ここは「違うサウンド」って体験させるってことが大事だったんだ。
Rog Mogale (VOID Acoustics) -
あの時代を振り返ると、自分より年上の人々がたくさんいたよ。あと、ここにいる皆より年寄りの人達ばかりだった。あ、そこのあなた(Iration SteppasのMark Irationを指差して)は結構年取ってるか(笑)。
とにかくあの時代、60年代後半から70年代は 、PAシステムは、10インチや12インチが4発入りとかのコラムスピーカー[2]縦にスピーカーが並んだスピーカーで中域しか聞こえないヒドイ音だったよ。 ジャマイカからは良い音楽が入ってきてて、ジャマイカではそういった種の音楽に対応しプレイできるシステムがあったけれども、初期のロンドンではそういった音楽を再生できるシステムがなかった。だから自分たちでそのシステムを作り上げなければならなかったんだ。ベッドを分解して合板を組み立てて、一番大きなドライバーのFANE POP 100を探してきて、18インチのスピーカーと真空管アンプを繋げて、あとはベストな音が鳴る事を祈ったんだよ。
DIYはこういった作業から来ているんだ。何も無かったから、必要な物は自分たちで作らなければいけなかったんだよ。当時のPAシステムは、安定していなかったしそこまで役にも立たなかったんだ。
オーディエンスからの質問 - DIYアプローチとVOIDの矛盾点を話してましたが、そのプロセスがどのように今の世界的なビジネスに影響してきたのか説明してもらえますか。
Rog Mogale (VOID Acoustics) - もちろん。そのプロセスは手助けになったよ。当然僕はその2つのサイドを見てるからね。さっきも言ったように僕は、PAエンジニアのルーツも、ハウスのプロダクションのルーツも持っている。また、9つの楽器をプレイすることもこれまでのサポートになっているし、そんなバックグラウンドを持っている事が幸せだよ。DIYサイドは別なブランチで僕がやりたいことをやっているわけで、それができてることを幸せに思うよ。
それと別に、まったく別なVOIDという会社では、人々が好きな良いハイレベルなオーディオシステムを作っている。でも、DIYはそれを超えているね。今では多くの世界中の人々を魅了している。今年Boom Townフェスを歩きまわっても、Notting Hill Carnival に行っても、ここに来ても、みんなVOIDのTシャツを着ていて、10分おきに誰かが来て僕をハグして「Wooow we love VOID!」って言ってくれるんだ。だから、正しいことをしているんだと思う。
これを計画してたわけじゃないけど、こんな風になるとも思ってもいなかった。ただこれは、僕が過去にやってきたことや、僕自身の選択が道を作ってきたから今に至って、結果こうなっただけなんじゃないかな。そして、人々が何を求めているか知ること、何が良い時間という事を理解するということが大事なんだ。世界中にサウンドをデザインしている人が多くいるけど、彼らはパーティーに行かなかったり、外に出なかったりするんだ。だから、こういう風にして外に出る事を大事に思う必要がある。まあとにかくこう背景も含め、全てがあって、良いものを作るんだよ。
Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - これは僕の尊敬の意を込めて言いたいんだけど、こうしてVOIDが長続きして成長してきた理由としては、その機材に関わっている人たちに、メールをしたり電話したり、問い合わせをすれば、サポートしてくれるからなんじゃないかな。メーカーとユーザーだけの関係じゃないんだ。
Jerome(Mungo's Hi Fi Sound System) - DIYをやっている人たちは、同じ経験をして共に協力し合ったから成長してきたんだよ。そして、皆そこに幸せを感じてきたんだよね。
司会 - クラブスタンダードのオーディオ以外にも、ビジュアルを重視する観点はとてもユニークだと思いますが、なぜそういった点を大事にしているのでしょうか?
