関西juke/footworkシーンを中心に活動するKEITA KAWAKAMI主催のレーベルKSWよりSAUCEMANが『鳥ep』をリリース。今回マスタリングにはプロデューサーMETOMEが担当。PVはレーベル前作に引き続きSeihoやTOYOMUのMVを手がけるKiyoshi Matsumaeが監修。MVには、d.j.fulltono、Kaoru Nakano、Sakiko Tamura、Mightwhalesなどが出演している。
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音楽ライターの河村祐介によるレビュー
D.J.G.O.改めSAUCEMANのニューEPは、関西を中心に活躍する、KEITA KAWAKAMI(ファラカミ)主催の
JUKE / FOOTWORKのレーベル〈KOOL SWITCH WORKS〉からリリース。その名も
「鳥」。図書館で手にとった、個人寄贈の「鳥の鳴き声」フィールド・レコーディングの
ライブラリーCDRが、そのスタートとなったという4曲。JUKE / FOOTWORKの向こう側に広
がる、幻のようなチルアウトの成れの果て、進むべき道はないが、ここには音がある。
つんのめるソースの辛み、旨み、甘み、滲むアフロのグルーヴ、ソースマンがたどり着い
たおじさんのトラックメイクの境地。そのグルーヴの鳥。心のなかのゲットー、路地裏に
できた安酒の水たまり、そこに降り立ったのは名前も知らない、見たこともない鳥を追い
かけるソースマン。その足跡はいつのまにかリズムに、生まれるグルーヴは、滲んで広が
るソースのシミのように広がる4曲へとなる。空虚なBPM160の回転灯をあわよくば見逃すな。
すべてで41曲あるという鳥シリーズから、たったの4曲。脳髄が千鳥足を踏みながらジャ
ズ・ドラムで一歩も進めない、メランコリックでチルアウト、もはや路地裏に捨てられた
音楽雑誌に、泥とナメクジの間にうつるECMのジャケットから聴こえてきそうな「鳥
7」。アートコア・ジャングル時代のフォーテックが、朝風呂場の湯船に転生し、生まれ
たしまったかのような「鳥4」。ふやけたファンファーレとともにはじまり、意外な色気
を見せる向こう見ずな「鳥5」。そしてとんでもない形の大きな車輪がゆるい坂道を転げ
ながら、チンドン屋とスネアドラムを巻き込む「鳥6」。4者4様のあからさまなサイケ
デリック具合は、抜けの良さがくせになる。滲み出るグルーヴがそうさせるのか、落ち着
きのないやつの心象がそうさせるのか。まずは聴いてのお楽しみ、聴けば聴くほど天然モ
ノの恐ろしさに背筋が凍るとも言える。