Rog Mogale (VOID Acoustics) - そうだね、スピーカーの見た目は独特で、他と違うのは確かだよね。それは、他のスピーカーとは違うように見せたいという点があったし、ナイトクラブに置くただの黒い箱にしたくはなかったんだよ。まず、クリエイティヴで完璧なアーティスティックにしたかったという点があるんだよ。これは、今の様にフェスティバルで使用される事は全く想像もしていなかったんだ。デザインをCADで描いて、デザインを「リヴァースエンジニア」して音を出すスピーカーを作っていったんだ。もう1つのアイディアは、インキュバスとアークアレイのように完璧に機能を追求したものを作ること。前で聴いてもうるさくないとか、ラインアレイの機能も有していて、フロアの後ろにいる人たちも含めてみんなが完璧に同じ体験をできるような音をデザインすることを目的としているんだ。これが2つの方法、アイデアだったね。
Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - いろんな製品があるけど各レンジのスピーカーはそれぞれ独特なビジュアルスタイルを持っていて、どのボックスも良い音が鳴るんだよ。エアシリーズに丸形と三角型があるように、VOIDはオーディエンスに対応できるようになっている。ただ単にスピーカーを聞いているという訳じゃなくて、スピーカー自体が音楽体験の一部になるんだ。人々がいい音を聞いて、音楽に身を任せて楽しんでダンスするという他と違う体験をすることが大事なんだ。
Outlookには、大小の色んなステージがあるけど、どこでも良い音を聴ける。観客はもちろん、オーガナイザーでもあるSimon、そして出演するアーティスト達も楽しめるフェスティバルなんだ。スピーカーがミュージシャンとオーディエンスを強力に繋げてくれるからなんだ。だから、ミュージシャンもOutlook には皆んな出たがるんだよね。
Jerome(Mungo's Hi Fi Sound System) - 僕たちはスピーカーをただの箱だとは考えていなくて、スピーカー自体がこういったアリーナの場所の一部であると考えているんだ。
オーディエンスからの質問 - サウンドシステムで何を学んだか?
Jerome(Mungo's Hi Fi Sound System) - サウンドシステムってのは、仕事以上のもので、完全にライフスタイルだ。ファミリーみたいなものだよ。僕たちは一緒に働くと同時に一緒に遊んでいるんだ。たまにどうにもならないトラブルが起きてストレスを感じることもあるけど、一緒に働けばそれを発展させて改善させることが出来るんだよ。
そしてインターナショナルなコネクションが大事なんだ。ジャマイカで始まったカルチャーは今ではアンダーグランドパーティーとして世界に広まっていった。もちろんイギリスでは人種的な緊張関係もあるけど、サウンドシステムカルチャーを通じて僕たちはそこで共に遊び、働いてきたんだ。違法レイヴから始まったイギリスのアンダーグランドカルチャーは今ではクラブでも楽しまれる様になったね。そこでRogには色々と手助けされてきたよ。
Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - 2004年にPlastic Peopleのforward に行ってYoungstaとSkreamに出会った。その時は若かったけど、これまでに無いような音楽を聴いたね。マークアイレーションのIration Steppasのダンスに行った事はあったけど、そことは音が違ったんだよ。10年後にこうしてマーク・アイレーション、Mala、Mungo’sとの仕事へと導いてくれたね。Speakerlans.comのフォーラムで色んな人たちと話した事が、今ここで役立ってるんだよ。すべてはネットワークが大切なんだよ。俺はいろんな人たちから学んできたよ。
Jerome(Mungo's Hi Fi Sound System) - 毎年、いろんな場所からOUTLOOKにいろんなサウンドシステムが集まってくる。ここで俺はKyleからスピーカーを借りて、Kyleは僕からスピーカーを借りたし、多分また僕からKyleはスピーカーを借りるんでしょ?笑
とにかく、お互いスピーカーを貸したりしあって、皆んなで助けあって、ふざけあったりもしてるんだ。僕はここで皆んなとこういった話をできる事を嬉しいと思うよ。
オーディエンスからの質問 - すみません、Rogあなたはこれまでどれくらいのスピーカーをデザインしてきましたか?そして、そのデザインを完成させるのにどれくらいの時間がかかるんですか?
Rog Mogale (VOID Acoustics) - それは難しい質問だな。今まで多分100近くのスピーカーをデザインしてきたよ。中でも究極なのは、インキュバス、アークアレイとかになるかな。これらを作るにはすごく時間もかかったし、何度も何度も調整が必要だったよ。すぐにデザインできたのもあって、5、10分で出来たものもあったかな。夢で見て朝起きてすぐ書き起こしたものもあって、それは2、3日で完成したよ。
2002年にUKを離れて、チベットの国境付近、南のエリアに移動したんだ。なんでイングランドを出たかったって?あまりにも多くの人達が僕を知っていたし、皆んなが電話をしてくるから、それが僕には邪魔になってしまったんだ。今はマレーシアに移り住んでるけど、やっぱり自分の仕事に集中したかったし、朝起きて、この日中にはそれは完成させたいと思ったら、それにかなり近づけるんだよ。ところが、イングランドでそれをやると、3週間とかさ、滅茶苦茶に時間がかかるんだよ。僕は、自分にとって相応しい環境にすぐ行けるし、相応しい人々をすぐに探せるんだけど、残念ながら、それはUKじゃないんだよね。申し訳ないけど…。
でも、今は少し変わったよね。今はR&Dをイングランドに戻したりしてるし、イングランドは、これからが時期かなって思ってるよ。
Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - 他のスピーカーブランドは何千人ってくらいのスタッフを抱えてる会社もあるけど、VOIDは当初3人で、会社は10人に満たない少人数のファミリーでやってきた。これは文化的なことで、他の会社がやっている事とはまた違うんだよね。DIYシーンでは、スピーカーを運ぶ時に大きなトラックなんて借りる金がないから小さなバンを使ったりして運んでいるよね。DIYでは、こうして順応していく事が大事なんだよね。Mungo’sはどうしているの?Jeromeは後から入ってきたんだろ?
Jerome(Mungo's Hi Fi Sound System) - Mungo’s Hi fi Sound Systemに関しては、二人で始まって、今ではメンバーも増えてる。
僕らは今5人で仕事をしていて、仕事をお互い変えたりしながらやってるよ。グラスゴーでのサウンドシステムのプロモショーンやレーベルやショーにサウンドシステムを毎週出したり、沢山いろんなことをやっているね。今ではブランドみたいになってるけど、趣味とビジネスの境目というか、楽しんで、情熱を注ぐのはいいけど結局は家賃とか払わなきゃならないしね。でも、サウンドシステムに関しては皆んな見返りなしで力を注ぐよね。それがカルチャーの一つなのかもしれないけど、まあ組織みたいなのはやっぱり必要で、コマーシャルな事をする必要もないし、リアルな原理原則をしてきて、僕らは今、外に知られていてラッキーだと思うね。結局いろんな人に助けられてきたよ。
Rog Mogale (VOID Acoustics) - コマーシャルな世界にだって助けはあると言えるぜ。でも、その助けを借りるには、金を払わなきゃならないんだよね。(笑) そこが大きな違いだよね。(笑)
ここでゲストMark Irationを紹介させて下さい。サウンドシステムカルチャーと言えば彼が一番だよ。
Mark Iration(Iration Steppas) - 1950年〜60年代、俺はまだ子供だった頃、あの時のサウンドシステムは、接着剤とか使ってたけど、今はより専門的になってとんでもないくらいその世界が変わったよね。昔は、シービーンっていう違法酒場やブルーズダンスっていうハウス・パーティと呼ばれるような違法レイヴにでっかいアンプとスピーカーが持ち込まれてた。けどスピーカーなんて100Wくらいしかなかったよ。
今ここにいる奴らは、テクノロジーを駆使してすごい音を作ってるんだ。正直、今は昔と比べてサウンドを作るのは、インターネットと一緒で情報を入力していくような感じがあって簡単になったんじゃないかな。そして、あの頃に比べて、今はいろんな部分で音が改善されただろ。
あの頃は、何か変えるだけでもすごく時間がかかったし、しかもなんでも滅茶苦茶に金がかかったよ。何年も何年も“授業料“が必要だったんだろ。
Rog Mogale (VOID Acoustics) - あなたは、今は簡単に音が作れるっていうけど、簡単に音を作っても結局そういう音は長続きしないと思うんだよね。
Mark Iration(Iration Steppas) - そうだよな。まずは、愛が必要で金銭的な忍耐も必要だな。時間をかけてどんな音を作るか考える必要がある。その音を凄いものにするってのは、コンプレッサーや、アンプも含め色んなものを、自分のスピーカーがどこまで鳴らせるか分からない限界値まで突っ込んで、コンプレッションドライバーもアンプも飛ばす必要があるだろ?そうでもしないと、どこが限界か分からないだろ?そういう所に金がかかるんだよ。
Jerome(Mungo's Hi Fi Sound System) - それが勉強する方法であり、僕らはまだ分かってないよ。サウンドシステムは武器みたいなもので、使うに適した使い方をしなきゃならないと思う。正しいメッセージを伝えなきゃいけない。間違った理由だと、どこにもメッセージやサウンドは届かない。サウンドシステムはすごく影響力があるわけだから、きちんとケアをしなければいけないんだよ。
Mark Iration(Iration Steppas) - たしかに、良くない方向に行くこともある…
Rog Mogale (VOID Acoustics) - というか、皆んな金を失うでしょ!僕はスピーカー作ってるやつで儲けてるやつなんて知らないよ。全てはレーベルと愛の為だ。ラインアレイとかコンピューター化してることに対して意見があったけど、何かトラブった時に(処置をして)スピーカーのグリルを付けたり、俺はそういうのが好きだし、というかそうあるべきなんじゃないの?
最高のテクノミュージックを作る奴ってのはリビングルームの床の真ん中で、アシッドやったり、コカインやって音を作ってて、綺麗なスタジオに行って音楽作ってる奴はクソみたい曲を作るだろ。そういう汚れた部分も必要なんじゃないかな。
確かに、コマーシャルなサイドでは、コンピュータ化されてラインアレイは大体シミュレーションできる様になってるけど、他のことに関しては、僕はRAWでラフな感じが絶対に必要だと思うな。
Mark Iration(Iration Steppas) - 何かヤバそうな時は、噛んだガムを使ってシステムを直してたこともあったぞ。それは結構ラフだろ?
Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - 俺たちは皆色んなミスから学んできてるよね。何か起きたら誰がそれをどう直すかとか、誰がバブルガムもってるのか、とか!とにかく、色んな状況に対応することが大事だよね。
Mark Iration(Iration Steppas) - 昔はワイヤーを歯で剥いてアンプの端子に繋いだんだよ。そしたら、若いヤツがいきなり電源入れちゃってさ、ボンって音がして、そん時に俺は歯がふっ飛んだよ!(笑)
オーディエンスからの質問 - これまでのサウンドシステムカルチャーでネガティブな体験はありましたか?
Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) -
ウンドシステムカルチャーはネガティブなところからスタートしたけど、そこでみんなでパーティーの為に協力しあって、ゴールを目指すんだよ。もちろん意見は割れることもあるけど、最後はみんな協力しあう。そんな大きなマーケットのビジネスじゃないから、Jeromeがビジネスの競争相手になることもあるけど、別にぶっ潰すそうとか、そういう考えなんてお互い思ってもいないし、結局俺たちは協力しあうんだよ。
Mark Iration(Iration Steppas) - サウンドシステムは、愛とファミリー的っていうけど、昔はアンプに関してはお互いどんなデザインをしているか隠してたかな。もちろん助けあう友達でもあり愛でもあるけど、正直俺たちの世界ではサウンドシステムに関して言うと、ボクシングマッチのタイトルマッチと一緒のガチンコの世界だと思ってるよ。
Jerome(Mungo's Hi Fi Sound System) - Mark、あなたのスピーカーを使わせてもらった時は、スピーカー飛ばしておくね(笑)
Mark Iration(Iration Steppas) - Mungo’sに電源を借りたこともあるし、とにかくお互い助けあう部分はあるけどな…まあそれが愛的なものかね。
Rog Mogale (VOID Acoustics) - Mark、あなたはこのシーンでテクノロジーがどれだけ変わったかってことを話してたけど、そのことに関して言わせてもらうと、未だにスピーカーっていうのは、紙と磁石と木を使っているから、そんな変わってないと思うんだよ。ただ、今はサウンドシステムのコントロールの仕方が変わっただけで、今はもう少し予測はできるようになったし、スピーカーやアンプを飛ばすこともなく、もっと信用ができるシステムになったよね。
6万年前に火の前で皆んなが踊ってたのもそうだけど、俺たちは今でもそれを求めて同じことをしているだろ?俺たちは今でもそれを求めてる。何が違うかっていうと、今はシステムオペレーションに規制があったり、逆にできないことも増えたんだよ。OUTLOOK FESは良いけど、ロンドンのノッティングヒルカーニバルに関しては85デシベルのリミットがあったり、騒音の規制があったり、騒音問題には参ってるよ。パーティーを求める人々の期待は変わってないし、システムの質はさらに良くなっているのに、その間にそれを止めるものがあるのがつまらないんだよね。
Jerome(Mungo's Hi Fi Sound System) - 確かにサウンドシステム規制があって、僕らはそういう事と戦っていかなきゃならないんだよね。サイレントディスコみたいなのもでてきただろ?
Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - UKのFabricもそうだけど、騒音規制の件もあってクラブの多くがクローズしている状況だよね。人々にはパーティーをして良いサウンドを楽しむっていう権利があるんだろ?でも、たまにこう言った考えを理解してもらえない事もあるんだよ。ヘッドライナーが凄いこうした大きなフェスも良いけど、やっぱり地元のローカルのヴェニューでの活動ってのも大事なんだよ。このフェスで、こんな美しい場所でデカイ音を流せるのは最高だけど、国に戻れば大きな問題もあるんだよ。UKでもカルチャーが変化しているけど、やっぱりそこではローカルシーンのサポートが皆から必要だよ。
Rog Mogale (VOID Acoustics) - ちょっと一言いたいんだけど、今は変化の時代だよ。多分、ここ3、4年の間に色々と変化してポジティブで新しい時代がまた来るとも思うんだ。お金を持っている人がたくさんいる世界だよね。政治だとか面倒臭い話の前に、きっと根っこ(ルーツ)に戻ってくると思うんだよ。もうすでに色んなことが起こってるし、規制があったとしても、俺たちは、行くべき場所、やるべき事が分かっているから別に気にしなくていいんだよ。
僕はマレーシアに住んでいて、毎年イングランドに戻ってくるんだけど、どれだけ規制されているか感じるけど、それは分かっている事だから。
Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - 60年代70年代とか、昔のジャマイカンカルチャー、全てはポジティブなメッセージは今でも生きてるしね….
メッセージがこうして生きてきているんだ。ヒップホップであれ、ドランムンベースであれ、全てはポジティブなからのメッセージは今でも生きてるしね…
Rog Mogale (VOID Acoustics) - そうなんだよ、だからパニックを起こす必要はないんだよね。僕はそんなに心配してないよ。
オーディエンスからの質問 - 行政に営業停止を受けているFabricについて聞かせてください。
Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - 過去の文化に戻っても人々はただ良い時間を過ごしたいと考えてると思うんだよね。そこで、リスクとかいろんなことが出ててきて怖くなって、ライセンスを取って合法化したよね。Fabricがオープンしてから6人の死者が出たけど、警察は取り調べかなにか分からないけど108人をも殺しているんだよ。だから、政府に対しては音楽のカルチャーを守る訴えを起こしてるし、そこはみんなで協力を促しあって助け合う必要があるんだ。Fabricの問題は、ガキが警察を見てパニックを起こして持ってるドラッグを全部食ったりしてることもあるんだよね。だから、誰かがそういったことのサポートをしなきゃならないんじゃないかな。
Rog Mogale (VOID Acoustics) - 僕の意見としては、ナイトクラブではドラッグは必要ないと思うんだよね。ナイトクラブはドラッグを学べる環境じゃないと思うし、たくさんやるべきじゃない。ドラッグをやるなら誰かあなたをケアしてくる人がいるとこで、若い時に沢山やって、いろんなものをやって、きちんとしたドラッグをやるべきだよ。いろんなドアを開けて、必要なものは全て学べばいいんだよ。そしたら、そのドアが分かったら、もうやらなくなるんだよ。ただ、ナイトクラブでやるなよ。あそこはドラッグやるにはバカな場所じゃないか。
ドラッグは良いよ。俺もいろんなドアを開けて、道を探してきたけど、俺はそこでラッキーだったかな。ドラッグをやってもいいけどクラブでやるな。そして自分の道がわかったら辞めればいんだよ。
Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - このドラッグについての意見は、ここだけの話で、OUTLOOKフェスティバルとは関係のないあくまで個人の意見です(笑)
Electrikal SoundsystemのRicardoからの質問 - そうだね〜ここでの僕の質問は…いえ、実は僕は特に質問とかないんですけど、JeromeとKyleがミュージックシーンにどう関わってるかって、Jeromeのことをそんな多くの人が知っているわけじゃないと思うけど、君は僕のサウンドシステムを設計してくれたよね。そしてKyleは、仕事の手助けをしてくれてる。僕ら皆んなはここにいる人たちに感謝すると共にミュージックシーンに貢献してくれている事に敬意を評すべきだと思うんだ。(会場から拍手)
Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) -
このサウンドシステム文化は凄くルーツがしっかりした文化なんだ。今もこうして、お金を払ってこういったフェスの場に来てくれて、僕らが何をやっているかを体験しに来てくれる皆んなに凄く感謝してるし、それを光栄に思う。だから、敬意を評したいのは、君達になんだよ。
Electrikal SoundsystemのRicardo - 僕は自分自身にも問いてたんだけど、様々な事が重なってサウンドシステムの世界では、いつかモチベーションが消えてしまうのではないのかなって事を考えてたんだ。結局はモチベーションが僕らを突き動かすんじゃないかなとは感じているよ。
Rog Mogale (VOID Acoustics) - それって本当に色々な事が混じりあってるよね。そこには、競争もあるし、それがシステムに新しい方法を見出して更に良いものしていく。何か問題が起きれば、解決しては何とかしていくんだ。スピーカー飛ばしたりね(笑)
Mark Iration(Iration Steppas) - さっきも言ったけど、今はインターネットを通じてシステムを早く設計する事ができるだろ、すぐに自分のサウンドを作れるんだよ。だから、競争が今ベースにあってそれが突き動かしてるとこもあるんじゃないか?どこのヴェニューに行っても、違うPAがいてサウンドは一緒じゃないってことをここで覚えておきたいよね。そこでサウンドにはいつも変化がある。金銭的なことを言うと確かに金は必要なんだよ。だからそこで大事なのは熱意、そこに俺たち自身を捧げる事だ。時間を掛けたっていいんだから。
Rog Mogale (VOID Acoustics) - 話の途中でごめん、そこに付け加えたいのは、僕はそれが運命、自分の使命だと思うんだよ。自分は牛乳屋さんになるって使命じゃないだろ?自分が何をすべきか、やりたい事があるだろ?それを追求して自分が求めてる自分になりたいと思うはず。そこで一番残念なのは、何人かの人たちは何かを追求し続けて実はそれが自分の道じゃないと思ってガッカリする事だよね。でも、そこで単に自分が行くべき道を学ベばいいだけだろ。
Mark Iration(Iration Steppas) - 沢山の人達が道を追求するけど、そこでは数人が選ばれる。シンプルな話だ。
Rog Mogale (VOID Acoustics) - 俺たちはラッキーだと思う。俺は毎日自分の全てを自分のやりたい事に捧げられている。それが俺の人生だ。最高の人生だよ。
Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - 俺はこうして素晴らしいチームが周りにいて色々とやれる事が素晴らしいと思うんだよ。誰も一人だけで全てを乗り越えられないだろ。
Jerome(Mungo's Hi Fi Sound System) - 絶対にモチベーションを失っちゃダメだよね。これは誰にでも起こり得る事だけど、いつもトライする事、そこで学んで行く事が大事なんだ。
司会 - 素晴らしい時間をありがとうございました。